2 / 2
もうちょっとだけ。
しおりを挟むちくたくだなんて時計の音を気にしながら、ゆっくり時間が経つのを待つ。
でも私、芦原(あしわら)ゆうは知っている。
きみちゃんとケンカしちゃった女の子が、後悔して謝りたいと話していたことを。
そんなもんだよ。だからこそ、無責任に大丈夫だよなんて笑えるしそばに寄り添える。種明かしをされてからじゃないと、私はとても君のそばには座れない。
「ズルくてごめんね‥‥」
まだもう少しだけ、そのことは内緒にさせてほしい。いつか言わなきゃって思うけど、それはきっと、今じゃない。
「ゆう!」
「あ、きみちゃん、いらっしゃー」
「ゆう!仲直りできたよ!」
「んぷっ」
言葉より先に抱きしめられて、言葉が詰まる。あれ、なんだかすごくうれしそう。
「おめでとうきみちゃん」
「ゆうのおかげだよ、ありがとう」
「どういたしまして。さぁ、たんと甘えなさーい」
背中に腕を回して、ぎゅうっと抱きしめる。それだけなのにホワホワして温かい。
「ゆうはいつだって辛いときそばに居てくれるね」
「それが私が生まれる前からの使命ですからね」
「ははっ、さすが」
どれだけ期待されたって、願われたって。臆病な私は、種明かしがないと動けない。
そんな私を今日もきみちゃんが、大好きな人が必要としてくれているから。
「大好き、きみちゃん」
今はまだ、ちょっとだけ、このままで。
おわり
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
隣人の幼馴染にご飯を作るのは今日で終わり
鳥花風星
恋愛
高校二年生のひよりは、隣の家に住む幼馴染の高校三年生の蒼に片思いをしていた。蒼の両親が海外出張でいないため、ひよりは蒼のために毎日ご飯を作りに来ている。
でも、蒼とひよりにはもう一人、みさ姉という大学生の幼馴染がいた。蒼が好きなのはみさ姉だと思い、身を引くためにひよりはもうご飯を作りにこないと伝えるが……。
私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。
石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。
自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。
そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。
好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない
みずがめ
恋愛
宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。
葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。
なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。
その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。
そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。
幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。
……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる