【完結】ただ好きと言ってくれたなら

須木 水夏

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僕の天使【ガーヴィン視点】

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※シリアスパート一旦終わりました| ε:)当の本人はこんな感じです。













「ガーヴィン。あの子が貴方の将来のお嫁様よ。」



晴れた庭園で母がそう言った時、僕はただ「はい」とだけ答えた。
 ……でも、視線の先にいた少女を見た瞬間、僕の脳内に雷が落ちた。

そこにいたのは美しい天使だった。
 いや、もしかすると妖精かもしれない。

 とにかく、何かとてつもなく人間離れした天上の存在が、僕に微笑んでいたのだ。

 その頃の僕は感情の起伏が乏しく何にも興味を持てず、本を読む事で暇を持て余していた。そんなガーヴィンにとって、それは奇跡のような出来事だった。



 サラ・ウイントマン。
 その時の彼女の姿は、今でも鮮明に覚えている。

 白いふわふわしたドレスに赤いチェック柄のケープ。つやつやした焦げ茶色の髪と新緑のような瞳。僕をじっと見つめるその目が、まるでこう言っているように思えた。

「ガーヴィン、貴方は私に一生尽くす運命よね?」(妄想)


正直、僕はその時点で「はい!」と元気良く答える準備が整っていた。
 サラはそんな僕の心を知ってか知らずか無邪気な笑顔を浮かべて、ガーヴィンを見つめ、そして「ガヴィ?」と拙く呼んだ。

 その瞬間に、ガーヴィンはサラに恋をしたのだと思う。六、七歳の歳の頃だった。


 ガーヴィンとサラの初めての出会いはお互いに産まれたての頃だったらしい。
 「さすがに覚えていないでしょう?貴方もサラちゃんも眠ってたものね。」
 と母に言われた時、赤ちゃんのサラも見たかったなと、ガーヴィンは少し残念に思った。

 ガーヴィンの気の所為でなければ、サラも直ぐに彼に好意を抱いてくれたようだった。
 二人はお互いの母親に連れられ、頻繁に遊んだ。追いかけっこ、隠れんぼ、おままごと。


「ガヴィ!」
「サラ。」


 二人で遊ぶ時、ガーヴィンは並んで歩く時以外は何時も彼女の後ろを歩いたり走ったりした。
 少女よりも彼の方が足は早かったけれど、後ろにいる方がサラの動きに合わせられたから。…それと、何故か背中側に人の気配を感じるのが苦手だったから。

 でも一番の大きな理由は、ガーヴィンが後ろにいるとサラは何時も振り返って微笑んでくれるから。



 ある時、彼女が恥ずかしそうに刺繍の入ったハンカチをくれた。「私が刺したの。変だけど笑わないでね。」と言って手渡してくれたそれは、ガーヴィンの瞳の色に近いハンカチで、白い糸で白いの刺繍が施されていた。僕が黙ってじっとそれを見つめていると、サラは小さく呟くように言った。


「…レオンなの。」
「……レオン?」
「……うん。」


レオンは僕が飼っている大型犬だ。けれど、刺繍の出来栄えは、どちらかというとクマ…?アルパカ?に近かった。

「……ありがとう、サラ。」


 僕は嘘をつくのが下手なので「上手い」とは言えなかった。でも、このアルパカ──いや、レオンは僕の宝物になった。
 それ以来、サラは定期的に刺繍を施した小物をプレゼントしてくれるようになった。ハンカチ、サッシュ、手袋等々。今や彼女の刺繍スキルはプロ並みで、アルパカ感は完全に消え失せている。



 されど、僕はサラにを伝えられない。彼女がを求めているのは痛い程に理解している。

 理由は、分からない。
 
 何故かその言葉を口にしようとすると身体がまるで凍ったように冷たくなって動けなくなってしまう。
 十中八九、子どもの頃に何かがあったトラウマだろうと僕は考えている。





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