デレがバレバレなツンデレ猫獣人に懐かれてます

キトー

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番外編

尻尾をピーン

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※御年賀企画で書いた短いお話です

 人で賑わう昼さがりの市場。
 俺はそこで偶然トワと会い、共に談話しながら新鮮な食材を吟味していた。

「あら、あそこに居るのアムールじゃない?」

「あ、ホントですね」

 そんな中、トワが市場をぶらつくアムールを発見する。
 冒険者の仕事が早く終わったのか、それとも飽きたから早々に切り上げてきたのか。アムールは果物を扱う屋台で果物を買っている所だった。
 買ったばかりの果物にかぶりつきながら歩き出すアムール。特に目的は無いようで、威勢の良い商人の声の中をぶらぶらと歩いてこちらに近づいてきた。

「……ねぇねぇリョウ」

「どうしました?」

 もう少ししたらこちらに気づくだろうかという距離で、トワが俺に耳打ちをする。
 何だろうかとトワに耳を寄せると、トワはいたずらっ子のように言った。

「アムールさ、実はもうリョウに気づいてたりして。でも自分からリョウに駆け寄るのは恥ずかしいから、素知らぬふりしてこっちに来てるんじゃない?」

 トワから言われ、俺は考える。確かにアムールがやりそうな事だ。だが、

「うーん……ありえなくも無いですが、今はまだ本当にこっちに気づいてないですね」

 と、確信を持ってトワに告げる。そんな俺の態度にトワは首を傾げて尋ねた。

「どうして分かるの?」

「まだ尻尾がピーンッてなってないんで」

「尻尾がぴ……え、何それ」

「アムールは俺に気づくと尻尾をピーンッてさせるんですよ」

「何それ分かりやす過ぎない!?」

「あ、ほらあんな感じです」

「あぁ……なるほど分かりやすいわ」

 その後、尻尾を上向きにピーンとさせ視線を不自然にそらして真っ直ぐこちらに歩いてきたアムール。
 そして「なんだチビ居たのかよ」と、さも今気づいたかのように言ってきて、その隣ではトワが笑いをこらえるのに必死になっていた。

 アムールの尻尾はリョウが居れば今日もご機嫌だ。
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