幽モブ アダルトルート(完結)

北川晶

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2-後日談 ラブラブ・スイート・ハッピッピ(イアンside)

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     ◆後日談 ラブラブ・スイート・ハッピッピ

 結婚披露パーティーを終え。肩肘の張る盛装を、自室で脱いだ。
 ラヴェルに、身の回りを整えてもらい、寝室に入ると。
 ベッドの上で、寝間着のクロウが。すでに寝息を立てていた。

 今日は、結婚式で。分刻みのスケジュールだったから。
 クロウもさすがに疲れてしまったのだな?

 我は、クロウの寝顔を見ながら。今日のことを考える。
 ミルク色の、光沢のある寝間着に身を包むクロウも、もちろん可愛いが。

 今日の婚礼衣装は、格別であった。

 我とおそろいの衣装は。クロウが華奢だから。対であっても、同じものには見えない。
 我が着ると、武骨な軍人みたいだが。
 クロウは、本当に真白き精霊のごとく。
 聖人? 天使? もう、とにかくピュアで清楚で気高い雰囲気が、際立っていた。

 シロツメ草をかたどる、銀の髪飾りが。黒髪に優しく寄り添って。
 白皙のかんばせを、頬と唇の桃色が彩り。あぁ、もう、可愛い。

 クロウはよく、ぼくには黒しか似合わない。いや、無難なのです。なんて、言うけれど。
 白は、クロウの清廉な印象に合っているし。紫もボルドー色も、深い青みも、どの色の衣装も、いつも似合っていると思うのだがな?
 まぁ、クロウは。自分の容姿を、過小評価するところがあるから。
 衣装選びは、クロウ大好きなラヴェルに任せておけば。大丈夫だろう。

 今日の寝間着も、ナイスチョイスである。

 そんなことを考えていたら。クロウが、うう、と唸った。
 なにやら、夢を見て、うなされているみたいだ。

 こういうときは、どうしたらいいのか。と、悩んでいると。
 クロウの目尻から、涙が伝った。
 我は、胸が苦しくなって。すぐにもクロウの肩に手をかけた。
 名を、小さく呼びかけるが。それでも、なかなか起きなくて。
 とうとう、クロウは。大粒の涙を、ボロボロと流し始めたのだ。そして、イアン様…と、悲しげにつぶやく。

 こ、これは。由々しき事態である。

 そもそも、クロウは。あまり泣かない。
 この頃は、涙を浮かべても、うれし泣きとか。致したときの、感極まったやつとか。そういうものが多かったけれど。
 このような、悲しげな涙は。あれだ。
 クロウが、自分の仕立てた衣装が、死に装束だと。バミネにバラされたとき。
 おそらくクロウの心をざっくりとえぐった、あの件以来、だと思う。

 今、クロウは、そのような悲しい夢を見ているのだろうか?
 そう思うと。
 ひとりで悲しむ彼を見ていると。我も悲しくなってくる。

 我は、この夢からクロウを救出するべく。彼を大きく揺さぶって、強制的に起こした。
 もう、一刻も早く。夢から覚まさせたい。

 それで、ようやく目を開けたクロウは。
 まるで。何年も出会えなかった恋人に再会したような、夢か幻を見るかのような、そんなびっくり顔で、我をみつめた。

 どうして、そのような顔をするのだ? 我は、ずっとおまえのそばにいたというのに。

「クロウ、大丈夫か? すごくうなされていたぞ?」
 信じられない、という顔で。クロウは、我の手を握り。その感触を、我の存在を、しっかり確かめてから。思い切り抱きついてきた。

「イアン様っ」

 ギュウギュウと、しがみつくクロウは。細かく震えていて。
 そんな彼が、我は、はかなげに思えた。
 今にも消えてなくなりそうな、クロウを。我につなぎとめるかのように。
 我も、強く、きつく、クロウを抱き締める。

「夢? 夢だったの? 夢なの? 夢じゃないの?」
 混乱しているのか、クロウはうわごとのようにつぶやく。

「よくわからぬが。我とクロウが結婚したのは、夢ではないぞ?」
 ここが現実だと、知らしめるように。彼の背中を撫でると。
 クロウはホッと息をついた。
 もしかしたら、王妃といううつわを重くとらえ、不安になってしまったのかもしれないな?

