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64 たとえ、癒えぬ傷でも(イアンside)
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◆たとえ、癒えぬ傷でも(イアンside)
泣きじゃくったあとに、放心してしまったクロウが、心配で。我はラヴェルに言って、サロンにアフターヌーンティーの用意をしてもらった。
他のみんなも心配そうにしていたが。人払いをして。
二人掛けのカウチに、ふたりで座り。
紅茶を飲みながら、今までの顛末を、クロウに話して聞かせることにした。
黙っていたことで、傷つけてしまったところもあるのだろうからな。
だが、もうクロウに、隠すものなどなにもない。
アナベラとバミネの画策は、十年前の、先王逝去の前から進められていた。
父は、ろくな治療を受けられず、ただの風邪をこじらせて、亡くなった。
実の妹によって、死へと追いやられたのだ。
さらに、アナベラは。王の死因が疫病であるかのように、風聞を流して。島民のほとんどを退去させてしまう。
その後、若輩の我を王に即位させ。
なにもわからぬうちに、この島に、我や王妃であった母を閉じ込めて…。
「この島から出たり、俺や母を害したりしたら。俺の父となったバジリスク公爵が、強大な水魔法で、カザレニアの国土に洪水をもたらすだろう」
そう、バミネに脅しをかけられたのだ。
そのようなことを、我は詳しくクロウに説明した。
「クロウ。我はおまえを、何者からも守ってやりたいと思っている。だが、バミネに、カザレニアの国民の命を盾に取られている。さらに、母や妹が、父と同じ末路をたどるとも言われ。そうして我は、この島に長く幽閉されているのだ。ここを突かれたら。我は動けぬ。肝心なときに、おまえを守れないかもしれない」
ぼんやりしていて、聞こえていないかもと思っていたが。
クロウはちゃんと、話に応えた。
「それは当然のことです。元より、陛下に守ってもらおうなどと、そんな大それたことは考えておりません。僕は…父に、母ともども捨てられてしまった。そういう家族も、ありますが。陛下は命の危険も顧みず、お母上と殿下を。家族を守っているのですから。それだけで、勇敢で素晴らしいことなのだと。僕は思うのです」
幼い頃に、父に守ってもらえなかったことは。クロウの中で、消化されていないのかもしれないと。その言葉を聞いて、思う。
頼りがいのあるものの象徴として、クロウは王家の話を読んで、心を支えたと、かつて言っていた。
彼の心を、我が支えられたらいいのに。
「…ラヴェル様や、騎士様たちも。バミネに?」
クロウはひとつ息をのんで、質問した。
「あぁ、ラヴェルは、先王が亡くなってすぐ、この島に来た。父親のロイドとともにな。最初は我も母も、アナベラの息のかかった者かと思い、警戒したが。どうやら、彼らは本土でアナベラの怒りを買ったようなのだ。騎士たちは、バミネの意向に反したらしい。王城の者は、バミネたちを良く思わない者が多いから。我の味方だと思っている。若干名、バミネのスパイはいるようだがな?」
わかりやすくバミネ側なのは、侍女長だ。
今回、防御塀の開閉音を聞いた我らが、すぐにも城に駆けつけたというのに。
ホールですでに、アイリスがバミネに捕まっていたのは。侍女長がアイリスを、その場に連れていったからだと、アイリスからも、他の使用人からも、聞いている。
いずれ、彼女の処遇も考えなければな。
「先王が亡くなって、すぐに年若い我が死んだら。国民はバミネに不信感を持ち、穏便に玉座にはつけなかっただろう。しかし十年の時が過ぎた、今。アナベラとバミネは、本格的に王の座に手を伸ばし始めたのだろう」
「それで、死に装束ですか? 悪趣味なことを考える男だ」
