6 / 7
視線のさき
2話ー2[清水の視線]
しおりを挟む葛城つららのことを、昔から見ていた。見ていたからこそ、不思議だった。
「お嬢さま、楽しそうですね」
「そうね、悪くない気分だわ」
悪くない、どころではなくかなり楽しそうだ。本人には抑えているつもりらしいが残念ながら隠せていない。
「へー、車 大きいね。ちょっとした電車みたい!」
「こちらで体をお拭きください。えっと……」
「あ、ゆうみです。雨谷ゆうみ」
「ではこちらを、雨谷 様」
ゆうみは清水からタオルを受け取ると嬉しそうに頭を拭きだした。まずその制服をどうにかしなければ変わらないと思うのだが‥‥ゆうみが幸せそうなので黙っておいた。
「清水、制服はいつ届くの?」
「学園に着く頃には届くかと」
「あはは、何から何まで……ありがとうございます」
幸せそうなのはいいことだけど、あのまま学園に行っていればゆうみは間違いなく風邪を引いていただろう。主人が誰かに興味を持ってくれたことは嬉しいが少し不安な人材かもしれない。はたから見れば自ら濡れに行く趣味嗜好を持った変人だった。
「それで、あなたはなぜ濡れながらも走っていたの?」
そこ切り込みますか。ツッコミたくなるのを抑えて主人の言葉に耳を向ける。質問だけ聞けば変な感じだけどそれが清水たちの見たゆうみの姿だ。雨の中 神様と太陽、雨に感謝し、笑顔で走る衝撃映像。なかなか見過ごせるものではなかった。
「なんでって……家をでたら素敵な1日になりそうだなーって思って。雨が降ってしまったならそれも運命かなって」
笑顔で少し照れたように。そう話すゆうみに清水は呆れ気味な視線を向けたがつららは違った。
「そう……すごいのね」
まるで宝物を見るかのように、ワクワクしたような輝かしい瞳をゆうみへ向けていた。
「いやぁ、へへ」
笑うところなのだろうか。照れるところなのだろうか。清水にはいまいちわからなかった。
「あなた、あたしと同じ学校でしょう?よかったら話を聞かせていただけないかしら」
「私の話?面白いのあったかなぁ」
いやもう登場からおもしろかったと思いますよ。弾けそうなくらいのポジティブ思考だったのになぜそこで自信が持てないんだろう。
「えぇ、きっとあなたの話を聞けたらあたしの世界は変わると思うの」
言いたいこと、聞きたいこと、ツッコミたいこと。出したい言葉はたくさんあるがとりあえず。
「お嬢さまはいつもつまらなそうですもんね」
大好きな主人が目を輝かせて笑っている。その事実に感謝しよう。
0
あなたにおすすめの小説
私たちって本当に双子なの?
青いバケモノ
恋愛
成績優秀でスポーツも出来る。何でも出来るお姉ちゃんに対し、私、カエデは成績はそこそこ、運動も出来ない。
妹カエデは常々、お姉ちゃんと自分とのこの能力の差に疑問を抱いていた。
───本当に私とお姉ちゃんは双子なの?
そんな時にできた「週に一回、お姉ちゃんとキスをする習慣」
どんどん普通の双子とは言えない関係になっていく2人。
そんな妹カエデと姉フウの物語。
※小説家になろう、カクヨムで同時掲載してます
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
二重のカーテン (スカートの下の黒い意志)
MisakiNonagase
青春
洗濯物の隙間に隠したのは、母としての祈りと、娘のプライド。
かつて、女子高生という生き物はもっと無防備で、自由だった。
44歳の主婦、愛子が朝のベランダで手にするのは、娘たちが毎日履き替える漆黒のオーバーパンツ、通称「黒パン」。それは、令和を生きる娘たちが自らの尊厳を守るために身に着ける、鉄壁の「鎧」だった。
小学校時代のママ友たちとのランチ会。そこで語られるのは、ブルセラショップに下着を売っていた奔放な50代、無防備なまま凛と歩くしかなかった40代、そして「見せないこと」に命を懸ける10代の、あまりに深い断絶。さらには、階段で石像のように固まる父、生徒の背後に立たないよう神経を削る教師……。
一枚の黒い布を通して浮き彫りになる、現代社会の歪さと、その根底にある不器用なまでの「優しさ」。
ベランダに干された黒いカーテンの向こう側に、あなたは何を見ますか?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる