【本編完結】独りよがりの初恋でした

須木 水夏

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新しい出会い

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 それから半年が経とうかというある時の事だった。隣のクラスの伯爵令息より求婚の手紙が届いた。

 今までも求婚はいくつかあった様だが、男爵であるお父様は浅ましくも娘をを選んでいたようだった。

 そして、頭脳明晰として名高く、家族や親族が教授や医師など研究職に付いているリジュール伯爵家より届いた手紙に、父は大層喜んだ。母は興味無さげにしていたが、話を聞いた弟達は嬉しそうな顔をした。
 格上の相手からの縁談の申し込みであり、父は自分の希望に沿った買い手を見つけ、そこに断る理由など無かった。




 求婚の申し込みがあった後、直ぐに両家の計らいで子爵令息のペリオッドと初めて二人で向かい合い言葉を交わしたのは、求婚の手紙が届いて一週間後のことだった。

 リジュール伯爵の跡取りであるペリオッド・リジュールは、黒髪に若草色の目をした整った顔立ちの利発そうな少年だった。

 失礼なこととは思いながらもどういった経緯で今回の申し込みとなったのかと、私は恐る恐る聞いてみた。

 男爵家は確かに経済力を有しており、伯爵家と縁を結べば研究にて色々な商品を開発し、更に利益を生む可能性が高いこの婚姻は、政略的な意味を持ち合わせているとアンティーヌは感じていた。

 しかし、ペリオッド自身の強い希望により伯爵家より申し込まれた婚姻と知り、私は非常に戸惑った。

 幼少期より器量が悪いと言われ、父や母に関心を持たれてこなかった私は、自分の価値に対して全く自信がなく、期待もしてこなかった。そんな自分を必要としてくれる人など現れる事は無いと思っていたので、望まれた理由を知りたかったのだ。

 私の問い掛けに彼は一瞬だけ言葉に詰まって。けれど大人びた表情で柔らかく微笑んだ。


「クルーニー嬢…いいえ、アンティーヌと呼ばせてもらっても?」

「…はい。」

「貴女はご自身が学園でどう呼ばれているのか、知っていますか?」

「…いいえ。」

 私は正直に首を横に振った。親しい友人も数人しかいない。地味で大人しく、目立たない。きっと誰の目にも入っていない。そんな自分が周りからどう呼ばれているかなどと、考えてみた事もなかった。


「学年が始まった頃の貴女は、クラスの中でそんなに目立った存在ではなかった。」
 
「わ、私は今でも特に目立つようなことはしておりません。」

「本当にそう思いますか?アンティーヌ」

 真っ直ぐな瞳で見つめられ名前を呼ばれて、私はビクリと肩を震わせた。何か悪い事を知らない間にしてしまっていたのでは、と途端に萎縮してしまう。
 そんな私を見つめていたペリオッドは一瞬眉根を寄せた後、優しく微笑んだ。


「…貴女は、いつも自信がないように見えますね。」

「…私は、不出来な人間ですので…。」

「不出来な人は学年で成績上位をキープし続ける事なんて出来ないと思います。」


 私は弾かれたように俯いていた顔を上げた。
 そこには何故か少し不貞腐れたような、の顔をした少年がいた。


「アンティーヌ、貴女が昨年一位になるまで学年でずっと成績が一位だったのは僕です。」

「えっ。」
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