クロウは、悪夢の中をさ迷っているような、うつろな様子で、つぶやいた。
「イアン様は、会ったことのない、政略的な相手と結婚しなければならなくて。それが嫌で。僕を死神と呼んでいるのだと…つい先ほどまで思っていたのですよ? だけど。イアン様が、僕を死神と呼んだわけが。今なら、わかります。死に装束なんて…まさしく死神だ」
「最初は、確かにそう思った。おまえは、死の引導を渡しに来る、死神なのだと。だが今は、そんなことを思ってはいないぞ? 初日に、婚礼衣装を作っているつもりなのだと、知ったからな? おまえは、この世の宝を扱っているかのような手つきで、衣装に触れていたではないか? 嬉しそうに。王の衣装に携われることを、誉だと言った。そんなおまえに、死に装束など作れるはずもない」
「僕が、誤解しているとわかった時点で、教えていただきたかったです。そうすれば、こんなおぞましいものを…」
激しい勢いで、カウチから立ち上がり。衣装の方へ向かおうとする。そんなクロウを、我は腕を掴んで止めた。
それでも、強い力で引っ張るので。
クロウを無理矢理、腕の中に抱き込んだ。
いつも、静かに、穏やかに、微笑んでいたクロウの中に。これほどの激情が隠れているなんて。知らなかった。
でもそれは、我を想う気持ちから来る、強い心情だから。
彼の新たな一面を見られたことを、我は嬉しく思った。
「イアン様、止めないでください」
「衣装を傷つけることは許さぬと、言った。王の言葉が聞けないのか?」
そう告げれば。王家を敬愛するクロウが逆らうことはない。
それを承知で、あえて、王の言葉、と言った。
王家に逆らうつもりなど、毛頭ないとばかりに。クロウは愕然とし。小刻みに震える。
腕の中のクロウが、へなりと力を失ったので。
カウチに座るよう誘導し、我も隣に腰かけた。
「陛下のお言葉を、ないがしろになどいたしません。でも…なぜ、なんですか? あんなものは、陛下にとっても…っ、害でしかないではありませんか」
悔し涙が、クロウの頬を伝う。
あぁ、また泣かせてしまったな。
クロウの涙は透明で、とても美しいのだが。
なにより、可哀想になってしまう。
自分のことのように、怒りをあらわにするクロウを見ていると。逆に、己の中の憤りが薄らぐような気がした。
我は、彼の小さな手を両手で包み込む。
怒りやショックで、こわばってしまった指先を、ほぐすように、撫でさすった。
「おまえが、この手で、丁寧に、心を込めて作った衣装だからだ。我は、その衣装を着て…死にたい」
この言葉に、クロウは小さな悲鳴を、喉奥でのみ込んだ。
「嫌です。僕は、嫌だっ」
即答だった。
どんな無理難題も、笑顔でこなしてきたクロウが。我の言葉を、首を横に振ってきっぱりと拒絶する。
己のことを一番に考えてくれるクロウに、感動し。
そんなクロウと、いつか離れなくてはならないのかと、思うと。我の胸は、痛いくらいに引き絞られた。
「おまえの心根の良さを、我は知っている。だから、頼むのだ。我の死を願う者が作る衣装など、最後に着ていたくはない」
ついに声もなく、彼は項垂れた首をただ横に振り続けた。
「つらいことを言っている自覚はある。だが、我はズルい男なのだ。おまえがこの先、このことで傷つくことを知っている。だがその傷は、我が負わせたもの。我がつけた傷を、おまえが抱えて生きる。その姿を想うと…嬉しいのだ」
「嬉しい?」
「おまえがこのことを思い出し、つらくなるたびに。我が、この地に確かにいたことの、証明となるだろう?」
泣き濡れた顔を、クロウはゆるりと上げ。
なぜか、唇を引きつらせながらも…笑った。
「一生、泣いて生きろと。お命じですか?」
涙をこぼしながらも、笑みを見せる、その表情は。悲痛であり、妖艶であり、すさまじく…美しかった。
可哀想で、可哀想で、抱き締めてやりたい。
だが我も。不遜にニヤリと笑って見せる。
