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22 女神からの預かりもの
◆女神からの預かりもの
移動二日目、今日も一日馬車移動です。
小枝は紫色の新品衣装をパリッと着こなして、なにやら機嫌良さそうに、むふんとした口の形をしている。ドヤ顔?
俺も従者の制服というか、黒い衣装を身につけて。
なんとなく新しい生活の始まりというか、仕事始めというか? そういう新鮮な気分になるな?
そして王子も。昨夜はよく眠れたようで…と言っても、朝の四時には起きていたみたいですが。
とにかくお顔の険が取れて、目の下のクマや眉間のシワも薄れて。目のギラリが幾分おさえめです。
というわけで。移動中に、俺たちの今までの経緯とか魔法のことについて、殿下とレギに話すことにしました。自己紹介的な?
異世界から来た、というのは。普通に頭おかしいと思われそうだから、内緒ですけど。
「ローディ子爵の屋敷で奴隷になった…その前は?」
俺たちがこの世界に来たときから、奴隷になったあらましをツラツラ話していると、殿下にたずねられ。
えぇと。その前?
「が、外国で、普通に生活していましたけど」
「外国? なに国だ? スタインベルンにはなにをしに来た?」
なにやら余裕たっぷりの、薄い笑みを浮かべて殿下に重ねて聞かれるけれど。
なに国? 知らんがな。
「に、ににににに、日本?」
「なんで疑問形なのだ? しかもそんな国、聞いたことない」
「遠い遠いところにある、小さな島国、なんです、けどぉ……?」
殿下にジロリと睨まれ。
駄目? 誤魔化せない?
ヤバいです。全然わからない。
いかにも挙動不審です。レギにも、うさん臭そうに睨まれます。
どうしよう、小枝?
そう思って小枝を見やると。ぼくは知りませんと言わんばかりに、窓の外を眺めているよぉ。
助けてよぉ、小枝。トリセツなんでしょう?
「まぁ、いい。おまえらは女神からの預かりものということにしてやる」
殿下はそう言うと、ジロリを引っ込めてくれました。
え、いいのですか?
良かったぁ、これ以上詮索されないで済みそう。でも…。
「あの、戦場で言われていた神の手というのは。大袈裟なんです。俺の魔法は、麻酔や鎮痛の効果があるスリーパーというもので。小枝は汚染を除去して綺麗にするクリーンという魔法なので。神様みたいな効果ではないんですよ。だから女神からの預かりものだなんて、大袈裟です」
魔法のことは、もう殿下は知っているし。
だから魔法のあるなしが身請け料に反映することも、もうないので。魔法持ちだということを隠す必要はなくなった。
というか、億を積まれても手放さないと殿下は公言しているので。えぇぇ…。
奴隷からの脱出の芽は見当たりませんっっ。
それはともかく。
俺がそう言うと、殿下はニヤリと片頬を引き上げて笑う。
イケメンなんだから、わざわざ悪人顔することないのに。
「神の手ではないということなら、不法入国者として捕まえることになるが?」
「いいえ、俺らは神の手です」
すかさず訂正すると。
王子はククと笑って。傷が痛むから笑わすな、とつぶやくのだった。
昨日の移動中と比べても、殿下の顔色もよく。人当たりもとても穏やかになりました。元気が一番ですね?
昨夜、殿下は不眠症だと言っていたが。
きっと不眠状態が長く続いていて、険しい表情が標準状態になっていたのでしょうね?
