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39 首脳会談 ②
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囲炉裏端に、食膳が運ばれ。夕食をとりながら、話をすることになった。
当然という様子で、みんなが酒を嗜んでいるのを見て。紫輝は。自分も飲んでみたいなぁ、と思うのだった。
この世界では、日本酒と濁り酒、そしてなんと、ワインがあるという。
ここで出されているのは、日本酒の熱燗だけど。
「なぁ、天誠。俺も、ひと口飲んでみたいなぁ? なんて」
「駄目だ。お酒は二十歳になってから、だろ?」
みんなの膳には、徳利と猪口があるのに。紫輝の膳にはない。
最初から天誠の指示で、出されなかったのだ。
紫輝は拗ねて、唇をとがらせる。
「はぁ? 酒を飲むのに、年齢は関係ないだろ。俺は、初陣の歳には飲んでいたぜ」
赤穂たちは、みんなうなずく。
戦場に出ると、古参の兵が新兵に飲ませようとするらしい。
えぇ? そんなことなかったけどなぁ…と紫輝は首をひねる。
酒宴に出席したこともあるのに、みんな、紫輝に酒はすすめなかった。
龍鬼だからか?
でも廣伊も飲んでいるしなぁ、うーん。
「我らが以前いた世界では、年齢制限があった。それに、これから大事な話をするのに、初めての酒で前後不覚になったら困る。あと、俺の前以外で、紫輝に酒は飲まさない」
天誠の説明に、月光は半目になって言う。
「へぇ、すっごい過保護じゃん。そして、考えられないくらい、品行方正な領地なんだな」
「過保護ではなく溺愛。そして領地ではなく、国だ。三百年前は、この土地に一億二千万の人が住み、ひとつの政府が全国民を統治していた。国民が選んだ者が政治を行い。争いはなく。文化が発展し。どの土地の食べ物も、不足なく食べることができた」
「…夢のような世界だ。僕らには考えつかない」
溺愛の部分には触れず、月光は天誠が語る以前の世界のことに感嘆した。
「夢のよう…だが。空気は汚れ、水も汚れ、緑地は切り崩され、星も見えない。だから滅んだのだろう」
「空気など、どうやったら汚れるんだ?」
興味津々に月光が聞いてくる。
月光は、賢いから知識欲があるのだろうと、紫輝は思った。
でも、空気を汚すというのは、排ガスや工場の煙とか、機械によるものが多いから。
天誠も説明に困っている。
「せっかく美しくなった自然を壊すような、恐れのある事柄を、我らは言いたくない。そう、紫輝と相談して決めたので。三百年前の高度文明に関しては、なにも言わない」
「ケチだな、手裏基成ぃ」
口をとがらせて、不満を言う月光を。
天誠は…こういう顔は紫輝そっくりだ、やはり育ての親なのだな。と思う。
なんというか、憎めないというやつだ。
「じゃあ、ひとつだけ。以前の世界は、ライラと同じ速度で走る乗り物が、ゴロゴロしていた」
言って、天誠は鼻でフッと笑った。
ライラに乗って、月光が半泣きでギャーギャー騒いでいたのを。天誠は、ライラを通じて見ていたのかもしれない。
「嘘でしょ? あの子、河口湖の上飛んだんだよ? あり得ない」
自分こそ、その羽で飛べるくせに。月光は、ライラが飛んだあの場面を思い返して、身を震わせた。
「湖の上を飛んだ? 月光、夢でも見たんじゃねぇか?」
「本当の話ですぅ。赤穂だって、あの速度、体験したら泣くからね! 絶対っ!! ね? 紫輝」
赤穂が揶揄するのに、月光はむきになって言いつのる。
そして紫輝にも同意を求めた。
「うん。マジマジ。泣く泣く」
なんだか、おざなりに相槌を打つ紫輝を見て。月光は。ピンクの眉毛を、情けなく下げた。
「あぁ、昔は『お父しゃまのいうことは、ほんとうですっ』とか、可愛らしく味方してくれたのに。あの天使ちゃんはどこに行ってしまったんだ?」
「なっ? そんなこと言われても。育っちゃったんだから仕方ないだろ。な? 天誠?」
嘆く月光に、紫輝は逆毛を立てて怒るが。
味方をしてくれるとばかり思っていた天誠が、横を向いて、なにやらニヤニヤしていた。
もしかして、酔った?
そのとき、天誠は。一年前に、この地で会った紫輝の幼少期を思い出していた。
お父しゃまのお客しゃまですか? と、舌足らずな声で、己に話しかけてきた、小さい兄。
萌えぇぇ、である。
あぁ、もっといろいろ話して、ミニマム兄を堪能しておくべきだった!