愛する者の心に、傷を負わせて悦に入る、非情な男に徹するのだ。
「そうだ。酷い男だろう?」
もしも、クロウが。それで、我の前から逃げ出しても。それでいい。
怒ったりしないし、悲しくも思わない。
我だって、これ以上、好いた相手を傷つけたくはないのだ。
もう充分、クロウからは、温かいものを受け取ったから。
「…いいえ、イアン様は、お優しい」
おもむろに立ちあがったクロウは、カウチと机の間の隙間に、座り込み。王の眼前、頭を垂れる。
「一番おつらいのは、陛下ではありませんか。なのに、僕のことなど心配して…そればかりか、心の重荷まで、僕に分けてくださる。こんなちっぽけな、平民の、僕に…」
時折、声を詰まらせながらも。クロウは語り続けた。
「イアン様からいただいたものは。たとえ、癒えぬ傷でも。大事に抱えてまいります」
健気なクロウを、見るのがつらい。苦しくて、我は目をすがめる。
だが、ほの暗い喜びも、湧く。
クロウがそれほどまでに、我を想っているのだと。
傷ついても構わないと。
そのような心情が伝わったから。
クロウのことを、我は、小さくてか弱い男だと思っていた。
子供のように、大事に抱えて、守ってやらなければならない存在だと。
けれど、顔を上げ、真っ直ぐに我をみつめる、その力強い眼差しに。頼もしい、芯の強さを感じる。
クロウならば、必ず我の願いを叶えてくれる。
たとえそれが、どれだけ残酷な願いであろうと。
これは、クロウにしかできないことだからだ。
「我の最後の衣装を、心無い何者かに譲ってはならぬ。おまえが、その手で、完璧に最後まで作り上げろ。おまえの王に相応しい、最高の衣装を」
クロウの瞳が、強く輝く。
彼は、腹を据えたのだ。
「王命を、承ります」
我が手を差し伸べると、クロウは礼を尽くして、その手を押し戴く。そして甲に唇を落とした。
このとき国王と仕立て屋の、悲哀の契約が、密かに、厳かに、なされた。
泣きじゃくったあとに、放心してしまったクロウが、心配で。我はラヴェルに言って、サロンにアフターヌーンティーの用意をしてもらった。
他のみんなも心配そうにしていたが。人払いをして。
二人掛けのカウチに、ふたりで座り。
紅茶を飲みながら、今までの顛末を、クロウに話して聞かせることにした。
黙っていたことで、傷つけてしまったところもあるのだろうからな。
だが、もうクロウに、隠すものなどなにもない。
アナベラとバミネの画策は、十年前の、先王逝去の前から進められていた。
父は、ろくな治療を受けられず、ただの風邪をこじらせて、亡くなった。
実の妹によって、死へと追いやられたのだ。
さらに、アナベラは。王の死因が疫病であるかのように、風聞を流して。島民のほとんどを退去させてしまう。
その後、若輩の我を王に即位させ。
なにもわからぬうちに、この島に、我や王妃であった母を閉じ込めて…。
「この島から出たり、俺や母を害したりしたら。俺の父となったバジリスク公爵が、強大な水魔法で、カザレニアの国土に洪水をもたらすだろう」
そう、バミネに脅しをかけられたのだ。
そのようなことを、我は詳しくクロウに説明した。
「クロウ。我はおまえを、何者からも守ってやりたいと思っている。だが、バミネに、カザレニアの国民の命を盾に取られている。さらに、母や妹が、父と同じ末路をたどるとも言われ。そうして我は、この島に長く幽閉されているのだ。ここを突かれたら。我は動けぬ。肝心なときに、おまえを守れないかもしれない」
ぼんやりしていて、聞こえていないかもと思っていたが。
クロウはちゃんと、話に応えた。
「それは当然のことです。元より、陛下に守ってもらおうなどと、そんな大それたことは考えておりません。僕は…父に、母ともども捨てられてしまった。そういう家族も、ありますが。陛下は命の危険も顧みず、お母上と殿下を。家族を守っているのですから。それだけで、勇敢で素晴らしいことなのだと。僕は思うのです」
幼い頃に、父に守ってもらえなかったことは。クロウの中で、消化されていないのかもしれないと。その言葉を聞いて、思う。
頼りがいのあるものの象徴として、クロウは王家の話を読んで、心を支えたと、かつて言っていた。
彼の心を、我が支えられたらいいのに。
「…ラヴェル様や、騎士様たちも。バミネに?」
クロウはひとつ息をのんで、質問した。
「あぁ、ラヴェルは、先王が亡くなってすぐ、この島に来た。父親のロイドとともにな。最初は我も母も、アナベラの息のかかった者かと思い、警戒したが。どうやら、彼らは本土でアナベラの怒りを買ったようなのだ。騎士たちは、バミネの意向に反したらしい。王城の者は、バミネたちを良く思わない者が多いから。我の味方だと思っている。若干名、バミネのスパイはいるようだがな?」
わかりやすくバミネ側なのは、侍女長だ。
今回、防御塀の開閉音を聞いた我らが、すぐにも城に駆けつけたというのに。
ホールですでに、アイリスがバミネに捕まっていたのは。侍女長がアイリスを、その場に連れていったからだと、アイリスからも、他の使用人からも、聞いている。
いずれ、彼女の処遇も考えなければな。
「先王が亡くなって、すぐに年若い我が死んだら。国民はバミネに不信感を持ち、穏便に玉座にはつけなかっただろう。しかし十年の時が過ぎた、今。アナベラとバミネは、本格的に王の座に手を伸ばし始めたのだろう」
「それで、死に装束ですか? 悪趣味なことを考える男だ」
クロウは、悪夢の中をさ迷っているような、うつろな様子で、つぶやいた。
「イアン様は、会ったことのない、政略的な相手と結婚しなければならなくて。それが嫌で。僕を死神と呼んでいるのだと…つい先ほどまで思っていたのですよ? だけど。イアン様が、僕を死神と呼んだわけが。今なら、わかります。死に装束なんて…まさしく死神だ」
「最初は、確かにそう思った。おまえは、死の引導を渡しに来る、死神なのだと。だが今は、そんなことを思ってはいないぞ? 初日に、婚礼衣装を作っているつもりなのだと、知ったからな? おまえは、この世の宝を扱っているかのような手つきで、衣装に触れていたではないか? 嬉しそうに。王の衣装に携われることを、誉だと言った。そんなおまえに、死に装束など作れるはずもない」
「僕が、誤解しているとわかった時点で、教えていただきたかったです。そうすれば、こんなおぞましいものを…」
激しい勢いで、カウチから立ち上がり。衣装の方へ向かおうとする。そんなクロウを、我は腕を掴んで止めた。
それでも、強い力で引っ張るので。
クロウを無理矢理、腕の中に抱き込んだ。
いつも、静かに、穏やかに、微笑んでいたクロウの中に。これほどの激情が隠れているなんて。知らなかった。
でもそれは、我を想う気持ちから来る、強い心情だから。
彼の新たな一面を見られたことを、我は嬉しく思った。
「イアン様、止めないでください」
「衣装を傷つけることは許さぬと、言った。王の言葉が聞けないのか?」
そう告げれば。王家を敬愛するクロウが逆らうことはない。
それを承知で、あえて、王の言葉、と言った。
王家に逆らうつもりなど、毛頭ないとばかりに。クロウは愕然とし。小刻みに震える。
腕の中のクロウが、へなりと力を失ったので。
カウチに座るよう誘導し、我も隣に腰かけた。
「陛下のお言葉を、ないがしろになどいたしません。でも…なぜ、なんですか? あんなものは、陛下にとっても…っ、害でしかないではありませんか」
悔し涙が、クロウの頬を伝う。
あぁ、また泣かせてしまったな。
クロウの涙は透明で、とても美しいのだが。
なにより、可哀想になってしまう。
自分のことのように、怒りをあらわにするクロウを見ていると。逆に、己の中の憤りが薄らぐような気がした。
我は、彼の小さな手を両手で包み込む。