「悪い夢を見たのか? 名実ともに王妃となって、不安な気持ちがあふれたのかもしれないな? 今日はいろいろあって、忙しかったし。でも、案ずることはない。我がおまえのそばにいて、しっかりと支えてやるからな? だから、おまえも。我をちょっとだけ支えてくれ」
 よしよしと、安心させるように、そう感じられるように。クロウの背中をテンテンする。
 あぁ、背筋も、まだ震えているな? 可哀想に。

「はい。支えます。いつも、いつまでも…陛下の。イアン様の、そばに、いるっ。、絶対に、離れないぃ」
 クロウは。もう、と言った。
 夢の中で、我とはぐれて、迷子になってしまったのだろうか?

「イアン様、大好き。ぼくを、しっかりと抱いて。離さないで。イアン様だけのものにしてっ」
 いつも。クロウは、おとなしやかで。どちらかと言えば、冷静で、あまり感情的にはならないタイプなのだが。
 このように、熱くかき口説くどかれてしまうと。我の心にも、火が灯る。
 燃え盛って、マグマが沸き立ってくる。

「クロウ、愛している。誰にもやるものかっ」
 自然な流れで。我はクロウとくちづけた。
 すがるように、舌を絡めてくるクロウが。積極的で新鮮だ。
 いつも、すぐに恥ずかしがるからな。
 でも、きっと。悪夢が。クロウの不安をかき立てているのだろう。

 まだ、クロウは。現実と夢の狭間で怖がっているのだ。

 可哀想になるくらいに、クロウはギャン泣きだったからな。
 ぎゃん…。なんとなく、そのフレーズが浮かんだ。

 それはともかく。このように泣かせる前に、悪夢から解き放ってやりたかった。
 いいや、その前に。
 夢の中でも、おまえとともにいられたら。悪夢など、我がぶった切ってやるというのに。

「夢の中でも、おまえと手をつないでいてやろう。クロウがうれうすべてのものから。我がおまえを守ってやる」
 キスの合間に、つぶやくと。
 クロウは、少し身を離し。我の顔を、間近からみつめた。
 びっくりして、涙が止まったみたいな顔だ。

「どうかしたか?」
「いえ。ぼくも。夢の中でも手をつないで、離さないでいてって。思っていたから。心を読まれたのかと思って、驚きました」
「そうか。以心伝心だな?」

 そうして、また深く、くちづける。
 夢の不安がなくなるように、このまま溺れさせてやりたい。

 しかし。今日はとにかく、大忙しだったからな。クロウが疲れたり、無理したりしないか、心配だ。
 キスをほどいた我は、クロウにたずねる。

「クロウ、疲れているのではないのか? このまま続けて、良いのか?」
 すると、クロウは。いつものほのぼの笑顔ではなく。心もとないような、寂しげな笑みを浮かべた。

「抱いてください。イアン様にもたらされる、甘い痛みが。それが、ぼくの真実だと教えてくれるから。そうしたら、悪い夢なんか、もう見ない」
 クロウがそう言うから。我は彼に深くくちづけ。そのまま寝台に押し倒した。

 もしも。クロウが夢の世界に連れ去られてしまったら。
 そんな危惧が。我の中に生まれて。

 そんなのは許せない。クロウは誰にも渡せない、と。そんな怒りが湧いた。

 クロウを、しっかりと、現実に縫い留めてしまおう。
 我と抱き合うことで、それが叶うなら。
 甘い痛みも、鮮烈な快楽も、惑乱するほどの悦楽も。すべてクロウに刻み込んでやる。

 ふたりとも、すべてを脱ぎ捨てて、せつなく裸の身を寄せ合っていた。
 クロウは我と比べると、どこもかしこも小さいから。愛撫の手も、加減している。
 それでも、早急に体をつなげたくて。香油を寝台にこぼすのも構わずに、たっぷりと手に出して、クロウの臀部に塗りつけた。
 我の太い指が、蕾を押し開き、香油を塗り込めるようにして、隘路あいろを濡らすと。
 クロウは、やはり。つらそうな息を吐くのだ。
 だけど、我の首に腕を回して、すがりつき。
 早く、ください。なんて、耳に囁かれたら。理性が千切れるではないかっ。

 すぼまりをほぐすのも、そこそこに、我は正面から、クロウの中へ己を挿入した。
 クロウの屹立は、己のモノで、撫でこすることで、充分に快楽を受けていたが。
 やはり、剛直が入り込むときは、気がそがれてしまうのか。少し元気がなくなってしまう。

