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幕間 酔っ払いめっ ★
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◆酔っ払いめっ
廣伊が紫輝の屋敷を出てすぐ、千夜は紫輝に言われた。
「千夜、廣伊について行って。いっぱい飲んでたみたいだから、心配なんだよ。今日は天誠がそばにいるから、そのまま、家に帰っていいから、な?」
玄関で、紫輝は無邪気に手を振るが。含みがあるようにも、見え。
まぁ、紫輝も。彼とよろしくやりたいのだろうからな、と思い。
千夜は己の家へ向かった。
外に出ると、雪がまた降り出していて、空気がキンと冷えている。
普通なら、酔いが覚めるところだが。廣伊は確かに、いつもより盃を重ねていた。
でも、しっかりした足取りで、紫輝の屋敷を出て行ったし。それほど酒に、弱くはなかったはずだ…。と考えていたら。
廣伊が、玄関の前で、うつむき加減で突っ立っているのが見えた。
まさか寝ているんじゃないか、と思い。
千夜は廣伊に追いついて、彼の肩を抱く。
長めの前髪が目元を隠していて、表情は見えない。
「なぁ、千夜。あの話、聞いたか?」
神妙な声を出す廣伊に、千夜は息をのむ。
見えないところで、だが。そばで控えていたので。隠密は、みんな話を聞いている。
だから千夜も、もちろん聞いていた。
っていうか、真剣な話の途中だが。
廣伊が、目も向けていないのに、隣に並んだのが己だと気づいてくれたことが、千夜は嬉しかった。
「あぁ、それが?」
「なんで、紫輝たちは、私にああいう話をするのかな? 私など一兵士だぞ。次元が違い過ぎるっ。つか、手裏と将堂の首脳級が、雁首揃えた場に、私などがいるのが。そもそもおかしいのだ。私になにができるというのだ。どうしろというつもりなのかっ」
目の前で閉ざされた玄関扉に向かって、廣伊はブツブツ文句を言っている。
というか、いつになく饒舌。
でも、外で。手裏だ将堂だ、物騒な話をするのは良くないので。千夜は廣伊をうながした。
「まぁ、とにかく。家に入ろう。風邪をひくぞ」
「開かない。千夜、開けろ」
開かないって、どういうこと? と思いながら、千夜は引き戸に手をかける。
スルリと開いた。
「あぁ、引き戸だったのか。どうりで、押しても開かないと思った」
クスクスクスっ、と。廣伊が笑う。
ん? これは結構、酔っているのかな?
廣伊の背を押して、玄関に入ると。家の中は、ほんのり温かかった。
本棟の使用人が、こちらの家の支度までしてくれたのだ。
廊下にも、ろうそくの灯りがついている。
人がいないところで明るくしているのは、贅沢だな。
千夜は廣伊の軍靴を脱がしながら、外でブツブツ言っていた廣伊の言葉への返答をする。
「私など、とか言うけど。赤穂様が離脱されたあと、将堂軍で紫輝を守れるのは、廣伊だけだろう? こうして根幹の話に参加させてもらえるのは、信用されている証拠だ。俺たちになにができるか、わからないが。とにかく紫輝を守る。そのことに、尽力するしかない」
廣伊は、緑の髪をゆらりと揺らし。うなずきとも。眠くて、こっくりしただけとも取れる、微妙な頭の動きを見せた。
これ、明日まで覚えているかな? と思って。
千夜は彼を抱えて、廊下を進みつつ、灯りを消していった。
「ほら、廣伊。しっかり歩いて」
部屋に入り、寝台の上に廣伊を下ろすと。彼は、あおむきで寝っ転がった。
足は床に垂らしていて、ぶらぶらさせている。
千夜は、これほど無防備な廣伊を、見たことがなかった。
本拠地や前線基地でも、酒が出ることはあったが。廣伊はいくら飲んでも、表情を変えなかったので。酒はいける口なのかと思っていた。
