ヒロインにはめられました※Lite

KI☆RARA

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ついに、こらえきれずにマリアが叫ぶ。
『解毒薬は壺の裏です!』
果たしてマリアの言う場所に解毒薬は見つかり、王は助かった。

王太子は冷たい目で婚約者を見ると、
『聞きたいことがいくつもあるが、とりあえずは陛下をお救いすることが先だ。ことが落ち着いたら質問するから、正直に答えるように』

そして〝お嬢さま〟の横を通り過ぎると、その後ろで震えるマリアへ、やさしくほほえんだ。


このままでは王太子妃の立場を奪われる!
マリアの存在を邪魔に思った〝お嬢さま〟は、【神々の目】のことがはっきりする前にマリアを殺してしまおうと決心した。

王城の部屋の手すりに細工し、すぐ壊れるようにする。
事故に見せかけてマリアを殺そうとしたが、呼び出したマリアは王太子をともなっていた。
そして王太子に糾弾され、後ずさった際に手すりが壊れ自分の仕掛けた罠にかかって転落死してしまうのだ。

エリザベスの死因について詳細は公にされなかった。
王太子妃かつ【神々の目】としての重圧に耐えられずに気が狂ったのだという人もいれば、謀殺されたのだという人もいた。
しかし、新たな【神々の目】の出現と、王太子の新しい婚約という祝い事に関心は遠のき、人々の口にのぼることもなくなった。

最後は王太子とマリアは結婚して、大団円。

しかも結婚式の場で、お父さんが言うのだ。
実はマリアは伯爵がかつて本気で愛した女性との間の子で、上司の娘だった政略結婚の妻を愛することができず、その娘は実は妻の浮気相手の子だったという。
『そのペンダントは隣国の王家が代々受け継いでいるものだと、かつて彼女が教えてくれた。お前がわたしの娘だという証だ。本当は、お前のことをずっと思っていたよ』
『だんな様‥‥いえ、お父さま‥‥』
ひしと抱き合う親子。


結婚式のシーンを夢に見た途端、はっきりと自覚した。

画面を見ているのは、いつだか分からない、いつか、どこかで存在していた《わたし》。
そして、現在の《わたし》は画面の中の、物語の登場人物。

これまで見てきた断片的な夢が、パズルのピースのようにとてつもないスピードで組み立てられていって、一つの物語ができあがった。
そして、これからなにが起こるのか悟った。

これはマリアの物語で、わたしは悪役として死んでしまうのだ。


冗談じゃない。

死ぬのは嫌。

いますぐここから逃げ出してしまおうか。


(でも)

心のなかの悪魔がささやく。


(シナリオを知っているわたしなら、うまくやれるんじゃないかしら)


ごく、と唾を飲み込んだ。

すでにわたしは王城にあがっていて、シナリオ通りに進んでいる。
いますぐマリアを追い出してしまうこともできるけど、そうすれば次になにが起こるのかまるで予想がつかなくなってしまう。

勝負は解毒薬を巡る、あのやりとり。
そこさえ間違えなければ、きっと‥‥。

わたしは復讐にも似た気持ちをメラメラと燃やしていた。
王太子、お父さま、そしてマリア。
わたしは、あなたたちの舞台から退場なんてしてあげない。
ぜったいに裏切者たちの人生の真ん中に居座ってやる。

マリアは王太子と、結婚なんてさせない。


解毒薬は壺の裏。
それを決して忘れてはならない。


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