150 / 176
番外 モブにモヤモヤ、カッツェ・オフロの懊悩 ①
しおりを挟む
◆モブにモヤモヤ、カッツェ・オフロの懊悩
俺、こと。カッツェ・オフロは。セントカミュ学園の最終学年に上がって、すぐ。学園長室に呼ばれた。
ちなみに、心の中では、自分のことを俺と呼ぶが。
騎士科に所属している生徒は、礼儀作法に厳しいので。話し言葉は、私と言っている。
全然、俺の性格とは異なるのだが。騎士として大成するためなら、仕方がない。
なにせ、俺の家は、武門に名高い御家柄。
優秀な騎士を輩出することに燃える、武芸第一のオフロ家だからな。家紋に泥は塗れないんだ。
で、学園長室には。他に、魔法科で優秀な成績をおさめている、ベルナルド・ウィレム伯爵子息もいた。何事?
「君たちを呼び出したのは、他でもない。明日、この学園にイアン・カザレニア二十四世陛下と、その婚約者であるクロウ・バジリスク公爵子息が、ご入学される。我がセントカミュ学園が誇る、優秀な生徒である君たちに、陛下の従者として、学園生活のサポートをしてもらいたいのだ」
学園長の話は、そういうことだった。
俺もベルナルドも、すでに卒業レベルの修習を終えている。
授業を免除しても支障がないので、白羽の矢が立ったみたいだな。
つか、陛下の従者? なんて名誉なことだろう。
騎士となって、陛下の御身を警護する。
それは、俺がずっと。子供の頃から、胸に描いていた夢だった。
それを、学園在学中に体験できるなんて。まさに夢のような話じゃないか?
騎士科の生徒なら。いや、誰でも。金を積んででも引き受けたいことだ。
俺は食い気味で、学園長に承諾し。ベルナルドも、うなずいていた。
そして、翌日。
俺とベルナルドは、緊張の面持ちで、陛下に引き合わされた。
事前に、新聞で。陛下の容姿について書かれてあるのを、見ていて。なんとなく想像していたし。先日の夜会の席でも、遠目ながらお見かけしたのだが。
間近に目にする陛下は、それはもう、美しく、気高く、男らしい立ち姿だった。
王家の英雄伝説なんかは、子供の頃に、読み聞かせられるものだが。その登場人物みたいに、華々しくて。
あれは、物語だと思っていたのに。王家の方は本当にきらびやかで猛々しいのだと、実感したのだった。
俺は、身長はそれなりに高い方なのだが。
陛下も、同じくらいの身長で。
そして、学園の制服を着ている感じは細身に見えるが。
いやいや、胸板や腕の筋肉が、しっかりとついているぞ?
俺にはわかる。相当鍛えているな、と。
そして、陛下のうしろに控えているのは、セドリック・スタイン騎士団長。
燃えるような赤い髪。たくましい体躯の持ち主。
当然だ。俺が目指している騎士、シヴァーディ・キャンベル騎士団副長と、騎士爵を争っている、この時代では一・二を争う剣豪だ。
幼い頃から、俺は、陛下を守護する地位につきたいと思っていたし。
騎士となったら、いずれ騎士団長を目指したいと思うものだが。
現在、騎士団長であるセドリックにも。もちろん、俺は憧れていて。
だから。そんな、陛下とセドリックというお二方が、目の前にいることに。俺は、舞い上がってしまっていた。
だから、挨拶が済んだ瞬間、走り出した陛下に。ついて行くのが遅れてしまったのだ。
虚を突かれたってやつ。マジかっ!
セドリックは、如才なく、陛下の背中に、ぴったりとついて行っているというのに。
もう、騎士としての、格の違いを見せつけられてしまった。そんな気になったよ。
自分の有能さを、陛下にアピールしたかったのに。くそっ。
そして、学園の中心にある、大きな木が立つ丘の上に登った陛下に、やっと追いついたとき。
そこには、黒髪で小柄な男がいた。
陛下に、涙を拭わせている、アレはなんだ?
「…クロウ・バジリスク」
ベルナルドが、俺の横で小さくつぶやいた。
え、あれが? 陛下の婚約者の、クロウ・バジリスク公爵子息?
孤島から陛下を救出する手助けをしたという、あの噂の?
凡庸な、ただの男に、一瞬見えたが。
よく見ると、顔の造形は整っている。
おとなしやかな印象で。線が細くて、中性的だな。
学園長に言われていて、俺は陛下にも、あの男にも、従わなければならないのだが。
嫌だった。
クロウのことも、夜会で見かけてはいたが。ほぼ初対面。
でも、少し思うところがあって。
もちろん、陛下の婚約者だから、守れと言われたら、守るよ。
でも、心情としては、心が波立つ感じで。嫌だった。
だって。陛下とセドリックに、笑みを向けてもらえる、その位置にいるのは。もしかしたら、俺だったかもしれなかったのだ。
彼が、俺だったらと思うのは。
オフロ公爵家三男で、貴族階級で、陛下により近い年齢だった俺には。仕方がないことだった。
公爵家に生まれたとはいえ、三男だった俺は、比較的自由に育てられた。
十歳年上の長兄は、公爵家の後継者。
そして、七歳年上の次兄は、王家をお守りする騎士になると決まっていた。
三男である俺は、いずれ公爵家を出なければならないが。
オフロ家の男子として、騎士を目指し、そこで身を立てようと、子供ながらになんとなく思っていた。
だから、同じく騎士を目指す次兄と、よく剣の鍛錬をした。
兄が、セントカミュ学園に入学すると。兄の二個上の先輩であるシヴァーディ様が、とても美しい剣士で。しなやかな剣技が素晴らしいのだと、鼻息荒く教えてくれて。
兄に感化されて、俺もすっかりシヴァーディ様に心酔してしまって。
学園主催の剣術大会で、彼を直接目にしたこともあって。
さらに、シヴァーディ様談義を、熱く語り合ったり。
次兄とはそんな、仲が良い兄弟だった。
真面目な長兄は、年の離れた弟の俺を、よく可愛がってくれた。
買い物に、よく連れて行ってくれたけれど、案外ケチで。なんでも与えてくれるような、甘さはなかった。
しかしそれで、なにが大事なものなのか。良い品は高くてもいいが、どうでも良い品に手を出そうとしない、みたいな。買い物の極意を、教えてもらったな。
公爵家だからと、羽振りよく、肩で風を切って歩くような真似は、下品なことだと。
そんな長兄を見て、育ったから。
家の威を借る鼻持ちならないやつには、ならないで済んだのかもしれない。
公爵家という裕福な家で。でも三男だから、大きな家を背負うというプレッシャーを感じることもなく。
家族仲も良くて。最高の環境で育ってきた、俺。
その歯車が狂ってきたと感じたのは。俺が七歳のときだった。
貴族の子息は、七歳になると、大きな夜会でお披露目をするという慣習がある。
去年は、王太子であるイアン様が、七歳のお披露目をされた。
そして、今年は俺の番。
王太子のイアン様と俺は、一歳しか年が違わず。三男だが、公爵家の家柄である俺は、王太子の一番のご学友候補になるはず、だったのだ。
しかし、その年に。国王がご逝去し。
喪に服するため、夜会は中止になった。
それを受けて、王太子イアン様は、国王に即位されたが。
その後十年間も、万民の前に姿を現すことがなかったのだった。
だけど、俺は。長い間。いずれ陛下のご学友になると、あきらめることなく思っていて。
陛下の隣に立ち。同じ時間を過ごして。
騎士科を優秀な成績で卒業したら、陛下の唯一無二の親友兼、頼れる騎士、相棒、右腕、そんな立場になるのだ、と。夢想していた。
騎士になって、陛下の一番近くで、陛下を、王家を、お守りする。
それこそが、公爵家を継げない俺の、最高の進路だと思っていた。
できれば、陛下と友達のように気の置けない仲になり、心身ともにゆだねてもらえたら。
そんなふうに、考え続けて。とうとう、第三学年を修了してしまった。
もう、卒業するだけの成績も、マスターしているけれど。
陛下と顔を合わせる機会が、全くなかったことを、残念に思いながら。
普通に、第四学年を過ごして。卒業してから、騎士団に所属するのだろうな、なんて。ぼんやり考えていた。
そんなとき、俺の人生を反転させるような神の声が、王都中に響き渡ったのだ。
「我はカザレニア国王、イアン・カザレニア二十四世である。我は、この十年間、王城にて幽閉状態にあったのだ」
陛下は、バミネによって孤島から出ることができずにいて。
今、この本土に、ようやく渡ることができたのだ、ということを。
どういう原理かわからないが。町中に、陛下の説明が流れていた。
陛下が復権を果たすと、公爵である父上と、オフロ家の長老である祖父は、すぐに行動に出た。
兄上ふたりを、勘当したのだ。
騎士団に入った次兄は、あんなに、シヴァーディ様を素晴らしいと言っていたのに。すぐに、バミネに鞍替えした。
シヴァーディ様が失脚し、騎士団の団長に、バミネがついたら。それに追随するのが、家のためだと言っていた。
俺は、そんなのは納得できなかったが。
次兄は、そうしたのだ。
長兄は、次兄によって、バミネを引き合わされ。
良い稼ぎになると、賭け事をやらされる。
初めは儲けていたが。すぐに公爵家の金を使い込むようになって。
そのときには、負けても、賭け事が面白いからやる、という依存症に陥ってしまっていた。
公爵家後継者として育ってきた、兄だから。
厳しく律してきた兄だから。
バミネに、悪の種を植え付けられて。あっという間に、身を持ち崩してしまったのかもしれない。
だが、父たちの早すぎる処断は、そのような裏事情を加味してくれてはいないように、俺は感じたのだ。
陛下の復権に、邪魔になる芽は摘む。
公爵家に、害が及ぶ前に、切る。
そのような非情さに、見えた。
次兄は、バミネが好きで、ついて行ったわけではないのでは?
長兄は、依存症を治せば立ち直るのではないか?
そういう思いが、心の奥底でくすぶっていた。
俺、こと。カッツェ・オフロは。セントカミュ学園の最終学年に上がって、すぐ。学園長室に呼ばれた。
ちなみに、心の中では、自分のことを俺と呼ぶが。
騎士科に所属している生徒は、礼儀作法に厳しいので。話し言葉は、私と言っている。
全然、俺の性格とは異なるのだが。騎士として大成するためなら、仕方がない。
なにせ、俺の家は、武門に名高い御家柄。
優秀な騎士を輩出することに燃える、武芸第一のオフロ家だからな。家紋に泥は塗れないんだ。
で、学園長室には。他に、魔法科で優秀な成績をおさめている、ベルナルド・ウィレム伯爵子息もいた。何事?
「君たちを呼び出したのは、他でもない。明日、この学園にイアン・カザレニア二十四世陛下と、その婚約者であるクロウ・バジリスク公爵子息が、ご入学される。我がセントカミュ学園が誇る、優秀な生徒である君たちに、陛下の従者として、学園生活のサポートをしてもらいたいのだ」
学園長の話は、そういうことだった。
俺もベルナルドも、すでに卒業レベルの修習を終えている。
授業を免除しても支障がないので、白羽の矢が立ったみたいだな。
つか、陛下の従者? なんて名誉なことだろう。
騎士となって、陛下の御身を警護する。
それは、俺がずっと。子供の頃から、胸に描いていた夢だった。
それを、学園在学中に体験できるなんて。まさに夢のような話じゃないか?
騎士科の生徒なら。いや、誰でも。金を積んででも引き受けたいことだ。
俺は食い気味で、学園長に承諾し。ベルナルドも、うなずいていた。
そして、翌日。
俺とベルナルドは、緊張の面持ちで、陛下に引き合わされた。
事前に、新聞で。陛下の容姿について書かれてあるのを、見ていて。なんとなく想像していたし。先日の夜会の席でも、遠目ながらお見かけしたのだが。
間近に目にする陛下は、それはもう、美しく、気高く、男らしい立ち姿だった。
王家の英雄伝説なんかは、子供の頃に、読み聞かせられるものだが。その登場人物みたいに、華々しくて。
あれは、物語だと思っていたのに。王家の方は本当にきらびやかで猛々しいのだと、実感したのだった。
俺は、身長はそれなりに高い方なのだが。
陛下も、同じくらいの身長で。
そして、学園の制服を着ている感じは細身に見えるが。
いやいや、胸板や腕の筋肉が、しっかりとついているぞ?
