姉から始まる魔法少女

大崎 狂花

文字の大きさ
11 / 27

第十話 免許更新①

しおりを挟む
瑠璃はセカンド会社支部の事務所へと足を運んでいた。今日はセカンドの免許更新の日である。瑠璃もそのセカンド免許を更新するためにここへ来たのである。

「面倒だけど、やらなきゃいけないからな」

瑠璃が免許更新のために受けなければならないのは、実技試験と簡単なペーパーテストのみである。

ペーパーテストも、まだ学生の身ということもあって、内容は学校とかでやる普通の期末テストとかと同じようなものになっている。これは他の学生たちも同じである。学生と兼ねてセカンドをやるような人たちは、その結果学力が下がってしまったら大変なのでそれを防ぐ意味で免許更新の試験にこういうペーパーテストを組み込んでいるのである。

セカンドには階級があって、FからSの7つのクラスに分かれている。新しくセカンドの免許を取ろうとする時や、F級やE級で免許更新をする時にはそれこそハンター試験とかぐらいの厳しさはあるが(死者は流石に出ない)、上に上がれば上がるほどそこまで面倒にはならなくなる。

瑠璃は今C級で、一応上級セカンドなわけだから、面倒面倒とは言ってもそこまで面倒なわけではない。ちなみに、瑠璃は実力的にはA級、それこそS級くらいあるんじゃないかと言われているが、魔物を倒した数が足りないため、まだC級なのである。

瑠璃がガーッと自動ドアを開けてセカンド事務所の中へ入ると、突き刺すような視線を感じた。

(・・・・・・人が多いな)

普段はそこまででもないこの事務所が人でごった返していた。

(ああ、そうか。今日はセカンドの免許試験があるんだ。しまったな、今日じゃなくて一日ずらすべきだったか・・・・・・・)

今日は免許更新試験も実施されるが、それと同時に新しくセカンドになる人のための免許試験も実施される日だったのである。

(知らない顔が多いな)

緊張でピリピリしてるところへ、可愛らしいワンピースの、どう見てもただの女子小学生が入ってきたらそれはもう注目するだろう。ましてこの事務所に初めて来るような何も知らない人たちばかりなので余計そうなのであろう。もちろん、免許更新に来ただけの勝手知ったる人たちは瑠璃の方をチラと見ただけでそこまで注目していなかった。

まあそんな状況だったわけだから─────

「おうおうおうおう、なんでこんなところに子供がいるんだ?」

「ここはガキの来るとこじゃねえんだぜ?帰りな!ガキ!」

こうして絡まれるのも当然だということである。

(こりゃまたコテコテの奴らが来たな・・・・・・)

「えーっと・・・・・・お兄ちゃんたち、だれ?」

「なんだ、俺らが誰だか知らねえのかよ!」

「まあまあ仕方ねえよ、コイツどう見たってお子ちゃまだからな」

絡んできた男2人は自分たちのことを指してこう言った。

「俺らは山本兄弟!!」

「戦えば天下に並ぶ者無し!人呼んで『竜殺しの山本兄弟』だぜ!!」

「・・・・・・竜殺したことあるの?」

「いや?なんかトカゲっぽい奴なら倒したけど・・・・・・」

「竜そのものを殺したことはねえな。竜ってドラゴンだろ?ドラゴンなんて流石の俺たちでも倒せるわけねえじゃねえか!人間の倒すもんじゃねえよあんなん!」

(それ倒した奴が目の前にいるんですけど・・・・・・)

瑠璃は心の中で苦笑した。

(いや、まあ俺が倒した奴もドラゴンの中ではそこまで強い方じゃなかったけど・・・・・・それにしても、『竜殺し』を名乗っときながら俺のことを知らないなんて、コイツら本当に大丈夫か?)

