【完結】死ぬとレアアイテムを落とす『ドロップ奴隷』としてパーティーに帯同させられ都合よく何度も殺された俺は、『無痛スキル』を獲得し、覚醒する

Saida

文字の大きさ
54 / 87

フラグ

しおりを挟む
『持っていきなさい』

ドースさんはいろんなものを詰め込んで、この頭陀袋を渡してくれた。

『役に立つかは分からないけれど……

ないよりはましなはずだ』

『ありがとうございます』

僕は頭を下げてそれを受け取った。

物自体というよりも、自分の身を案じてくれる人がいるという事実の方が、僕には嬉しかった。


シャーマンの頭陀袋から僕が取り出したのは、何の変哲もない保温瓶だ。

瓶の中には、ラコが作ってくれた紅茶が入っている。

『作ったって言っても……ただ魔法石を振っただけだよ』

『うん。でも飲むたびにラコを思い出せるから。ありがとう、ラコ』

僕がそういうと、ラコは『あっそ』と素っ気ない返事をした。しかしその耳は赤くなっていたから、照れ隠しだとすぐにわかる。


紅茶は口から順番に、喉、胸、お腹と、体全体を温めてくれた。

「はぁ……」

僕は目をつぶり、束の間の休憩を堪能する。

「よし」

そして頭陀袋の中に保温瓶を戻した。

僕には待ってくれる人がいる。

だからこそ自分の身の安全を第一に、ダンジョンを探索しなければならないのだ。




昨晩、ダンジョンに潜りたいという話をしたとき。真っ先に反対したのは、ラコだった。

「一人でってこと? 危ないよ!」

ドースさんは、隣でいきり立つ娘をなだめた。

「今の彼の話を聞いただろう。

ダンジョンはたしかに危険だ。

しかし隠れて何も準備しないことの方が、先のことを思えばより危険なのかもしれない。

カウガはそう考えたと言っているんだよ」

ラコは首を振った。

「それは分かってるよ。

でも危険のために危険を冒すなんて、本末転倒じゃない。

強くなる前に、魔物に倒されてしまったら?

オーバーヒールされてるからって、じゃあその体力の余剰分が尽きたらどうなるの?

その時に一人でいたら、誰の助けも得られないよ?

ダンジョンはパーティーで潜るのが基本でしょ。

一人で潜るなんて、そんな……」

僕はラコを見て言った。

「たしかに君の言う通りだと思う。

普通、ダンジョンに一人で潜るのは避けるべき行為とされている。

でも僕の今後を考えたら、自分と同じような状況の人間が二人も三人も見つかって、パーティーを組めるようになるとは考えにくい。

それだったら、最初から一人に慣れておく方がいい。

もしこれで生き延びれないのだとしたら、厳しい考え方かもしれないけれど、どのみちこの先、生きていくことは難しいと思う」

「ねぇ、どうしてそんなこと言うの……?

私たちで協力し合おうって話、さっきしたばかりじゃない……」

ラコは唇を噛んだ。

ドースさんは言った。

「ラコ。

だから私たちは、姿見のダンジョンを彼に提供するんだ。

ラコも知っていると思うが、この付近にあるダンジョンは全て国によって管理されている。

もちろん深い階層となれば未開拓な部分も多いが、どのダンジョンでも入口では必ず冒険者資格の提示が求められ、身分を明らかにしなくてはならない。

彼一人では、ダンジョンに入ることすらできない。

だから私たちが、彼にあの姿見を使ってもらうんだ。


それにあのダンジョンは、役人や他の冒険者と鉢合わせしにくいというだけでなく、比較的安全でもある。

しばらく行っていないから状況は多少変わっているかもしれないけれど、そう厄介な魔物は生息していなかった」

「じゃあ私も行く」

ラコは駄々っ子のように、即答した。

「ラコ」

ドースさんの声には、たしなめる響きが滲んでいた。

「安全なんでしょう?

じゃあ私も行く。

ダンジョンに入ったことはないけど、私だって魔法は使えるよ?

カウガ一人で行くより、ずっと……」

「ラコ!」

ドースさんは、娘の言葉を遮った。

「彼の話を聞いていただろう。

戦いに参加していなかったとはいえ、彼は国の精鋭パーティーとともに、地下深くまで潜っていた。

我々とは経験値が違う。

右も左も分からないお前が言ったら、足手まといになるだけだ」

「じゃあお父さんもついてきてよ。

三人で行った方が、絶対安全に決まってるじゃない!」

「ラコ」

ドースさんはまた、娘の名前を呼んだ。

「私は確かに、ダンジョンへ行った経験がある。その点では、お前が行くよりはましかもしれない。

しかし私だって、地上で生活してきた、戦闘に不慣れな素人であることには変わりないんだ。

あの姿見の中を調査しに行ったとき。レジスタンスの仲間には腕の立つものが何人もいた。

私がパーティーに参加できたのは、私というお荷物がいたとしても、彼らにそれをフォローするだけの実力があったからに過ぎないんだ。

決して戦力に数えられてダンジョンに潜っていたわけじゃない。その逆なんだよ。

ラコもよくわかっているだろう。

人数合わせで参加させた素人ほど、パーティーの致命的な弱点になるものはない」

「じゃあカウガが命をかけて戦っている間、私たちはこの安全な店で、指をくわえて待ってるしかないってこと……?」

「ラコさん……」僕は咳払いをして、言い直した。

「ラコ。

君がここで待ってくれているだけで、僕のダンジョンでの振舞いは確実に変わる」

ラコはやるせない怒りをたたえた目で、僕の顔を見た。

「どういう意味?」

「さっきも言ったでしょう。

無痛スキルのおかげで、僕は体の痛みを感じなくなった。

でも兄さんを失ってから、自分の存在意義まで見失いかけていたんだ。



それが今は変わった。

僕にはドースさんがいて、ラコがいる。

帰るべき居場所がある。

だから痛みを感じないこの体でも、僕はダンジョンの中でもなるべく捨て身の手段を避けて、慎重に行動しようと気をつけることができると思うんだ。

それはドースさんとラコが待ってくれるおかげで、僕の存在が、僕だけのものじゃなくなるからだよ」

「何その屁理屈。わけわかんない」

僕は首を振った。

「嘘だ。賢い君には、絶対に僕の言う意味が分かっている」

「そうやっておだてても無駄」

「おだててるんじゃない、本当だからそう言っているんだ」

「じゃあ私のことを一人にしないでよ!!」

だらだらと、ラコの目から涙があふれだした。

「互いの存在が大事だってわかってるんだったら、私を置いて一人で行かないでよ。

私がいるから大丈夫ってカウガは言うけど、じゃあカウガがいなくなったら私はどうなるの?

もう私たちは家族なんだよ?

家族を失う痛み、あなたもよく知ってるでしょ……」

僕は言葉を失った。

目の前で切られた兄さんの姿が、目の前にさっと浮かんできた。

「ラコ!」とドースさんが叫んだ。

「あっ、ご、ごめんなさい……」

僕の意識は、すぐに現実に戻った。

険しい顔で僕の顔を心配そうに覗き込むドースさん、わなわなと唇を震わせたラコ。

僕は慌てて、笑ってみせた。

「僕は大丈夫です。

必ず帰ってきます。

だからラコ、心配はいらない。

家族を失う痛みを君に味わわせるなんて、僕は絶対にしない。

約束するよ」







グォォォォォォォォォォォ!!!!

「ハァ、ハァ、ハァ……」

あのゴブリン亜種がいたのと同じ階層に、まさかこんな大物もいるなんて……

ドス、ドス、ドス……

だめだ、まずい。

角に追い詰められた。

グァァァァァァァァ!!!!

このままじゃ本当に……
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す

名無し
ファンタジー
 パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。

転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜

ぽいづん
ファンタジー
ガレオン帝国の名門貴族ノーベル家の長男にして、容姿端麗、眉目秀麗、剣術は向かうところ敵なし。 アレクシア・ノーベル、人は彼のことを千年に1人の逸材と評し、第3皇女クレアとの婚約も決まり、順風満帆な日々だった 騎士学校の最後の剣術大会、彼は賭けに負け、1年間の期限付きで、辺境の国、ザナビル王国の最底辺ギルドのヘブンズワークスに入らざるおえなくなる。 今までの貴族の生活と正反対の日々を過ごし1年が経った。 しかし、この賭けは罠であった。 アレクシアは、生涯をこのギルドで過ごさなければいけないということを知る。 賭けが罠であり、仕組まれたものと知ったアレクシアは黒幕が誰か確信を得る。 アレクシアは最底辺からの成り上がりを決意し、復讐を誓うのであった。 小説家になろうにも投稿しています。 なろう版改稿中です。改稿終了後こちらも改稿します。

収奪の探索者(エクスプローラー)~魔物から奪ったスキルは優秀でした~

エルリア
ファンタジー
HOTランキング1位ありがとうございます! 2000年代初頭。 突如として出現したダンジョンと魔物によって人類は未曾有の危機へと陥った。 しかし、新たに獲得したスキルによって人類はその危機を乗り越え、なんならダンジョンや魔物を新たな素材、エネルギー資源として使うようになる。 人類とダンジョンが共存して数十年。 元ブラック企業勤務の主人公が一発逆転を賭け夢のタワマン生活を目指して挑んだ探索者研修。 なんとか手に入れたものの最初は外れスキルだと思われていた収奪スキルが実はものすごく優秀だと気付いたその瞬間から、彼の華々しくも生々しい日常が始まった。 これは魔物のスキルを駆使して夢と欲望を満たしつつ、そのついでに前人未到のダンジョンを攻略するある男の物語である。

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。  そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。  【魔物】を倒すと魔石を落とす。  魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。  世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

神樹の里で暮らす創造魔法使い ~幻獣たちとののんびりライフ~

あきさけ
ファンタジー
貧乏な田舎村を追い出された少年〝シント〟は森の中をあてどなくさまよい一本の新木を発見する。 それは本当に小さな新木だったがかすかな光を帯びた不思議な木。 彼が不思議そうに新木を見つめているとそこから『私に魔法をかけてほしい』という声が聞こえた。 シントが唯一使えたのは〝創造魔法〟といういままでまともに使えた試しのないもの。 それでも森の中でこのまま死ぬよりはまだいいだろうと考え魔法をかける。 すると新木は一気に生長し、天をつくほどの巨木にまで変化しそこから新木に宿っていたという聖霊まで姿を現した。 〝この地はあなたが創造した聖地。あなたがこの地を去らない限りこの地を必要とするもの以外は誰も踏み入れませんよ〟 そんな言葉から始まるシントののんびりとした生活。 同じように行き場を失った少女や幻獣や精霊、妖精たちなど様々な面々が集まり織りなすスローライフの幕開けです。 ※この小説はカクヨム様でも連載しています。アルファポリス様とカクヨム様以外の場所では公開しておりません。

処理中です...