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悪魔の所業【母シェアナ視点】
しおりを挟む※シリアスがシリアルになっていた件、教えてくださってありがとうございます(*・ω・)*_ _)美味しくなってしまいましたね...スミマセン( ° △ ° ; )
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「……。どういうこと?」
「あの子は、フランクのことを――好きだったの。それも、ただの恋心ではなくて……。執着、と呼ぶ方が正しいわ。」
クロエの声がかすれ、小さく震えながら続けた。
シェアナも、クロエの妹ライラには何度か会ったことがあった。
──ライラは穏やかで控えめな少女だった。いつもクロエの背中に隠れるように立ち、話しかけると恥ずかしそうにはにかんだ笑みを見せたものだ。可愛らしい、という言葉が似合う少女だった。そんな彼女が、クロエの夫フランクに恋慕どころか執着を抱いていたなんて、到底想像がつかない。
「私とフランクは、貴女と私が王子の仮の側妃として置いておかれる前に出会ったの。」
「覚えているわ。クロエ、あの頃はいつも泣いていたもの。」
「そうね。このまま召し上げられてしまってはと毎日が不安で堪らなかったから…。フランクは私のその心細さを知っていて、よく内密にサントモルテへと逢いに来てくれたわ。」
「それも知っているわ。貴女、惚気がすごかったもの。」
「ふふ。」
クロエは柔らかく微笑んだ。けれど直ぐにその表情も悲しみに色褪せる。
「…実家へと彼が来てくれていた時、ライラはフランクに恋をしたわ。引っ込み思案で大人しい子だったから、異性と話す機会も少なくて。フランクはただ私の妹であるあの子と仲良くしたいだけだったの。」
「……まさか。」
「その、まさかよ。」
クロエの声が掠れる。
「勘違いをしてしまったライラは、私が王子の側妃にならずにフランクと結婚することを知った時……笑っていたの。」
その言葉に、シェアナは息を呑んだ。
「……笑っていた?」
「ええ。嬉しそうにね。だから、気がつけなかった。」
クロエは自分を抱きしめるように腕を組み、小さく震えながら俯いた。
「…あの子は、息子をフランクの代わりにしようと考えたの。」
「それ、は。」
言葉の意味が分からずに、シェアナは呟くように聞き返してしまった。当時ガーヴィンは三歳になったばかりだった。
「ライラは……屋敷にいたガーヴィンを攫い、父が狩猟をする際に使っていた山小屋に連れ込んだわ。そして……そこで、幼いあの子に『私を好きになりなさい』と――。食事も与えずに、何日も……。」
クロエの声が震える。耳を塞ぎたくなるような話しだ。
「……止めて、クロエ。それ以上は……。」
「ごめんなさい。こんな事を聞かせてしまって。でも」
彼女は声を詰まらせたが、言葉を続けた。
「ガーヴィンは……それから、一週間後に見つかったわ。」
クロエの声が震えた。彼女は拳を握り締め、かすれた声で続ける。
「見つかった時、あの子は……衰弱しきっていて。小さな体は痩せ細り、肌は血の気がなくて……もう目を開けることさえできなかったの。」
クロエの瞳からまた新たな涙がこぼれ落ちた。シェアナは息を呑み、言葉を挟むこともできない。
「でも……『ごめんなさい、ごめんなさい……ゆるして』って……。」
彼女の声は途切れがちになり、苦しそうに続けた。
「あの子、ずっと、そう呟いていたそうなの。弱々しい声で、何度も何度も……。」
クロエは肩を震わせながら、次の言葉を絞り出した。
「それから……ガーヴィンは、しばらく目を覚まさなかったの。意識を取り戻した時には……その時のことを、何一つ覚えていなかった。」
「……。」
「その後は、笑いもしない泣きもしない。まるで空っぽの人形のようになってしまっていたの。」
シェアナは思わず、息子を想像してしまった。もし、自分の娘や息子に誰か同じような悪意を向けたのだとしたら――。考えただけで心が締め付けられ、恐怖が胸を覆った。けれど。
「昼間は人形に反応が乏しくなって...。けれど眠ると夢を見るんでしょうね。『あの女が来る』と毎晩泣き叫んでいたわ。あの頃のガーヴィンは食も細くてやつれきって、可哀想で...。
でも貴女の娘にもう一度会って変わったわ。」
「……サラ?」
「そうよ。サラちゃん。あの子会ってから、ガーヴィンは笑うようになったの。前と同じように走ったり歌ったりしてくれるようになった。」
ふんわりと微笑んだクロエの頬をぽろりと涙が伝う。シェアナも泣いていた。
「だけどまさか、好きという感情が分からないなんて…。」
「…クロエ……。」
また泣きはじめてしまった友人に、シェアナはどうする事も出来ずに、ただ彼女の肩を抱きしめたのだった。
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シリアスなシリアスパート(この小説の中では)、一旦終わりです(ᐡ - ·̫ -ᐡ)
母達は色々心配しちゃうよね、という回でした。
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