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1巻
1-1
ふと気がつくと、目の前に金髪の女の子がいた。
フリルやリボンがついている、どこかの高校の制服のようなものを着ている。でも紺色の制服はところどころ汚れたり破れたりしていて、彼女自身も傷を負って床に倒れこんでいた。
悲しそうな目をして、彼女は僕をみつめる。
「話を聞いてちょうだい、ノワール。私はあなたの味方よ。ネロディアス王子を助けたいの」
少し垂れ目で、頼りなげな印象の少女は、青い瞳を潤ませる。
「聖女、あなたと話をしたあと殿下は変わられてしまった。従者である私にまで冷たい目を向けるようになって……あの方になにをしたのです?」
僕が話したというよりは、夢の中でその場面を見ているような感覚だ。この言葉も自分が考えて話したのではなく、口が勝手に動いた感じ。
そして、聖女という言葉とこの場面に、僕は見覚えがあった。でも、なんだっけ?
「ずっとあなたのそばにいる。どんなあなたも受け止める。そう言っただけよ」
ノワールと呼ばれた男の意識が、僕の中に入りこんできた。
そんなものは詭弁だ。孤独なあの方に、そんな言葉は届かない。けれど、自暴自棄になってすべてを壊したいと望んだあの方を救ってくれるのなら……
そこまで考えて、僕――いや私は、自分があの高貴な御方の忠実なる僕であり従者であるノワールだと思い出した。私はあの御方に害成す聖女を、ここで食い止めているのだ。
だが、聖女の真摯な表情に、私の心は動かされる。
「……本当にネロディアス様を助けてくれるのか?」
清らかな心根だという聖女なら、本当にあの御方のすべてを受け入れてくれるのかもしれない。そう思い、私は床に膝をついて、傷ついて立ち上がれずにいた彼女を助け起こす。
「やめてっ、私はネロディアス様のものよ。あなたの愛には応えられないわ」
すると突然、聖女がわけのわからないことを叫び、後ろに飛び退いた。
いきなりのことに驚いて目をみはった直後。背中を熱杭で貫かれたような猛烈な痛みを感じた。目の前にいた聖女の顔に鮮血が飛び散る。
気づくと自分の腹から大剣が突き出ていて、あまりの激痛で、息ができない。咳きこみ、口からも血を吐いた。私はギクシャクと後ろを振り返る。
背後に、少し赤みがかったゴールドに輝く髪の男がいた。
私を、背中から大剣で刺した、その男。
白き肌に高い鼻梁。切れ長の目で私を見下ろす、その琥珀色の瞳は烈火の怒りに燃えている。それは私が従者を務めている、ネロディアス王子だった。
「主を差し置き聖女の誘惑に屈するとは、愚かな従者であるな」
「ネロディアス様、なぜ、私を……」
味方であるはずの王子に後ろから刺され、私は絶望のままにつぶやく。
「我に気安く話しかけるでないっ」
しかし彼は大剣を大きく振って、私の体を壁に打ち捨てた。その身に、壁に叩きつけられた衝撃と、体を貫いていた剣が抜き取られる痛みが襲い掛かる。体に力が入らず、意識も朦朧として、なにがなんだかわからない。
「ネロディアス様、彼がいきなり私のこと……怖かったわ」
涙ぐんで王子に駆け寄る聖女。王子は剣を持たぬ左手でドラマティックに彼女を熱く抱き止めた。
その展開が、まったく信じられなかった。王子と聖女は敵対していたはずなのに、目の前の聖女は王子と抱き合い、味方の私が無残に剣の餌食になっている。
なぜ? なぜなのだ!?
