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ワルツを君と
(この人……!この人は本当に……!)
異性に対する耐性がほぼ無いミアは絶句して、再び自分の頬が熱くなるのを感じた。
どうして、こんな思わせ振りというかロマンチックな言葉をすんなり口に出すのだろう。
もしかしてこの人、私のことが好きなのかも、なんて勘違いをしてしまいそうになる事もう何回目、いや何十回目か。学園の頃から数え切れない程ソレイユはミアの心を揺り動かしてきた。
でも無理無理。ソレイユのステータスもその称号も、どっちを考えても彼はミアとは住む世界の違う人だ。好きになってもどうにも出来ない、正に仕方の無い人。
そう思うと、いつも心を落ち着けることができた。
式典が始まり、和やかさの中に厳粛さを混じえ、壇上にて国王の成人に対する祝辞が述べられた。
「皆がこうして晴れやかな姿を見せてくれることを、私は心から嬉しく思う。
今日という日を迎えたことは、貴方がたにとってただの節目ではない。
これから先、どのように生きるか、どのように国を支えていくか、それぞれの道を考える始まりでもある。誇り高く、そして恐れずに前に進んで行きなさい。」
(前に進む、かあ……。)
王の言葉に拍手が湧く中、ミアは釣られるように小さく拍手をしながらぽつりと心の中で呟いた。彼女にはまだ婚約者が居ない。
悪魔令嬢なんて不名誉な二つ名を持つ彼女に縁談を申し込んで来るのは、ミュジック伯爵家の家名に惹かれた三下の家か、どこか後暗い所があるか、もしくは後妻にというものばかりで、それに怒った父が全て断わってしまったからだ。
おかげで、年頃になったミアは未だに将来を共にする相手を見つけられていなかった。
ミア的には、司書になりたいという夢を叶える為にもう勉強の末に試験を突破し、このデビュタントが終わった月に就職することが決まっているので最悪結婚できなくても良いのだが、そうなるとミュジック伯爵家に迷惑がかかるのでは無いかと心配している。特に妹に。
おうち大好きな彼女は「姉様が結婚していないのだから私もしないわ。ずっとミュジック家にいるわ」なんて言い出し兼ねない。
そんな事をぐるぐると考えている間に、オーケストラが奏でるワルツの音が前方から聴こえてきた。ファーストダンスが始まるのだろう。
ミアは邪魔にならないように壁際に下がろうと一歩を踏み出したのだが、途端に腕をぐっと引っ張られてその場に引き留められた。引き留めたのは無論──。
「ソ、ソレイユ?」
「何処に行くの?今から踊るのに。」
「え。」
ファーストダンスは、婚約者同士で踊るものだ。そう厳格に定められている訳では無かったが、その場に留まっているのは婚約者のいる者達ばかりである。ミアは、ソレイユが何を考えているのか分からず、戸惑ったように彼を見上げた。
ダイヤモンドのように煌めく彼の瞳は、本来の色は浅い海のように透き通った薄い青色の筈だ。けれど、光の色合いによって変化するその目は、今はシャンデリアの灯りで七色に輝いているように見えた。
と、彼の目線が低く──というか、彼の上体がす、と床に沈んだ。ミアはそこでハッと気がついた。彼が長い足を折り曲げ跪いたのだという事に。
「私と踊って頂けますか?」
「……??!?!」
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