「まぁ、乗り物は、いろいろあったけど。でも、ライラほどの万能スペシャルゴージャス猫は、以前の世界にもいなかったんだからな?」
「そのとおり。ライラは神秘だからな。うちの猫、マジすげぇ」
紫輝の言葉に、天誠がかすかに笑んで、うなずく。
自画自賛? じゃない。手前味噌だな。
「それにしても、この世界の主要人物が、一堂に会してるの、すごくね?」
「紫輝、私は幹部ではないので、その輪の中には入らないと思うのだが」
謙遜して、廣伊が言うけど。
いやいや、貴方、充分主要キャラですから。
「なに言ってんの? 廣伊は龍鬼のリーダー…ん? 長老? みたいなもんじゃん。だから、これは首脳会談なんだよ。手裏の総帥に、将堂の准将と、宝玉。そして龍鬼の長老が、酒を飲みながらライラの話をしてるの。ウケる」
卵焼きを頬張りながら、紫輝が言う。
たとえるなら、日本の総理大臣とアメリカの大統領が、真剣な表情でライラの話をしているみたいなものだ。
絵面がヤベェ。
「長老…」
表情をそんなに変えない廣伊が、眉間にしわを寄せた。
長老扱いは、さすがに年齢的に可哀想だが。
適切な言葉が思い浮かばないっ。
「なんつうか、最年長? 師匠? 的な」
「年齢で言ったら、藤王の方が上だ…」
不本意そうに、廣伊がつぶやく。
長老も最年長も、受け入れがたい様子だ。
「藤王は仲間じゃないし。俺らの中では、やっぱ廣伊がリーダーだよ」
「紫輝。リーダーは先導者だ。若手を引っ張る役目の者、という意味だな?」
「それそれ、先導者? うーん、でも、なんか硬くね? 龍鬼班班長くらいのゆるさでいいんだけどなぁ」
天誠と、気安いやり取りをしながら。紫輝は、川魚の塩焼きを頭から丸かじりする。
以前の世界だったら、背中の身だけ食べていたけれど。この世界に来たら、食べ物は全部食べなきゃもったいない。
なんでも食べられるというのは、とても幸せなことだが。
飽食で、口に合わないものは残すというのは。悪い面だよな、と。紫輝は、この世界に来てから思ったのだった。
だって。長い間、塩おにぎりオンリーだったのだ。
魚なんて、ありがたいですよ。マジで。
「…龍鬼班班長か。紫輝の言いたいことはわかったよ。とりあえず、長老は却下な」
どうやら廣伊が納得してくれたようで。紫輝は良かったと思う。
「あぁ、ここに堺がいたら、全員集合だったのになぁ」
「堺は、藤王が生きていたことを知っているのですか?」
紫輝の何気ない一言に反応して、廣伊が誰にともなくたずねた。
答えたのは紫輝だ。
「ううん。赤穂がこうなってから、堺とは連絡とっていないから。手紙を井上先生に託したんだけど、不用意なことは書けないだろ? 物的証拠になるのは避けたかったし」
一見、なにも考えずに、日々楽しく生きているように見える、紫輝だが。
たまに冴えていて。足を引っ張るような迂闊なことも、ほぼしない。
廣伊は。紫輝の、そういう意外性に、みんな魅かれるのだろうかと分析した。
「今回の件は、完全に兄上の失態だ。将堂の当主が、藤王におびき出され、命を狙われるなど、あってはならない。早々に俺を見限ったのも、事件をもみ消す、口封じ的な意味合いもあったのかもしれねぇ。つまり、現在、前線基地に残っている右の幹部連中に、そのことは伝わっていないはずだ。代わりに、替え玉を仕立てる役目を負わせ、藤王や俺が関わる本題からは、遠ざける」
「でも、替え玉なんてさぁ。簡単に用意できないだろ? 赤穂みたいなアクの強いの、この世に存在しないって」
補足をする赤穂に、紫輝は軽く笑って告げるが。
赤穂は一杯、酒をあおって、紫輝に目を向ける。
「できるんだ、俺たちは。将堂の血脈は、双子家系だ」
ぱちくりと、目をまたたかせ。紫輝は、赤穂を見やる。
双子? いるの?