あれほど献身的に尽くしてきたというのに。私はネロディアス様のために生きてきたというのに。あなたのためなら、それがどのような悪行でも遂行してきたというのに。
「聖女よ、あの者には魔法が効かぬ。我の妃になるのなら、あの者を剣で刺すくらいのしたたかさが欲しいものだな」
聖女には優しい声で話すのに、王子は私の名すら呼んでくれない。子供のときから王子のお世話をしてきたが、もしかしたら、たかが従者の私の名前など知らないのかもしれないな。
聖女の肩を抱き寄せる王子は、冷たく私を見下ろしてニヤリと嘲笑する。
「我から聖女をかすめ取ろうとしたようだが、そうはいかぬ。これからは聖女が我の女になる。裏切り者のおまえは、もう用なしだ」
死の間際に聞こえた、容赦のない言葉。
だけど。私は決して主を裏切ったりはしない。それだけは、お伝えしたかった。
もう少し生きられたのなら、誤解だと告げられたのに……
★★★★★
暖炉の薪がパチンとはぜて、私はその音にびくりと体を震わせた。絵本を見ながら寝ていたみたいだ。
私の名前はノワール・セベスティエン。四歳。
だけど、夢を見たせいか唐突に自我が芽生えた。自我というか、昔の……前世である日本人だったときの記憶を思い出したんだ。
私は平田篠という名前の男性で、三十二歳だ。いや、だった、か。
今いるここは、日本ではない。そして、今いるこの世界に、日本はない。
そんな世界にいつの間にかいて、ノワールになっている。ということは、前世の自分は死んでしまったのかな? 病気ではなかったし、働きすぎるほど愛社精神もないから過労死でもない。いきなり死んだようなので、おそらく事故だろう。
冷静に分析しているが、これでも結構慌てている。
先ほどの夢があまりにもリアルだったので、今も腹が裂けたかのように痛い気がするのだ。
ほんの少しのノワールの意識、そして前世の篠の膨大な意識が混ぜ合わされて、頭がぼんやりしている。四歳児の脳みそには、たぶんキャパオーバーなんだな。前世で読んだ本の中に、よくそんな描写があったなと思い出す。
とはいえ四歳児ノワールは、突然の出来事に泣いたりわめいたりすることもなく、篠の意識にぼんやりと寄り添っているのだ。君も大概だと思う。
それはともかく、情報収集をする。よくわからないことは、情報を集めて理解することが肝心だ。
視線を上げると大きな暖炉があった。煉瓦で組んであって、薪で火を起こす旧式タイプ。
日本には、こんな本格的な暖炉はあまりなかった。憧れではあるが、あれは煤や灰の処理が大変だと聞いたことがある。
しかし、子供部屋にこれほど大きな暖炉があるということは、ノワールは良いところの子なのかもしれない。そういえば、前世では自分のことは僕だったが、ノワールは私と言うようにしつけられている。貴族かな? それはノワールにはわかっていないことみたいだな。
それよりも、先ほどの夢のほうが一大事だ。
剣が刺さった感触とか、聖女の顔とか、王子の声がやけに生々しかったから、もしかしたらノワールの人生やり直しの展開のような気もする。
というかその前に、あの場面やセリフに見覚えや聞き覚えがあった。
――夢の中で私を無残に殺したあの男は、もしかして冷酷無慈悲なラスボス王子なのでは??
