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第26話 瑠璃とダンジョン②
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「良かったんですかね? あの人たち、もしかしたらあとで仕返しとかにくるかも‥‥‥」
コーヤが後ろを振り返り振り返りしながら心配そうそう言った。絡んできたあの連中にやり返されないか心配らしい。こうしてみると見た目に反してあまり鬼っぽくない。
「まあ大丈夫でしょ。あとで会社の人に言っておけばいいなんとかなるよ」
「ああ、そうですね」
「とりあえず‥‥‥」
瑠璃は辺りを見渡す。ダンジョンの中はぼんやりとほのかに明るい。暗いと、警戒されてエサとなるものが入ってこないかもしれないから、こうやって明るく見やすくなっているのだ。それに、入り口は洞窟っぽい感じだが、中はレンガ造りのしっかりとした空間になっている。
「これから気をつけて進まないとね。魔物とかけっこう徘徊してるし‥‥‥」
ざっと見てもそこそこの数の魔物がダンジョンの通路を徘徊している。こちらに気づいていないからまだ襲いかかってこないが、うっかりして大量の魔物の囲まれでもしたら大変なので、慎重に行動する必要があるだろう。
「魔物だけじゃない。罠とかもあるから気をつけて行動を────」
と、瑠璃が言い切るよりも早く。
コーヤはダンジョンの天井から垂れ下がっていた謎の紐を引いてしまっていた。
「言ったそばからあああああ!!」
「すいませ────ん!!」
瑠璃の頭の上に金だらいが落ちてきた。
「いたたたたた‥‥‥昭和のバラエティじゃないんだから」
「ほんとですね‥‥‥なんでダンジョンに金だらいが‥‥‥」
「あの、不用意に怪しげなものに触らないようにね」
「はい‥‥‥」
コーヤはしゅんとする。ちゃんと反省しているようなので大丈夫だろう。
「それにしても‥‥‥この金だらいはここに残るんだね」
「確かに。消えずに残るみたいですね」
「一応持って行こうか。盾になるかもしれない」
「なりますかねえ、盾に‥‥‥」
とりあえず、2人は慎重にダンジョンを進んでいく。コーヤは一応前衛なので前に出て、瑠璃は盾みたいに金だらいを構えながら進んでいく。
瑠璃とコーヤは襲いくるゴブリンやスライムなどの魔物を倒しながらズンズンと進んでいく。けっこう強めの魔物とかも出てきたが、無事に倒せた。
「いやー、会社の人から色々と聞いてたけど、コーヤくんやっぱりけっこう強いね?」
「そ、そうですかね‥‥‥いや、僕なんてまだまだですよ‥‥‥会社の人は僕のこと、なんておっしゃってたんですか?」
「期待の新人だって言ってたよ」
「それは‥‥‥また過分な評価ですね‥‥‥」
ダンジョンマスターを騙すために瑠璃は本気を出さずに、後ろでちょこちょこ氷の玉を当てるくらいの活躍しかできていないが、それでもそこそこの苦戦はしても割とサクサク進めた。
しかし、ダンジョンに入りながら何事もないなんてことはない。必ず何かが起こるのだ。いや、大変なことは気づかずにすでに起こっているものなのだ。気がついた時にはもう遅いのだ。
そう、瑠璃は気が付かなかったのだ。気がついた時には、瑠璃は────
「‥‥‥あれ?」
バニーガールになっていた。
「‥‥‥はっ!? ちょ、何やってんですか!? なんで急にバニーガールになってるんですか!?」
「え、わかんないなんでだろ‥‥‥なんか気がついたら急にバニーガールになってた‥‥‥」
「そんなことあります!?」