見たことも聞いたこともないけど。
「双子家系って、双子が生まれやすいっていうこと? でも、赤穂に兄弟はいないよね?」
「将堂家は、家督争いを避けるという理由で、片方の子供を廃棄する。この話は、将堂の血脈を持った者にだけ伝えられる、極秘事項だ」
廃棄、という強烈ワードに、紫輝は息をのむ。
月光も廣伊も、初めて聞いたことらしく。驚きを見せていた。
「俺は、オオワシの血が濃く出ているが。親父は、イヌワシの将堂血脈だ。だから…俺には。俺に瓜二つな弟がいるはず。俺は、話を聞いただけで、会ったことねぇし。どこにいるかも、わからないんだが。簡単に替え玉を用意したのだから、兄上は、その所在を知っていたのだろう」
「つまり、本拠地にお達しが来ていた青桐様というのは。赤穂様の実の弟、ということですか?」
説明に、廣伊が問いを投げ。赤穂はうなずいた。
「そうだ。准将赤穂は、青桐に差し替えられる。俺は生きているだけで、手裏の牽制になるからな」
ドヤ顔で、赤穂は天誠を挑発するが。
天誠は。それは事実とばかりに、静かにうなずく。
「そうだ。手裏軍にとって、准将赤穂は、いるだけでウザい存在だ」
「天誠、言い方…」
水面下で、チクチクと、剣と刀でつつき合っているような居心地の悪さを、紫輝は感じずにはいられない。
「おそらく、堺を使って記憶を消去し。彼自身、わからないうちに、准将の地位に祭り上げられるのだろう」
「そんなっ…堺は、精神操作をしたくなくて、ずっと能力を内に押し込めていたのに。無理矢理、能力を使わせるなんて。ひどいっ。彼は優しいんだから、自分を責めちゃうよ? 堺が壊れちゃうよっ」
むむぅと不満げに口をとがらせ、紫輝は憤る。
繊細な友人の処遇が、心配だった。
「おまえが思うほど、堺は弱くねぇ。十年以上、幹部として生きてきた、その強さは伊達じゃねぇ」
「体は強くても。心は…。堺は、心を守るために、氷の仮面をつけていたんだ。仮面の下には、優しく、気高く、儚く、もろい心が、隠れている。俺と会って、堺は。その仮面を、少しずらしてしまった。堺が、以前のように、なにも感じず、人形のように生きていた方が良かったなんて、思わないけど。でも。俺のせいで、ずらした仮面の隙を突かれて、堺が傷ついてしまったら…。堺が傷つくのは、俺は嫌なんだ」
ふむと、紫輝の見解を聞いて。赤穂はまた、酒をあおる。
なので、月光が代わりに言った。
「紫輝が、堺を心配して、心を痛めるように。堺も、紫輝が自分を心配しているのではないかと、心を痛めているだろう。堺は、確かに龍鬼であることで傷つき切ってきた。でも、紫輝という友達が、もういるのだから。ただ傷つくだけでは、もうないと思うよ。今度、堺と会ったら、しっかり彼を支えてあげればいい。堺もそれを望むだろう」
月光の真摯な言葉に、紫輝はうなずく。
今、ここにいない堺を、慰めることはできない。
赤穂がここにいるのだから、金蓮の命令に逆らうこともできなくて。
青桐となった、という報告が上がっているのだから。もう任務は、遂行されてしまったのだろう。
このことで、堺が傷ついているのなら。
自分は月光の言うように、今度会ったときに、彼を全力で支えるしかないのだ。
「そうだな。堺は俺がフォロー…手助けするよ。青桐は…たぶん、もう、計画は進行しちゃっているよね? 今更、助けられないよね?」
「だろうね。彼を助けたいと思うなら、早めに解放できるよう、努力するしかない」
巻き込んでしまい、でも、なんともできなくて、無責任で、申し訳ないけど。きっと青桐のこともフォローするから。ごめんねごめんね、と。紫輝は胸のうちで、手を合わせる。
冷静に考えれば、青桐を准将の地位に据えたのは金蓮で。紫輝には、なんの落ち度もないのだが。
終戦に向かう過程での犠牲者のような気がしてしまったのだ。
「…青桐が、赤穂みたいな乱暴者じゃなければいいなぁ」
「っんだよ、それ」
紫輝の言葉に、赤穂は不満げに吐き捨てる。
だって、赤穂がきつく当たるから、堺が委縮しちゃったんだ。
まぁ、赤穂はそういうキャラクターだから、悪気がないのは知っているけど。
でも今度は、優しい人で、堺をいたわってくれる人が良いと、思うのは仕方ないっしょ。
「ねぇ、ちょっと赤穂。僕は別な部分に引っかかっているんだけど。イヌワシ血脈に双子が出るの? じゃあ、もしかして、紫輝にも?」
身を乗り出して、月光は赤穂にたずねる。
それに赤穂はうなずき。
「あぁ。紫輝にも双子の弟がいる」
自分から聞いたくせに、赤穂の答えに月光は驚き、息をのむ。
でも、驚いたのは紫輝も同様だ。
「えぇ? 俺そっくりなのが、もうひとりいるの? でも、赤穂は。俺だけを月光さんに預けたんだろ? まさか、廃棄?」
廃棄って、どうすんの?
赤穂の弟が生きていたなら、死んではないんだよね?
と、紫輝はおろおろする。
赤穂は重いため息をついて。酒を飲もうとして…やめた。
「ここまで言って、誤魔化すのは無理があるから。言うが。廃棄はおまえの方だ、紫輝。本来は、兄の方が残される。先に生まれ出でた方が、弟。腹の中に長くいた方が、兄だ。だから、紫輝、おまえは長兄なのだが。龍鬼だったので処分対象になった」
まぁ、そうでしょうね。と、紫輝は半分あきらめ気分で思うのだった。
ん? ということは。もしかして弟は、龍鬼ではない?
でも、髪はバリバリゴワゴワなんだろうな?
そうでなきゃ、己とそっくりだとは認めないからなっ!
と、紫輝は。まだ見ぬ弟に、心の中で指を突きつけるのだった。
「おまえの双子の弟には、イヌワシの翼と赤茶の髪色があり。将堂の血脈が濃く出ている。現在六歳。兄上とその妻の子供として、育てられている。名前は夏藤だ」
あんぐりと口を開けた。
開いた口がふさがらない。紫輝は、呆れてしまった。
「夏藤? え、藤の字を使ったの? 金蓮って、どんだけデリカシーないの? そんなの、赤穂にも奥さんにも、失礼じゃん」
だって、自分の子供に藤の字を入れたってことは、藤王を強く想っていますって言ってるようなもんじゃん。
下手したら藤王の子供って、邪推されかねない。
なに考えてんだ!
「あれ、でも。奥さんは金蓮が女性だって知っているってことだよね。奥さん、確か幸直の?」
「そうだ。美濃家の、幸直の姉だ。美濃家は分家なので。将堂に硬い忠誠心がある。たぶん承知の上で、偽装結婚に応じているのだろう。おまえらが生まれた直後に、結婚の報が出た。俺には相談もなかったので、よくは知らん」
「承知の上でも、ひどくね? 金蓮、ないわぁ…」
幸直の姉の、女性としての一生も。金蓮に奪われたのではないか?
でも。承知の上ということだし。彼女が幸せであるなら、文句はつけられないが。
従わせられているのでなければいいと、紫輝は思う。
そして、赤穂の片想い感が、半端ねぇ。
こんなに健気なのに。
赤穂をないがしろにし過ぎだよ、金蓮っ。
「まさか、夏藤様が、紫輝の弟だとは…今までお会いしたことがなかったが。近々、将堂の後継として、お披露目されるんじゃなかったか?」
あまりにも衝撃的な、将堂家の秘密に。月光は、凛とした眼差しを赤穂に向ける。
本来、側近として幹部たちと接するときは、このような感じなのだと。河口湖にいるとき、幸直が紫輝に話してくれた。
紫輝の前で見せる、ニコニコきゅるるんな顔の方が、珍しく。
幸直は逆に、恐ろしくて、腰が抜けそうになったと、当時言っていた。
「そうだな。初陣は、まだ先だろうが。そろそろ顔出しはするだろう。今、夏藤は六歳で、幼い。夏藤と紫輝が兄弟だと、怪しむ者はいないだろう。だが彼が育って、成人する頃には。紫輝と似ていることを、誰かが指摘してもおかしくない。井上が先日『今はね』と意味深に言っていたのは、そういうことだ。今は、まだ…」
一同は神妙な顔をして黙り込んでしまった。
「でも。とりあえず、弟は元気そうなら、安心した。龍鬼でもないなら、いじめられてもなさそうだな?」
「将堂の後継だ。大切に、丁寧に、丁重に、育てられているのだろう」
推察する赤穂の言葉に、紫輝は引っかかりを感じた。
「赤穂は、夏藤に会っていないの?」
「生まれた日以来、目にしていない。おまえのように、腕に抱いたこともない。だから。俺の子はおまえだけだ」
同じ屋根の下に住んでいるわけではないだろうが、将堂家の者なのに、夏藤に会えないなんて。
赤穂は、実の父親だよ?
でも、実の父だから、金蓮は赤穂と夏藤を会わせないのかな?
そんなの、悲しいよ。
すぐ近くにいるのに、生き別れみたいな感じだなんて。
「駄目だよ、そんなの。俺と同じだけ、夏藤のことも愛してあげて。たとえ会えなくても。俺のときみたいに、いつか会えるって信じていてほしい」
女親は、子供がおなかにいる頃から、母性が芽生える。しかし男親というのは、子供の成長過程で父性が芽生えるらしい。
そばにいることができず、ぬくもりも知らず、言葉も交わせないとしたら。
赤穂も、父の自覚を持てないのかもしれない。
紫輝は覚えがないが。赤穂は、赤子の己を抱き締め、命を守ると誓ってくれた。
赤穂と月光と紫月、三人家族の団らんがあって。
初めての子育てに、悪戦苦闘したりして。
紫輝と赤穂の間には、短くても、太いつながりを築けていた。
だから親子だと、いきなり紫輝に言われても。赤穂は認めることができたのだろう。
龍鬼というハンデで、紫輝はつらいこともあったけれど。家族や人間関係には恵まれていて。
その点は、まだ見ぬ弟よりも幸せだなと思うのだった。
当然という様子で、みんなが酒を嗜んでいるのを見て。紫輝は。自分も飲んでみたいなぁ、と思うのだった。
この世界では、日本酒と濁り酒、そしてなんと、ワインがあるという。
ここで出されているのは、日本酒の熱燗だけど。
「なぁ、天誠。俺も、ひと口飲んでみたいなぁ? なんて」
「駄目だ。お酒は二十歳になってから、だろ?」
みんなの膳には、徳利と猪口があるのに。紫輝の膳にはない。
最初から天誠の指示で、出されなかったのだ。
紫輝は拗ねて、唇をとがらせる。
「はぁ? 酒を飲むのに、年齢は関係ないだろ。俺は、初陣の歳には飲んでいたぜ」
赤穂たちは、みんなうなずく。
戦場に出ると、古参の兵が新兵に飲ませようとするらしい。
えぇ? そんなことなかったけどなぁ…と紫輝は首をひねる。
酒宴に出席したこともあるのに、みんな、紫輝に酒はすすめなかった。
龍鬼だからか?
でも廣伊も飲んでいるしなぁ、うーん。
「我らが以前いた世界では、年齢制限があった。それに、これから大事な話をするのに、初めての酒で前後不覚になったら困る。あと、俺の前以外で、紫輝に酒は飲まさない」
天誠の説明に、月光は半目になって言う。
「へぇ、すっごい過保護じゃん。そして、考えられないくらい、品行方正な領地なんだな」
「過保護ではなく溺愛。そして領地ではなく、国だ。三百年前は、この土地に一億二千万の人が住み、ひとつの政府が全国民を統治していた。国民が選んだ者が政治を行い。争いはなく。文化が発展し。どの土地の食べ物も、不足なく食べることができた」
「…夢のような世界だ。僕らには考えつかない」
溺愛の部分には触れず、月光は天誠が語る以前の世界のことに感嘆した。
「夢のよう…だが。空気は汚れ、水も汚れ、緑地は切り崩され、星も見えない。だから滅んだのだろう」
「空気など、どうやったら汚れるんだ?」
興味津々に月光が聞いてくる。
月光は、賢いから知識欲があるのだろうと、紫輝は思った。
でも、空気を汚すというのは、排ガスや工場の煙とか、機械によるものが多いから。
天誠も説明に困っている。
「せっかく美しくなった自然を壊すような、恐れのある事柄を、我らは言いたくない。そう、紫輝と相談して決めたので。三百年前の高度文明に関しては、なにも言わない」
「ケチだな、手裏基成ぃ」
口をとがらせて、不満を言う月光を。
天誠は…こういう顔は紫輝そっくりだ、やはり育ての親なのだな。と思う。
なんというか、憎めないというやつだ。
「じゃあ、ひとつだけ。以前の世界は、ライラと同じ速度で走る乗り物が、ゴロゴロしていた」
言って、天誠は鼻でフッと笑った。
ライラに乗って、月光が半泣きでギャーギャー騒いでいたのを。天誠は、ライラを通じて見ていたのかもしれない。
「嘘でしょ? あの子、河口湖の上飛んだんだよ? あり得ない」
自分こそ、その羽で飛べるくせに。月光は、ライラが飛んだあの場面を思い返して、身を震わせた。
「湖の上を飛んだ? 月光、夢でも見たんじゃねぇか?」
「本当の話ですぅ。赤穂だって、あの速度、体験したら泣くからね! 絶対っ!! ね? 紫輝」
赤穂が揶揄するのに、月光はむきになって言いつのる。
そして紫輝にも同意を求めた。
「うん。マジマジ。泣く泣く」
なんだか、おざなりに相槌を打つ紫輝を見て。月光は。ピンクの眉毛を、情けなく下げた。
「あぁ、昔は『お父しゃまのいうことは、ほんとうですっ』とか、可愛らしく味方してくれたのに。あの天使ちゃんはどこに行ってしまったんだ?」
「なっ? そんなこと言われても。育っちゃったんだから仕方ないだろ。な? 天誠?」
嘆く月光に、紫輝は逆毛を立てて怒るが。
味方をしてくれるとばかり思っていた天誠が、横を向いて、なにやらニヤニヤしていた。
もしかして、酔った?
そのとき、天誠は。一年前に、この地で会った紫輝の幼少期を思い出していた。
お父しゃまのお客しゃまですか? と、舌足らずな声で、己に話しかけてきた、小さい兄。
萌えぇぇ、である。
あぁ、もっといろいろ話して、ミニマム兄を堪能しておくべきだった!
「まぁ、乗り物は、いろいろあったけど。でも、ライラほどの万能スペシャルゴージャス猫は、以前の世界にもいなかったんだからな?」
「そのとおり。ライラは神秘だからな。うちの猫、マジすげぇ」
紫輝の言葉に、天誠がかすかに笑んで、うなずく。
自画自賛? じゃない。手前味噌だな。
「それにしても、この世界の主要人物が、一堂に会してるの、すごくね?」
「紫輝、私は幹部ではないので、その輪の中には入らないと思うのだが」
謙遜して、廣伊が言うけど。
いやいや、貴方、充分主要キャラですから。
「なに言ってんの? 廣伊は龍鬼のリーダー…ん? 長老? みたいなもんじゃん。だから、これは首脳会談なんだよ。手裏の総帥に、将堂の准将と、宝玉。そして龍鬼の長老が、酒を飲みながらライラの話をしてるの。ウケる」
卵焼きを頬張りながら、紫輝が言う。
たとえるなら、日本の総理大臣とアメリカの大統領が、真剣な表情でライラの話をしているみたいなものだ。
絵面がヤベェ。
「長老…」
表情をそんなに変えない廣伊が、眉間にしわを寄せた。
長老扱いは、さすがに年齢的に可哀想だが。
適切な言葉が思い浮かばないっ。
「なんつうか、最年長? 師匠? 的な」
「年齢で言ったら、藤王の方が上だ…」
不本意そうに、廣伊がつぶやく。
長老も最年長も、受け入れがたい様子だ。
「藤王は仲間じゃないし。俺らの中では、やっぱ廣伊がリーダーだよ」
「紫輝。リーダーは先導者だ。若手を引っ張る役目の者、という意味だな?」
「それそれ、先導者? うーん、でも、なんか硬くね? 龍鬼班班長くらいのゆるさでいいんだけどなぁ」
天誠と、気安いやり取りをしながら。紫輝は、川魚の塩焼きを頭から丸かじりする。
以前の世界だったら、背中の身だけ食べていたけれど。この世界に来たら、食べ物は全部食べなきゃもったいない。
なんでも食べられるというのは、とても幸せなことだが。
飽食で、口に合わないものは残すというのは。悪い面だよな、と。紫輝は、この世界に来てから思ったのだった。
だって。長い間、塩おにぎりオンリーだったのだ。
魚なんて、ありがたいですよ。マジで。
「…龍鬼班班長か。紫輝の言いたいことはわかったよ。とりあえず、長老は却下な」
どうやら廣伊が納得してくれたようで。紫輝は良かったと思う。
「あぁ、ここに堺がいたら、全員集合だったのになぁ」
「堺は、藤王が生きていたことを知っているのですか?」
紫輝の何気ない一言に反応して、廣伊が誰にともなくたずねた。
答えたのは紫輝だ。
「ううん。赤穂がこうなってから、堺とは連絡とっていないから。手紙を井上先生に託したんだけど、不用意なことは書けないだろ? 物的証拠になるのは避けたかったし」
一見、なにも考えずに、日々楽しく生きているように見える、紫輝だが。
たまに冴えていて。足を引っ張るような迂闊なことも、ほぼしない。
廣伊は。紫輝の、そういう意外性に、みんな魅かれるのだろうかと分析した。
「今回の件は、完全に兄上の失態だ。将堂の当主が、藤王におびき出され、命を狙われるなど、あってはならない。早々に俺を見限ったのも、事件をもみ消す、口封じ的な意味合いもあったのかもしれねぇ。つまり、現在、前線基地に残っている右の幹部連中に、そのことは伝わっていないはずだ。代わりに、替え玉を仕立てる役目を負わせ、藤王や俺が関わる本題からは、遠ざける」
「でも、替え玉なんてさぁ。簡単に用意できないだろ? 赤穂みたいなアクの強いの、この世に存在しないって」
補足をする赤穂に、紫輝は軽く笑って告げるが。
赤穂は一杯、酒をあおって、紫輝に目を向ける。
「できるんだ、俺たちは。将堂の血脈は、双子家系だ」
ぱちくりと、目をまたたかせ。紫輝は、赤穂を見やる。
双子? いるの?
見たことも聞いたこともないけど。
「双子家系って、双子が生まれやすいっていうこと? でも、赤穂に兄弟はいないよね?」
「将堂家は、家督争いを避けるという理由で、片方の子供を廃棄する。この話は、将堂の血脈を持った者にだけ伝えられる、極秘事項だ」
廃棄、という強烈ワードに、紫輝は息をのむ。
月光も廣伊も、初めて聞いたことらしく。驚きを見せていた。
「俺は、オオワシの血が濃く出ているが。親父は、イヌワシの将堂血脈だ。だから…俺には。俺に瓜二つな弟がいるはず。俺は、話を聞いただけで、会ったことねぇし。どこにいるかも、わからないんだが。簡単に替え玉を用意したのだから、兄上は、その所在を知っていたのだろう」
「つまり、本拠地にお達しが来ていた青桐様というのは。赤穂様の実の弟、ということですか?」
説明に、廣伊が問いを投げ。赤穂はうなずいた。
「そうだ。准将赤穂は、青桐に差し替えられる。俺は生きているだけで、手裏の牽制になるからな」
ドヤ顔で、赤穂は天誠を挑発するが。
天誠は。それは事実とばかりに、静かにうなずく。
「そうだ。手裏軍にとって、准将赤穂は、いるだけでウザい存在だ」
「天誠、言い方…」
水面下で、チクチクと、剣と刀でつつき合っているような居心地の悪さを、紫輝は感じずにはいられない。
「おそらく、堺を使って記憶を消去し。彼自身、わからないうちに、准将の地位に祭り上げられるのだろう」
「そんなっ…堺は、精神操作をしたくなくて、ずっと能力を内に押し込めていたのに。無理矢理、能力を使わせるなんて。ひどいっ。彼は優しいんだから、自分を責めちゃうよ? 堺が壊れちゃうよっ」
むむぅと不満げに口をとがらせ、紫輝は憤る。
繊細な友人の処遇が、心配だった。
「おまえが思うほど、堺は弱くねぇ。十年以上、幹部として生きてきた、その強さは伊達じゃねぇ」
「体は強くても。心は…。堺は、心を守るために、氷の仮面をつけていたんだ。仮面の下には、優しく、気高く、儚く、もろい心が、隠れている。俺と会って、堺は。その仮面を、少しずらしてしまった。堺が、以前のように、なにも感じず、人形のように生きていた方が良かったなんて、思わないけど。でも。俺のせいで、ずらした仮面の隙を突かれて、堺が傷ついてしまったら…。堺が傷つくのは、俺は嫌なんだ」
ふむと、紫輝の見解を聞いて。赤穂はまた、酒をあおる。
なので、月光が代わりに言った。
「紫輝が、堺を心配して、心を痛めるように。堺も、紫輝が自分を心配しているのではないかと、心を痛めているだろう。堺は、確かに龍鬼であることで傷つき切ってきた。でも、紫輝という友達が、もういるのだから。ただ傷つくだけでは、もうないと思うよ。今度、堺と会ったら、しっかり彼を支えてあげればいい。堺もそれを望むだろう」
月光の真摯な言葉に、紫輝はうなずく。
今、ここにいない堺を、慰めることはできない。
赤穂がここにいるのだから、金蓮の命令に逆らうこともできなくて。
青桐となった、という報告が上がっているのだから。もう任務は、遂行されてしまったのだろう。
このことで、堺が傷ついているのなら。
自分は月光の言うように、今度会ったときに、彼を全力で支えるしかないのだ。
「そうだな。堺は俺がフォロー…手助けするよ。青桐は…たぶん、もう、計画は進行しちゃっているよね? 今更、助けられないよね?」
「だろうね。彼を助けたいと思うなら、早めに解放できるよう、努力するしかない」
巻き込んでしまい、でも、なんともできなくて、無責任で、申し訳ないけど。きっと青桐のこともフォローするから。ごめんねごめんね、と。紫輝は胸のうちで、手を合わせる。
冷静に考えれば、青桐を准将の地位に据えたのは金蓮で。紫輝には、なんの落ち度もないのだが。
終戦に向かう過程での犠牲者のような気がしてしまったのだ。
「…青桐が、赤穂みたいな乱暴者じゃなければいいなぁ」
「っんだよ、それ」
紫輝の言葉に、赤穂は不満げに吐き捨てる。
だって、赤穂がきつく当たるから、堺が委縮しちゃったんだ。
まぁ、赤穂はそういうキャラクターだから、悪気がないのは知っているけど。
でも今度は、優しい人で、堺をいたわってくれる人が良いと、思うのは仕方ないっしょ。
「ねぇ、ちょっと赤穂。僕は別な部分に引っかかっているんだけど。イヌワシ血脈に双子が出るの? じゃあ、もしかして、紫輝にも?」
身を乗り出して、月光は赤穂にたずねる。
それに赤穂はうなずき。
「あぁ。紫輝にも双子の弟がいる」
自分から聞いたくせに、赤穂の答えに月光は驚き、息をのむ。
でも、驚いたのは紫輝も同様だ。
「えぇ? 俺そっくりなのが、もうひとりいるの? でも、赤穂は。俺だけを月光さんに預けたんだろ? まさか、廃棄?」
廃棄って、どうすんの?
赤穂の弟が生きていたなら、死んではないんだよね?
と、紫輝はおろおろする。
赤穂は重いため息をついて。酒を飲もうとして…やめた。
「ここまで言って、誤魔化すのは無理があるから。言うが。廃棄はおまえの方だ、紫輝。本来は、兄の方が残される。先に生まれ出でた方が、弟。腹の中に長くいた方が、兄だ。だから、紫輝、おまえは長兄なのだが。龍鬼だったので処分対象になった」
まぁ、そうでしょうね。と、紫輝は半分あきらめ気分で思うのだった。
ん? ということは。もしかして弟は、龍鬼ではない?
