【完結】天使のような貴方に恋をしたはずなのですが?

須木 水夏

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いつかは終わる関係性







 肘をついたまま上目遣いでそう言われて、ミアは紅茶を吹き出しそうになったのをすんでのところで堪えた。
 口を手で抑えながら、咳払いをする。吃驚した。そして、少女はソレイユを軽く睨みつけた。



「……あのねえ。いつも言っているけど!」
「ん?」
「あ、貴方のその言い方、どうにかならない?」
「言い方って?」
「その、時々出てくる……人を、その、勘違いさせそうな言葉よ。」
「……勘違いも何も。君は僕の大切な人だよ。合ってる。」


 不意に泣きそうになるほどに、誠実さを滲ませるソレイユの声の温かさが、ミアの胸に響いた。


(……違う!だから、そういうところなんだってば……っ!)


 彼は天帝の血を引く王の家系にいる、『天使』なのだから甘い笑顔と言葉を向けるのはその性質で、生まれながらの人たらしなのだろう。それは分かっている。
 ソレイユの言葉に言葉通り以外の意味は無く、純粋にミアを大切に尊い友人だと思ってくれているに違いない。
 そう考えると何故か胸の奥がちくりと傷んだけれど、少女は平気な振りをして微笑んだ。


「……ありがとう。私も貴方は大事な友達だと思っているわ。」

(友人として。友人として、ね。変な思い違いなんてしないわ。
 ああ、もしかして同性の友人だったらこんな事で悩まなかったのかしら。)



「……うん。」


 ソレイユの小さな返事にミアは彼の顔を見た。目を伏せた彼の表情は、どことはなく悲しげで憂いを含んでいる様に見えて、思わず「ソレイユ?」と彼女は呟いた。

 その呟きが耳に届いたのか、金色の睫毛が上がり透明な瞳がミアの姿を真っ直ぐに捉える。ダイヤモンドの様に煌めく彼の目の中に、少女は真っ黒な髪の自分を見つけて何故か不思議な気持ちになった。小さな灰色の目がこちらを興味深そうに見つめていた。


「……貴方の目、とても綺麗ね。」


 改めてそう口に出してみると、その言葉だけでは表せないなとミアは感じた。もっと良い表現方法は無いかと思考していた時、温かい物が彼女の左の頬を触った。
 それはソレイユの白く長い指だった。大きな手のひらが触れる頬の下の辺りは、熱を帯びているのをミアは自身で感じ取り、思わず彼の手から逃れた。
 その時には驚く程近くにソレイユの顔があり、頭の片隅でだから映り込んだ私の姿がどんどん大きくなって行ってたんだわ、とミアは思った。


「……近すぎるわ。」
「もっと近づいてもいいよ。」
「駄目よ。やめて。」
「ごめんごめん。」


 悪戯っ子のように微笑んだソレイユに、からかわれたと気がついたミアは大きなため息を吐いた。

 この関係も、学園が終われば終了する。二つ名以前にソレイユ自分ミアには身分差がある。学園の中では親しくする事も可能だが、特に嫡男という使命を生まれ持つソレイユには、適切な婚約者が必要になる。そうなるとは邪魔なだけだと流石のミアも解っていた。

 ミアは、学園を卒業後には司書になる予定なのは変わらない。それは子どもの頃からの夢であったし、手に職をつけ自分でお金を稼いで生活し、彼女もまた誰か自分に合った身分の者といつか結ばれるだろう。出来れば自分を愛してくれる人が良い、と思った瞬間に浮かべてはいけない人の顔が浮かびそうになるのを慌てて首を振って止める。


(夢は寝ている時に見たらいいわ……。)


 自分の心の着地点を最終的に決めきれないのは何故なのか。まだ夢を見ているからだろうか。
 取り留めない思考に支配されてしまいそうで、ミアはその事について、あまり深く考えないようにした。





 




 
 

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