『TRAVERUMINA』~名も無き世界に光あれ~

ネコミケ

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第一章 一新紀元

8-2

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「そろそろ、続きを話そうか。…ああ、そのままで構わないよ。」


「嬢ちゃん、やけに懐かれたなぁ。」


猫さんは私にべったりの状態だが、ヴェスター様はこのまま話を続けるらしい。


「さて、娘は、"魔耐症"という病を抱えている、というところまで話したな。仰々しく語りはしたが、正直、これが解決するのは時間の問題だろう。医療の発達を待つしかない。最大の懸念は、もう一つの問題のほうだ。」


そう言われて、私は身構える。


…が、右側に感じるモフモフ感が緊張感を和らげてくれて、先ほどよりもずっと落ち着いた気分でいる。


「私は、さまざまな場所を巡って来た。そして、たくさんの人々を救ってきたつもりだ。…だが、誰かの味方になるということは、誰かの敵にもなりうるということだ。少なからず、私のことをよく思わない者もいる。」


物語でもよくある、勇者や英雄と呼ばれる者の性だ。


心優しい人間が万人に受け入れられるかと言われれば、そう単純な話ではない。


「私はどうやら、私を目の敵にする者たちに追われているようでね…。今回ここへ帰ってくるにあたっても、不審な影を撒く必要があった。私自身は旅をやめるつもりはないが、旅に出る間、娘のことが心配でね…。もう少しだけ成長するまでは、誰かにお守りを任せたいんだ。」


つまり…


「娘の身辺警護を任せられる人物を探す手伝いを、そこの二人にも頼んでいた。それで、今回出会ったのが、君というわけだ。」


…確かに、私の認識阻害魔法は人の警護にはもってこいだ。


信頼以外の側面からも、猫さんが私を選んだ理由に納得する。


「…具体的に、期間や方法はどうしましょうか。」


「君の他にも、何人か信頼できる仲間を得ている。期間は、君と彼らから見て、娘が一人前になった、一人でも生きていけると判断するまで、娘を見守っててやってほしい。少し曖昧だが、君たちの目なら、信頼に値するはずだ。」


やはり、私のほかにも仲間がいるらしい。


この屋敷で働いているメイドさんの中にも、何人か候補がいそうだ。


なにより、慎重なヴェスター様が選んだ人物なのだから、能力には不安はない。


「方法についてだが…。"依頼"の本拠地として、とある国に屋敷を手配してある。そこをどう使うかなど、その場での判断は全て君たちに一任させてもらう。あと、これは私の我儘なのだが…。娘の要望には、できる限り応えてもらいたい。」


彼の瞳に、できるか、と問われた気がした。


そんなの、もちろんイエスだ。


「…承りました。私の全身全霊を持って、この依頼、遂行させていただきます。」


私の運命の歯車が、新たな歯車に繋がれた。
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