姉から始まる魔法少女

大崎 狂花

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第九話 二重変身

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瑠璃、いや魔法少女ラピスは実際かなり有名人である。

前に姉と一緒にショッピングモールに行った時は幼女バージョンだったにも関わらず誰にも気づかれなかったわけだが、それは魔法少女の基本技能、認識阻害魔法があるからだ。魔法少女ラピスといえば、日本全国でも知らない者の方が少ないぐらいだろう。それくらい有名なのだ。
 
そう有名なのだ。世間一般の有名人、俳優やアイドルなんかと同じく有名セカンドである魔法少女ラピスもマスコミに追われることが度々あるのだ。

そして今その超有名人魔法少女ラピスはというと─────

「・・・・・・」

ポリバケツの中にいた。

ポリバケツ。ポリバケツだ。漫画やらアニメやらでゴミ置き場とかによく置いてあるあのポリバケツである。その中に今瑠璃は入っていた。変身状態で。

(いやポリバケツの中に隠れるとか、ギャグ漫画じゃないんだからさ・・・・・・)

なぜこんなことになっているのか。それは単純な理由だ。マスコミのしつこい取材が本当にしつこかったので、逃げて逃げて逃げてついにこんなところまで追い詰められてしまったのである。

(参ったなあ・・・・・・・)

前にショッピングモールにいた時の一般的幼女状態になれば認識阻害魔法も働くことは働くが、あれは実は魔法少女に変身している時の状態と変わりなく、服だけ変えているだけなので、認識阻害魔法の効きが弱いのだ。認識阻害は、容姿が変われば変わるほど効きやすくなる。容姿を全く変えずに服を変えただけでは効きが弱いのである。

だから一番いいのは変身解除して男に戻ることなんだが・・・・・・。

(もし特殊な能力で監視なんかされてて、男に戻るところとか見られたりしたらマズいよな・・・・・・・)

そう、そうなったらマズい。魔法少女の中身が男。世界で一番スキャンダルである。

(だからここは・・・・・・これしかない!!)

瑠璃はスカートのポケットから『お守り』を取り出した。瑠璃の姉に作ってもらった特別製のお守りである。

(こんなこともあろうかと作っておいてもらったんだ・・・・・・魔法少女に変身した俺をさらに変身させる『お守り』を!!)

そう、まさかの二重変身。それが瑠璃の出した答えであった。

「お守り・・・・・・発動!!」

瑠璃はポリバケツの中でお守りを掲げた。お守りはペカーっと光って早速効果を発揮する。

「おお・・・・・・?おおおおお・・・・・・!?」

瑠璃のサイズがどんどん大きくなり、体を丸めてもポリバケツの中には収まりきらなくなって、瑠璃は蓋を持ち上げポリバケツを倒して外へと転がり出た。

「さてと、これで多分大丈夫だと思うけど、しかし・・・・・・」

瑠璃はお守りで二重変身した自分の体を見た。さっき言ったように、マスコミ用の変身アイテムなので、必ず女子に変身するように設定してある。設定してあるのだが・・・・・・・。

(なんか、いつもの体と比べてかなり・・・・・・重いな)

重かった。主に胸の部分が。というか、胸だけでなくなんか全体的にムチムチしてて重い。

(なんか動きにくそうな体だなあ・・・・・・)

瑠璃は自分の体を隅々まで見てみる。

(いや胸でかすぎるな。戦闘の時とか邪魔になりそうだ・・・・・・)

服装も変身に合わせて変わっていて、瑠璃はワンショルダーのトップスにショートパンツを着ていた。幼女の時だったらまず着ないだろう服だ。

「さてと、これでおそらくマスコミの追跡も逃れられるだろう・・・・・・」

瑠璃はそう言ってポリバケツの中から抜け出そうとした・・・・・・のだが。

「あれ・・・・・・あれ?」

抜け出せなかった。

「うわ、抜け出せねえ!!抜け出せねえ!何でだ!?・・・・・・け、ケツか!?ケツが引っ掛かってんのか!?」

なんと、体がデカくなった影響でポリバケツから抜け出せなくなってしまったのである。下半身がポリバケツから抜け出せない。逆壁尻だ。

「ぬっ、抜けない!抜けねえ!!ぐ、クソッ!」

瑠璃がポリバケツから抜け出すのに四苦八苦していると・・・・・・

「あの、なにやってるんです?」

声をかけられた。

(やべえ!!変なとこを人に見つかっちゃったよ!!マスコミとかじゃありませんように・・・・・・)

瑠璃がややバツの悪い顔をしながら目を上げると、そこに立っていたのは中学校の制服を着た男子だった。

おそらく、近くの中学に通っているのであろう中学生男子は、下半身にポリバケツを嵌めて四苦八苦している瑠璃のことを怪訝そうに見ていた。

「何ですか?ヤドカリプレイでもしてるんですか?」

「ヤドカリプレイって何だよ!・・・・・・いや、決してそういう変態プレイをしてるわけじゃなくて・・・・・・怪しい者じゃないんだ。ただ、ちょっと事故があって嵌まって抜けなくなっちゃってさ・・・・・・」

「何にがあったらポリバケツに嵌まって抜けなくなることがあるんですか・・・・・・」

「ちょっとさ、抜け出すの手伝ってくれないかな?お礼はするからさ」

「はあ、まあいいですけど・・・・・・」

中学生の男子は、渋々といった感じながらも瑠璃が抜け出すのに力を貸してくれた。

「おっ、いけそうだな。抜けそうだ・・・・・・」

瑠璃の方はポリバケツの入り口に手をかけ抜け出そうとし、中学生の男の子は瑠璃の手を引っ張った。

「頑張ってくれ、多分も少しで抜ける」

瑠璃が男の子に声をかける。

「本当ですか?なら、もう少し力入れて引っ張りますよ。ちょっと痛いかもしれないけどいいですか?」

「ああ、大丈夫だよ。こう見えて、私の体はけっこう頑丈なんだ。グッとやってくれ」

「よし、じゃあいきますよ・・・・・・!フッ!」

さっきよりも力を入れて引っ張ると、瑠璃は勢いよく抜けた。そして、そのままその男の子の上に覆い被さるようになって、瑠璃が男の子を押し倒したみたいな格好になって転んでしまった。

「いてててて・・・・・・」

「大丈夫か!?頭とか打ったりしてないか!?」

「いえ、大丈夫です。それより抜けてよかったですね・・・・・・!?」

男の子は身を起こそうとし、はたと気がついた。自分の胸の上に、決して無視できない柔らかな重みが二つ乗っていることに。

「はっ、エッ、デッ・・・・・・!?」

「な、何だどうした?まさか本当に頭でも打ったのか・・・・・・!?」

「い、いや大丈夫です!大丈夫ですから!!あんまり僕の上で動かないでください!!顔も近づけないでください!!」

「そ、そうか・・・・・・?」

瑠璃は気づいていないみたいだが、瑠璃の今の体は思春期真っ盛りの中学生男子には刺激が強すぎるみたいだった。さっきまでは引き抜くのに夢中で気づいていなかったが、この女性はかなりの美人だった。彼は一気に緊張してきた。

「怪我してないなら良かった。・・・・・・・よっと、ほい」

瑠璃は自分の体を起こすとともに彼を抱くように助け起こした。彼の頭の中は近い近い!!となんかいい匂いがする!!で支配された。

「あ、ありがとうございます・・・・・・」

「いやいや、それはこっちのセリフだよ!手伝ってくれてありがとうな!」

「い、いえ、当然のことをしたまでですから・・・・・・」

「ありがとな少年!」

「まさかの少年呼び!?」

「どうした?」

「い、いえ何でもないです・・・・・・」

「さてと・・・・・・それじゃあ、お礼に・・・・・・そうだなあ、ご飯でも奢るよ」

「はあ、そうですか・・・・・・って奢る!?」

「ああ、奢るよ。・・・・・・確か、ここら辺にファミレスがあったから、そこでいいかい?」

「い、いや別に異論はないですけど・・・・・・え?奢るって・・・・・・ふ、2人でファミレスで食事するってことですか!?2人で!?」

「?そうだけど・・・・・・そうしなきゃ奢れないだろう?それとも、ご飯奢りは嫌か?」

「嫌じゃないです!行きましょう!」

「お、おお・・・・・・」

こうして、中学生の少年と2人で食事に行くことになったのだった。



「なんかソワソワしてないか?どうした?少年」

「い、いえ・・・・・・なんでもないです」

少年は女性と2人で食事に行くことなど初めてだったので、ソワソワしていた。

(しかし、それにしても胸が重いな・・・・・・なんか肩凝りそう)

瑠璃はそんな少年を前にして、1人自分の胸の重さを気にしていた。やっぱり、普段幼女状態なわけで、豊満な女性体型にはちっとやそっとでは慣れないようである。

(どうするかな・・・・・・)

瑠璃は色々考えを巡らせて、そしてある結論にたどり着いた。

(そうだ、乗せちゃえばいいんだ)

瑠璃はテーブルの上に胸を乗せた。

「はっ?乗っ・・・・・・!」

「どうした?少年」

「い、いえ、なんでもないです・・・・・・」

そうこうしているうちにお互いの頼んだ料理が来た。瑠璃はカルボナーラ、少年はチーズハンバーグ定食を頼んだ。

「あっ、チーズハンバーグ定食も美味しそうじゃん!一口ちょうだい!」

「えっ?」

「代わりに私のカルボナーラを一口あげよう。・・・・・・よし、特別にこの卵のとこをあげて進ぜよう」

「こ、こんなことが許されていいのか・・・・・!?」

女性と食事をシェアするという身に余る光栄に少年は恐れ慄いていた。

「少年はさ、なにか好きな漫画とかアニメとかあるのかい?ていうかそういうの見るタイプ?」

「見るタイプですね。えーと、最近見たアニメでいうと・・・・・・『ダメージ』っていうアニメがけっこう面白かったですね」

「あっ『ダメージ』!面白いよね!私も見た!いいよね、『ダメージ』。ヒロインの胸が大きくてね」

「えっ?」

「ん?」

「いや、なんでもないです」

・・・・・・

「今日はほんとにありがとな!少年!」

食事も終わって、手を振りながら去っていく瑠璃を見ながら、少年は呟いた。

「今日死ぬのか?僕・・・・・・」

この1日は少年の一生の思い出となったのだった。
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