 それでも、クロウは。もっと、と我を誘うのだ。

 まるで、体をつなげていないと、どこかへ飛んで行ってしまう。そんなことを思っているかのように。
 我は、剛直を挿入すると、体を入れ替えて、クロウを我の上に乗せる体勢にした。
 寝台に寝そべる我を、クロウは見下ろす。
 我をまたぐ、細い太ももを、手で撫で上げ。我を食いこませる双丘を揉んだ。

「クロウ、我は、心配なのだ。クロウは華奢だから。我が乱暴に扱ったら、壊れてしまいそうだ」
 言うと、クロウは。切れ長の、ちょっと吊って見える目元を、やんわりと細め。我をうっとりとみつめる。

「イアン様は、お優しいから。ぼくを気遣ってくれるのですね。でも、ぼくは、男なのです。人並みに。エッチな気持ちにもなりますし。イアン様を欲しい気持ちは、人一倍あります」
 そして、白くなまめかしい体を、我の上で弾ませた。
 剛直が、クロウの中で摩擦され。引き絞られて、たまらない官能が生まれる。

「ほ、欲しいの、イアン様。ぼくを、熱く抱き締めてくださいませ」
 その妖艶な誘いに、たまらず。我はクロウの腰を鷲掴んで、腰を揺らした。
 下から突き上げるようにすると、クロウは。
 ちょっと微笑む顔で。我を見下ろす。

「あ、いい。あ、あ、イアン様、激し…ん、あぁ」
 ズクズクと、クロウを本能のままに穿つ。ぐちゅぐちゅと音が鳴るほどに激しい出し入れに、クロウは、それを欲するかのように、腰を揺らめかせた。

「激しくて、熱いの、好きッ。イアン様、を、感じる」
 そして、ぱったりと。クロウは上半身を、我の上に落し。その、いきなりの動きに、我も動きを止めた。
 クロウは、我の胸に頬を当て。細く長い指で、我の乳首に触れた。

「イアン様、ここに触れても大丈夫ですか? 不快では?」
「大丈夫だ。おまえが触れてはならない場所などない」
 答えを聞いたクロウは。そこをぺろりと舐めた。
 ゾロリとした感触が、乳首の上を通り過ぎると。ちょっと、鳥肌が立つ感じがする。

「ぼくは、ここを、陛下に舐められると。じんじんして。気持ち良くて。熱くなって。もっと、もっとって、なるのです。イアン様は?」
「…すまぬ。我は。されるより、する方が好きなようだ」
 ピンクの舌が、我の乳首から、唾液を滴らせて。上目づかいで、クロウがこちらを見るから。
 その、エロいビジュアルに、我はギュンと胸が高鳴った。

「んぁ、おっきくなった。か、硬くてぇ、やぁ、中が、いっぱいぃ」
「こら。煽るな」

 もう、なんか。バキバキになってしまって。
 我はクロウを抱くと。また体を入れ替えて、クロウを下にした。
 寝台に、身を預けるクロウ。その足を、我は手で持って。すぼまりに、剛直を深く挿入する。
 足を開かせて、我はクロウの乳首を唇で攻めた。
 我が、乳首を舌でゾロリと舐め濡らし、唇でついばんで、白い肌にあとを残すと。
 クロウは身悶えるように、我の首にすがりついた。

「んぁ、そこ、いい。でも、中も…あぁ、いいの。イアン様、あ、んぁ」
 腰は、激しく動かしていないが。乳首を攻める些細な動きが、クロウの体内で、焦らすような、もどかしい愉悦を生んでいるようだ。
 気持ち良さそうなので。
 しばらく、乳首の愛撫を続行。

 白い肌の上に、主張するような、桜色。
 花を咲かせるように。蜜を吸うように。上唇と下唇でやんわり挟んで吸いつく。
 乳輪がぷっくりしてきたら、舌先でなぞったり、つついたりする。
 チュプチュプと音を立てて、じっくりと攻めていくと。クロウは、艶やかにあえいだ。

「んぁ、や、あ…いい、ん、あん、やぁ、んぁあ」
 クロウが身悶えて、体をもじもじさせれば。
 体内を穿つ剛直が、クロウの内側も愛撫することになる。
 そうして、悦楽の極みに向かえば。嫌なことなど霧散するはず。
 我は、クロウに気持ち良さだけを与え続けた。

