『TRAVERUMINA』~名も無き世界に光あれ~

ネコミケ

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第一章 一新紀元

6-1 青天霹靂

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太陽が、私たちを真上から見下ろしている。


気付けば、私がこの街に来てから四か月が経過し、領主様がお帰りになられる予定の日が来た。


ようやく四か月が経ったという気持ちと、長いようで短い四か月だったという二つの気持ちが、心の中で入り混じっている。





「やっと帰ってきたね、領主さん」


「予定通りの日に帰ってくるなんて、律儀な方なんですね。」


「早く可愛い娘に会いたかったんじゃない?」


領主様はきっとお疲れだろうから、手紙だけ送って待とうと思っていた。


ところが、猫さんは次の日に会いに行こうと言う。


なんでも、猫さんはいつも領主様が返ってきた次の日に会いに行って、仕事の報告や次の目的地について相談しているらしい。私はそれについていく、という形だ。





「よう、嬢ちゃん。元気そうで何よりだぜ!」


道中、狼さんと合流した。


二人は仕事仲間だから一緒に会いに行っているのかと、私は納得する。


狼さんは、街にいる間は配達の仕事を手伝っていた。


…たまに見かけたが、走るのが速すぎて、気づくのはいつも通り過ぎた後だったが。


「嬢ちゃん、どうだ?この街は。いいところだろ。」


「はい。皆さんのおかげで、毎日充実した生活を送れています。それに、今は教師の仕事をしているんです。」


「ああ、聞いたぜ。すげえ評判いいんだってな、嬢ちゃんの授業。…すごかったもんな、あんときの氷の包丁。いろんなとこに旅しに行ったけど、ここまで精密な魔法は見たことが無え。」


「ありがとうございます。授業に来てくれる方々を見ていると、私の方も新しく学ぶことが多くて、とても楽しいです。」


…はじめは、私の姿を見たら、みんな怖がってしまうんじゃないかって、不安だったんです。でも、綺麗だ、美人だって、褒めてくれて、安心しました。こんな風に産んでくれたお父さんとお母さんには、本当に感謝しているんです。」


「よかったよ、街を気に入ってくれたみたいで。…それで、この後はどうするつもりなんだ?もちろん、ここに住み着くってんなら大歓迎だけどよ。猫ちゃんと一緒にいるってことは、領主さんに会いに行くってことだろ?」


「お二人が言ってくださったように、私の両親、きっとどこかで生きていると思うんです。でも、一人で探すのも無謀だろうと思って悩んでいて…。そこで、伝手の広い領主様に協力してもらうといいだろうと、猫さんと話していたんです。」


「なるほどな。確かに人探しなら、それが一番よさそうだな。…俺も、できる限りのことはしよう。なんかあったら、遠慮せず俺を頼れよ。」


「ありがとうございます。頼りにしてます。」


「……」


なんだか今日は、猫さんの会話の調子の歯切れが悪い気がする。


いつもなら、「あまり調子に乗らせないことね」とか言って狼さんと掛け合いを始めるところだと思うが、今日はやけに口数が少ない。


悪い夢でも見たのかな。それとも、領主様は実は怖い人なのだろうか。


…いや、こんなに優しさ溢れる街の領主なのだから、いい人に決まっている。


なんだかわからないが、帰りにサバ缶でも買いに行くとしよう。
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