【完結】いいなりなのはキスのせい

北川晶

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14 いったい、これはなんなのだ?  藤代side

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 頭の上に雷がガガーンと落ちたかのような、穂高との衝撃的な出会いから、三日後。
 予定通り、俺は穂高と一年A組で再会した。
「久しぶり」はおかしいか。「また会ったね」とか「同じクラスだったね」とかかな、そんな第一声を考えていたのだけど。向こうから歩いてきた穂高に、俺はちょっと手を上げて挨拶しようとした…ら。
 素通りされたのだ。
 俺は、血の気が下がるというものをはじめて体感した。
 え? 忘れられている?
 俺と二度目に会った人物は大概、親友面して俺のそばから離れなくなるものだ。
 女の子なら、彼女面。
 そうでなくても、とにかく向こうから話しかけてくるものだったし。だから。

 無視とか、あり得ない。

 俺は、俺を素通りして入学式が行われる講堂へ向かっていく彼の後ろ姿を振り返って見た。
 頭に浮かぶのは、あり得ないという言葉ばかり。
 新入生挨拶で、なにをしゃべったのかも覚えていなかった。
 まぁ、失敗とかは許せない質なので、暗記した言葉を流麗にしゃべったとは思うけど。
 そんなことよりも、穂高のことだよっ。
 俺は彼のことが頭から離れなくなった。
 穂高に忘れられていたという事実が、本当にショックだったのだ。

 あれ? もしかしたら、自分のあの特別な能力はあの町限定だったのだろうか?
 そんなふうに思ったりもしたが。
 穂高以外の人間はいつものように寄ってきた。
 女子も男子も、俺の気を引きたがって、聞いてもいないのに自己紹介をダダしゃべり、俺の情報を聞き出そうとする。
 うん、いつもどおりの反応。俺にとっては、この状況が普通だった。

 入学式の翌日からは、先輩方が部活の勧誘に来たり、さっそく告白の呼び出しもあったり。
 マイカー出勤の女性教師が『送り迎えをしてあげてもいいわよ』とこっそり耳打ちしてきたこともあったな。
 そんなことも、前の町であった現象と同じ。
 みんな、すでに俺のとりこだ。いわゆる、いいなり。従属。

 どうやら、力がなくなったわけではないらしい。
 でも。ならば、なぜ穂高は俺を見ないのか?
 入学式から一週間経っても、穂高だけが俺の机の周りに来なかった。俺に話しかけてこなかった。俺のことを見なかった。
 授業で教室を移動するとき、一緒に行こうと俺から声をかけてみたけど、断られた。
 よっぽどの用事があっても、俺が頼んだら言うことを聞いてくれる者がほとんど。それが一般の反応だった。
 なのに、穂高は特に用がないようでも、俺の誘いを断った。

 おいおい、ぶっちゃけ、俺は頼みごとを断られたことなんかないんだ。
 いったい、これはなんなのだ?
 そこで、ようやく俺は気づいた。

 穂高が特別なのだと。

 彼は、自分の能力に惑わされない唯一の人間なのではないか?
 穂高が俺を目にしたとき、そこに映るのは、きっと真の自分の姿なのだ。
 みんながちやほやする、なにかのフィルターがかかった俺ではなく。能力に影響されていない、真の自分だ。
 だから、俺は穂高に俺を見てほしかった。
 穂高を俺のそばに置きたかった。
 穂高のすべてを知りたかった。

 でも、今までの常識が通用しない穂高は、俺が話しかける前に逃げてしまう。
 声をかける隙がまったくない。
 だけど、そんな穂高にがっかりし。彼が他者とは違うと確認できるたびに、興奮するほど嬉しかった。

 とはいえ、どうやったら穂高と友達になれるのだろう。
 俺は、こんなことで悩んだことは一度もない。
 あれ? そもそも友達ってどうやって作るの?

 友達の作り方がわからなくて、俺は途方に暮れた。

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