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しおりを挟む「縁談、ですか?」
「そうだ。アレナトゥア侯爵家より申込があった。絵姿もあるが、見るかね?」
初夏にはいる頃、マスティマリエ公爵より伝えられた言葉に、ティアリーネは瞠目した。初めての縁談と言っても過言ではない。テーブルの上に広げられた書類にそっと目を落とした。
セロ・アレナトゥア侯爵令息。十二歳。ティアリーネよりも二歳年下だ。
黒髪、緑色の瞳の利発そうなまだ幼い少年がそこには描かれていた。
地位は同等であり、セロ自身は成人後は一旦独立するが伯爵である叔父の養子となるとのこと。可愛い娘の生活をある程度補填したいマスティマリエ公爵にとっては、渡りに船の縁談だ。勿論、ティアリーネが気に入ればの話だが。
「別に無理をして結ばなくても良い縁ではあるが。一度会ってみるか?」
ティアリーネは一瞬だけ考えて。「そうですね」と言った。
「一度お会いしてみようと思います」
「分かった。そのように手配しよう…。ああそうだ、この事はヴァンには暫く黙っておくように」
「お兄様に?何故ですか?」
「あやつは…。まあ、お前をとても大事に思っているからな。間違いを冒しかねない」
「間違い?」
「いや、いいんだ。気にするな。とにかくそういう事で頼んだ」
「…分かりました」
兄に言ってはいけないと言うことだけ釈然としなかったティアリーネではあったが、再度セロの絵姿に眼を落とした。いつかは公爵家を出ていかなくてはならない身だ。今はまだ何の感慨もないこの少年と直接会って話をしてみることには、必ず意義があるだろう。漠然とした気持ちで少女はそう思った。
そして初めての顔合わせの日。
「へえ、お前があの聖女の娘か。顔だけは良いんだな」
そう言ってこちらを無遠慮に見下し嘲るように笑う目の前の少年に、ティアリーネは目を丸くした。
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