普通に眠れるようになって、ディオン殿下が本来のご自身を取り戻すことが出来たらいいと、心底思います。
「あの黒い騎士を倒したのも、おまえのスリーパーなのだろう? アンドリューからそう聞いている」
思いがけず、アンドリューさんの名が出てきて。俺は美しい緑の騎士を思い浮かべた。
「アンドリューさんが?」
「奴隷商に魔法のことを知られたくなかったということも聞いていたので。その件は俺の胸におさめてある」
「そうですか。奴隷商の手からは離れたので、もういいのですけど。アンドリューさんに褒章を受けてもらいたいので、そのままにしてください」
「あぁ。しばらくは、俺がおまえを手中にしたことを広めたくないので。そうさせてもらう。おまえらは自覚がないようだが、スリーパーもクリーンも属性不明の高等魔法に値する。国宝級と言えるかもしれない。しかし、それが世に広まると、なにかと窮屈な暮らしを強いられることになるかもしれないのだ。教会で保護…という名の監禁や。魔導士協会で実験体とされるか…」
俺は殿下の言葉にゾワッとし。小枝も俺にヒシッと抱きついて、おののいた。
「処刑も無理だけどぉ、実験動物の方がもっと無理ぃ」
小枝はこっそり俺の耳に囁いた。
当たり前だっ。元の世界のモルモットみたいに小枝が扱われるようなことがあったら、パパは許しません。
「そんなのは、嫌です」
小枝の気持ちも代弁して、しっかりと訴えると。彼はうなずいた。
「あぁ。俺が守ってやる。だからおまえらはいつも俺のそばにいろ。そして魔法のことはなるべく吹聴しないように。コエダもいいな?」
殿下に言われ、小枝はチョンと首を傾げる。
目んめ真ん丸で、あぁ、可愛い。
「ふいちょー…」
「言いふらさないということだよ? 魔法出来るって言わない約束、できるか?」
「はい。それは願ってもないことですぅ」
ちょっと、意味はわからないが。
昨日、俺が殿下に言った言葉を真似したのかもね?
「しかし、スリーパーであの黒騎士を倒したというのなら、殿下の護衛に最適ですね?」
レギがそんなことを言い出して。俺はボディーガードをイメージして。手も首も横に振る。
「えぇ? 無理ですよ。俺、剣も使えないし運動も苦手なんです」
学生時代はほぼ勉強漬けで、運動の類に力を入れなかったものだから。
外科医は体力勝負なので、ランニングやストレッチくらいは身につけていますが。実践は皆無です。
するとレギは澄ました顔で言いました。
「暴漢が現れたら、スリーパーすればいいのです」
「あ、そうか」
どうも俺の頭には、スリーパーは外科医に役立つ能力という意識しかない。医療行為と思い込んでいた。
そういう応用があるのだと、なかなか思いつかないんだよな。
黒騎士のときは小枝の助言でスリーパーしたけど。ただただ必死だったからな?
「子爵邸で兵士に囲まれたときも、スリーパーで逃げれば良かったのにな」
殿下に言われ。
はああぁぁぁああ? となる。
俺も小枝も、目を真ん丸にして、口も真ん丸にして、声なき悲鳴をあげたのだった。
すると、俺たちの顔を見て。殿下もレギも横を向いてプッと吹き出す。
「傷が痛むから変な顔をして笑かすなって言っただろうがっ」
あぁぁ、俺のこと魔法持ちの癖に魔法を使えないマヌケだと思ったのですね? 失礼な。
そして逆ギレもするとか…理不尽。
でも、そうだよぉ、マヌケだよぉ。スリーパーで逃げていたら、奴隷なんかにならないですんだのにぃ??
けれど、そのときは。スリーパーでそんなことができるなんて、わからなかった。
マジかぁ、迂闊だったぁ。つか、もっと早く教えてよぉ、女神さまっ。
「…ともあれ、黒騎士を倒したのは立派な功績だ。個人的に褒美をやろう。この国で生活できるよう、戸籍を作ってやる」
「戸籍、ですか?」
「あぁ。タイジュが俺の元で働く分には、特に必要性はないが。コエダがいずれ学園に入るときや就職するときに必要になる。どうせおまえら、身分証とか持っていないんだろ?」
俺は王子の言葉にコクコクうなずく。
えぇ? この世界でも身分証あるんだぁ? それなら絶対欲しいっ。
日本でも身分証はなにかといえば提示を求められたし。きっとこの世界でも必要なものだよな?
しかし殿下は、本当にすごい。
俺たちの将来についてよく考えてくれて、気も配ってくれるのだ。
小枝のためにこれからなにが必要で、どうしたらいいとか。本当はパパである俺が考えなきゃならないのに。
この世界に来て、まだここでの常識とかもわかっていなくて。
でもそんなの、理由にならないよな?