「とにかくよお、てめえみてえなガキが来ていいとこじゃねえんだよここは!!」

「ただでさえ俺たち試験の前で気が立ってんだ!!とっとと失せな!!」

(うーん弱ったなあ・・・・・・。こんなベタなチンピラにまさか絡まれるとは思わなかった。というか、何で誰も止めに来ないんだ?受付さんとかは・・・・・・)

瑠璃は受付を見た。この事務所内での騒動は見過ごせないはずだ・・・・・・。

「ふふふ・・・・・・」

受付は笑っていた。まさかの瑠璃が絡まれていることが面白かったらしい。

(おいおい受付、ちゃんと仕事しろよ・・・・・・)

瑠璃が心の中でちょっと呆れていると、男のうちの片割れが大声を出した。

「おいガキ!聞いてんのか!!」

「え?あ、ごめんごめん。聞いてなかった」

「てめえ・・・・・・!いい加減にしろ!!」

キレた自称竜殺し兄弟の片割れがついに手を上げ、瑠璃に殴りかかった。ちなみに、これは現実だと普通に犯罪なのでやめましょう。

男のパンチはセカンドを志望しているだけあって、なかなかに鋭く速かった。しかし────

「よいしょー」

瑠璃は軽々しく避けた。

「ん!?」

「おい弟!何やってんだよ!こんなガキに避けられるなんて─────」

と、男たちが瑠璃の方を見やると、そこには誰もいなかった。

「・・・・・・は?」

「え?どこいった?さっきまでここにいたよな?え、夢?」

男たちがキョロキョロと辺りを見渡していると、後ろから瑠璃の声が聞こえた。

「どこ見てるの?」

振り返ると、瑠璃いつの間にかその2人の後ろに来ていた。

「え!?」

「いつの間に後ろに!?」

瑠璃は笑顔で手を振って言った。

「私、忙しいからお兄ちゃんたちと遊んでられないんだ。だから他の人に遊んでもらってね。じゃあねー!」

(ふー、これで何とか乗り切ったかな?)

瑠璃は心の中で胸を撫で下ろすと、手続きをしに受付へ行くのであった。

・・・・・・・

(さーてと、手続きも済んだことだし、あとは呼ばれるまで待つとするかな・・・・・・)

瑠璃がとりあえず、受付の前にある待機用のソファに座ろうとすると、また声をかけられた。

「ねえ君?大丈夫?」

振り返ると、黒髪長髪の、優しそうな顔をした二十代くらいの女性がいた。屈んで、瑠璃と視線を合わせようとしてくれていることから見ても、優しい人物なのだということがわかる。

「えーっと・・・・・・?」

「ああごめんね!えと、さっき男の人2人に絡まれてたみたいだから心配になって・・・・・・」

「あー」

「大丈夫だった?かなり怖かったんじゃないかな・・・・・・?でも大丈夫だよ!あの2人はさっき私がボコボコにしといたからね!!」

「え・・・・・・?ボコボコ・・・・・・?」

彼女が指差した方を見ると、さっき絡んできた男2人が文字通りボコボコになって隅の方でしゅんとしていた。優しそうな見かけと違い。なかなか激しい性格のようである。

「・・・・・・」

「な、なに?」

彼女は瑠璃のことをじっと見つめた。瑠璃が困惑していると、彼女はぱっと顔をデレデレにして瑠璃の頭をめちゃくちゃに撫でくり始めた。

「こーんなかわいい子に意地悪するなんて、馬鹿な2人だよねー」

「う、うん・・・・・・?」

「それにしてもかわいいねー!飴ちゃんあげよっか!?」

「あ、ありがとう・・・・・・」

少し変わった奴だな・・・・・・と瑠璃は思った。

「ところで、君はこんなところで何してるの?親御さんが免許更新に来て、それについて来た・・・・・・とかなのかな?」

(違うけど・・・・・・)

「うん、そうだよ」

「じゃあ、待ってる間、私とここで話そっか?私は免許取得の試験に来てて、時間が来るまで待ってるんだー」

「へー、そうなんだ」

そういうことで、瑠璃はセカンド志望の女性と話をしながら待つことになった。

・・・・・・

瑠璃と女性はしばらくの間楽しく話した。というか、女性は瑠璃が何を話してもデレデレしていた。

そして先に瑠璃の時間が来た。セカンド事務所の担当職員が瑠璃を呼び出しに来た。

「ラピス様、時間です。C級セカンド免許更新試験の準備が整いました」

「ああ、ありがと」

女性はそのやり取りを見て困惑していた。

「え?C級?え?ラピスって・・・・・・え゛?」

瑠璃は待機用ベンチからぴょんと飛び降りると、彼女へ向かって小さく手を振りながら言った。

「じゃあね。また機会があれば会おうよ」

瑠璃はそう言って、担当職員の後をついていく。

(なんか、強キャラ幼女みたいなムーブしちゃったな・・・・・・)

瑠璃は歩きながらそう思った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...