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彼女の瞳の秘密
呆然としたまま、ゆっくりと顔を横に振るとミアは自分の瞳の色を思い出していた。何の特徴もない青灰色の瞳にそんな秘密があったとは。
もしかして、家族みんなそうなのかしらともミアは思った。
そう言えば、ずっと昔に祖父がミア達に簡単なおまじないを披露してくれた時、その瞬間の彼の瞳の色は普段よりも明るかった気がする。気がする、としか言い様がないのはそれが家族団欒の最中の明るい室内の出来事であったのと、祖父はそもそも金色に近い目の色をしていたから。
でも、ミアの灰色の瞳が金色に変わったのであれば、それは見間違いのないものだろう。
一般的な魔術の扱い方も知らない一家である。変化する瞬間を家族間でもはっきりと認識した事がなくても不思議ではなかった。
「図書館でミアに助けられたあの時、ぼんやりとしか君の姿が見えていなかった。声で女性だと判断できたけれど、意識がはっきりと戻った時に見た君の瞳の色は金色だった。そんな生徒は学園には存在していない。でも君が僕から離れた途端に君の瞳の色は、優しい雨の色になった。
だから君の姿を見た時に、直ぐに分かった。」
「……髪色で分かったのかと思っていたわ。」
「そうで無くとも君だと分かったよ。」
それは、何だか少し、結構嬉しいかもしれない。
でも、それよりもミアには気になることがあった。
「……ごめんなさい。私には……貴方の事が全然分からないわ……。」
ソレイユに「君だと直ぐ分かった」と言われた事がミアにとっては今一番気まずい事だった為、少女は申し訳なさそうに答えた。
ミアはその天帝の愛した娘では無い。生まれ変わりでもないだろう。そんな記憶を彼女は持っていないのだ。
ミュジック伯爵家はもうずっと以前から人間との混血が進み、既に魔族らしいのは髪色くらい。魔王の血を引いているといくら家系図に描かれていても、魔力なんてあってないようなものだ。
それが実は数千年前には、天帝とも関係がありましたと言われてもピンと来るはずもなかった。
ソレイユは眉根を下げるミアのその言葉に、優しく微笑んだ。
「良いんだ。僕が君だと分かるからそれで。それに、記憶を持っている事の方が稀だよ。天帝が恋した魔族の女性もほぼ人間だったんだから。」
「え?でも魔族って……。」
「うん。でも魔力はほとんど持っていなかったんだ。彼女が持っていたのは献身的な治癒能力と、平和を望む優しくて純粋な心だけ。」
「……それじゃ、天帝と娘の間に出来た子供が魔王になってしまったのは……。」
「不幸な出来事だったんだ。」
しょんぼりとするソレイユを見つめながら、ミアは首を傾げた。
えっと。
待って、それって。
魔王が生まれてしまったのって、ほぼ天帝のせい…なのでは。魔と合わさった結果ではあるのかもしれないけれど。
ミアはごくりと息を飲んだ。
そして、それであるなら今回のこの求婚は。
「ソレイユ……。さっきの求婚の話なんだけど」
「!!受けてくれるかい?大切にする!」
目を輝かせながら更にミアの手を強く握り締めるソレイユに、少女は一歩後ろに下がった。
「いえ、待って。」
「ミア……?」
「待って頂戴。」
冷静に考えてみたら、これはその数千年前の再来なのではないだろうか。
「貴方と私が結婚したとして、その……、また魔王が生まれる可能性はないのかしら?」
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