親友の好きな人は俺に似てるっぽい

千崎

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00 初夏の気持ち

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夏の暑苦しい風が教室に入り込んでくる。

「あちぃな。」

誰に聞こえるでもない声は風の音にかき消される。

あいつ、まだかな…

俺は時計を見た後、ため息を吐く。
遅くなることは仕方ないと分かっていても、この暑さの中長時間待つのはきつい。

ダラダラと流れてくる汗を拭っていると、教室のドアが大きな音を上げる。

「悪い、遅れた。暑いし早く帰ろう。」

「やっと来た。おせぇよ、まじで。死ぬかと思ったぜ。」

「大袈裟だ。帰りアイスでも買って帰ろう。」

「お前の奢りな!」

「仕方ねぇな、特別だからな。」

渋々と言うように苦笑するこいつは、俺の親友の相沢渚あいざわなぎさ
中学の頃仲良くなってからずっと一緒だ。

あの頃の渚は今と違ってだいぶ暗かった。
今も大きく笑うことは少ないが、それでも笑顔が増えた気がする。

「お前、汗かきすぎ。まだ夏になったばっかだろ。」

「はあ?お前がかかなすぎなんだよ。ほんとあちぃ。」

「これからもっと暑くなるだろ?こんなんで汗だくになってたらもたねぇよ。」

「まあ、そん時はお前にアイス奢ってもらうし平気だ!」

「奢んねぇよ。」

くだらないどうでもいい会話をしながら駅まで歩く。

「…」

「…なあ、お前に言いたいことあんだけど。ちょっといいか?」

「いーよ。なんかあった?」

なぜか改まったように足を止めて話す渚はとても真面目な顔をしていた。

「俺好きな奴できたんだよね。」

「…」

「んでさ、そいつと付き合いたくて。だから協力してほしくて。」

好きな奴…渚が?
あんなに女子に塩対応してる渚が好きな奴?

「うぇっ!まじかよお前。え待って、ちょっと信じられん。」

「そんなに驚くことか?」

「いや驚くだろ。お前女子には氷みてぇな目で対応してるだろ。」

「まあ、そいつらは好きじゃないし。」

「好きな奴以外には塩対応タイプかよお前。まあいいぜ、協力する。」

「ありがとう。」

「てかさ、いつからだよ。まじで気づかなかったわ。」

「今年度入ってから。出会ったのは中学の頃だけど、ずっと友情の好きだと思ってた。」

中学か。俺も知ってんのか、そいつの事。

「ふーん。まあお前にも春が来てよかったわ!もう夏だけどなー。」

「気になんねぇの?俺の好きな奴。」

「気にはなるぜ?けどそう簡単に聞くもんじゃねぇだろ。」

「お前には教えるよ。協力してくれるし。」

「いや、いいって別に。付き合えた時紹介してくれよ。」

「…分かった。」

なんだこいつ。なんでちょっと不服そうなんだよ。
まじでこいつは出会った時からよく分からない。
でもそれが渚のいいとこだよな!

「おい。駅着いたぞ、早くコンビニ寄ろうぜ。」

「分かってるから、走んなよ。」

「わりぃわりぃ。」

ーー

「アイス、ありがとな!」

「いいよ、待たせたし。」

二人してアイスを食いながら駅に直行する。
俺はバニラアイス、渚はソーダ味だ。

「暑い日はやっぱアイスに限るな!」

「なあ、やっぱ俺の好きな人について話しときたいんだけど。」

「あ?それはさっき言った通りだよ。教えなくていいって。」

「そうじゃなくてさ、お前にアドバイスもらう上でどんな人間か話さねぇと、的確なこと言ってもらえないだろ。」

俺は恋愛経験ないからあんまり変わらんと思うけどな…
まあ知っとくとできるアドバイスもあるってもんだよな。

「……じゃあどんな人間かだけ聞くわ。名前とか顔はダメな!」

「それでいい。」

「で、どんな奴なんだよ」

「すげぇ明るい奴。太陽みたいな笑顔でさ、その顔が一番好きなんだ。」

うわぁ、渚のやつめちゃくちゃ好きじゃねぇかよ。
俺にすら言わねぇのに、好きなんて。

「お前、好きすぎだろそいつの事。俺という親友がいながら、妬けちゃうねぇ。」

「……」

「なんか言えって!俺が勘違いしてたみたいだろ!俺ら親友だよな!?」

「親友…今はそうかもな。」

「はあ?付き合えたらもう親友じゃないって事か?ひでぇ奴だぜお前はよぉ。」

「…」

なんも言わない渚に呆れながら歩いていると、あっという間に駅に着く。

「はあ、アイスの棒どうしよっかな。渚、ティッシュ持ってねぇ?」

「あるよ、はい。」

「おぉ!サンキュ!」

もらったティッシュで棒を包みポケットに突っ込む。
再度渚の顔を見るが、複雑そうな表情をして俯いていた。

まじでどうしたんだこいつ。

「お前、何俯いてんだよ。昔のお前みてぇになってっぞ。そんな気にしねぇでいいから。恋人できたらそいつの事優先したいって事だろ?いい事じゃんか!」

「……すまん。」

「いいっていいって!とりあえずホーム行こうぜ。」

「…」

渚のこんな顔久しぶりに見た気するな。
お前にはそんな顔してほしくねぇよ、俺。

もちろん応援するし協力するけど、お前が苦しそうにしてたら俺は素直に応援なんてできなくなりそうだな。

俺のそばにいる方が幸せじゃないのか。
なんて考える俺はほんとにダメだな。
親友の願いなんだ。ぜってぇ叶えてやりたい。


渚に好きな人…なんかずっと複雑なんだよな。
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