前世で妹がプレイしていた乙女ゲーム『花びらを恋の数だけ抱きしめて』通称『花抱き』というものがあるのだが、その中に出てくるラスボスがネロディアス王子という名だった。そして、その従者はノワール……
夢で見たのは、ラスボス戦のひとつ手前の、主人公の聖女がラスボス王子の従者と対峙する場面。ストーリーはいろいろなバリエーションがあるが、そのうちの逆ハーレムルートのセリフだった。
なんで妹がプレイしていたゲームの詳細を知っているかというと、『花抱き』ではレベル上げやゲーム要素の割合が多くて、それを手伝わされていたからだ。妹は恋愛シミュレーション部分ばかりして、地味なレベル上げは兄の私に丸投げだった。したたかな妹である。
つまり、私がノワールであるなら、これはゲーム内転生なのだ。たぶん。
そして『花抱き』の中でのノワールというキャラについてなのだが……聖女がゲームの終盤で戦うネロディアス王子の従者をしていて、主人公がどのルートを通っても味方であるラスボスに無残に殺される役回りだった。
認めたくないことながら、どうやら私は『花抱き』の中のモブキャラ、ノワールに転生したようだ。
ノワールはゲームでバトルするときはかろうじて顔が出たが、普段ラスボス王子の従者をしているときは顔に目が描かれていないモブ従者である。
なぜ、そんなモブのノワールのことを私がこれほどまでに覚えているのかというと、魔法が全然通じなくて、ラスボスステージに進むのに毎回苦労させられたからだ。
かといって、所詮モブなので強いわけではない。このモブを排除しなければラスボス王子が出てこないのだが、その排除方法が毎回違っていて難儀だったというだけ。
ノワールはただのクソキャラで捨てキャラ、そして死にキャラだった。
つまり、そのノワールが私ならば、私の命は十八歳で散る運命。
「よりによって、なんでノワールなんだっ」
他の攻略対象だったらゲームに巻きこまれないよう工作することもできるだろうに、ラスボス王子の従者はひとり、ノワールオンリーだ。ゲーム離脱は至難の業か?
自我が芽生えて数十分。苛酷な人生の結末を知って、途方に暮れる四歳児なのであった。
「いやっ、まだ望みはある。私は四歳児なのだから、未来はどのようにも変えられるはず。結末はわかっているのだから、そうならないようにすればいいんだ」
夢の中でラスボス王子に睨まれた、あの憤怒の顔を思い出し、背筋を震わせる。
「とりあえず、ラスボス王子の従者にならないようにしよう」
情けない声でつぶやく私……けれど、もう少し生きられたのなら、と言った死ぬ間際のノワールの切実な想いが胸を締めつける。
私は死亡回避に全力を尽くすと心に決めたのだった。
★★★★★
「ノノ兄ぃ、早く代わって。ぶっ刺されちゃう」
妹に言われ、僕は画面を見る。ちなみにノノ兄ぃは僕、篠兄から変形した愛称だ。
この妹とのやり取りは、前世では日常だった。
妹は『花抱き』をプレイ中。机の上にある大きなモニターに映る場面は、聖女がノワールに向けて言い放つ言葉『まだ間に合うわ。今ならネロディアス王子を救えるのよ』を選択肢の中からチョイスしたところ。無難にハッピーエンドルート爆進中だ。
ゆえに『本当ですか? 王子を救ってくださるのですね?』と言って近づいてきたノワールを、短剣でグサリと刺す。聖女を操作する妹には、ノワールを救う気などない。その次のラスボス戦をやる気満々だ。しかし戦闘モードが苦手な妹は、僕にコントローラーを投げて寄越した。
ノワールになった僕には、この場面は心臓が痛い。だが、前世の僕はすかさず聖女を後退させる操作をする。その手元の動きはよどみない。すぐにもノワールの腹から大剣が出てくるからだ。
事実、ノワールは背中から刺され、大剣が腹から突き出てくる。
後退したことにより、聖女は無傷だ。その彼女の目線が、腹を串刺しにされたノワールの背後に移る。そこにはラスボスであるネロディアス王子がいた。
ゴールドの髪が怒りを表すかのように、燃える炎みたいに描かれている。鋭い視線に高い鼻梁、このゲームの中の誰よりも美形だが、人を人とも思わず屍を土足で踏みつけ、目に入る者はすべて傷つける、冷酷無慈悲なラスボス王子であった。
詰襟タイプの黒い衣装を身にまとい、赤いマントをひるがえすサマは、いかにもラスボス。