そろそろ俺も、しっかりこの世界に根っこを生やして、小枝を立派に育てるために土台作りを始めなきゃならない。
「戸籍も身分証も欲しいです。それは大切なことだし、ありがたいことです。殿下、ご配慮いただき、ありがとうございます。とても助かります。小枝が学園に通うところを見ることが出来たら、どんなに幸せなことかっ」
前の世界では、小枝の御入学を迎えられなかったが。
この地でそれは、まだワンチャンあるのだなっ?
学園の制服を着た小枝が、門の前でにっこり、とかも?
その場面を思い浮かべれば、なんだかやる気が湧いてくるよっ。
まだ出会って間もない俺たちに、ここまで良くしてくれる殿下に、俺は真摯に尽くしたいと思った。
なんでもやりますっ。
「レギ、手配をしてくれ」
「承知しました。ですが、彼らの素性をもっと調べた方が…」
「彼らが何者か、どこから来たのか。それは俺にはどうでもいいことだ。タイジュが俺にこれからもたらしてくれるものこそが重要。タイジュのことは奴隷ではなく、神の手、女神からの預かりもの、そのような意識でレギも相対してくれ」
殿下に言われたレギは。軽く息をついて、俺をみつめる。
「タイジュ。あなた方は本当にうさん臭くて、私はどうにも心配ですが。悪い方たちには見えませんし。あなた方から近づいてきたわけではないので、スパイや暗殺の恐れもないでしょうし。むしろ、この国と関わりのない場所で今まで過ごしていたのなら、殿下にとって、何者の息もかかっていない貴重な人物と言えるでしょう。それに、あなたの診察を受けるようになってから、殿下の調子も目に見えて良いようですし。まぁ、いいでしょう」
レギは、すっごく長々といろいろ言っていたけれど。
それってつまり、戸籍を作ってくれるってことだよね?
俺たちと仲良くしてくれるってことだよね?
「ありがとう、レギっ」
嬉しくなって、笑顔で言ったら。
「ありがとうございます、レギ様、だ」
タメ口は、まだ許してくれないようです。しょんぼり。
「パパ、どんまい」
小枝にも、薄笑いで慰められた。
五歳になだめられる、未熟なパパ。くぅ。
移動二日目、今日も一日馬車移動です。
小枝は紫色の新品衣装をパリッと着こなして、なにやら機嫌良さそうに、むふんとした口の形をしている。ドヤ顔?
俺も従者の制服というか、黒い衣装を身につけて。
なんとなく新しい生活の始まりというか、仕事始めというか? そういう新鮮な気分になるな?
そして王子も。昨夜はよく眠れたようで…と言っても、朝の四時には起きていたみたいですが。
とにかくお顔の険が取れて、目の下のクマや眉間のシワも薄れて。目のギラリが幾分おさえめです。
というわけで。移動中に、俺たちの今までの経緯とか魔法のことについて、殿下とレギに話すことにしました。自己紹介的な?
異世界から来た、というのは。普通に頭おかしいと思われそうだから、内緒ですけど。
「ローディ子爵の屋敷で奴隷になった…その前は?」
俺たちがこの世界に来たときから、奴隷になったあらましをツラツラ話していると、殿下にたずねられ。
えぇと。その前?
「が、外国で、普通に生活していましたけど」
「外国? なに国だ? スタインベルンにはなにをしに来た?」
なにやら余裕たっぷりの、薄い笑みを浮かべて殿下に重ねて聞かれるけれど。
なに国? 知らんがな。
「に、ににににに、日本?」
「なんで疑問形なのだ? しかもそんな国、聞いたことない」
「遠い遠いところにある、小さな島国、なんです、けどぉ……?」
殿下にジロリと睨まれ。
駄目? 誤魔化せない?
ヤバいです。全然わからない。
いかにも挙動不審です。レギにも、うさん臭そうに睨まれます。
どうしよう、小枝?
そう思って小枝を見やると。ぼくは知りませんと言わんばかりに、窓の外を眺めているよぉ。
助けてよぉ、小枝。トリセツなんでしょう?
「まぁ、いい。おまえらは女神からの預かりものということにしてやる」
殿下はそう言うと、ジロリを引っ込めてくれました。
え、いいのですか?
良かったぁ、これ以上詮索されないで済みそう。でも…。
「あの、戦場で言われていた神の手というのは。大袈裟なんです。俺の魔法は、麻酔や鎮痛の効果があるスリーパーというもので。小枝は汚染を除去して綺麗にするクリーンという魔法なので。神様みたいな効果ではないんですよ。だから女神からの預かりものだなんて、大袈裟です」
魔法のことは、もう殿下は知っているし。
だから魔法のあるなしが身請け料に反映することも、もうないので。魔法持ちだということを隠す必要はなくなった。
というか、億を積まれても手放さないと殿下は公言しているので。えぇぇ…。
奴隷からの脱出の芽は見当たりませんっっ。
それはともかく。
俺がそう言うと、殿下はニヤリと片頬を引き上げて笑う。
イケメンなんだから、わざわざ悪人顔することないのに。
「神の手ではないということなら、不法入国者として捕まえることになるが?」
「いいえ、俺らは神の手です」
すかさず訂正すると。
王子はククと笑って。傷が痛むから笑わすな、とつぶやくのだった。
昨日の移動中と比べても、殿下の顔色もよく。人当たりもとても穏やかになりました。元気が一番ですね?
昨夜、殿下は不眠症だと言っていたが。
きっと不眠状態が長く続いていて、険しい表情が標準状態になっていたのでしょうね?
普通に眠れるようになって、ディオン殿下が本来のご自身を取り戻すことが出来たらいいと、心底思います。
「あの黒い騎士を倒したのも、おまえのスリーパーなのだろう? アンドリューからそう聞いている」
思いがけず、アンドリューさんの名が出てきて。俺は美しい緑の騎士を思い浮かべた。
「アンドリューさんが?」
「奴隷商に魔法のことを知られたくなかったということも聞いていたので。その件は俺の胸におさめてある」
「そうですか。奴隷商の手からは離れたので、もういいのですけど。アンドリューさんに褒章を受けてもらいたいので、そのままにしてください」
「あぁ。しばらくは、俺がおまえを手中にしたことを広めたくないので。そうさせてもらう。おまえらは自覚がないようだが、スリーパーもクリーンも属性不明の高等魔法に値する。国宝級と言えるかもしれない。しかし、それが世に広まると、なにかと窮屈な暮らしを強いられることになるかもしれないのだ。教会で保護…という名の監禁や。魔導士協会で実験体とされるか…」
俺は殿下の言葉にゾワッとし。小枝も俺にヒシッと抱きついて、おののいた。
「処刑も無理だけどぉ、実験動物の方がもっと無理ぃ」
小枝はこっそり俺の耳に囁いた。
当たり前だっ。元の世界のモルモットみたいに小枝が扱われるようなことがあったら、パパは許しません。
「そんなのは、嫌です」
小枝の気持ちも代弁して、しっかりと訴えると。彼はうなずいた。
「あぁ。俺が守ってやる。だからおまえらはいつも俺のそばにいろ。そして魔法のことはなるべく吹聴しないように。コエダもいいな?」
殿下に言われ、小枝はチョンと首を傾げる。
目んめ真ん丸で、あぁ、可愛い。
「ふいちょー…」
「言いふらさないということだよ? 魔法出来るって言わない約束、できるか?」
「はい。それは願ってもないことですぅ」
ちょっと、意味はわからないが。
昨日、俺が殿下に言った言葉を真似したのかもね?
「しかし、スリーパーであの黒騎士を倒したというのなら、殿下の護衛に最適ですね?」
レギがそんなことを言い出して。俺はボディーガードをイメージして。手も首も横に振る。
「えぇ? 無理ですよ。俺、剣も使えないし運動も苦手なんです」
学生時代はほぼ勉強漬けで、運動の類に力を入れなかったものだから。
外科医は体力勝負なので、ランニングやストレッチくらいは身につけていますが。実践は皆無です。
するとレギは澄ました顔で言いました。
「暴漢が現れたら、スリーパーすればいいのです」
「あ、そうか」
どうも俺の頭には、スリーパーは外科医に役立つ能力という意識しかない。医療行為と思い込んでいた。
そういう応用があるのだと、なかなか思いつかないんだよな。
黒騎士のときは小枝の助言でスリーパーしたけど。ただただ必死だったからな?
