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城の大広間
その後、ミア達は卒業式を迎えた。
卒業式当日もソレイユは当たり前のように彼女と共に過ごし、一緒に卒業を喜んで。その日で彼に会ったのは最後で手紙も送ったりはしていなかった。それは就職の準備のために忙しくしていたのもあるし、自分の心を落ち着けるためでもあった。
デビュタントの日にちもずれていたことは事前に知っていたので、もう社交界で会っても遠くから見るだけの人なのだとミアは少し寂しく思いながらも、それが通常で当たり前の事だと割り切りっていたのだ。
そして現在。まさか、こんな風に会えるとは思っていなかった。
そんなお久しぶりなソレイユに、ミアは内心激しく動揺しながらもそれを面に表さないようにしながら言葉を続けた。
「久しぶりね。」
「うん。久しぶり。今日のミアはいつにも増して綺麗だね。」
「……貴方も素敵ね。」
「ありがとう。」
微笑みながらサラッとそんなことを言うソレイユは相変わらずだった。
(……今更怯まないわよ。これは彼の平常運転。気にしないわ。)
「お、王城なんて、初めて入ったけれどやっぱり凄いわね。」
「そうだね。ミアの大好きな図書館もあっち側の棟にあるよ。」
「貴方は良く来ているの?」
「子どもの時は父に連れられて。今は年始の挨拶に伺うくらいだよ。」
「まあ、そうなのね。」
話をしていると段々心が落ち着いてきたミアの手を取り、ソレイユは彼女をエスコートしてゆっくりと歩みを進めようとする。
そのあまりに自然な行動に、少女は戸惑いながらも流されるように隣に並んだ。そんなミアに、右斜め上から優しい視線を向けてくるソレイユを見て、少女は頬が熱くなるのを感じながら視線を逸らした。
(ああ、またそういう顔をする……!だから誤解を産むのよ……!)
気持ちを落ち着かせようと歩きながら、ミアは周りからのチクチクした視線を感じていた。
これ以上人目を引くのは良くないと分かっているミアは、彼から少し距離を取ろうとしたが、捕まえられている右手が離して貰えなくて、慌てて彼を見た。
「え、えっと、ソレイユ?このままだと一緒に大広間に入ってしまうわ。」
「うん。そうだね。」
「いえあの、そうだねじゃなくて」
「いいでしょう?僕らは友人なんだし。」
「え、あ。」
優しく微笑んだままのソレイユに、そのまま引きづ……導かれるような形でミアは大広間へと突入してしまったのだった。
(なんて美しいのかしら……。)
大広間にたどり着いた瞬間、ミアは光の中に包まれた様な気持ちになった。
煌々と灯るシャンデリアの無数の光が、大広間の天井に散りばめられた星のように瞬き、金色の輝きが静かに波打つ。磨き抜かれたクリスタルが光を屈折させ、大理石の天井や壁に幻のような紋様を描き出し、まるで宮廷そのものが夢幻の世界へと溶け込んでゆくかのようだった。天井画も鮮やかに浮かび上がり、ミアはそのあまりの美しさに声をなくしてじっとそれを見つめていた。
暫くそうしていたが、ふと視線を感じてそちらに目を向けるとソレイユがミアを見ていた事に気がつき、はっとして慌てて目を逸らす。
「ごめんなさい、綺麗だったからつい。天井を見たりなんかして、はしたなかったわ。」
「咎めてないよ。光が反射して、ミアの目の中に星が沢山降っているみたいで綺麗だったから見てたんだ」
「……。」
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