俺にはわかる。相当鍛えているな、と。
そして、陛下のうしろに控えているのは、セドリック・スタイン騎士団長。
燃えるような赤い髪。たくましい体躯の持ち主。
当然だ。俺が目指している騎士、シヴァーディ・キャンベル騎士団副長と、騎士爵を争っている、この時代では一・二を争う剣豪だ。
幼い頃から、俺は、陛下を守護する地位につきたいと思っていたし。
騎士となったら、いずれ騎士団長を目指したいと思うものだが。
現在、騎士団長であるセドリックにも。もちろん、俺は憧れていて。
だから。そんな、陛下とセドリックというお二方が、目の前にいることに。俺は、舞い上がってしまっていた。
だから、挨拶が済んだ瞬間、走り出した陛下に。ついて行くのが遅れてしまったのだ。
虚を突かれたってやつ。マジかっ!
セドリックは、如才なく、陛下の背中に、ぴったりとついて行っているというのに。
もう、騎士としての、格の違いを見せつけられてしまった。そんな気になったよ。
自分の有能さを、陛下にアピールしたかったのに。くそっ。
そして、学園の中心にある、大きな木が立つ丘の上に登った陛下に、やっと追いついたとき。
そこには、黒髪で小柄な男がいた。
陛下に、涙を拭わせている、アレはなんだ?
「…クロウ・バジリスク」
ベルナルドが、俺の横で小さくつぶやいた。
え、あれが? 陛下の婚約者の、クロウ・バジリスク公爵子息?
孤島から陛下を救出する手助けをしたという、あの噂の?
凡庸な、ただの男に、一瞬見えたが。
よく見ると、顔の造形は整っている。
おとなしやかな印象で。線が細くて、中性的だな。
学園長に言われていて、俺は陛下にも、あの男にも、従わなければならないのだが。
嫌だった。
クロウのことも、夜会で見かけてはいたが。ほぼ初対面。
でも、少し思うところがあって。
もちろん、陛下の婚約者だから、守れと言われたら、守るよ。
でも、心情としては、心が波立つ感じで。嫌だった。
だって。陛下とセドリックに、笑みを向けてもらえる、その位置にいるのは。もしかしたら、俺だったかもしれなかったのだ。
彼が、俺だったらと思うのは。
オフロ公爵家三男で、貴族階級で、陛下により近い年齢だった俺には。仕方がないことだった。
公爵家に生まれたとはいえ、三男だった俺は、比較的自由に育てられた。
十歳年上の長兄は、公爵家の後継者。
そして、七歳年上の次兄は、王家をお守りする騎士になると決まっていた。
三男である俺は、いずれ公爵家を出なければならないが。
オフロ家の男子として、騎士を目指し、そこで身を立てようと、子供ながらになんとなく思っていた。
だから、同じく騎士を目指す次兄と、よく剣の鍛錬をした。
兄が、セントカミュ学園に入学すると。兄の二個上の先輩であるシヴァーディ様が、とても美しい剣士で。しなやかな剣技が素晴らしいのだと、鼻息荒く教えてくれて。
兄に感化されて、俺もすっかりシヴァーディ様に心酔してしまって。
学園主催の剣術大会で、彼を直接目にしたこともあって。
さらに、シヴァーディ様談義を、熱く語り合ったり。
次兄とはそんな、仲が良い兄弟だった。
真面目な長兄は、年の離れた弟の俺を、よく可愛がってくれた。
買い物に、よく連れて行ってくれたけれど、案外ケチで。なんでも与えてくれるような、甘さはなかった。
しかしそれで、なにが大事なものなのか。良い品は高くてもいいが、どうでも良い品に手を出そうとしない、みたいな。買い物の極意を、教えてもらったな。
公爵家だからと、羽振りよく、肩で風を切って歩くような真似は、下品なことだと。
そんな長兄を見て、育ったから。
家の威を借る鼻持ちならないやつには、ならないで済んだのかもしれない。
公爵家という裕福な家で。でも三男だから、大きな家を背負うというプレッシャーを感じることもなく。