「子爵邸で兵士に囲まれたときも、スリーパーで逃げれば良かったのにな」
殿下に言われ。
はああぁぁぁああ? となる。
俺も小枝も、目を真ん丸にして、口も真ん丸にして、声なき悲鳴をあげたのだった。
すると、俺たちの顔を見て。殿下もレギも横を向いてプッと吹き出す。
「傷が痛むから変な顔をして笑かすなって言っただろうがっ」
あぁぁ、俺のこと魔法持ちの癖に魔法を使えないマヌケだと思ったのですね? 失礼な。
そして逆ギレもするとか…理不尽。
でも、そうだよぉ、マヌケだよぉ。スリーパーで逃げていたら、奴隷なんかにならないですんだのにぃ??
けれど、そのときは。スリーパーでそんなことができるなんて、わからなかった。
マジかぁ、迂闊だったぁ。つか、もっと早く教えてよぉ、女神さまっ。
「…ともあれ、黒騎士を倒したのは立派な功績だ。個人的に褒美をやろう。この国で生活できるよう、戸籍を作ってやる」
「戸籍、ですか?」
「あぁ。タイジュが俺の元で働く分には、特に必要性はないが。コエダがいずれ学園に入るときや就職するときに必要になる。どうせおまえら、身分証とか持っていないんだろ?」
俺は王子の言葉にコクコクうなずく。
えぇ? この世界でも身分証あるんだぁ? それなら絶対欲しいっ。
日本でも身分証はなにかといえば提示を求められたし。きっとこの世界でも必要なものだよな?
しかし殿下は、本当にすごい。
俺たちの将来についてよく考えてくれて、気も配ってくれるのだ。
小枝のためにこれからなにが必要で、どうしたらいいとか。本当はパパである俺が考えなきゃならないのに。
この世界に来て、まだここでの常識とかもわかっていなくて。
でもそんなの、理由にならないよな?
そろそろ俺も、しっかりこの世界に根っこを生やして、小枝を立派に育てるために土台作りを始めなきゃならない。
「戸籍も身分証も欲しいです。それは大切なことだし、ありがたいことです。殿下、ご配慮いただき、ありがとうございます。とても助かります。小枝が学園に通うところを見ることが出来たら、どんなに幸せなことかっ」
前の世界では、小枝の御入学を迎えられなかったが。
この地でそれは、まだワンチャンあるのだなっ?
学園の制服を着た小枝が、門の前でにっこり、とかも?
その場面を思い浮かべれば、なんだかやる気が湧いてくるよっ。
まだ出会って間もない俺たちに、ここまで良くしてくれる殿下に、俺は真摯に尽くしたいと思った。
なんでもやりますっ。
「レギ、手配をしてくれ」
「承知しました。ですが、彼らの素性をもっと調べた方が…」
「彼らが何者か、どこから来たのか。それは俺にはどうでもいいことだ。タイジュが俺にこれからもたらしてくれるものこそが重要。タイジュのことは奴隷ではなく、神の手、女神からの預かりもの、そのような意識でレギも相対してくれ」
殿下に言われたレギは。軽く息をついて、俺をみつめる。
「タイジュ。あなた方は本当にうさん臭くて、私はどうにも心配ですが。悪い方たちには見えませんし。あなた方から近づいてきたわけではないので、スパイや暗殺の恐れもないでしょうし。むしろ、この国と関わりのない場所で今まで過ごしていたのなら、殿下にとって、何者の息もかかっていない貴重な人物と言えるでしょう。それに、あなたの診察を受けるようになってから、殿下の調子も目に見えて良いようですし。まぁ、いいでしょう」
レギは、すっごく長々といろいろ言っていたけれど。
それってつまり、戸籍を作ってくれるってことだよね?
俺たちと仲良くしてくれるってことだよね?
「ありがとう、レギっ」
嬉しくなって、笑顔で言ったら。
「ありがとうございます、レギ様、だ」
タメ口は、まだ許してくれないようです。しょんぼり。
「パパ、どんまい」
小枝にも、薄笑いで慰められた。
五歳になだめられる、未熟なパパ。くぅ。
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(この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)