でも、廣伊は。常に誰かに、命を狙われていたのだ。
油断すれば殺される。
酒にのまれる間も、なかったのだろう。
『俺のせい、かな?』と千夜は苦笑し、廣伊を見下ろした。
「千夜ぁ、暑いぃ。服、脱がせて?」
「酔ってんのか? 廣伊」
明らかに、酔っ払いだが。
廣伊の剣を寝台の脇に置き。上着を脱がしてやりながら、聞いた。
「馬鹿な。私が酔っているわけないだろ。ちゃんと話も覚えているし。真っすぐ歩けるしぃ」
「真っすぐ歩けるって主張するところが、もう、酔ってる証拠だっつうの」
少し体を起こさせ、背中の紐をほどいて、防具も外す。
その間、廣伊はされるままだ。
そして上半身の素肌があらわになって、また寝台に身を沈めた。
「下も脱ぐのか?」
「下を脱がさないで、どうやってヤるんだ?」
当然だろう? という顔で、廣伊に見られるが。
いやいや。無理でしょ。
「ヤるの? こんなぐでんぐでんで、できないだろう?」
「この家に帰ってきたんだから、ヤるに決まってんだろ。千夜は、ヤりたくないのか? ヤらない?」
そんなの、答えはひとつだ。
「ヤるに決まってんだろ」
犬歯を剥き出して、ニヤリと笑うと。千夜は、廣伊のズボンも下着も取り去り。寝台の上に乗りかかって、廣伊を組み敷いた。
千夜は。廣伊の柔らかい頬の線をなぞるのが、好きだ。
そして、絹糸のように細くきらめく、緑の髪が好きだ。
くちづけながら。千夜は、廣伊の顔や髪に、指先で触れていった。
「ふふ…千夜の手、でっかいなぁ」
愛撫の手を、廣伊が笑いながら捕まえて、自分の手と手のひらを合わせる。
関節ひとつ分、千夜の方が、手は大きい。
「なんで、こんな小さな手で、あの大きな剣を振り回せるのやら…」
つぶやいて、千夜は廣伊の手を、手の中に握り込む。
結局、勝つことができなかった、鬼の組長。
でも、今は。己の腕の中。
そう思うと、感慨深い。
「手の大きさなんか、関係ない。ほら、こうして…」
「わっ、ちょ…ちょっと待て、廣伊?」
廣伊は千夜の股間をさぐって、ズボンの前を開くと。煽られて、すでにみなぎらせている剛直を、握り込む。
「くっそ…酔っ払いめっ」
「酔ってないですぅ。おまえこそ、おとなしく寝てろ」
急所を握られていると、うまく反撃できなくて。千夜はいつの間にか、廣伊に組み敷かれていた。
あおむけで寝ても、敷かれた翼は特に痛くないが。なんとなく苦しく思うので、寝台に肘をついて上半身を起こしている。
そんな千夜の腿の上に、廣伊は座り。頬を上気させて、見下ろす。
ノリノリだ。
「そんな悪態ついたって。私と寝たいと、ここは素直に伝えているぞ?」
喜々として、廣伊は指先で、そそり立つ剛直を、ちょんちょんとつつき。剣を握るかのように、絶妙な力加減で千夜のモノを握る。
そんなことをされたら、廣伊が剣を握るたびに、今日のことを思い出してしまう。
「こうだ。こうやって握れば…ふむ、私の剣の柄よりは、太くないな?」
当たり前だ。と、千夜は胸のうちで毒づく。
すると急に、廣伊がまたがり。後孔に剛直の先をあてがった。
「おい、まだ…」
「大丈夫だ。いつも入っているんだからな」
そう言って、腰を落とすのだが。ほぐしても濡らしてもいないので、簡単には挿入できない。
そういうものだ。
同性の情交は、大変なんだ。
「う、千夜、太すぎ。これ以上、入んないぃ。なんで? いつも入っているのに、なんで入らないんだよぉ? 私のことが嫌いになったのか?」
廣伊は、眉間にしわを寄せ。泣いた。
大粒の涙が、ぽろぽろこぼれる。
嘘だろ? 鬼の組長が、こんなことで泣くとか。考えられない。
可愛すぎだろ。
つか、泣き上戸か?