赤みがかった金髪がゆるくウェーブしている。とてもゴージャスなのだけど、毛量の多い髪が肩まで伸びていて、その様子がたてがみのように見えるから、僕は彼のことを『ライオンさん』と呼んでいた。妹には『ネロ様のイメージ壊れるからやめてっ』と不評だったけど。
ネロディアス王子は冷たい目でこちら、いや、聖女を睥睨した。
目の前にはぐっさり状態のノワール。彼はノワールごと聖女を串刺しにしようとしたのだ。間一髪免れた聖女はネロディアス王子を見ておののく。
『味方を刺すなんて……あなたには人を愛する心がないのねっ』
そう言って、聖女は聖なる光をネロディアス王子にかざそうとする。
いや、ノワールを刺した時点で、僕は聖女にも同じ言葉を返したい。
彼は大剣を軽々と振って、串刺しにしたノワールを払い捨ててしまう。
『愛など、この世に存在しない』
壁にぶち当たって、倒れゆくノワール。
以上。これが僕の、いや、ノワールの最後の姿パートツーである。
★★★★★
あ、本を読みながら、また寝ていたみたいだ。幼児の体はすぐに眠くなって困るね。
四歳のときに前世の記憶を思い出し、私はいろいろと驚愕したわけだが、あれから二年が経って今は六歳である。ノワールの私と篠の僕は良い感じに混ざり合い、互いが自分のように馴染んできた今日この頃だ。
しかしながら、今しがたのうたた寝で見た前世の夢。あれはゲームをする僕とゲーム上の私の姿だったが、あのぐっさりにはなりたくないね。
ちなみに、さっきのはハッピーエンドルートだった。
四歳のときに見た夢は、逆ハーレムルートであり、話の流れやセリフは若干異なる。『花抱き』は、主人公である聖女がどの選択肢を選ぶかで結末が変わるゲームだからだ。
しかし聖女がどのルートを選択しても、ノワールは死ぬ。確実に死ぬ。
大体は、ラスボス王子が従者ごと聖女を殺そうとして、従者だけが死ぬパターン。しかしシチュエーションの違いはあれど、結局ノワールは死ぬのだ。
その、十八歳で死ぬ運命のノワールに転生してしまった私は、死亡を回避するため、この二年間は一生懸命勉強をした。文字の読み書きができないと、何事もはじまらないからね。最悪、国から脱出することも考えて、どう転がっても良いように備えている最中だ。
その甲斐あって、今は屋敷の書庫にあるどの本も読めるようになった。天井まで伸びるいっぱいの本棚には書籍がぎっしりで、前世で活字中毒だった私としては嬉しい限りである。存分に知識を吸収することができた。
今はこの国、ストラーレン王国のことや、私の家のこと、町の様子や社会の仕組みなどを中心に調べている。本の知識はなんでも死亡回避の役に立つと思っていた。のだが……調べれば調べるほど、ノワールの現状はなかなかシビアなのだった。
この世界は魔力で満ちている。
ストラーレン王国は魔力量で人の優劣をつける魔力第一主義の国だ。
北方に位置した極寒の地にあり、一年のうち雪が積もっていない期間が三ヶ月しかない。この寒い国では火属性魔法が尊ばれるが、それを駆使できるのは王族だけなんだ。
生活で使う火は、すべて王家から支給される。
町の中心に火が絶えることのないトーチがあり――本に書かれたその様子を見て、オリンピックの聖火のようだと思った――そこから火を分けてもらうスタイルらしい。
そこから取った火種はそう簡単には消えない、と本に書いてある。
政治的側面を言うと、その火属性の王家を魔力量の大きい貴族が支えている。中でも国で三本指に入る魔力量保持者が公爵家を名乗ることができるのだ。
現公爵家はセベスティエン家、キリング家、シャルムント家。
『花抱き』の舞台は、ストラーレン王国の魔法学園なのだが、聖女の仲間になりえる主要攻略対象キャラの姓名が公爵家の名前と同じであった。
それを知ったときは、本当にがっかりしたな。ここが『花抱き』のゲーム内世界だということが、残念ながらほぼ確定したからね。偶然同じ名前なのだと思いたかった。でも死に際の夢も見ているからな、自分があのモブ従者であると認めて腹をくくるしかない。
都合の悪い状況から目をそらしていつの間にかゲームのストーリーに巻きこまれるより、モブだと認めて回避するよう動くほうが建設的だ。
というか、私の生家はなんと、セベスティエン公爵家だった。
公爵家といえば、『花抱き』の中では有力な攻略対象候補になるはずの名家である。なのに、なぜノワールは悪役で、ラスボス王子の従者になるのか?