「多分なんかの罠を気づかずに踏んじゃったんだな‥‥‥すぐにバニーにならなかったところを見ると、遅効性のバニーガールに違いない」
「バニーに遅効も即効もないでしょ‥‥‥」
さて、このバニーガール、やっぱり思春期の男子にとっては少し刺激が強かったようで‥‥‥
「ちょっと、その‥‥‥早く着替えてくれませんか?」
と、思春期真っ只中のコーヤは顔を真っ赤にしながら言った。
「着替えかあ‥‥‥でも着替えてる最中に魔物とかに襲われるかもしれないし、別に着替えなくてもいいんじゃない?」
「い、いや着替えてください! そ、その‥‥‥とにかく着替えてもらわないと困ります!」
「そ、そう? まあそんなに言うなら‥‥‥」
何が困るのかはよくわからないが、勢いに押されて仕方なく瑠璃がどこか着替えられるところを探そうとしたその時。
「んっ?」
ズシン、ズシン‥‥‥とお腹の底に響いてくるような重々しい地響きがした。
「なんだ?」
瑠璃が地響きがした方へ振り向くと、そこには見るからに強そうな巨大なオークがいた。ただのオークではない。オークキングというオークの上位種だ。
「オークキングか‥‥‥」
「オークキング!? やばいじゃないですか!! 早くどっかに隠れましょう!!」
「ああ、そうだね」
オークキングなら瑠璃が本気を出せば倒せるとは思うが、ダンジョンマスターを警戒させてしまうので、ここは逃げておく。
瑠璃とコーヤはそこら辺にどこか隠れそうなところはないか探す、するとダンジョンの壁に扉があるのを見つけた。
「あっ! あんなところに扉があります! あそこに隠れましょう! どこに通じてるかわかんないですけど‥‥‥」
「でも背に腹は変えられない。あそこに隠れよう」
「そうですね!」
2人はとりあえず、その謎の扉を開けた。
「これは‥‥‥」
「せまっ」
中はメチャクチャに狭いスペースだった。何も入っていない。ただ狭いだけのスペースだ。例えるなら、学校の掃除用具入れぐらい。それくらいの狭さの空間だった。
「何もないなら好都合だね。ここに隠れよう」
「2人入れますかねここに‥‥‥」
ぎゅうぎゅう詰めになったものの、なんとかして2人その狭い空間に入って扉を閉めた。2人で息を潜めて、地響きが通り過ぎるのを待とうとするが‥‥‥
「あ、あの、アオさん‥‥‥もう少し離れて欲しいんですけど‥‥‥」
「いや、こっちもぎゅうぎゅうだし、こうこれ以上身動きできないよ‥‥‥狭いと思うけど、我慢してね」
「い、いや狭いとかではなくてですね、その‥‥‥」
この空間は狭く、瑠璃とコーヤは完全に密着してしまっている。だから、要は、瑠璃の胸がコーヤの胸の辺りに当たってしまっているわけで‥‥‥
「‥‥‥あれ? コーヤくんなんか鼻血出てない?」
「い、いや大丈夫です。出てません‥‥‥」
「いや思いっきり出てるよね!? 思いっきり!」
「いや、これは違います! これは鼻血じゃなくて、その‥‥‥マヨネーズですよ!」
「それを言うならケチャップでしょ!? マヨネーズとか全然違ってんじゃん! というか、ケチャップにしても嘘が下手すぎだし‥‥‥ほんとに大丈夫?」
「い、いや、大丈夫です‥‥‥」
と、コーヤの顔を見つめていた瑠璃があることに気がついた。
「あれ? なんかコーヤくんの角、ちょっとおっきくなってない?」
コーヤの角が先ほどまでよりも大きくそそり立っているのに気がついたのだ。
「それに見た感じさっきまでよりも固くなってるような‥‥‥なんか黒光りしてる? 触ってもいい?」
「いや、触るのはちょっと遠慮していただけると‥‥‥暴発しちゃうかもしれないので‥‥‥」
「‥‥‥何が?」