あと太いとか言うな、たぎるだろ。
「あぁ、もう、泣くなよ。嫌いなわけないだろ。むしろ好きだから、大きいんだろうが?」
「ん、そうか」
裸の太ももを撫でて、廣伊をなだめると。
急にけろっと態度が変わる。
質の悪い酔っ払いだなぁ、おい。
「ほら、ちゃんとヤってやるから。俺に掴まれ」
廣伊は倒れ掛かって、千夜の胸に飛び込んだ。その拍子に、剛直は抜けてしまう。
千夜は懐に忍ばせていたアロエの潤滑剤を取り出し、廣伊の蕾に塗り込んだ。
「ふふん、いつも持ち歩いているなんて…いやらしいなぁ」
なにやらドヤ顔で、からかう笑みを廣伊が向ける。
つか、表情がくるくる変わって、びっくりなんだが。
能面が標準装備の鬼の組長が、小悪魔みたいに誘うなんて。酔ってるにしても、本当にどうしちゃったんだ?
千夜は急ぎつつも丁寧に、廣伊の後孔をほぐす。
早く挿入しないと、煽られ過ぎて、暴発してしまいそうだ。
「千夜ぁ、顔がイイな」
廣伊が千夜の頬を、手のひらで包み、ゴシゴシ擦ったり、ペチペチ叩いたりする。
酔っ払いの力加減だから、愛撫というような優しい感じじゃない。
「もう、おとなしくしろ、酔っ払いめ。食べちゃうぞ」
限界になった千夜は、廣伊を再び組み敷いて、己を廣伊の中に埋め込んだ。
ぐちゅうと、奥まで突き入れるが。性急に求めてしまった体を気遣って、まずは小刻みに揺すった。
「あ、あ、揺れる。揺らすな。なんか、やだ、ううぅ…」
「なに? 動くなってことか? 揺らさないでイけるのか?」
「んーっ、イ、けるっ」
ちょっとムキになっているみたいに、唇をとがらせている。
紫輝がやってても、小生意気なガキにしか見えないのだが。
廣伊がやると、色気増し増しで、ヤバエロ可愛い。
目眩起こしそう。
「ヤベェ。廣伊に酒を飲ませたら、ヤバい」
「ヤバくない。いいから、早く動け」
「なんだよ。揺らすなって言っただろ?」
「揺らさないで、動いて。早くイかせろ。イったら、寝る。もう、眠い」
「無茶苦茶だな、もう。黙れよ、廣伊」
千夜は廣伊の口を塞ぐように、深いくちづけをした。
舌を絡めて、存分に戯れてから、離すと。舌と舌に伝う、唾液の糸が引く。
開いた廣伊の口の中で、桃色の舌が、物足りなさそうに差し出されていた。
廣伊は緑の瞳を魅惑的に細め、手で千夜の青い髪をかき回す。
「好きだ、千夜。好き。もっとキスして」
睦言など、廣伊はあまり言ってくれないから。
その一言でギュンと高ぶった。
「廣伊っ、くそ。もう、どうなっても知らないぞ」
薄く微笑む形の唇に、千夜はむしゃぶりつく。
がむしゃらに、情熱的に、口腔を味わい。弾むように、蕩けるように、剛直を抜き差しする。
廣伊は千夜の太い首にすがりついて、手荒な律動を耐え忍んだ。
「あぁ、好き。千夜ぁ、そこ、好きっ、あ、あ…ぁ」
甘露な、言葉と。体の刺激を混ぜ合わせ。ふたりはすぐにも、高みへ駆け上がった。
一度達したあとは。上下を入れ替えて、欲望のままに廣伊が千夜を求めた。
廣伊は千夜の腹に手をつき、腰を激しく揺らめかせて淫猥に攻める。己の中にある敏感な場所に千夜を導き、背筋を反らし、身をくねらせて、なやましげに官能を味わった。
濃密な愛撫にも、興じる。
千夜の腹筋に舌を這わせ、隠密業で鍛え上げられた体のおうとつを、隅々まで、舌先で堪能したり。
千夜も廣伊の胸を口に含んで、薄赤くなるほど、舐めて噛んで。乳首だけで、極めさせたり。
舌が痺れるほど、しつこくキスし合って、笑ったり…。
その夜は、ただただひたすら、お互いを貪り合って、甘い甘い情欲の沼に身を沈めたのだ。
★★★★★
翌日。己の胴に抱きついて、泥のように眠っている、青い髪の男を。廣伊は見やる。
申し訳ないことだが、情交の翌日は、綺麗に己の体を拭いてくれて。敷布も取り替えてくれて。彼は先に、仕事に出るということが多い。
そのため、清潔な寝台の上、ひとりで起きるわけだが。
でも今日は。その一切がなされていない。
いまだ色濃く、昨夜の情交の痕跡が、あちらこちらに残っている。
そして、千夜もここにいる。
一緒に、朝を迎えるのは。嬉しいけれど。
重い、重い、ため息を廣伊はつく。
昨日の醜態を、全部、鮮明に覚えている。
紫輝たちと交わした宴席での会話は、もちろんだが。
この家に帰ってきてからの、己の発言も。自分から、千夜を誘ったことも。意識を失うまで楽しんだ、激しい情交も…あれもこれも。
「霧散してしまいたいっ」
両手で顔を覆って、廣伊は恥じ入った。
廣伊が紫輝の屋敷を出てすぐ、千夜は紫輝に言われた。
「千夜、廣伊について行って。いっぱい飲んでたみたいだから、心配なんだよ。今日は天誠がそばにいるから、そのまま、家に帰っていいから、な?」
玄関で、紫輝は無邪気に手を振るが。含みがあるようにも、見え。
まぁ、紫輝も。彼とよろしくやりたいのだろうからな、と思い。
千夜は己の家へ向かった。
外に出ると、雪がまた降り出していて、空気がキンと冷えている。
普通なら、酔いが覚めるところだが。廣伊は確かに、いつもより盃を重ねていた。
でも、しっかりした足取りで、紫輝の屋敷を出て行ったし。それほど酒に、弱くはなかったはずだ…。と考えていたら。
廣伊が、玄関の前で、うつむき加減で突っ立っているのが見えた。
まさか寝ているんじゃないか、と思い。
千夜は廣伊に追いついて、彼の肩を抱く。
長めの前髪が目元を隠していて、表情は見えない。
「なぁ、千夜。あの話、聞いたか?」
神妙な声を出す廣伊に、千夜は息をのむ。
見えないところで、だが。そばで控えていたので。隠密は、みんな話を聞いている。
だから千夜も、もちろん聞いていた。
っていうか、真剣な話の途中だが。
廣伊が、目も向けていないのに、隣に並んだのが己だと気づいてくれたことが、千夜は嬉しかった。
「あぁ、それが?」
「なんで、紫輝たちは、私にああいう話をするのかな? 私など一兵士だぞ。次元が違い過ぎるっ。つか、手裏と将堂の首脳級が、雁首揃えた場に、私などがいるのが。そもそもおかしいのだ。私になにができるというのだ。どうしろというつもりなのかっ」
目の前で閉ざされた玄関扉に向かって、廣伊はブツブツ文句を言っている。
というか、いつになく饒舌。
でも、外で。手裏だ将堂だ、物騒な話をするのは良くないので。千夜は廣伊をうながした。
「まぁ、とにかく。家に入ろう。風邪をひくぞ」
「開かない。千夜、開けろ」
開かないって、どういうこと? と思いながら、千夜は引き戸に手をかける。
スルリと開いた。
「あぁ、引き戸だったのか。どうりで、押しても開かないと思った」
クスクスクスっ、と。廣伊が笑う。
ん? これは結構、酔っているのかな?