怒りやショックで、こわばってしまった指先を、ほぐすように、撫でさすった。
「おまえが、この手で、丁寧に、心を込めて作った衣装だからだ。我は、その衣装を着て…死にたい」
この言葉に、クロウは小さな悲鳴を、喉奥でのみ込んだ。
「嫌です。僕は、嫌だっ」
即答だった。
どんな無理難題も、笑顔でこなしてきたクロウが。我の言葉を、首を横に振ってきっぱりと拒絶する。
己のことを一番に考えてくれるクロウに、感動し。
そんなクロウと、いつか離れなくてはならないのかと、思うと。我の胸は、痛いくらいに引き絞られた。
「おまえの心根の良さを、我は知っている。だから、頼むのだ。我の死を願う者が作る衣装など、最後に着ていたくはない」
ついに声もなく、彼は項垂れた首をただ横に振り続けた。
「つらいことを言っている自覚はある。だが、我はズルい男なのだ。おまえがこの先、このことで傷つくことを知っている。だがその傷は、我が負わせたもの。我がつけた傷を、おまえが抱えて生きる。その姿を想うと…嬉しいのだ」
「嬉しい?」
「おまえがこのことを思い出し、つらくなるたびに。我が、この地に確かにいたことの、証明となるだろう?」
泣き濡れた顔を、クロウはゆるりと上げ。
なぜか、唇を引きつらせながらも…笑った。
「一生、泣いて生きろと。お命じですか?」
涙をこぼしながらも、笑みを見せる、その表情は。悲痛であり、妖艶であり、すさまじく…美しかった。
可哀想で、可哀想で、抱き締めてやりたい。
だが我も。不遜にニヤリと笑って見せる。
愛する者の心に、傷を負わせて悦に入る、非情な男に徹するのだ。
「そうだ。酷い男だろう?」
もしも、クロウが。それで、我の前から逃げ出しても。それでいい。
怒ったりしないし、悲しくも思わない。
我だって、これ以上、好いた相手を傷つけたくはないのだ。
もう充分、クロウからは、温かいものを受け取ったから。
「…いいえ、イアン様は、お優しい」
おもむろに立ちあがったクロウは、カウチと机の間の隙間に、座り込み。王の眼前、頭を垂れる。
「一番おつらいのは、陛下ではありませんか。なのに、僕のことなど心配して…そればかりか、心の重荷まで、僕に分けてくださる。こんなちっぽけな、平民の、僕に…」
時折、声を詰まらせながらも。クロウは語り続けた。
「イアン様からいただいたものは。たとえ、癒えぬ傷でも。大事に抱えてまいります」
健気なクロウを、見るのがつらい。苦しくて、我は目をすがめる。
だが、ほの暗い喜びも、湧く。
クロウがそれほどまでに、我を想っているのだと。
傷ついても構わないと。
そのような心情が伝わったから。
クロウのことを、我は、小さくてか弱い男だと思っていた。
子供のように、大事に抱えて、守ってやらなければならない存在だと。
けれど、顔を上げ、真っ直ぐに我をみつめる、その力強い眼差しに。頼もしい、芯の強さを感じる。
クロウならば、必ず我の願いを叶えてくれる。
たとえそれが、どれだけ残酷な願いであろうと。
これは、クロウにしかできないことだからだ。
「我の最後の衣装を、心無い何者かに譲ってはならぬ。おまえが、その手で、完璧に最後まで作り上げろ。おまえの王に相応しい、最高の衣装を」
クロウの瞳が、強く輝く。
彼は、腹を据えたのだ。
「王命を、承ります」
我が手を差し伸べると、クロウは礼を尽くして、その手を押し戴く。そして甲に唇を落とした。
このとき国王と仕立て屋の、悲哀の契約が、密かに、厳かに、なされた。
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認識阻害魔道具メガネのせいで2人の騎士の間で別人を演じることになった文官学生の恋の話。
全17話
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