そうこうしているうちにオークキングは去っていった。無事にやり過ごせたようである。とりあえず、その空間を利用して瑠璃は着替え、元の服装に戻ってからまた進んでいった。
途中で魔物を倒したり、強力な魔物はやり過ごしたりしながら奥へ奥へと進んでいく。
そして、ついに────
「なんかめちゃくちゃ立派な扉がありますね‥‥‥」
「ああ、あれがダンジョンマスターのいる空間に繋がってる扉だね」
「あれがですか!? ということは、あの奥に‥‥‥」
「うん。ダンジョンマスターがいるってことだね」
「ダンジョンマスターですか‥‥‥今更なんですけど、僕たち2人でマスターと戦ってほんとに大丈夫なんですかね? 僕、マスターと戦うなんて初めてですよ‥‥‥」
「まあ、大丈夫だよ。ここのダンジョンマスターは敵わないからって上級のセカンドが来たら隠れてやり過ごそうとするような奴だし、そんなに大した奴じゃないんだよ」
「そうなんですか。それなら、まあ大丈夫なんですかね‥‥‥?」
「それに、緊急脱出用のエスケープカーは持ってるんでしょ? なら大丈夫だよ」
緊急脱出用のエスケープカーとはある能力者が開発したもので、その名の通り緊急脱出用の車だ。普段はミニカーくらいのサイズだが、持ち主が必要と判断した時、必要と判断しなくても持ち主が命の危機にあると車自身が判断した場合には、普通の自動車ぐらいの大きさになって持ち主及びその仲間をダンジョンの外まで運んでくれるのだ。
で、それがあるなら万が一にも大丈夫だろうということで瑠璃とコーヤの2人はそのダンジョンマスターの間に入ろうとした。
だが
「どけよ」
2人はぐいっと強引に押し除けられてしまった。
「ちょっ‥‥‥!」
「ん? お前らは‥‥‥」
見ると、ダンジョンの入り口で絡んできた例のチンピラセカンドたちだった。
「へへっ。悪いけど俺らが先に行かせてもらうぜ?」
「お前らはそこで指咥えて見てな!」
はははは!と高笑いしながら男たちは扉を押し開けてダンジョンマスターの間へと入っていった。
「‥‥‥ちょ、アオさん! 先に行かれちゃいましたよ!? いいんですか!?」
「まあいいんじゃない? あいつらがマスター倒してくれるっていうんならそれに越したことはないし‥‥‥」
もともと瑠璃の目的はマスターを倒すことだ。手柄をあげることではない。だから、あのチンピラたちがマスターを倒してくれるっていうのならそれでも別にいいと思ったのだが‥‥‥
十数秒ののち、マスターの間の立派な扉が吹き飛ばされて普通自動車がダンジョンの入り口へ一目散に向かっていった。窓ガラスを透かして中を見ると、ぐったりした例のチンピラたちが乗っていた。
「はやっ。え‥‥‥もうやられたんですか!?」
「どうやらそうみたいだね。まあ、もともとあいつらにそこまで期待はしてなかったわけなんだけど‥‥‥それにしても早いな。ひょっとしたら予想よりけっこう強めかもしれないな‥‥‥」
「な‥‥‥やばいじゃないですか! 僕たちも早く逃げないと‥‥‥!」
「んー、そうしたいところなんだけどさ。もう手遅れみたいだよ」
「へ?」
「もう引きずり込まれちゃってるみたい」
瑠璃に言われて、コーヤも気がついた。自分たちがどこともしれない空間の中にいることに。
上を見ると、シャンデリアがいくつかぶら下がっていて、その空間を照らそうとしている。しかし、そのシャンデリアの灯りがその空間を包む朦朧とした暗闇を照らすことはない。その暗闇は濃く、どんよりとその空間に溜まっている。
その闇が形をなして滲み出したように。ある一点から足音もなくぬっと出てきた者がいた。