廣伊の背を押して、玄関に入ると。家の中は、ほんのり温かかった。
本棟の使用人が、こちらの家の支度までしてくれたのだ。
廊下にも、ろうそくの灯りがついている。
人がいないところで明るくしているのは、贅沢だな。
千夜は廣伊の軍靴を脱がしながら、外でブツブツ言っていた廣伊の言葉への返答をする。
「私など、とか言うけど。赤穂様が離脱されたあと、将堂軍で紫輝を守れるのは、廣伊だけだろう? こうして根幹の話に参加させてもらえるのは、信用されている証拠だ。俺たちになにができるか、わからないが。とにかく紫輝を守る。そのことに、尽力するしかない」
廣伊は、緑の髪をゆらりと揺らし。うなずきとも。眠くて、こっくりしただけとも取れる、微妙な頭の動きを見せた。
これ、明日まで覚えているかな? と思って。
千夜は彼を抱えて、廊下を進みつつ、灯りを消していった。
「ほら、廣伊。しっかり歩いて」
部屋に入り、寝台の上に廣伊を下ろすと。彼は、あおむきで寝っ転がった。
足は床に垂らしていて、ぶらぶらさせている。
千夜は、これほど無防備な廣伊を、見たことがなかった。
本拠地や前線基地でも、酒が出ることはあったが。廣伊はいくら飲んでも、表情を変えなかったので。酒はいける口なのかと思っていた。
でも、廣伊は。常に誰かに、命を狙われていたのだ。
油断すれば殺される。
酒にのまれる間も、なかったのだろう。
『俺のせい、かな?』と千夜は苦笑し、廣伊を見下ろした。
「千夜ぁ、暑いぃ。服、脱がせて?」
「酔ってんのか? 廣伊」
明らかに、酔っ払いだが。
廣伊の剣を寝台の脇に置き。上着を脱がしてやりながら、聞いた。
「馬鹿な。私が酔っているわけないだろ。ちゃんと話も覚えているし。真っすぐ歩けるしぃ」
「真っすぐ歩けるって主張するところが、もう、酔ってる証拠だっつうの」
少し体を起こさせ、背中の紐をほどいて、防具も外す。
その間、廣伊はされるままだ。
そして上半身の素肌があらわになって、また寝台に身を沈めた。
「下も脱ぐのか?」
「下を脱がさないで、どうやってヤるんだ?」
当然だろう? という顔で、廣伊に見られるが。
いやいや。無理でしょ。
「ヤるの? こんなぐでんぐでんで、できないだろう?」
「この家に帰ってきたんだから、ヤるに決まってんだろ。千夜は、ヤりたくないのか? ヤらない?」
そんなの、答えはひとつだ。
「ヤるに決まってんだろ」
犬歯を剥き出して、ニヤリと笑うと。千夜は、廣伊のズボンも下着も取り去り。寝台の上に乗りかかって、廣伊を組み敷いた。
千夜は。廣伊の柔らかい頬の線をなぞるのが、好きだ。
そして、絹糸のように細くきらめく、緑の髪が好きだ。
くちづけながら。千夜は、廣伊の顔や髪に、指先で触れていった。
「ふふ…千夜の手、でっかいなぁ」
愛撫の手を、廣伊が笑いながら捕まえて、自分の手と手のひらを合わせる。
関節ひとつ分、千夜の方が、手は大きい。
「なんで、こんな小さな手で、あの大きな剣を振り回せるのやら…」
つぶやいて、千夜は廣伊の手を、手の中に握り込む。
結局、勝つことができなかった、鬼の組長。
でも、今は。己の腕の中。
そう思うと、感慨深い。
「手の大きさなんか、関係ない。ほら、こうして…」
「わっ、ちょ…ちょっと待て、廣伊?」
廣伊は千夜の股間をさぐって、ズボンの前を開くと。煽られて、すでにみなぎらせている剛直を、握り込む。
「くっそ…酔っ払いめっ」
「酔ってないですぅ。おまえこそ、おとなしく寝てろ」
急所を握られていると、うまく反撃できなくて。千夜はいつの間にか、廣伊に組み敷かれていた。
あおむけで寝ても、敷かれた翼は特に痛くないが。なんとなく苦しく思うので、寝台に肘をついて上半身を起こしている。
そんな千夜の腿の上に、廣伊は座り。頬を上気させて、見下ろす。
ノリノリだ。
「そんな悪態ついたって。私と寝たいと、ここは素直に伝えているぞ?」
喜々として、廣伊は指先で、そそり立つ剛直を、ちょんちょんとつつき。剣を握るかのように、絶妙な力加減で千夜のモノを握る。
そんなことをされたら、廣伊が剣を握るたびに、今日のことを思い出してしまう。
「こうだ。こうやって握れば…ふむ、私の剣の柄よりは、太くないな?」
当たり前だ。と、千夜は胸のうちで毒づく。
すると急に、廣伊がまたがり。後孔に剛直の先をあてがった。
「おい、まだ…」
「大丈夫だ。いつも入っているんだからな」
そう言って、腰を落とすのだが。ほぐしても濡らしてもいないので、簡単には挿入できない。
そういうものだ。
同性の情交は、大変なんだ。
「う、千夜、太すぎ。これ以上、入んないぃ。なんで? いつも入っているのに、なんで入らないんだよぉ? 私のことが嫌いになったのか?」
廣伊は、眉間にしわを寄せ。泣いた。
大粒の涙が、ぽろぽろこぼれる。
嘘だろ? 鬼の組長が、こんなことで泣くとか。考えられない。
可愛すぎだろ。
つか、泣き上戸か?
