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21 未練があるのだろう 穂高side
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教室の入り口で手を振っているのは、元園芸部の須藤先輩だった。
「廊下を歩いていたら、教室に穂高くんがいるのが見えたから、なんか懐かしくなっちゃってぇ」
笑顔で近寄ってくる須藤先輩を見て、僕は少しヒヤリとした。
藤代は、とても嫉妬深い。
僕が他者に目を向けるのをひどく嫌がるし。僕が他者と…教師ですら、話しているところを見かけると、途端に機嫌が悪くなって、周りの空気を凍らせる。迷惑。
それゆえ、僕と須藤先輩が話しているところなんかを見たら、藤代は荒れるだろうなと想像がついた。
それでなくても、もうそろそろ藤代がこの教室にやってくる。たぶん。
あ、僕が生徒会室に行っちゃったほうが波風が立たないかもしれない。
話を早く切り上げて、そうしよう。
でもでも、藤代の機嫌を伺って、僕が行動に制限をかけるのは、なんか違うような気がする。なんか、イラッ? なんか、僕がそこまで気を使うことなくね? みたいな。
「須藤先輩、こんにちは」
まぁ、一抹の不安を飲みこんで。僕は須藤先輩に笑みを投げた。
あ、学園内で藤代以外の人物と話すのは久々かも。
ちょっと気持ちが浮き立って、友達感覚に飢えているなと自分で感じた。
「ついさっき、穂高くんが花壇の水やりをしていたの、見たよ。私もまた園芸部に入りたくなっちゃってぇ」
「先輩、来年受験でしょ。余裕ですね」
「ほらぁ、息抜きも必要でしょ。緑は目にも優しいし」
藤代にキスされて、いいなりのふりをはじめたとき。
僕の退部届は藤代に受理された。それと同時に藤代も退部し。藤代目当てだった他の部員も次々に抜けた。
結果、園芸部は自然消滅したのだ。
しかし。その後、通りがかった花壇を見ると、水浸しだったり、乾ききっていたりする。その荒れた状態を見兼ねて、僕は現在花壇の世話をしている用務員さんと話をした。
彼はあまり庭仕事に精通していなくて、他の仕事が忙しくて手が回らないと言う。
いわゆる、花壇の世話はテキトーってやつ。そんなんでいいのかと思いつつ。
長期休暇のときには、樹木や芝生の手入れ込みで業者が入るらしい。でもそれまでの間はそれほど手をかけられない。花壇の世話は毎日のことなのに、なにかと忙しい用務員さんは花壇を手厚く見ることはできないんだって。
それで、僕が花壇の手入れを引き受けることにしたのだ。
せめて自分が花壇に植え付けたものくらいは、責任を持って見てあげたいと思って。
藤代は、僕が水やりをするのを良い顔しなかった。自分と一緒にいる時間が減るとかなんとか言って。
でも『自分の思惑のみで退部する藤代や他の部員たちには呆れてしまう』とか『園芸部がなくなったのは藤代のせいでもある。もう少し責任を感じろ。大体、花の命をなんだと思っているのだ』とか言って責めたら、渋々引き下がってくれたよ。
うぜぇ。
それはともかく。今日も課題に取り組む前に花壇の水まきを済ませていたというわけだ。
「とてもありがたいお話ですが、園芸部はもうないんです。水まきはボランティアで」
「そうなんだぁ…残念ね」
須藤先輩の、間延びする言い方に僕は引っかかってしまう。
ボランティアだから、自分も参加するって言っても良いと思うが、そう言うこともなく。
意味のない話を引き延ばして教室に残りたがっているように感じてしまった。
須藤先輩は、園芸部ではなく、おそらく藤代に未練があるのだろう。彼女の仕草を見て彼女の想いをくみ取った。
つい最近まで、彼女の恋心を微笑ましく感じていたけど。
でも、今はなぜか。嫌だなって思ってしまった。
「廊下を歩いていたら、教室に穂高くんがいるのが見えたから、なんか懐かしくなっちゃってぇ」
笑顔で近寄ってくる須藤先輩を見て、僕は少しヒヤリとした。
藤代は、とても嫉妬深い。
僕が他者に目を向けるのをひどく嫌がるし。僕が他者と…教師ですら、話しているところを見かけると、途端に機嫌が悪くなって、周りの空気を凍らせる。迷惑。
それゆえ、僕と須藤先輩が話しているところなんかを見たら、藤代は荒れるだろうなと想像がついた。
それでなくても、もうそろそろ藤代がこの教室にやってくる。たぶん。
あ、僕が生徒会室に行っちゃったほうが波風が立たないかもしれない。
話を早く切り上げて、そうしよう。
でもでも、藤代の機嫌を伺って、僕が行動に制限をかけるのは、なんか違うような気がする。なんか、イラッ? なんか、僕がそこまで気を使うことなくね? みたいな。
「須藤先輩、こんにちは」
まぁ、一抹の不安を飲みこんで。僕は須藤先輩に笑みを投げた。
あ、学園内で藤代以外の人物と話すのは久々かも。
ちょっと気持ちが浮き立って、友達感覚に飢えているなと自分で感じた。
「ついさっき、穂高くんが花壇の水やりをしていたの、見たよ。私もまた園芸部に入りたくなっちゃってぇ」
「先輩、来年受験でしょ。余裕ですね」
「ほらぁ、息抜きも必要でしょ。緑は目にも優しいし」
藤代にキスされて、いいなりのふりをはじめたとき。
僕の退部届は藤代に受理された。それと同時に藤代も退部し。藤代目当てだった他の部員も次々に抜けた。
結果、園芸部は自然消滅したのだ。
しかし。その後、通りがかった花壇を見ると、水浸しだったり、乾ききっていたりする。その荒れた状態を見兼ねて、僕は現在花壇の世話をしている用務員さんと話をした。
彼はあまり庭仕事に精通していなくて、他の仕事が忙しくて手が回らないと言う。
いわゆる、花壇の世話はテキトーってやつ。そんなんでいいのかと思いつつ。
長期休暇のときには、樹木や芝生の手入れ込みで業者が入るらしい。でもそれまでの間はそれほど手をかけられない。花壇の世話は毎日のことなのに、なにかと忙しい用務員さんは花壇を手厚く見ることはできないんだって。
それで、僕が花壇の手入れを引き受けることにしたのだ。
せめて自分が花壇に植え付けたものくらいは、責任を持って見てあげたいと思って。
藤代は、僕が水やりをするのを良い顔しなかった。自分と一緒にいる時間が減るとかなんとか言って。
でも『自分の思惑のみで退部する藤代や他の部員たちには呆れてしまう』とか『園芸部がなくなったのは藤代のせいでもある。もう少し責任を感じろ。大体、花の命をなんだと思っているのだ』とか言って責めたら、渋々引き下がってくれたよ。
うぜぇ。
それはともかく。今日も課題に取り組む前に花壇の水まきを済ませていたというわけだ。
「とてもありがたいお話ですが、園芸部はもうないんです。水まきはボランティアで」
「そうなんだぁ…残念ね」
須藤先輩の、間延びする言い方に僕は引っかかってしまう。
ボランティアだから、自分も参加するって言っても良いと思うが、そう言うこともなく。
意味のない話を引き延ばして教室に残りたがっているように感じてしまった。
須藤先輩は、園芸部ではなく、おそらく藤代に未練があるのだろう。彼女の仕草を見て彼女の想いをくみ取った。
つい最近まで、彼女の恋心を微笑ましく感じていたけど。
でも、今はなぜか。嫌だなって思ってしまった。
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