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7.主人公並みの順応性
しおりを挟む目立つことが嫌ならば、まずは遅刻をしないこと。忘れ物をしないことと、適度な成績をキープすること。それが、私の青春の生き方だ。
「なかなかめんどくさいこと考えてるわね」
「うっ‥‥勝手に心を読まないでください」
「読んでないわよ。あなた、考えてることが無意識に口に出てるようだからそのクセ直た方がいいわよ。 私的には楽だけど」
「ガッツリ本音聞こえてますが」
よし、直そう。この人の考えることはまだ分からないし、話を全部信じるというのも難しい。
こんな太陽の下を、平然と歩ける吸血鬼がいてたまるものか。ほまちゃんに言ったら怒りそうだ。あの子、詳しいんだから。
「ほまちゃん?」
「‥‥私、そんなに声に出てます?」
心で考えてたことをこうも毎回読み当てられるとたまらない。ハヅキさんも当たり前のように返してこないでほしい。
「太陽、吸血鬼、ほまちゃん。ブツブツと小さい声で言ってたわ」
「絶対に直しますから‥‥!」
「努力は見ていてあげるわ」
はぁ。なんなんだこの人。
いきなりうちにやってきて一緒に学校行こうだなんて言うし。
ってあれ?
「ハヅキさん、なんで私の家知ってるんですか?」
「家?美味しそうな涙の匂いを追いかけてきただけよ」
「すっごい聞いて損しました‥‥」
「失礼ね。人の生命線を」
あぁもう。話が分からなくなりそうだ。会ったばかりの人間に、涙を飲む吸血鬼ですと言われたって素直に順応できるタイプじゃないんだ、私は。
そんなのは漫画や小説の主人公だけで、木の役止まりな私にはとても理解が追いつかない。
「浮かない顔ね、泣いてごらんなさい?」
「話してごらんみたいなノリで涙もらおうとするのやめてもらえます?」
「バレたか」
「バレない方がおかしいでしょ‥‥」
「ふぅん‥‥」
「な、なんですか」
顎に手を当て、私のことをまじまじと見つめて。ハヅキさんはにっこりと笑って。
「あなたもなかなか主人公並みの順応性、あるわよ」
「なっ」
「まだちょっと理解ができなくてうるさい日はあるけど、それくらいが人間らしいわ」
「当たり前じゃないですか‥‥人間、ですもん」
「ふふ、そうだったわね」
無難に生きるためには。
自分を高めて、小さな自分は偽って。常に、私以外の誰かを主人公にすることだって思ってた。
そんな日々を過ごしていたせいか、簡単に漏れ出た単語に、一行に、なんだか泣きそうになってくる。
『あなたもなかなか主人公並みの順応性、あるわよ』
あるわけないんだ。私って。
臆病で泣き虫でネガティブでやっかいな私が、主人公なんて。
「みずきの人生に、みずき以外の誰が主人公になると言うのよ」
「っ‥‥だから!心読まないでくださいってば!」
あぁ、なんか変だ。顔が熱い。
「じゃあそろそろ‥‥」
「へ?」
華奢な指には似つかわしくなく、ガシッと顔を掴まれる。あ、この後なにされるか、私は知っている。あんなに顔が熱かったのに、急に冷めてきて。
「いただきます」
ペロリと目の下に冷たい下の感触。そうだ、この人は、そういう人だった。
「ごちそうさま、主人公のみずきさん♪」
「私もう‥‥モブでいいです」
ちょっといい人かもしれないなんて、期待したのにな。やっぱり人間じゃない人に、分かるわけないかなんて納得した。
「吸血鬼退治の仕方、調べようかな」
そんなことを、思ったりして。
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