2 / 6
えんぴつが落ちてから
しおりを挟む
直感だ。何事も直感が左右することもある。
私、衣玖(いく)まや は感じ取ってしまったのだ。
同じクラスの甘風(あまかぜ)ふうみ は私のことを嫌いだと。
「これ、甘風さんのでしょう?」
嫌われるのは別に構わないけど理由もなしに嫌われるのは悲しいし。なにより甘風さんに直接的ではないけれど、助けられたことはたくさんある。
だから聞いてみたかった。なんで私を嫌いなのかと。
しかしまさかなことに、彼女は私を嫌いではなかった。むしろ、好き……らしい。
たった一本のえんぴつが私たちの誤解を解いてくれたのだ。
「……ねぇ」
「は、はひ!」
だから、もう私たちは友だちになってもいいんじゃないか。なんでこの人は、私に話しかけてくれないの。
「好きってウソだったの?」
「いや、ウソじゃ……ないんだよ?でも……」
あのえんぴつのことがあってから4日。一向に話しかけてきてはくれない。私たちのわだかまりはもうとけたはずなのに。
1日目は私も恥ずかしかったし甘風さんを見ると変な動悸もしちゃうしで何もしなかった。
2日目でちょっとアレっ?と思った。なんか甘風さん、私のことを避けてない?と。
3日目で確信した。彼女は私を避けている。それも前より露骨に。話しかけようとしたら逃げられてしまったし。
そのため4日目の今日は逃すまいと腕を掴んで捕まえた。こんなケンカしたカップルみたいなのやだし。
「じゃあなんで避けるの?避け方も露骨だし」
「う……避けたというか何というか」
「避けたんでしょ?私のこと」
「……ごめんなさい」
不器用だ。この人は愚かなくらいに。
捕まえた腕が少しだけ震えている。何に怯えてるんだか。
「4日前はあんなに好き好き言ってきたくせに」
「今も、好きだよ。可愛い…」
「っ……」
いきなりやめてほしい。
もう飽きるくらいにあなたに聞かされたんだ。
「でもさ、なんか意識しちゃって」
「意識?」
「衣玖ちゃん、前に期待しちゃったって言ったでしょ?だから……その」
「前……期待……」
「衣玖ちゃんを恋愛的な意味で好きになっちゃったかも……って」
「れん、あ、い……」
…………………あ。
「~~~~!!?」
そうだった。私はあの時、好きだと言い続ける甘風さんにアイドル的な意味で好きだと言われて……叫んだんだった。
「ねぇ、衣玖ちゃん」
「う、あ」
慌てて掴んでいた手を離し逃げようとする。
ーーパシッ
「ダメだよ、今日は逃げないで」
逃げてたのはそっちのくせになんて、声が出ない。紅く染まった顔と真剣な眼差しに、何を言われるのかなんて容易に想像できてしまった。
「衣玖ちゃん、好き……好きだよ」
「あま、かぜさ……」
「今まで避けちゃってごめん。でも、そんな私を忘れちゃうくらい好きって言うし、話もする」
ーーだから。
「だから、付き合ってよ。世界で一番好きだよ、衣玖ちゃん」
たった数日前まで話もしないくらいの仲だったのに、こんなの変だ。ねぇ、気のせいだよ。
こんなにドキドキするのは、きっと恋なんかじゃない。
「……」
「いいよ、私は衣玖ちゃんが好きなだけだから。でも、1%でも私が期待していいなら、目を閉じて?」
ズルい聞き方だと思った。そんなの私の負けじゃないか。
「衣玖ちゃんが欲しい……世界中の誰よりも」
「もう、喋らないで」
そっと目を閉じた。何も見えない世界の中で、甘風さんは静かに笑って。
「好きだよ、衣玖ちゃん」
「っ、」
そっと優しく、私の唇へキスを落とした。
「衣玖ちゃん可愛いね」
「うるさいっ…」
私のことを避けて通るあなたがなんとなく気に入らなかった。寂しいとも思った。
気にしていないふりをして、私もあなたのことばかり見てしまっていたんだ。
「……好きよ、甘風さ……んっ」
「へへ、2回め」
どうやら私は、この可愛い恋人にまだまだ敵わないらしい。
熱烈な告白を聞きながら、今はそっと、君の胸に寄り添っていよう。
無邪気に笑う恋人の胸の中で、私はそっと目を閉じた。
私、衣玖(いく)まや は感じ取ってしまったのだ。
同じクラスの甘風(あまかぜ)ふうみ は私のことを嫌いだと。
「これ、甘風さんのでしょう?」
嫌われるのは別に構わないけど理由もなしに嫌われるのは悲しいし。なにより甘風さんに直接的ではないけれど、助けられたことはたくさんある。
だから聞いてみたかった。なんで私を嫌いなのかと。
しかしまさかなことに、彼女は私を嫌いではなかった。むしろ、好き……らしい。
たった一本のえんぴつが私たちの誤解を解いてくれたのだ。
「……ねぇ」
「は、はひ!」
だから、もう私たちは友だちになってもいいんじゃないか。なんでこの人は、私に話しかけてくれないの。
「好きってウソだったの?」
「いや、ウソじゃ……ないんだよ?でも……」
あのえんぴつのことがあってから4日。一向に話しかけてきてはくれない。私たちのわだかまりはもうとけたはずなのに。
1日目は私も恥ずかしかったし甘風さんを見ると変な動悸もしちゃうしで何もしなかった。
2日目でちょっとアレっ?と思った。なんか甘風さん、私のことを避けてない?と。
3日目で確信した。彼女は私を避けている。それも前より露骨に。話しかけようとしたら逃げられてしまったし。
そのため4日目の今日は逃すまいと腕を掴んで捕まえた。こんなケンカしたカップルみたいなのやだし。
「じゃあなんで避けるの?避け方も露骨だし」
「う……避けたというか何というか」
「避けたんでしょ?私のこと」
「……ごめんなさい」
不器用だ。この人は愚かなくらいに。
捕まえた腕が少しだけ震えている。何に怯えてるんだか。
「4日前はあんなに好き好き言ってきたくせに」
「今も、好きだよ。可愛い…」
「っ……」
いきなりやめてほしい。
もう飽きるくらいにあなたに聞かされたんだ。
「でもさ、なんか意識しちゃって」
「意識?」
「衣玖ちゃん、前に期待しちゃったって言ったでしょ?だから……その」
「前……期待……」
「衣玖ちゃんを恋愛的な意味で好きになっちゃったかも……って」
「れん、あ、い……」
…………………あ。
「~~~~!!?」
そうだった。私はあの時、好きだと言い続ける甘風さんにアイドル的な意味で好きだと言われて……叫んだんだった。
「ねぇ、衣玖ちゃん」
「う、あ」
慌てて掴んでいた手を離し逃げようとする。
ーーパシッ
「ダメだよ、今日は逃げないで」
逃げてたのはそっちのくせになんて、声が出ない。紅く染まった顔と真剣な眼差しに、何を言われるのかなんて容易に想像できてしまった。
「衣玖ちゃん、好き……好きだよ」
「あま、かぜさ……」
「今まで避けちゃってごめん。でも、そんな私を忘れちゃうくらい好きって言うし、話もする」
ーーだから。
「だから、付き合ってよ。世界で一番好きだよ、衣玖ちゃん」
たった数日前まで話もしないくらいの仲だったのに、こんなの変だ。ねぇ、気のせいだよ。
こんなにドキドキするのは、きっと恋なんかじゃない。
「……」
「いいよ、私は衣玖ちゃんが好きなだけだから。でも、1%でも私が期待していいなら、目を閉じて?」
ズルい聞き方だと思った。そんなの私の負けじゃないか。
「衣玖ちゃんが欲しい……世界中の誰よりも」
「もう、喋らないで」
そっと目を閉じた。何も見えない世界の中で、甘風さんは静かに笑って。
「好きだよ、衣玖ちゃん」
「っ、」
そっと優しく、私の唇へキスを落とした。
「衣玖ちゃん可愛いね」
「うるさいっ…」
私のことを避けて通るあなたがなんとなく気に入らなかった。寂しいとも思った。
気にしていないふりをして、私もあなたのことばかり見てしまっていたんだ。
「……好きよ、甘風さ……んっ」
「へへ、2回め」
どうやら私は、この可愛い恋人にまだまだ敵わないらしい。
熱烈な告白を聞きながら、今はそっと、君の胸に寄り添っていよう。
無邪気に笑う恋人の胸の中で、私はそっと目を閉じた。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
春に狂(くる)う
転生新語
恋愛
先輩と後輩、というだけの関係。後輩の少女の体を、私はホテルで時間を掛けて味わう。
小説家になろう、カクヨムに投稿しています。
小説家になろう→https://ncode.syosetu.com/n5251id/
カクヨム→https://kakuyomu.jp/works/16817330654752443761
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない
みずがめ
恋愛
宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。
葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。
なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。
その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。
そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。
幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。
……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる