買った天使に手が出せない

キトー

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番外編SS

風邪【お年賀企画2025】

 
「大丈夫かい? 零」

「はい……こほっ」

 白を基調とした広い部屋に、零の控えめな咳の音が響く。
 すると隣に控えていたダイヤが心配そうに零の顔を覗き込んだ。
 そんなダイヤの様子に、ベッドに寝ている零は力なく笑う。
 零が風邪を引いて二日目。初日より熱は引いたが、咳を繰り返しぐったりしている姿はダイヤの心配をどこまでも駆り立てる。
 それが分かっているからこそ零は何でもないように振る舞いたいのだが、いかんせん体が言うことをきかないのだ。

「ダイヤ様、執務もございますのでそろそろ……それに、そんな顔で見続けられては、かえって零も気をつかうのでは?」

「もう少しだけだ」

「……仕方ありませんな──」

 そんな会話がベッドの横で幾度となく交われ、ジンラミーは退室する。最近は常に零のそばにダイヤやジンラミー、侍女が付き添っていた。
 贅沢だな、と零はぼんやり思う。
 熱でぼんやりした頭に、ぼんやりと浮かぶのは、懐かしい思い出。

『──お兄ちゃん……』

 心配そうに覗き込む、幼い妹。
 珍しく寝込んだ時だった。いつも面倒を見ている妹から、面倒を見られる立場になった。
 とは言っても、そばで声をかけてもらうだけなのだが、それはとても贅沢な時間に感じたのだ。

「──……花……」

「零?」

 心配そうな妹に、微笑んで手を伸ばす。

「……大丈夫……」

「れ、零!?」

 そっと引き寄せれば、柔らかな髪が頬をくすぐる。

「大丈夫……大丈夫だからね……」

「……っ」

 髪をすくと、大きな腕が体を包む。
 何の夢を見ていたのか、段々とあやふやになりながらも零はダイヤを撫で続けた。
 温かくて懐かしくて、優しい夢を見ながら。

 後にジンラミーとハートから、熱のある零に甘えるとは何事かと叱咤されたとか。
 零から甘やかしてきたのだとダイヤは弁解したが、当の零は熱が下がるとすっかり忘れてしまっていたのだった。

おわり
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