デレがバレバレなツンデレ猫獣人に懐かれてます

キトー

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番外編

初夢

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『おい起きろチビ』

『んー……──、んんっ!?』

 いつものようにチビと呼ばれ、起きるとそこには偉そうに俺を見つめるにゃんこが居た。
 焦げ茶の耳と長くしなやかに動く尻尾。そして胸にすっぽりおさまりそうなもふもふの体、猫だ。
 これはもうどっからどう見ても猫だ。実家で飼っていた愛猫より少し大きいが、いたって普通の猫ちゃんだ。
 なぜこんな所に素敵なにゃんこが、なんて思ってたら、なんとそのにゃんこが喋りだした。

『なにぼーっとしてんだ。相変わらずとろいなチビは』

『アムールだ』

『は?』

 声は、いや態度はアムールだった。そもそも普通のにゃんこは喋らない。
 やっぱりこのにゃんこはアムールなのだろうか。
 アムールなのかもしれないにゃんこは不審な目を俺に向けて何いってんだと首を傾げる。かわいい。
 ちょこんと座ったその姿、モフッとした足、興味があるモノに向けられるおひげ、早く起きろと催促する床をペシペシ叩く尻尾。かーわーいーいー。

『ああああアムールあの……っ』

『あぁ? 何だよ』

『えーっと』

 動揺しながらもにゃんこの可愛さに悶絶して、まず何をすべきか分からなくなる。
 これは本当にアムールなのだろうか。アムールだとしたら何故こんな姿になってしまったのか。
 いや決してこの姿が嫌なわけではなくむしろ大歓迎なのだがこのにゃんこをアムールとしてあつかうべきなのかにゃんことしてあつかうべきなのか、いやわりとアムールもにゃんことしてあつかってたな。
 じゃあ今まで通りでいいのか? いやいやそもそもこれはアムールなのか?

 混乱してベッドに座り込んだままの俺にしびれを切らしたのか、アムールかもしれないにゃんこが俺の手に突撃してきた。
 鼻の頭で強引に手を押し上げ、自分の頭に乗せてくる。撫でろの合図だ。アムールだこれ。

『~~~っ』

 今やるべき事が決まった。思いっきり愛でよう。
 何故こんな姿になってしまったのか分からないが、今はそんな事を考えている場合じゃない。
 にゃんこアムールのご希望通り両手で頭から全身を撫で回し、アムールがくるしゅうないと言いたげにごろんと寝転んだので思いっきり猫吸いをする。

『幸せ……』

『……ったく、のんびりしてんじゃねーっつの』

 なんて文句を言いながらも、ゴロゴロと喉をならすにゃんこアムール。
 もふもふの毛並みを堪能しながら、幸せすぎてまたうとうとしてきた。
 すると頭を撫でられる感覚。もしかして毛づくろいされてるのかな、なんて思って重いまぶたを開く。
 するとそこは先程とは違った風景が広がる。
 場所はアムールの家のままなのだけど、俺が顔を埋めているのはにゃんこじゃなかった。

「……あれっ!?」

「うぉっ!」

 俺のにゃんこどこ行った!? と枕からがばりと顔を上げれば、すぐそばで驚いた声が上がる。
 声の方へ顔を向けると、驚いた顔のアムールが居た。右手を不自然に上げた姿で。

「はれ? アムールなんで……」

「……っ、うっせ! 早く起きろチビ!」

「あたっ」

 にゃんこは? って聞こうとしたら、何故か不自然に上げていた手で小突かれた。
 そこで俺はようやく夢を見ていたのだと気づく。
 気づいて、思いっきり落胆した。もっとあの夢を見ていたかったな……。
 そう思いながらのそのそと起き上がり、頭を掻きながら先程の素敵な夢の余韻に浸る。
 もっふもふのにゃんこは可愛かった。座った時にもふっとなる前足も見れたし、久しぶりに猫吸いも出来た。
 それに最後に頭を毛づくろいしてもらえたのも……

「……ん?」

 頭を毛づくろいされた感覚が、今でも残ってる。けれどそれは小さなにゃんこに毛づくろいされたと言うより、大きな手で撫でられたような感覚だ。
 そう、例えばあの不自然に上がっていたアムールの手みたいに……

「~~っ、アムールっ!」

「うわっ、なんでテメェ!」

 俺はつい、腕を組んでふんぞり返っていたアムールに思いっきり抱きついていた。
 すると「離れろ邪魔だ」なんて言いながら控えめに頭に手を添えられた。
 そんなキミに、幸せを感じてしまう。
 やっぱりアムールはアムールのままが一番だ。

 
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