はじまりのえんぴつ~鉛筆を拾ったら話したかったあの子に話しかけられました~

歩くの遅いひと(のきぎ)

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えんぴつが落ちてから

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 直感だ。何事も直感が左右することもある。
 私、衣玖(いく)まや は感じ取ってしまったのだ。
 同じクラスの甘風(あまかぜ)ふうみ は私のことを嫌いだと。

「これ、甘風さんのでしょう?」

 嫌われるのは別に構わないけど理由もなしに嫌われるのは悲しいし。なにより甘風さんに直接的ではないけれど、助けられたことはたくさんある。
 だから聞いてみたかった。なんで私を嫌いなのかと。

 しかしまさかなことに、彼女は私を嫌いではなかった。むしろ、好き……らしい。
 たった一本のえんぴつが私たちの誤解を解いてくれたのだ。

「……ねぇ」
「は、はひ!」

 だから、もう私たちは友だちになってもいいんじゃないか。なんでこの人は、私に話しかけてくれないの。

「好きってウソだったの?」
「いや、ウソじゃ……ないんだよ?でも……」

 あのえんぴつのことがあってから4日。一向に話しかけてきてはくれない。私たちのわだかまりはもうとけたはずなのに。

 1日目は私も恥ずかしかったし甘風さんを見ると変な動悸もしちゃうしで何もしなかった。
 2日目でちょっとアレっ?と思った。なんか甘風さん、私のことを避けてない?と。
 3日目で確信した。彼女は私を避けている。それも前より露骨に。話しかけようとしたら逃げられてしまったし。
 そのため4日目の今日は逃すまいと腕を掴んで捕まえた。こんなケンカしたカップルみたいなのやだし。

「じゃあなんで避けるの?避け方も露骨だし」
「う……避けたというか何というか」

「避けたんでしょ?私のこと」
「……ごめんなさい」

 不器用だ。この人は愚かなくらいに。
 捕まえた腕が少しだけ震えている。何に怯えてるんだか。

「4日前はあんなに好き好き言ってきたくせに」
「今も、好きだよ。可愛い…」

「っ……」

 いきなりやめてほしい。
 もう飽きるくらいにあなたに聞かされたんだ。

「でもさ、なんか意識しちゃって」
「意識?」

「衣玖ちゃん、前に期待しちゃったって言ったでしょ?だから……その」
「前……期待……」

「衣玖ちゃんを恋愛的な意味で好きになっちゃったかも……って」
「れん、あ、い……」

 …………………あ。
「~~~~!!?」

 そうだった。私はあの時、好きだと言い続ける甘風さんにアイドル的な意味で好きだと言われて……叫んだんだった。

「ねぇ、衣玖ちゃん」
「う、あ」

 慌てて掴んでいた手を離し逃げようとする。

 ーーパシッ
「ダメだよ、今日は逃げないで」

 逃げてたのはそっちのくせになんて、声が出ない。紅く染まった顔と真剣な眼差しに、何を言われるのかなんて容易に想像できてしまった。

「衣玖ちゃん、好き……好きだよ」
「あま、かぜさ……」

「今まで避けちゃってごめん。でも、そんな私を忘れちゃうくらい好きって言うし、話もする」

 ーーだから。
「だから、付き合ってよ。世界で一番好きだよ、衣玖ちゃん」

 たった数日前まで話もしないくらいの仲だったのに、こんなの変だ。ねぇ、気のせいだよ。
 こんなにドキドキするのは、きっと恋なんかじゃない。

「……」
「いいよ、私は衣玖ちゃんが好きなだけだから。でも、1%でも私が期待していいなら、目を閉じて?」

 ズルい聞き方だと思った。そんなの私の負けじゃないか。

「衣玖ちゃんが欲しい……世界中の誰よりも」
「もう、喋らないで」

 そっと目を閉じた。何も見えない世界の中で、甘風さんは静かに笑って。

「好きだよ、衣玖ちゃん」

「っ、」

 そっと優しく、私の唇へキスを落とした。

「衣玖ちゃん可愛いね」
「うるさいっ…」


 私のことを避けて通るあなたがなんとなく気に入らなかった。寂しいとも思った。
 気にしていないふりをして、私もあなたのことばかり見てしまっていたんだ。

「……好きよ、甘風さ……んっ」
「へへ、2回め」

 どうやら私は、この可愛い恋人にまだまだ敵わないらしい。
 熱烈な告白を聞きながら、今はそっと、君の胸に寄り添っていよう。

 無邪気に笑う恋人の胸の中で、私はそっと目を閉じた。



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