世の中、つまらないもので。

歩くの遅いひと(のきぎ)

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視線のさき

2話ー3[ゆうみの視線]

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 雨谷ゆうみは感動していた。勢いよく家を飛び出したものの降り出した大粒の雨。これも運命だと突っ走っていたらたくさんの 人が優しくしてくれ、最終的にはこんなに大きな車に乗れてしまった。これはもう運命といいますかなんといいますか。

「幸せだなって思うよ」
「ずぶ濡れの姿で言われましても」
「清水、少し黙ってなさい。ごめんなさい雨谷さん」

「いえ、貸してくれたタオルケットが温かいので。なんだか遠足みたいで楽しいですね」

 状況的には高級車に三人なので全然遠足っぽくはないのだが。ゆうみの観点から見れば今は楽しい遠足のようらしい。

「会えてうれしいです」

そう笑うと名前も知らない彼女は優しく笑いかえしてくれた。どことなく不満や不安にあふれていたような顔が明るくなった気がして少しうれしくなってしまう。

「あなた名前はなに?そっちは清水さん、でいいですかね」
「はい、清水です」
「私はつららよ。葛城つらら」

「つららさんかぁ。ん‥‥葛城‥‥?」
「なにか?」
「んーん。良い名前だね」

 ゆうみは彼女の葛城という姓にに何か引っかかってしまった。しかし何が引っかかったのかは思い出せず、口をつぐむ。

「えぇ、お見知りおきを」

 そっと手を差しだすつららを、ゆうみはためらいもなく両手で握り返した。

「うんっ!よろしくね!」
「お嬢さま顔がだらしないです」
「そんなことないわ」

 最初はただ良い人たちだと思っていたけどどうやらこの二人は面白いらしい。たまには傘も忘れてみるもんだなぁとしみじみ思い返した。

「お嬢さま、制服が届きました」
「ありがとう。早速どこかに停車して着替えましょう」
「何から何まで……ありがとうございます」

 数分前まで名前も知らなかった人にこんなに良くしてもらって良いのだろうか。ゆうみは一瞬そんなことが頭によぎったが。

「(この前に河原のゴミ拾いしたからかなー♪)」

 すぐにそう思い、つららの優しさに素直に甘えることにした。


「ありがとう、つららさん!」
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