それには、ちゃんとからくりがある。
セベスティエン公爵家は水属性の名家で、代々青髪で豊富な魔力量を持つ子孫を生み出し、公爵家を三百年存続してきた実績があった。
しかし、その家の長男として生まれてきた私は、黒髪。しかも魔力なし。いっさい、ナシ。
とてもショックだった。剣と魔法の異世界に転生したというのに、魔法が使えないなんて。
私のがっかり具合もなかなかだったが、母上の落胆は相当にひどかったようだ。青髪家系で黒髪の私が生まれたことで不義を疑われたらしく、その元凶である私を母上はなかったことにしたくらいだからね。
物心ついたとき、いやその前から、私はセベスティエン公爵家の屋敷の奥のほうで隠されるようにして育てられた。一応、衣食住は充分にいただいていたが、外には出られなかった。黒髪の長男の存在を、両親は世間にひた隠しにしていたわけだ。
私の面倒を見てくれたのは、乳母のモーラだけ。両親は奥に滅多に顔を出さないので、この一連の話はモーラに聞いた。最初は詳しい話をすることを渋っていたけれど、幼い私を放置する両親にモーラは思うところがあったみたい。勉強してある程度この国の仕組みを知った私に、涙ながらにそう教えてくれたのだった。
それについて、つい最近、珍しく奥に来た父上に聞いてみたところ……
「黒髪で魔力なしのおまえが公爵家の人間であると名乗ることはまかりならぬ。成人までは面倒を見てやる。だがその間、人目に触れてはならぬ。そして大人になったら公爵家を出て、庶民としてひっそり暮らせ」なんてことを言われたのだった。
六歳児に、そういうこと言う? まぁ、前世の知識がある私には、意味はわかりますけど。
つまり、ゲームのノワールは公爵子息だけど魔力がないので親に見放され、グレちゃったんだろうね。それで道を外れた者同士が徒党を組んで、ラスボス王子とその従者になったのだろう。
まぁ、ほぼほぼ憶測だけど、辻褄は合う。
それにラスボスは第二王子なのだけど、王家の者の従者になるにはそれなりの家格がいるから、そういう点でもあり得る話だ。
普通は公爵子息といったら、従者ではなく王子のご学友になるものなんだけどな。
あ、魔力がないから、ご学友になれなかったんだ。『花抱き』の舞台は魔法学園だけど、魔力がないから学園には入れず、王子のご学友にもなれなかった、ってこと?
設定、細かい。凝りすぎじゃないか?
