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8.友達への罪悪感
しおりを挟む好きなものがあるって素敵だ。それだけで世界は輝いて、好きだと語る人までもキラキラして見える。
「おはようみずき、今日は新しい吸血鬼の小説見つけたの!」
「おはよう、ほまちゃん」
人間付き合いまで臆病な私の、唯一の友達。玉川ほまな、ほまちゃんは目を輝かせながら私へと詰め寄ってくる。
何を隠そう、ほまちゃんは吸血鬼というコンテンツが大好きなんだ。
「なんと最近では人の血を吸わない吸血鬼の話も増えてきてるの!夢が広がるわよね!」
「そ、そうなんだぁ」
その情報は正直初耳だけど、まさにその本人に血の代わりに涙を捧げてる身としてはなんとも言えなくなってくる。
「吸血鬼を題材にしたお話ってちょっと暗い話が多くて、ハッピーエンドもなかなか見れなかったんだけどこれは私にしたらありがたいニュースだわ」
「ははは‥‥」
好きなものについて語る姿はキラキラ輝いて。もっともっと聞いていたい。でも今日その話題だけは、うまく反応が返せない。
「どしたの?みずき」
「ううん、ほまちゃんが楽しそうで嬉しいなって」
「ありがとう!読み終わったらみずきにも貸すね」
「うん、楽しみにしてる」
なんだか、すごい罪悪感‥‥。
☆☆
「みずき、浮かない顔ね」
「ハヅキさん‥‥」
「泣く?」
「泣きませんよ!」
迫ってきた顔を押し返す。ここは静かに話を聞いてくれる流れじゃないんですかぶち壊しですよバカなんですか。
言いたいことが多すぎてまとまらない。せめての反撃として、隠さずにため息を吐き出した。
「む、失礼ね。バカじゃないわよ」
「ナチュラルに心読むのやめてください‥‥」
「あなたこそ考えてることすぐ口に出す癖、直しなさいよ」
「また口に出てたとは‥‥」
幼い頃からひとり遊びを得意とした私は、どうやら無意識にひとりごとが出てしまうようで。
「じゃあ私が何で悩んでるかわかりますか」
「ほまなとかいう女の子に、私のことを内緒にしてることが罪悪感なんでしょう?」
「なんっでわかるんですか‥‥!」
「だから声に出てるってば」
短所は口に出されないと気付けないと言うけども、癖も自分1人じゃ気付けない。
本日2度目のため息を吐き出す。
「幸せ逃げるわよ?」
「そうですね」
「ほまなという人はほんとに吸血鬼が好きなのね」
「小さい頃から吸血鬼関連の本は片っ端から集めてるみたいですよ」
「そう、サインでもあげようかしら」
「違うクラスの知らない人にサインもらうほまちゃんの気持ちも考えてください。めちゃくちゃ困りますよ」
「あら、残念」
はぁ。変なの。
あれだけ怖かった学校が‥‥全然怖くないや。
「言ったじゃない、あなたは怯えすぎなのよ」
「はは、そうでした」
すこし、ほんの少しだけ。
「なに?」
「いえ、なんにも」
この人がいるおかげなのかもしれない。
なんてそんなこと、思ったりした。
「じゃあ今日も泣いてもらおうかしら」
「これがなきゃなぁ‥‥」
ほんとにほんとに、ちょっとだけ。
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