家族仲も良くて。最高の環境で育ってきた、俺。
その歯車が狂ってきたと感じたのは。俺が七歳のときだった。
貴族の子息は、七歳になると、大きな夜会でお披露目をするという慣習がある。
去年は、王太子であるイアン様が、七歳のお披露目をされた。
そして、今年は俺の番。
王太子のイアン様と俺は、一歳しか年が違わず。三男だが、公爵家の家柄である俺は、王太子の一番のご学友候補になるはず、だったのだ。
しかし、その年に。国王がご逝去し。
喪に服するため、夜会は中止になった。
それを受けて、王太子イアン様は、国王に即位されたが。
その後十年間も、万民の前に姿を現すことがなかったのだった。
だけど、俺は。長い間。いずれ陛下のご学友になると、あきらめることなく思っていて。
陛下の隣に立ち。同じ時間を過ごして。
騎士科を優秀な成績で卒業したら、陛下の唯一無二の親友兼、頼れる騎士、相棒、右腕、そんな立場になるのだ、と。夢想していた。
騎士になって、陛下の一番近くで、陛下を、王家を、お守りする。
それこそが、公爵家を継げない俺の、最高の進路だと思っていた。
できれば、陛下と友達のように気の置けない仲になり、心身ともにゆだねてもらえたら。
そんなふうに、考え続けて。とうとう、第三学年を修了してしまった。
もう、卒業するだけの成績も、マスターしているけれど。
陛下と顔を合わせる機会が、全くなかったことを、残念に思いながら。
普通に、第四学年を過ごして。卒業してから、騎士団に所属するのだろうな、なんて。ぼんやり考えていた。
そんなとき、俺の人生を反転させるような神の声が、王都中に響き渡ったのだ。
「我はカザレニア国王、イアン・カザレニア二十四世である。我は、この十年間、王城にて幽閉状態にあったのだ」
陛下は、バミネによって孤島から出ることができずにいて。
今、この本土に、ようやく渡ることができたのだ、ということを。
どういう原理かわからないが。町中に、陛下の説明が流れていた。
陛下が復権を果たすと、公爵である父上と、オフロ家の長老である祖父は、すぐに行動に出た。
兄上ふたりを、勘当したのだ。
騎士団に入った次兄は、あんなに、シヴァーディ様を素晴らしいと言っていたのに。すぐに、バミネに鞍替えした。
シヴァーディ様が失脚し、騎士団の団長に、バミネがついたら。それに追随するのが、家のためだと言っていた。
俺は、そんなのは納得できなかったが。
次兄は、そうしたのだ。
長兄は、次兄によって、バミネを引き合わされ。
良い稼ぎになると、賭け事をやらされる。
初めは儲けていたが。すぐに公爵家の金を使い込むようになって。
そのときには、負けても、賭け事が面白いからやる、という依存症に陥ってしまっていた。
公爵家後継者として育ってきた、兄だから。
厳しく律してきた兄だから。
バミネに、悪の種を植え付けられて。あっという間に、身を持ち崩してしまったのかもしれない。
だが、父たちの早すぎる処断は、そのような裏事情を加味してくれてはいないように、俺は感じたのだ。
陛下の復権に、邪魔になる芽は摘む。
公爵家に、害が及ぶ前に、切る。
そのような非情さに、見えた。
次兄は、バミネが好きで、ついて行ったわけではないのでは?
長兄は、依存症を治せば立ち直るのではないか?
そういう思いが、心の奥底でくすぶっていた。
119
あなたにおすすめの小説
悪役側のモブになっても推しを拝みたい。【完結】
瑳来
BL
大学生でホストでオタクの如月杏樹はホストの仕事をした帰り道、自分のお客に刺されてしまう。
そして、気がついたら自分の夢中になっていたBLゲームのモブキャラになっていた!
……ま、推しを拝めるからいっか! てな感じで、ほのぼのと生きていこうと心に決めたのであった。
ウィル様のおまけにて完結致しました。
長い間お付き合い頂きありがとうございました!
【本編完結】死に戻りに疲れた美貌の傾国王子、生存ルートを模索する
とうこ
BL
その美しさで知られた母に似て美貌の第三王子ツェーレンは、王弟に嫁いだ隣国で不貞を疑われ哀れ極刑に……と思ったら逆行!? しかもまだ夫選びの前。訳が分からないが、同じ道は絶対に御免だ。
「隣国以外でお願いします!」
死を回避する為に選んだ先々でもバラエティ豊かにkillされ続け、巻き戻り続けるツェーレン。これが最後と十二回目の夫となったのは、有名特殊な一族の三男、天才魔術師アレスター。
彼は婚姻を拒絶するが、ツェーレンが呪いを受けていると言い解呪を約束する。
いじられ体質の情けない末っ子天才魔術師×素直前向きな呪われ美形王子。
転移日本人を祖に持つグレイシア三兄弟、三男アレスターの物語。
小説家になろう様にも掲載しております。
※本編完結。ぼちぼち番外編を投稿していきます。
俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード
中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。
目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。
しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。
転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。
だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。
そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。
弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。
そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。
颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。
「お前といると、楽だ」
次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。
「お前、俺から逃げるな」
颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。
転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。
これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。
続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』
かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、
転生した高校時代を経て、無事に大学生になった――
恋人である藤崎颯斗と共に。
だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。
「付き合ってるけど、誰にも言っていない」
その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。
モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、
そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。
甘えたくても甘えられない――
そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。
過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの
じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。
今度こそ、言葉にする。
「好きだよ」って、ちゃんと。
ちっちゃな婚約者に婚約破棄されたので気が触れた振りをして近衛騎士に告白してみた
風
BL
第3王子の俺(5歳)を振ったのは同じく5歳の隣国のお姫様。
「だって、お義兄様の方がずっと素敵なんですもの!」
俺は彼女を応援しつつ、ここぞとばかりに片思いの相手、近衛騎士のナハトに告白するのだった……。
期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています
ぽんちゃん
BL
病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。
謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。
五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。
剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。
加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。
そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。
次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。
一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。
妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。
我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。
こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。
同性婚が当たり前の世界。
女性も登場しますが、恋愛には発展しません。
噂の冷血公爵様は感情が全て顔に出るタイプでした。
春色悠
BL
多くの実力者を輩出したと云われる名門校【カナド学園】。
新入生としてその門を潜ったダンツ辺境伯家次男、ユーリスは転生者だった。
___まあ、残っている記憶など塵にも等しい程だったが。
ユーリスは兄と姉がいる為後継者として期待されていなかったが、二度目の人生の本人は冒険者にでもなろうかと気軽に考えていた。
しかし、ユーリスの運命は『冷血公爵』と名高いデンベル・フランネルとの出会いで全く思ってもいなかった方へと進みだす。
常に冷静沈着、実の父すら自身が公爵になる為に追い出したという冷酷非道、常に無表情で何を考えているのやらわからないデンベル___
「いやいやいやいや、全部顔に出てるんですけど…!!?」
ユーリスは思い出す。この世界は表情から全く感情を読み取ってくれないことを。いくら苦々しい表情をしていても誰も気づかなかったことを。
寡黙なだけで表情に全て感情の出ているデンベルは怖がられる度にこちらが悲しくなるほど落ち込み、ユーリスはついつい話しかけに行くことになる。
髪の毛の美しさで美醜が決まるというちょっと不思議な美醜観が加わる感情表現の複雑な世界で少し勘違いされながらの二人の行く末は!?
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。
★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
【完結】薄幸文官志望は嘘をつく
七咲陸
BL
サシャ=ジルヴァールは伯爵家の長男として産まれるが、紫の瞳のせいで両親に疎まれ、弟からも蔑まれる日々を送っていた。
忌々しい紫眼と言う両親に幼い頃からサシャに魔道具の眼鏡を強要する。認識阻害がかかったメガネをかけている間は、サシャの顔や瞳、髪色までまるで別人だった。
学園に入学しても、サシャはあらぬ噂をされてどこにも居場所がない毎日。そんな中でもサシャのことを好きだと言ってくれたクラークと言う茶色の瞳を持つ騎士学生に惹かれ、お付き合いをする事に。
しかし、クラークにキスをせがまれ恥ずかしくて逃げ出したサシャは、アーヴィン=イブリックという翠眼を持つ騎士学生にぶつかってしまい、メガネが外れてしまったーーー…
認識阻害魔道具メガネのせいで2人の騎士の間で別人を演じることになった文官学生の恋の話。
全17話
2/28 番外編を更新しました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる