『TRAVERUMINA』～名も無き世界に光あれ～

第一章 一新紀元

１-５

「………悪種……いつ紛れ込んだ……浄化せねば……この地を穢す……裏切り者…」



　地面に殴られたように、家が、家族が、一瞬で崩れ去った。



　片方の耳がやられたのか、平衡感覚がはっきりしない。



　ただ、何者かの怨嗟の声だけが聞こえてくる。



　炎を上げる家だったものを、火傷しながらなんとかどかし、外へ這い出る。



　逃げないと、早く、お父さんは……？お母さんは……？



　…



　不意に、手を引かれる。母の手だ。



　訳も分からず、ただ地面を蹴る。



　…が、後ろから怨嗟と火球が迫りくる。



「貴様……ら……の所為……で……我……の教会……の名誉……があ……ぁあ…！」



　一体何を言っているのか、理解できない……後で考えよう……



　意識は朦朧とし、走る気力も、もう底をつきかけていた。



　…



　え……て………



　げて……



　…何か聞こえる。もう休ませて…



「…逃げて！あなた一人でも…！」


母の声で目が覚める。


次の瞬間、突風に体が殴られ、路地裏に突き飛ばされた。


何とか体をねじって振り返ると、今いた場所が完全に焦土と化していた。


…もう、瞬きさえ辛い。


力尽き、視界が暗転する。














１話　楽園追放