【完結】ただ好きと言ってくれたなら

須木 水夏

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ふわふわしてない友人達(サロンにて)

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「さあ、それで。サラはどうしてそうプンスコしてるのかしら?」

「プンスコ…」



 白い色で統一されたサロンに入り、料理も配膳されてふんわりと食事が始まると、待ちきれなかったのかマルベリアがそう尋ねてきた。

 

「この照り焼き、甘味と辛味の絶妙なバランスが素晴らしいですわ…。まあ、なあに?サラさんは怒っていらっしゃるの?」


 恍惚としながら食事をしていたエミリアが、首を傾げてサラを不思議そうに見つめた。



「本当ですね。付け合せのサラダも瑞々しいです。いえあの、…怒っているというか、どうしたら良いのかと御相談したくて……。」

「こっちのポテトフライも美味しいのよ。
 ねえ、それってでしょう?」



 食事を薦めつつもマルベリアの確信を持った声に、サラはパッと顔を上げた。隣で「本当だわ美味しい!」とエミリアが顔を輝かせている。(そっち!)



「何故分かるのですか?」

「ふふ、公爵家の間者を舐めてはいけなくてよ?」

「間者?!」

「あら、貴女には付けていないわ。安心して。付けているのは王位継承権も持たぬのに王城で暮らすあのよ。」

「あら?ローゼマリアさんの件でしたのね。まあ、スープもいつも通り美味。野菜の優しいお味が染み入りますわ。」



 エミリアも成程、と頷いたがさして驚いている様子もなくパクパクと食べ進めている。サラは何だか奇妙な心地になった。少し機嫌を害したように見えるマルベリアを初めて見たからだ。ヲタク話で盛り上がっている時に、サンタナがヒロイン達にダル絡みしても負の感情は見せたことは無いのに。
 そもそも、彼女達とのお喋りの内容で彼女ローゼマリアの名前が出てくるのは初めてだった。




「そうよ。間者からの報告によると、あの女はハーヴェイ殿下にランマイヤー伯爵子息に会わせて欲しいと媚びを売ったようよ。大方、城に来ているのを見かけて今度はサラの婚約者にもちょっかいを出したくなったのね。本当に節操のないこと。」



 ん?なんか今、聞き捨てならない言葉が聞こえた。「に」?




「…申し訳ありません、マルベリア様。物を知らぬ私なので教えて頂ければと思うのですが、…ローゼマリアさんは他の方にも、その」

「ええ。秋波を送っていらっしゃるの。」

「えっ。」

「ジェリー様の婚約者、エミリアの婚約者、貴女の婚約者。そして、私の婚約者。その他、貴族どころか平民にも沢山居るんじゃないかしら?」

「ええっ?!」



 驚くサラに、うんうんとエミリアが頷いた。

 ジェリー様はマルベリアと対を成すもう一つの公爵家の令嬢で、確か辺境伯爵子息との縁談が結ばれていたはずだ。サラの婚約者は言わずもがな伯爵家のガーヴィン。
 エミリアの婚約者は同じ位の侯爵子息。
 皆が将来的に王の補佐官となる第三王子ハーヴェイ殿下の側近候補で、よく王城に召されている。

 そして、マルベリアの婚約者は第二王子のマクベス殿下だ。
 マクベス殿下はその…残念ながら王族としての能力があまり高くないんじゃないだろうか、と臣下達からは言われている。本人は健康体であり頭を使うよりも筋肉を使う方が得意な人間である。見た目は王族の色を継ぎ、王妃様に似ているので大変麗しいのだけれど、戦乱の世ではない今はどちらかと言うと頭脳派が求められている。

 頭脳明晰で我が国の軍事力の要とも言えるサンドラルド公爵家へと殿下は補佐という形で降婿される事になっていた筈だ。マルベリア様は公爵家の正統な後継者で、マクベス殿下はその婚約者の地位をご自身で所望されたと聞いた事があったのに。

 それが、まさか浮気?








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