あと太いとか言うな、たぎるだろ。
「あぁ、もう、泣くなよ。嫌いなわけないだろ。むしろ好きだから、大きいんだろうが?」
「ん、そうか」
裸の太ももを撫でて、廣伊をなだめると。
急にけろっと態度が変わる。
質の悪い酔っ払いだなぁ、おい。
「ほら、ちゃんとヤってやるから。俺に掴まれ」
廣伊は倒れ掛かって、千夜の胸に飛び込んだ。その拍子に、剛直は抜けてしまう。
千夜は懐に忍ばせていたアロエの潤滑剤を取り出し、廣伊の蕾に塗り込んだ。
「ふふん、いつも持ち歩いているなんて…いやらしいなぁ」
なにやらドヤ顔で、からかう笑みを廣伊が向ける。
つか、表情がくるくる変わって、びっくりなんだが。
能面が標準装備の鬼の組長が、小悪魔みたいに誘うなんて。酔ってるにしても、本当にどうしちゃったんだ?
千夜は急ぎつつも丁寧に、廣伊の後孔をほぐす。
早く挿入しないと、煽られ過ぎて、暴発してしまいそうだ。
「千夜ぁ、顔がイイな」
廣伊が千夜の頬を、手のひらで包み、ゴシゴシ擦ったり、ペチペチ叩いたりする。
酔っ払いの力加減だから、愛撫というような優しい感じじゃない。
「もう、おとなしくしろ、酔っ払いめ。食べちゃうぞ」
限界になった千夜は、廣伊を再び組み敷いて、己を廣伊の中に埋め込んだ。
ぐちゅうと、奥まで突き入れるが。性急に求めてしまった体を気遣って、まずは小刻みに揺すった。
「あ、あ、揺れる。揺らすな。なんか、やだ、ううぅ…」
「なに? 動くなってことか? 揺らさないでイけるのか?」
「んーっ、イ、けるっ」
ちょっとムキになっているみたいに、唇をとがらせている。
紫輝がやってても、小生意気なガキにしか見えないのだが。
廣伊がやると、色気増し増しで、ヤバエロ可愛い。
目眩起こしそう。
「ヤベェ。廣伊に酒を飲ませたら、ヤバい」
「ヤバくない。いいから、早く動け」
「なんだよ。揺らすなって言っただろ?」
「揺らさないで、動いて。早くイかせろ。イったら、寝る。もう、眠い」
「無茶苦茶だな、もう。黙れよ、廣伊」
千夜は廣伊の口を塞ぐように、深いくちづけをした。
舌を絡めて、存分に戯れてから、離すと。舌と舌に伝う、唾液の糸が引く。
開いた廣伊の口の中で、桃色の舌が、物足りなさそうに差し出されていた。
廣伊は緑の瞳を魅惑的に細め、手で千夜の青い髪をかき回す。
「好きだ、千夜。好き。もっとキスして」
睦言など、廣伊はあまり言ってくれないから。
その一言でギュンと高ぶった。
「廣伊っ、くそ。もう、どうなっても知らないぞ」
薄く微笑む形の唇に、千夜はむしゃぶりつく。
がむしゃらに、情熱的に、口腔を味わい。弾むように、蕩けるように、剛直を抜き差しする。
廣伊は千夜の太い首にすがりついて、手荒な律動を耐え忍んだ。
「あぁ、好き。千夜ぁ、そこ、好きっ、あ、あ…ぁ」
甘露な、言葉と。体の刺激を混ぜ合わせ。ふたりはすぐにも、高みへ駆け上がった。
一度達したあとは。上下を入れ替えて、欲望のままに廣伊が千夜を求めた。
廣伊は千夜の腹に手をつき、腰を激しく揺らめかせて淫猥に攻める。己の中にある敏感な場所に千夜を導き、背筋を反らし、身をくねらせて、なやましげに官能を味わった。
濃密な愛撫にも、興じる。
千夜の腹筋に舌を這わせ、隠密業で鍛え上げられた体のおうとつを、隅々まで、舌先で堪能したり。
千夜も廣伊の胸を口に含んで、薄赤くなるほど、舐めて噛んで。乳首だけで、極めさせたり。
舌が痺れるほど、しつこくキスし合って、笑ったり…。
その夜は、ただただひたすら、お互いを貪り合って、甘い甘い情欲の沼に身を沈めたのだ。
★★★★★
翌日。己の胴に抱きついて、泥のように眠っている、青い髪の男を。廣伊は見やる。
申し訳ないことだが、情交の翌日は、綺麗に己の体を拭いてくれて。敷布も取り替えてくれて。彼は先に、仕事に出るということが多い。
そのため、清潔な寝台の上、ひとりで起きるわけだが。
でも今日は。その一切がなされていない。
いまだ色濃く、昨夜の情交の痕跡が、あちらこちらに残っている。
そして、千夜もここにいる。
一緒に、朝を迎えるのは。嬉しいけれど。