その者は黒いゴスロリ風のドレスを着て、紫色の目に紫の長い髪をツインテールにした少女のようなもの。
ダンジョンマスターとの戦いが始まる。
コーヤが後ろを振り返り振り返りしながら心配そうそう言った。絡んできたあの連中にやり返されないか心配らしい。こうしてみると見た目に反してあまり鬼っぽくない。
「まあ大丈夫でしょ。あとで会社の人に言っておけばいいなんとかなるよ」
「ああ、そうですね」
「とりあえず‥‥‥」
瑠璃は辺りを見渡す。ダンジョンの中はぼんやりとほのかに明るい。暗いと、警戒されてエサとなるものが入ってこないかもしれないから、こうやって明るく見やすくなっているのだ。それに、入り口は洞窟っぽい感じだが、中はレンガ造りのしっかりとした空間になっている。
「これから気をつけて進まないとね。魔物とかけっこう徘徊してるし‥‥‥」
ざっと見てもそこそこの数の魔物がダンジョンの通路を徘徊している。こちらに気づいていないからまだ襲いかかってこないが、うっかりして大量の魔物の囲まれでもしたら大変なので、慎重に行動する必要があるだろう。
「魔物だけじゃない。罠とかもあるから気をつけて行動を────」
と、瑠璃が言い切るよりも早く。
コーヤはダンジョンの天井から垂れ下がっていた謎の紐を引いてしまっていた。
「言ったそばからあああああ!!」
「すいませ────ん!!」
瑠璃の頭の上に金だらいが落ちてきた。
「いたたたたた‥‥‥昭和のバラエティじゃないんだから」
「ほんとですね‥‥‥なんでダンジョンに金だらいが‥‥‥」
「あの、不用意に怪しげなものに触らないようにね」
「はい‥‥‥」
コーヤはしゅんとする。ちゃんと反省しているようなので大丈夫だろう。
「それにしても‥‥‥この金だらいはここに残るんだね」
「確かに。消えずに残るみたいですね」
「一応持って行こうか。盾になるかもしれない」
「なりますかねえ、盾に‥‥‥」
とりあえず、2人は慎重にダンジョンを進んでいく。コーヤは一応前衛なので前に出て、瑠璃は盾みたいに金だらいを構えながら進んでいく。
瑠璃とコーヤは襲いくるゴブリンやスライムなどの魔物を倒しながらズンズンと進んでいく。けっこう強めの魔物とかも出てきたが、無事に倒せた。
「いやー、会社の人から色々と聞いてたけど、コーヤくんやっぱりけっこう強いね?」
「そ、そうですかね‥‥‥いや、僕なんてまだまだですよ‥‥‥会社の人は僕のこと、なんておっしゃってたんですか?」
「期待の新人だって言ってたよ」
「それは‥‥‥また過分な評価ですね‥‥‥」
ダンジョンマスターを騙すために瑠璃は本気を出さずに、後ろでちょこちょこ氷の玉を当てるくらいの活躍しかできていないが、それでもそこそこの苦戦はしても割とサクサク進めた。
しかし、ダンジョンに入りながら何事もないなんてことはない。必ず何かが起こるのだ。いや、大変なことは気づかずにすでに起こっているものなのだ。気がついた時にはもう遅いのだ。
そう、瑠璃は気が付かなかったのだ。気がついた時には、瑠璃は────
「‥‥‥あれ?」
バニーガールになっていた。
「‥‥‥はっ!? ちょ、何やってんですか!? なんで急にバニーガールになってるんですか!?」
「え、わかんないなんでだろ‥‥‥なんか気がついたら急にバニーガールになってた‥‥‥」
「そんなことあります!?」
「多分なんかの罠を気づかずに踏んじゃったんだな‥‥‥すぐにバニーにならなかったところを見ると、遅効性のバニーガールに違いない」
「バニーに遅効も即効もないでしょ‥‥‥」
さて、このバニーガール、やっぱり思春期の男子にとっては少し刺激が強かったようで‥‥‥
「ちょっと、その‥‥‥早く着替えてくれませんか?」
と、思春期真っ只中のコーヤは顔を真っ赤にしながら言った。
「着替えかあ‥‥‥でも着替えてる最中に魔物とかに襲われるかもしれないし、別に着替えなくてもいいんじゃない?」
「い、いや着替えてください! そ、その‥‥‥とにかく着替えてもらわないと困ります!」
「そ、そう? まあそんなに言うなら‥‥‥」
何が困るのかはよくわからないが、勢いに押されて仕方なく瑠璃がどこか着替えられるところを探そうとしたその時。
「んっ?」
ズシン、ズシン‥‥‥とお腹の底に響いてくるような重々しい地響きがした。
「なんだ?」
瑠璃が地響きがした方へ振り向くと、そこには見るからに強そうな巨大なオークがいた。ただのオークではない。オークキングというオークの上位種だ。
「オークキングか‥‥‥」
「オークキング!? やばいじゃないですか!! 早くどっかに隠れましょう!!」
「ああ、そうだね」
オークキングなら瑠璃が本気を出せば倒せるとは思うが、ダンジョンマスターを警戒させてしまうので、ここは逃げておく。
瑠璃とコーヤはそこら辺にどこか隠れそうなところはないか探す、するとダンジョンの壁に扉があるのを見つけた。
「あっ! あんなところに扉があります! あそこに隠れましょう! どこに通じてるかわかんないですけど‥‥‥」
「でも背に腹は変えられない。あそこに隠れよう」
「そうですね!」
2人はとりあえず、その謎の扉を開けた。
「これは‥‥‥」
「せまっ」
中はメチャクチャに狭いスペースだった。何も入っていない。ただ狭いだけのスペースだ。例えるなら、学校の掃除用具入れぐらい。それくらいの狭さの空間だった。
「何もないなら好都合だね。ここに隠れよう」
「2人入れますかねここに‥‥‥」
ぎゅうぎゅう詰めになったものの、なんとかして2人その狭い空間に入って扉を閉めた。2人で息を潜めて、地響きが通り過ぎるのを待とうとするが‥‥‥
「あ、あの、アオさん‥‥‥もう少し離れて欲しいんですけど‥‥‥」
「いや、こっちもぎゅうぎゅうだし、こうこれ以上身動きできないよ‥‥‥狭いと思うけど、我慢してね」
「い、いや狭いとかではなくてですね、その‥‥‥」
この空間は狭く、瑠璃とコーヤは完全に密着してしまっている。だから、要は、瑠璃の胸がコーヤの胸の辺りに当たってしまっているわけで‥‥‥
「‥‥‥あれ? コーヤくんなんか鼻血出てない?」
「い、いや大丈夫です。出てません‥‥‥」
「いや思いっきり出てるよね!? 思いっきり!」
「いや、これは違います! これは鼻血じゃなくて、その‥‥‥マヨネーズですよ!」
「それを言うならケチャップでしょ!? マヨネーズとか全然違ってんじゃん! というか、ケチャップにしても嘘が下手すぎだし‥‥‥ほんとに大丈夫?」
「い、いや、大丈夫です‥‥‥」
と、コーヤの顔を見つめていた瑠璃があることに気がついた。
「あれ? なんかコーヤくんの角、ちょっとおっきくなってない?」
コーヤの角が先ほどまでよりも大きくそそり立っているのに気がついたのだ。
「それに見た感じさっきまでよりも固くなってるような‥‥‥なんか黒光りしてる? 触ってもいい?」
「いや、触るのはちょっと遠慮していただけると‥‥‥暴発しちゃうかもしれないので‥‥‥」
「‥‥‥何が?」
そうこうしているうちにオークキングは去っていった。無事にやり過ごせたようである。とりあえず、その空間を利用して瑠璃は着替え、元の服装に戻ってからまた進んでいった。
途中で魔物を倒したり、強力な魔物はやり過ごしたりしながら奥へ奥へと進んでいく。
そして、ついに────
「なんかめちゃくちゃ立派な扉がありますね‥‥‥」
「ああ、あれがダンジョンマスターのいる空間に繋がってる扉だね」
「あれがですか!? ということは、あの奥に‥‥‥」
「うん。ダンジョンマスターがいるってことだね」
「ダンジョンマスターですか‥‥‥今更なんですけど、僕たち2人でマスターと戦ってほんとに大丈夫なんですかね? 僕、マスターと戦うなんて初めてですよ‥‥‥」
「まあ、大丈夫だよ。ここのダンジョンマスターは敵わないからって上級のセカンドが来たら隠れてやり過ごそうとするような奴だし、そんなに大した奴じゃないんだよ」
「そうなんですか。それなら、まあ大丈夫なんですかね‥‥‥?」
「それに、緊急脱出用のエスケープカーは持ってるんでしょ? なら大丈夫だよ」
緊急脱出用のエスケープカーとはある能力者が開発したもので、その名の通り緊急脱出用の車だ。普段はミニカーくらいのサイズだが、持ち主が必要と判断した時、必要と判断しなくても持ち主が命の危機にあると車自身が判断した場合には、普通の自動車ぐらいの大きさになって持ち主及びその仲間をダンジョンの外まで運んでくれるのだ。
で、それがあるなら万が一にも大丈夫だろうということで瑠璃とコーヤの2人はそのダンジョンマスターの間に入ろうとした。
だが
「どけよ」
2人はぐいっと強引に押し除けられてしまった。
「ちょっ‥‥‥!」
「ん? お前らは‥‥‥」
見ると、ダンジョンの入り口で絡んできた例のチンピラセカンドたちだった。
「へへっ。悪いけど俺らが先に行かせてもらうぜ?」
「お前らはそこで指咥えて見てな!」
はははは!と高笑いしながら男たちは扉を押し開けてダンジョンマスターの間へと入っていった。
「‥‥‥ちょ、アオさん! 先に行かれちゃいましたよ!? いいんですか!?」
「まあいいんじゃない? あいつらがマスター倒してくれるっていうんならそれに越したことはないし‥‥‥」
もともと瑠璃の目的はマスターを倒すことだ。手柄をあげることではない。だから、あのチンピラたちがマスターを倒してくれるっていうのならそれでも別にいいと思ったのだが‥‥‥
十数秒ののち、マスターの間の立派な扉が吹き飛ばされて普通自動車がダンジョンの入り口へ一目散に向かっていった。窓ガラスを透かして中を見ると、ぐったりした例のチンピラたちが乗っていた。
「はやっ。え‥‥‥もうやられたんですか!?」
「どうやらそうみたいだね。まあ、もともとあいつらにそこまで期待はしてなかったわけなんだけど‥‥‥それにしても早いな。ひょっとしたら予想よりけっこう強めかもしれないな‥‥‥」
「な‥‥‥やばいじゃないですか! 僕たちも早く逃げないと‥‥‥!」
「んー、そうしたいところなんだけどさ。もう手遅れみたいだよ」
「へ?」
「もう引きずり込まれちゃってるみたい」
瑠璃に言われて、コーヤも気がついた。自分たちがどこともしれない空間の中にいることに。
上を見ると、シャンデリアがいくつかぶら下がっていて、その空間を照らそうとしている。しかし、そのシャンデリアの灯りがその空間を包む朦朧とした暗闇を照らすことはない。その暗闇は濃く、どんよりとその空間に溜まっている。
その闇が形をなして滲み出したように。ある一点から足音もなくぬっと出てきた者がいた。
その者は黒いゴスロリ風のドレスを着て、紫色の目に紫の長い髪をツインテールにした少女のようなもの。
ダンジョンマスターとの戦いが始まる。
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