君を好きになりました〜その気持ちは受け取れないので早めに諦めてくれると助かります〜

歩くの遅いひと(のきぎ)

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君がずっと好きでした

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風の強かったあの日のこと。
私はたぶん、一生忘れない。
でもきっとあなたは覚えてないだろうから、今日も教えられないんだ。

「ひなめ先輩」
「なぁに、はじめちゃん」

1つ下の後輩、藤堂はじめ。強気な瞳とサラサラの髪、今日も可愛い。
『前言撤回します。諦めないでください、ひなめ先輩』
そう言われたあの日から、はじめちゃんから声をかけてくれる日も増えたし名前で読んでくれるようになった。私はどこまで幸せ者なんだろう。

「おはよう、ございます」
「うんっ、おはよう」

あぁ、やっぱり可愛いなぁ。
私は我慢できずいつものセリフをひとつ。

「今日も好きだよ、はじめちゃん」
「……ありがとうございます」

見えないけどきっと照れてるんだろうな。そのマフラーの下に隠れた口元が見たい。
真っ赤になっちゃって可愛いなぁ。

「先輩、そろそろ教えてくれませんか」
「なにを?」
「私のどこを好きになったかです」
「えー、まだ諦めてなかったんだ」
「教えてくれるまでは先輩みたいに諦めず聞きまくります」

その心意気はなんとも可愛いんだけど、やっぱり今日も教えられない。

「恥ずかしいなぁ」
「私の方が恥ずかしいですよ、散々振ってた相手に今更こんなの……」
「でも知りたいんだ?」
「……はい」

あぁ、その真っ直ぐな瞳。透き通るほどにきれい。どうあがいても私は、この子を好きになる運命だったんだろう。

「好きだよ、はじめちゃん」
「っ……、はぐらかさないでくださいよ」
「可愛いね、はじめちゃん」
「~~!!」

あなたにどれだけ冷たくされても、あしらわれても。好きでいて、好きだと言い続けたのはそれだけあなたが好きだから。
この気持ちの始まりを教えてあげないのは、私のちょっとした仕返しのつもり。

「私もズルいかなぁ……でも、覚えてないはじめちゃんのせいだよ」

だから今日も、教えてあげない。
あなたが私に気付くまで、私はずっとズルい人でい続けるんだ。

「何か言いました?」
「なーんでもない」
「教えてくださいよ」
「まだ教えてあげない」
「……ズルい人ですね」

あなたもね。
心の中でそう返し、今日もいつもの一言を。


「好きだよはじめちゃん」


今日は手を繋いでみようか。また口元をマフラーで隠すはじめちゃんを見ながら、そんなことを思った。
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