重い、重い、ため息を廣伊はつく。
昨日の醜態を、全部、鮮明に覚えている。
紫輝たちと交わした宴席での会話は、もちろんだが。
この家に帰ってきてからの、己の発言も。自分から、千夜を誘ったことも。意識を失うまで楽しんだ、激しい情交も…あれもこれも。
「霧散してしまいたいっ」
両手で顔を覆って、廣伊は恥じ入った。
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※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
転生したら嫌われ者No.01のザコキャラだった 〜引き篭もりニートは落ちぶれ王族に転生しました〜
隍沸喰(隍沸かゆ)
BL
引き篭もりニートの俺は大人にも子供にも人気の話題のゲーム『WoRLD oF SHiSUTo』の次回作を遂に手に入れたが、その直後に死亡してしまった。
目覚めたらその世界で最も嫌われ、前世でも嫌われ続けていたあの落ちぶれた元王族《ヴァントリア・オルテイル》になっていた。
同じ檻に入っていた子供を看病したのに殺されかけ、王である兄には冷たくされ…………それでもめげずに頑張ります!
俺を襲ったことで連れて行かれた子供を助けるために、まずは脱獄からだ!
重複投稿:小説家になろう(ムーンライトノベルズ)
注意:
残酷な描写あり
表紙は力不足な自作イラスト
誤字脱字が多いです!
お気に入り・感想ありがとうございます。
皆さんありがとうございました!
BLランキング1位(2021/8/1 20:02)
HOTランキング15位(2021/8/1 20:02)
他サイト日間BLランキング2位(2019/2/21 20:00)
ツンデレ、執着キャラ、おバカ主人公、魔法、主人公嫌われ→愛されです。
いらないと思いますが感想・ファンアート?などのSNSタグは #嫌01 です。私も宣伝や時々描くイラストに使っています。利用していただいて構いません!
男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~
さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。
そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。
姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。
だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。
その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。
女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。
もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。
周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか?
侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?
すべてを奪われた英雄は、
さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。
隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。
それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。
すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。
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