でも、髪はバリバリゴワゴワなんだろうな?
そうでなきゃ、己とそっくりだとは認めないからなっ!
と、紫輝は。まだ見ぬ弟に、心の中で指を突きつけるのだった。
「おまえの双子の弟には、イヌワシの翼と赤茶の髪色があり。将堂の血脈が濃く出ている。現在六歳。兄上とその妻の子供として、育てられている。名前は夏藤だ」
あんぐりと口を開けた。
開いた口がふさがらない。紫輝は、呆れてしまった。
「夏藤? え、藤の字を使ったの? 金蓮って、どんだけデリカシーないの? そんなの、赤穂にも奥さんにも、失礼じゃん」
だって、自分の子供に藤の字を入れたってことは、藤王を強く想っていますって言ってるようなもんじゃん。
下手したら藤王の子供って、邪推されかねない。
なに考えてんだ!
「あれ、でも。奥さんは金蓮が女性だって知っているってことだよね。奥さん、確か幸直の?」
「そうだ。美濃家の、幸直の姉だ。美濃家は分家なので。将堂に硬い忠誠心がある。たぶん承知の上で、偽装結婚に応じているのだろう。おまえらが生まれた直後に、結婚の報が出た。俺には相談もなかったので、よくは知らん」
「承知の上でも、ひどくね? 金蓮、ないわぁ…」
幸直の姉の、女性としての一生も。金蓮に奪われたのではないか?
でも。承知の上ということだし。彼女が幸せであるなら、文句はつけられないが。
従わせられているのでなければいいと、紫輝は思う。
そして、赤穂の片想い感が、半端ねぇ。
こんなに健気なのに。
赤穂をないがしろにし過ぎだよ、金蓮っ。
「まさか、夏藤様が、紫輝の弟だとは…今までお会いしたことがなかったが。近々、将堂の後継として、お披露目されるんじゃなかったか?」
あまりにも衝撃的な、将堂家の秘密に。月光は、凛とした眼差しを赤穂に向ける。
本来、側近として幹部たちと接するときは、このような感じなのだと。河口湖にいるとき、幸直が紫輝に話してくれた。
紫輝の前で見せる、ニコニコきゅるるんな顔の方が、珍しく。
幸直は逆に、恐ろしくて、腰が抜けそうになったと、当時言っていた。
「そうだな。初陣は、まだ先だろうが。そろそろ顔出しはするだろう。今、夏藤は六歳で、幼い。夏藤と紫輝が兄弟だと、怪しむ者はいないだろう。だが彼が育って、成人する頃には。紫輝と似ていることを、誰かが指摘してもおかしくない。井上が先日『今はね』と意味深に言っていたのは、そういうことだ。今は、まだ…」
一同は神妙な顔をして黙り込んでしまった。
「でも。とりあえず、弟は元気そうなら、安心した。龍鬼でもないなら、いじめられてもなさそうだな?」
「将堂の後継だ。大切に、丁寧に、丁重に、育てられているのだろう」
推察する赤穂の言葉に、紫輝は引っかかりを感じた。
「赤穂は、夏藤に会っていないの?」
「生まれた日以来、目にしていない。おまえのように、腕に抱いたこともない。だから。俺の子はおまえだけだ」
同じ屋根の下に住んでいるわけではないだろうが、将堂家の者なのに、夏藤に会えないなんて。
赤穂は、実の父親だよ?
でも、実の父だから、金蓮は赤穂と夏藤を会わせないのかな?
そんなの、悲しいよ。
すぐ近くにいるのに、生き別れみたいな感じだなんて。
「駄目だよ、そんなの。俺と同じだけ、夏藤のことも愛してあげて。たとえ会えなくても。俺のときみたいに、いつか会えるって信じていてほしい」
女親は、子供がおなかにいる頃から、母性が芽生える。しかし男親というのは、子供の成長過程で父性が芽生えるらしい。
そばにいることができず、ぬくもりも知らず、言葉も交わせないとしたら。
赤穂も、父の自覚を持てないのかもしれない。
紫輝は覚えがないが。赤穂は、赤子の己を抱き締め、命を守ると誓ってくれた。
赤穂と月光と紫月、三人家族の団らんがあって。
初めての子育てに、悪戦苦闘したりして。
紫輝と赤穂の間には、短くても、太いつながりを築けていた。
だから親子だと、いきなり紫輝に言われても。赤穂は認めることができたのだろう。
龍鬼というハンデで、紫輝はつらいこともあったけれど。家族や人間関係には恵まれていて。
その点は、まだ見ぬ弟よりも幸せだなと思うのだった。
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