それはともかく、ストラーレン王国の現在の王様はマルティネス様。王様はゲームの中に出てこないので答え合わせはできないが、第一王子はウェルナンド様、第二王子がネロディアス様、このふたりは確実にゲームに出てくる。
そして私が従者になるラスボス予定の人物は、第二王子のネロディアス様。
普通の生活の中でどのようにゲームが進行していくのか、それはわからない。もしかしたらゲームと関係なく暮らしていけるのかもしれないが、ここまでゲーム色が濃厚だと、なにも起きないというほうがあり得ないような気がする。
私は妹のゲーム攻略に何度も力を貸したけど、それは聖女が幸せになる物語であって、ノワールを救出したことなど一度もない。つまり、対ノワールの攻略法などないのだ。
とりあえず、死亡回避のためにラスボス王子に会わないようにする。これは絶対だ。
「兄上ぇ、またご本をよんでいるの?」
高い場所にある小さな窓からしか明かりが入らない、薄暗い書庫の中に弟が入ってきた。幼児特有の愛らしい声でそう聞いたのは、アベーチェ・セベスティエン、五歳。私よりひとつ年下だ。
そして『花抱き』において、攻略対象有力候補のひとりでもある。
攻略対象は、主人公である聖女が魔法学園の生徒百名の中から四人をチョイスする。
なので、アベーチェが絶対選ばれるとは限らないが、強いパーティーを組むのなら公爵子息で魔力量の多い、つまり強キャラの素質があってラスボス戦で有利になるアベーチェが選ばれる確率は高いのだ。水属性のアベーチェは火属性のラスボス王子と互角に戦うので、妹などは真っ先に選んでいたキャラだった。
しかし今、アベーチェはまだ五歳。聖女と色恋するなど考えもしないだろう、ほっぺがもっちりの可愛い弟である。
紺色の綿入りポンチョを身にまとい、黒タイツの上に厚地の半ズボンをはいている、北国仕様の子供服……いや、綿入りポンチョはストラーレン王国の民族衣装なのかもしれないな。よくは知らないが。
癖毛な青髪はフワワンとして、瞳はサファイアのごとく濃い青色。うむ、しっかりセベスティエン公爵家の血を受け継いだ容姿である。そのことに満足し、私は弟の質問に答えた。
「私は本を読むのが好きなんだ。本の世界は自由だからね」
「兄上は奥に閉じこめられているから、ご本をよんで自由をかんじているのですね? おかわいそうな兄上ですぅぅ」
そう言って抱きついてくるアベーチェ。いや、そこまで薄幸な感じではないよ、本当に本好きなだけだから。
「兄上、ぼく、またお熱が出そうなのです。またアレをやってぇ、やってぇ」
無邪気にギュウギュウと私の服を握ってくるから、私は読んでいた本をかたわらに置き、アベーチェをやんわり抱き締めた。そうすると、アベーチェの体からにじみ出ていた余分な魔力がシュワッと私の中に吸収されていく。
この世界は魔力に満ちていて、優劣はあれど、ほとんどの者が魔法を使える。そんな中、私には魔力がない。魔法をまったく使えない。なのだが、人の魔力を吸い取ったり魔法を相殺したりすることができた。いわゆる、魔法無効化というやつだ。
不思議な能力ではあるのだがこれは体質のようなもので、魔力を媒体にして作り出す魔法ではないらしい。なぜ私にそのようなことができるのかはわからない。
だが、わけのわからない力だから、父上や母上はおぞましい顔で私を見るのだろう。
魔法に重きを置くこの世界では、魔法を吸収する能力は異端なのだ。誰も理解しようとしないし、魔法に依存する者にとっては脅威でしかないのだろうね。
だから両親は、私のことなどなかったことにしたいのだ。
まぁ、それはともかく。ゲームでも、聖女の魔法はノワールに効かなくて、ゆえに攻略が難しかったわけ。
「はぁ、兄上ぇぇ、いやされますぅぅ」
まるで、お風呂に浸かって気持ち良いぃぃと言うかのごとく、アベーチェはそうつぶやいた。
アベーチェは時折熱を出す子だった。小さな体に膨大な魔力がおさまりきれず、魔力を制御できなくて体調を崩すらしい。これがひどくなると魔力暴走することもある。
前世風に言えば、知恵熱? 自家中毒かな?
生まれつき魔力が多い子供を輩出する高位貴族の家の子に、よくある現象のようだ。
だが余った魔力を私が吸うことで、弟の熱はおさまった。私の能力は異端かもしれないけれど、こうして弟の役に立てるのであれば悪いばかりでもないな。
「アベーチェ、ちゃんと母上に言ってから奥に来たのかい? 黙ってここに来たら母上に怒られてしまうよ」
「十分だけだって。もう、どうしてお熱が下がるのに兄上に会ったらダメなのぉ? 父上も母上も、もっと兄上を大事にするべきです。兄上はぼくの頭痛をなおしてくれるすごい人なのにぃ」
鼻息をフンフンさせて、アベーチェはそう言うけど。
「国一番の魔力を誇る公爵家に、魔力なしが生まれるのはダメなんだって。でもアベーチェが生まれてくれたから、私はとても嬉しいよ。どうか私の代わりに、公爵家を守り立てておくれ」
「そんなの、いやです。ぼくは兄上といっしょに、公爵家をもり……もりたてます。そして早く兄上を、この暗い奥から出してあげます。そしたらぼくとずっといっしょにいられますね?」
奥というのは、この書庫や私の子供部屋がある、公爵邸の北側の一番奥のこと。いわゆる、生まれたときから私が住んでいる居住スペースの通称だ。
奥には書庫の他に、倉庫とかパントリーとか、買ったものを置いておくような部屋がある。この区域にはモーラと一部の使用人しかやってこない、おおよそ入室禁止エリアだ。
両親も、ほぼやってこない。熱っぽいときにアベーチェがやってくるだけだ。
異端であり、容姿も公爵家の者とかけ離れている私は、誰にも会ってはならない。だからつい最近までアベーチェにも会ったことがなかった。
しかし半年前、ヤンチャな弟は探検と称してこの区域に入りこんできたのだ。
今日のように書庫で私を発見したアベーチェは、青い目を真ん丸にした。
「あなたはだぁれ?」
屋敷に自分と同じくらいの子供がいて驚いたのだろう。
でも私は、モーラから弟がいることを事前に聞いていたし、ゲームの知識で、セベスティエン公爵家の子息はアベーチェであると知っていた。妹のお気にだったので。
ゆえに、兄だと答えた。
「兄? 兄上ぇぇ? ぼくに兄上がいたなんてぇぇ」
驚愕して手でほっぺをおさえるアベーチェだったが、捜しに来た使用人にみつかって、すぐに本棟に連れ戻されたのだった。
そんな経緯があったのだが、アベーチェの頭を撫でたときに魔力を吸収された感覚がわかったみたいで、すっごく気持ちが良かったからまたやってと言って、たびたび私のところに来るようになってしまった。
母上は異端の力でアベーチェの魔力を吸われるのがイヤみたいだけど、確かに熱は下がるし、アベーチェが私と会いたがるので、渋々認めているようだ。
「もう十分は過ぎたのではない? 母上がヤキモキしてアベーチェの帰りを待っているよ。アベーチェは公爵家の跡取り息子、母上にとって大事な大事な子供なのだからね」
それに、母上の怒りがこちらに飛び火したらイヤなのである。
母上は私の存在自体が許せないみたいだ。奥にはほぼやってこない母上だけど、たまに怒りが湧き起こると奥に顔を出す。そのときは私に辛辣な言葉を浴びせてきた。
八つ当たりは困るんだよな。まぁ、篠的大人対応で大抵はスルーしている。けれどそうは言っても、母上に刃のような言葉で切りつけられたら、私の心の中にある子供のノワールの部分がしくしくと痛むのだ。
私の言葉を聞くなり、アベーチェは眉尻を下げた。
「兄上も、ぼくが大事? また来てもいい?」
「もちろん、アベーチェは私の大切な弟だよ。いつでも遊びにおいで」
微笑みかけて言うと、彼は笑顔を弾けさせる。
――無邪気で可愛い弟。父上も母上も、公爵家後継も、地位も財産も、愛も。私が持つべきものすべてを奪う、憎き弟。
ゲームの中のノワールは、そんなふうに思って弟を恨んだかもしれない。
でも私は、前世でもお兄ちゃんだったのだ。妹も弟もいて家族円満、なんの懸念もなかった。だから、ゲームでは兄弟で戦う場面があったが、弟に敵意を向ける気持ち、私にはわからないな。
弟妹というものは、無条件に可愛がるべき存在だと思っている。小さくて、どこもかしこも丸くて、たとえ成長して私の身長を追い越したとしても、可愛い以外の言葉はない。前世で弟に身長を越されたときちょっとだけ自分を不甲斐なく思ったけれど、弟が大きくなること自体は嬉しかったよ。
前世の弟も妹も、アベーチェも、無邪気に私を慕ってくれた。その様子を見れば、こちらも守ってあげたくなるものだ。
アベーチェは公爵子息で魔力量が多く、すぐに魔法を自在に操るようになるだろう。私などが守らなくても誰より強い水魔法使いになる。
けれど、小さいうちは私が守るよ。なにものからも、苦しい熱からも、転んで怪我したときも、抱きしめて優しくつつんであげる。だって、私はお兄ちゃんだからね。
まぁ……ゲームの中のアベーチェは兄の私に容赦なく魔法をぶっ放してきたから、思うところはあるが、今は私にしがみついてくる甘えん坊な弟だ。
いつか、弟に魔法をぶっ放されるときがくるのかと思うと、悲しいけどね。
というか、私とアベーチェが兄弟だと知ったのは、こちらに転生したあとのことなのだ。
ゲームでノワールはモブだった。出自不詳ってやつ。もしかしたら、ゲーム内では私とアベーチェが兄弟という設定自体がなかったのかもしれない。つまり、ゲームでのアベーチェ対ノワールの場面は兄弟対決ではなかった、のかな?
だから正直、ノワールの出自は意外だったんだ。まさか、顔を出した直後に死ぬモブが、公爵子息だったとはね。
そんな考えに耽っている間に、アベーチェは笑顔で屋敷の本棟に戻っていった。私は彼を見送ったあと、読みかけの本を手に取り、再び読書を開始する。
六歳にして私が書庫の本を読みあさっている理由は、もちろんラスボスの従者を回避するためにどんな知識をも身につけたいからだけど。もうひとつ、成人したら家を出ろと父上に言われているからというのもある。
私は十八歳で死ぬ運命だけど、もしも死亡回避できたとしても、町に出てひとりで暮らさなければならない。その準備でもある。
絶対に死ぬとは限らないからな。将来の備えとして知識のインプットは重要だ。
私……というか、篠は元々読書好きで、活字中毒気味だった。本を読むのは苦ではない。どころかずっと本を読んでいられる。
書庫にこもってひたすら本を読んでいていい今の状況は、私には天国だった。
公爵家の書庫にはいろんな書物がいっぱいあるが、魔術書の割合が多い。自分には魔力がないから実用的ではないけれど、どんな原理でどうなるとか、普通に読み物として面白いから敬遠しないで読んでいる。
たとえ面白くなくても、読みはじめたら最後まで読まないと気が済まないタイプ。これぞ活字中毒者。前世でも、どんなジャンルの本も読んだ。特にミステリーが好きだったのだけど、異世界に転生して役に立つのはミステリーよりもライトノベルだったな。もっと読んでおけば良かった。
妹のせいでゲームを極めた時期もあったが、ゲーマーというほどのめりこんだわけではなく、比率としては読書八、ゲーム二くらいのもの。
あ、仕事の時間は別だ。篠は趣味が読書の、平凡な会社員って感じ。
弟はスポーツマンで、本やゲームより体を動かすほうが得意だったため、妹はゲームのレベル上げ要員として私に白羽の矢を立てたわけなのだ。
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宮廷庭師と親交を続けていたルカには、『ネムリバナ』を第三王子の為に学校の温室で育てる役割を与えられていた。アリは花びらを王子の元まで運ぶ役目を負っている。育てる見返りに少量の花びらを入手できるようになったルカは、早速アリに使ってみることに。
やがて問題なく眠れるようになったアリはめきめきと頭角を表し、しがない男爵令息にすぎない平凡なルカには手の届かない存在になっていく。
次第にアリに対する恋心に気づくルカ。だが、男の自分はアリとは不釣り合いだと、卒業を機に離れることを決意する。
アリを見ない為に地方に移ったルカ。実はここは、アリの叔父が経営する領地。そこでたった半年の間に朗らかで輝いていたアリの変わり果てた姿を見てしまい――。
ハイスペ不眠攻めxお人好し平凡受けのファンタジーBLです。ハピエン。
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
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―――
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