「あぁ、い、イっちゃうぅ、イアン様。ダメ、だめ。も、イ…あぁ、んぁあっ」
 我が動いて追い込む前に、クロウは頂点を極めて、白濁を飛ばしてしまった。
 ギュンギュンと、中が収縮して、剛直を引き絞るが。
 我は、なんとかこらえて。クロウの胸から顔を上げた。

「乳首だけで、イっちゃったな? 敏感で、エッチな体だ」
「イ、イアンさまぁ…」
 まだ、絶頂の余韻にヒクヒクしている、クロウのすぼまりから。剛直を引き抜き。クロウをうつぶせにした。
 腰を高く持ち上げ、再び己を挿入する。

 後ろからだと、すぼまりが、我を美味そうに、のみ込んでいくサマを。つぶさに見られて、興奮する。
 ゆっくりと。堪能するように。
 剛直の表面に、クロウの粘膜がまといつく感触を楽しみながら。挿し入れた。

 そして、激しく前後させる。
 今度は、なにも考えられなくなるような。ドロドロにとろける、熱烈な、情交だ。

「あっ、あっ、あっ、イアン、あぁ、イアン、さまぁ…好き。好き好き。イアンさまぁ」
 クロウの尻タブが、ぶるぶると震えるほどに。パンパンと音をさせて、クロウを突き上げる。
 彼がこちらを振り向く、その顔は。
 物欲しげで。情欲に溺れる黒真珠。濡れた桃色の唇。艶やかで色っぽい赤い舌。
 いつもは、どこか、気高く静謐な印象のあるクロウだが。
 ここにいるのは、我を欲する、扇情的なクロウだった。

 その、彼の赤い舌が、美味しそうで。
 我は腰の動きをそのままに、上体を倒して、クロウにくちづけた。
 きつく、きつく、舌を絡めて。クロウが息継ぎで、キスをほどくまで貪った。

 くちづけを解いたら、今度はその白い首筋を甘噛みした。
 肩も、背筋にも、噛みついて。肩甲骨のそばにあるほくろを、ぞろりと舐め上げる。

 クロウの柔肌やわはだに、歯を立てると、なんとなく落ち着く気がするのだ。
 我のもの。クロウは我のものなのだ、と。そう、腑に落ちる気になるから。
 それで、つい。あちこちに歯型をつけてしまう。
 クロウがそれを許してくれるから。その気持ちに甘えて。

 そして。局部が溶け落ちるような、荒々しい律動に。自分自身酔いしれて。
 いつの間にか、頂点にいたのに。
 それを知らずに駆け上って。階段を踏み外して、ポーンと体が投げ出されるような。そんな体感を受けたあと。

 我は、クロウの中に精を注ぎ込んだ。

「…あぁっ」
 その白濁の熱さに、押し流されるように。クロウも、顔を上げて叫び。手で刺激していない屹立を、ぶるりと震わせて、再び極めた。
 突端から精をほとばしらせ、精液で敷布を大胆に濡らす。

 ビクンビクンと蠕動する、クロウの中に。間断なくあふれる精を、出し切って。我もブルリと震えた。
 あぁ、最高の悦楽。
 だが…。ちょっと、乱暴だったかも。

 いつも、終わったあとに。頭が冷えたあとに、反省してしまう。
 我は、慎重に、クロウのすぼまりから剛直を引き抜き。寝台に突っ伏してしまったクロウを、やんわりと抱き締めた。

「クロウ、大丈夫か?」
 ハフハフと息を継いでいるクロウに、聞くと。
 彼は、ぼんやりとした眼差しで、我を見た。

「ラブラブ・スイート・ハッピッピ…って気分ですぅ」

 いつもの眠たげで、重たげな目蓋まぶたで、目をとろんとさせて。クロウは、フヘッと笑った。
 妖艶だったクロウが、いつものクロウに戻った。
 なんか安心してしまって。我も、フッと笑った。

「なんだ、ハッピッピって…」
 フフッと。笑いが誘発して。そうしたら、クロウもクスクス笑った。
 我は、やはり。
 いつもの、のほほんクロウが好きだな。と思って。
 愛しくて。愛しくて。なんか、泣きそうになるくらい、クロウが愛しくて。
 我は、彼の頬にチュッとした。


 それ以後。クロウが悪夢にうなされる日は、二度となかった。

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