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2-7 秒でやめた ②(イアンside)
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クロウが、学園に通う間、公爵家に戻ることが決まり。
正式に結婚式を挙げるまでは、我の婚約者という地位に据えることにもなった。
それは、いい。どうせすぐに、我の花嫁に戻るのだから。
三ヶ月くらいは、家族との生活を楽しむべきだろうとも思ったのだ。
王家に嫁いだら、そうそう実家に戻れなくなるのだからな?
だが、結婚するまで、クロウが王家の指輪をしているのはいけないと、公爵が言い。
クロウが指輪をお返しします、と言って、指輪に手をかけたとき。
我は、体の芯から凍てつくような心持ちになってしまった。
「がえんじない」
クロウの手をおさえて、思わず、冷たい声で、言い放ってしまうほどに。憤りや、悲しみや、焦りや、戸惑いや。そういう、クロウを片時も手放したくない、心の弱さや。狂おしさが。我の体の奥底から、無意識に噴出する。
その指輪は、クロウが外しては駄目なのだ。
なんとなく、クロウが自ら指輪を外したら。
彼の心が、我から離れてしまうような気がして。
そんなことは、絶対に許さない。
だが、結婚式までに、指輪のサイズ直しはしておきたいと、思ってはいたのだ。
なので、薬指にはまるシロツメ草の指輪と一緒に、王家の指輪を回収した。
クロウが外すのではなく、我が外すのは、良いのだ。
我の心がクロウから離れることは、決してないし。指輪はただ借りるだけなのだから。
「…そちらもですか?」
すると、クロウは。薬指の指輪も一緒に取られて、心細そうに、眉尻を下げた。
んんんっ、可愛い。
目がウルウルで、上目遣いで、頼りなさげで。でも、下品な媚ではなくて。
その顔は、ずるいぞ? さっきは自分から指輪を外そうとしたくせにぃ。
っていうか。あぁ、可哀想。可愛い。すぐに指輪を返してあげたい。
しかし、我にも考えがあってだな?
もっと、よりよくして、指輪を返してやるからな?
三ヶ月だけ待っていてくれ。すぐだ、すぐ。ちょっ早で加工してもらうからな?
我は、クロウには弱い。
そういう自覚が、もう、明らかに、あからさまに、ある。
捨てられた子犬のごとき、つぶらで、頼りない、濡れた黒い瞳でみつめられると。すぐにクロウを抱き締めたくなるではないかっ?
弁解を述べて、よしよしと慰めてやりたいのは山々。
はたまた、許しまで請いたくなってしまう。
跪いて、傅きたくもなる。
しかし、目の前には公爵がいる。
脂下がった王の姿を、公爵に見せるわけにもいかず。
サイズ直しをするだけだ、みたいなことを、素っ気なく言うしかなかった。むうぅ、王様は、つらい。
指輪を内ポケットにしまうまで、クロウは手をうろうろさ迷わせていた。それが、迷子の子供のように幼気に目に映るが。
ううぅ。許せ、クロウ。
そうする間に、セドリックが、来客があると告げてきた。
ええぇ? ここでクロウと別れることになってしまうのかぁ?
嫌だなぁ。それこそ、がえんじないのだが。
しかし、隣国大使との面会は、公務であるし。その後も政務が。書類仕事やなんやかや、仕事が詰まっている。
夜、部屋に戻っても、クロウはいないのだろうし。すこぶる、不快である。
つまり、嫌なのだがぁ。
そうは言っても、人を待たせるわけにはいかないので。
我は。すっごく。すっごく。断腸の思いで。サロンを出たのだった。
クロウ、学園で、また会おうな?
クロウと公爵と別れたあと。謁見の間で面会したのは、隣国、アルガル公国の大使だった。
大使の話によると。アルガルの第三公女殿下が、お忍びで、セントカミュ学園に編入したので、お見知りおきください。というものだった。
でも。お忍びなのに、報告しちゃうんだ? とか。思って。笑いをこらえるのが大変だった。
だって、いかにも。学園で、公女殿下と仲を深めてくださいませぇ、という感情がダダ漏れだったものだから。
まぁ、笑っていられないことではあるのだが。
宰相以下、王宮の政務を取り仕切るジジイどもが、笑顔でうなずいているところを見ると。
クロウを王妃に据えたくない連中の、あわよくば王妃を差し替え、なんて思惑、企てが透けて見える。
無理です。クロウ以外の者と関わる時間も、暇もないですから。
まぁ、我の気持ちはクロウひと筋。王妃は。我の伴侶は、クロウの他はない。そう、気持ちが固まっているからこそ、笑える話になる、ということだ。
というか。我が学園に入学する話は、つい先ほど決まったのだが?
なぜ、公国の大使が、それを知っているのかな?
もしかして、公爵から情報が漏れているのかな?
さらには、公爵もクロウが王妃となることを、阻もうとしているのかな?
それで、公女を我にあてがおうとしているのかな?
我は。薄っすら笑いで。心の中で、がえんじないと叫んだのだった。
まずは、結婚式を挙げて。周囲を味方で固めてから、クロウの地位を盤石にしようと思っていたが。
この様子では、官吏の代替わりの方が先かな? と思ってしまった。
バジリスク公爵は、まだ若手なので、排除はできないが。
クロウの父であるので、うまく取り込めなくはないだろう。
でも、官吏の古株のジジイどもが、我を傀儡にし、利権を貪ろう、自分の良いように国を動かそうと、そういう気であるのなら。早々に改変をするべきだ。
国王の手足とならぬ官吏などいらぬ。
正式に結婚式を挙げるまでは、我の婚約者という地位に据えることにもなった。
それは、いい。どうせすぐに、我の花嫁に戻るのだから。
三ヶ月くらいは、家族との生活を楽しむべきだろうとも思ったのだ。
王家に嫁いだら、そうそう実家に戻れなくなるのだからな?
だが、結婚するまで、クロウが王家の指輪をしているのはいけないと、公爵が言い。
クロウが指輪をお返しします、と言って、指輪に手をかけたとき。
我は、体の芯から凍てつくような心持ちになってしまった。
「がえんじない」
クロウの手をおさえて、思わず、冷たい声で、言い放ってしまうほどに。憤りや、悲しみや、焦りや、戸惑いや。そういう、クロウを片時も手放したくない、心の弱さや。狂おしさが。我の体の奥底から、無意識に噴出する。
その指輪は、クロウが外しては駄目なのだ。
なんとなく、クロウが自ら指輪を外したら。
彼の心が、我から離れてしまうような気がして。
そんなことは、絶対に許さない。
だが、結婚式までに、指輪のサイズ直しはしておきたいと、思ってはいたのだ。
なので、薬指にはまるシロツメ草の指輪と一緒に、王家の指輪を回収した。
クロウが外すのではなく、我が外すのは、良いのだ。
我の心がクロウから離れることは、決してないし。指輪はただ借りるだけなのだから。
「…そちらもですか?」
すると、クロウは。薬指の指輪も一緒に取られて、心細そうに、眉尻を下げた。
んんんっ、可愛い。
目がウルウルで、上目遣いで、頼りなさげで。でも、下品な媚ではなくて。
その顔は、ずるいぞ? さっきは自分から指輪を外そうとしたくせにぃ。
っていうか。あぁ、可哀想。可愛い。すぐに指輪を返してあげたい。
しかし、我にも考えがあってだな?
もっと、よりよくして、指輪を返してやるからな?
三ヶ月だけ待っていてくれ。すぐだ、すぐ。ちょっ早で加工してもらうからな?
我は、クロウには弱い。
そういう自覚が、もう、明らかに、あからさまに、ある。
捨てられた子犬のごとき、つぶらで、頼りない、濡れた黒い瞳でみつめられると。すぐにクロウを抱き締めたくなるではないかっ?
弁解を述べて、よしよしと慰めてやりたいのは山々。
はたまた、許しまで請いたくなってしまう。
跪いて、傅きたくもなる。
しかし、目の前には公爵がいる。
脂下がった王の姿を、公爵に見せるわけにもいかず。
サイズ直しをするだけだ、みたいなことを、素っ気なく言うしかなかった。むうぅ、王様は、つらい。
指輪を内ポケットにしまうまで、クロウは手をうろうろさ迷わせていた。それが、迷子の子供のように幼気に目に映るが。
ううぅ。許せ、クロウ。
そうする間に、セドリックが、来客があると告げてきた。
ええぇ? ここでクロウと別れることになってしまうのかぁ?
嫌だなぁ。それこそ、がえんじないのだが。
しかし、隣国大使との面会は、公務であるし。その後も政務が。書類仕事やなんやかや、仕事が詰まっている。
夜、部屋に戻っても、クロウはいないのだろうし。すこぶる、不快である。
つまり、嫌なのだがぁ。
そうは言っても、人を待たせるわけにはいかないので。
我は。すっごく。すっごく。断腸の思いで。サロンを出たのだった。
クロウ、学園で、また会おうな?
クロウと公爵と別れたあと。謁見の間で面会したのは、隣国、アルガル公国の大使だった。
大使の話によると。アルガルの第三公女殿下が、お忍びで、セントカミュ学園に編入したので、お見知りおきください。というものだった。
でも。お忍びなのに、報告しちゃうんだ? とか。思って。笑いをこらえるのが大変だった。
だって、いかにも。学園で、公女殿下と仲を深めてくださいませぇ、という感情がダダ漏れだったものだから。
まぁ、笑っていられないことではあるのだが。
宰相以下、王宮の政務を取り仕切るジジイどもが、笑顔でうなずいているところを見ると。
クロウを王妃に据えたくない連中の、あわよくば王妃を差し替え、なんて思惑、企てが透けて見える。
無理です。クロウ以外の者と関わる時間も、暇もないですから。
まぁ、我の気持ちはクロウひと筋。王妃は。我の伴侶は、クロウの他はない。そう、気持ちが固まっているからこそ、笑える話になる、ということだ。
というか。我が学園に入学する話は、つい先ほど決まったのだが?
なぜ、公国の大使が、それを知っているのかな?
もしかして、公爵から情報が漏れているのかな?
さらには、公爵もクロウが王妃となることを、阻もうとしているのかな?
それで、公女を我にあてがおうとしているのかな?
我は。薄っすら笑いで。心の中で、がえんじないと叫んだのだった。
まずは、結婚式を挙げて。周囲を味方で固めてから、クロウの地位を盤石にしようと思っていたが。
この様子では、官吏の代替わりの方が先かな? と思ってしまった。
バジリスク公爵は、まだ若手なので、排除はできないが。
クロウの父であるので、うまく取り込めなくはないだろう。
でも、官吏の古株のジジイどもが、我を傀儡にし、利権を貪ろう、自分の良いように国を動かそうと、そういう気であるのなら。早々に改変をするべきだ。
国王の手足とならぬ官吏などいらぬ。
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