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第二章
うん、バレバレなので開き直ります
しおりを挟む(ひぃ…っ!今すぐわたしを視界に入れるのはやめてください…!
だ、大体お二人共、ヒロインのそばにいないのは何故ですか…?!)
物語の男性主人公である二人の美形に見つめられて、アリアは再び冷や汗が止まらなくなる。
小説の中では彼らは、丁度この頃に王都で主人公と出会っているはずなのだ。
優しく朗らかで可愛らしいヒロインと親交を深め、彼女の光の力や前向きな性格に興味を持ち、その内恋に落ちて時に愛を囁き、鈍感な少女には分かってもらえなくて切なくなってみたり傷ついてみたり、でも慰められたり癒されたり、敵(悪役令嬢と大ボス)退治したり。
とりあえず主人公や彼らにとって大変王道な心躍る世界が展開されているはずなのである。
なのに、何故ここにいるのだろう?
そんな気持ちで見つめ返した少女は、視線が交差した途端、マテオの水色の澄んだ美しい目から反射的に紫水晶の瞳を逸らした。
記憶を思い出す前まで、マテオはアリアが一度は狂うような(ストーカーしてしまうような)恋心を抱いていた人物だ。この人生最大と言っても過言では無い非常識な迷惑をかけた相手が目の前にいる…。それだけで土下座をしてしまいたい。
(あああ、生きてて申し訳ございませんっ…!!)
そんなアリアの気持ちを知ってか知らずが、マテオはにこやかに少女に話しかけてきた。
「アリア嬢、その後身体の調子はどう?元気にしていた?」
「え、ええ。とてもげ…、いえ、休養をしておりました。」
(このくだりは王太子殿下に続き二回目…!またもや危なかったです…!)
名前を呼ばれて目を白黒させながらも、アリアは気持ちを落ち着けて答えた。変なことを言わないようにと口にぐむっと力を込めた為にまた無表情になる。
「元気にしてたんだね、良かった。」
アリアの言葉に、マテオは嬉しそうに微笑んだ。その顔を見て少女はハッとすると、サァーと顔から血の気が引いた。
(…これは、仮病が、バレて、ますね…?)
元々、少女は体調が急激に悪くなり休養の為に領地に帰ったことになっていた。その件はアリアが領地へと旅立った後に、少し時間を置いて父から公爵家と王太子に伝えている。急いだと思わせるように伝達には見た目だけ早馬を使ったが、アリアが領地に着く頃に知らせが行くように時間稼ぎをしているので、当たり前だがそれはもう早馬ではない。
なので、その後公爵家や隣国王家の使者が来たとしても、既に娘はおりませんで伯爵は通した筈だ。
(ま、まさか、その事で不敬を問われたりするのでしょうか…?)
そこを突っ込まれるとリーエル伯爵に迷惑がかかってしまう。
焦ったアリアは、目が回りそうになるのをグッとこらえながら話を変えるために自分から話を振るしかなくなってしまった。
(ど、どうしましょう?!何をお伺いしましょうか?!
あ、そうだ!学園の様子を聞いてみるのはどうでしょうか?ヒロインとちゃんと会えているのかも気になりますし!)
意を決して、アリアは顔を上げると引き攣る頬を無理やり押し上げて微笑んだ。
「と、ところでアレンデラス公爵令息様。最近の学園生活はいかがお過ごしですか?
わたしは、このように休養で領地へと帰ってきてしまいもうあそこに通うことも無いので...。」
言いながら、アリアは自分の現状を実感して少しだけ寂しくなった。
友人は多かったとは言えないが、親しい人達と共に知らない事を学べるあの空間、帰り道に寄った王都のオシャレで可愛らしいお店の数々、...そして、心置き無くマテオをストーカー出来ていたあの時間を思い出して。
最後の思い出を思い出した瞬間に、アリアはスンッと冷静になった。途端に悲しかった気持ちが払拭されて無になる。
(...うん。学園やめて正解ですね。なんて思い出なのでしょうか。考えるのを辞めましょうそうしましょう。)
けれど、そんなアリアを不憫に思ったのかマテオは痛ましげな表情を浮かべ小さく微笑んだ。
「そうか、アリア嬢はもうあの学園には戻らないんだね。残念だな。
学園は相変わらずだよ。何も変わった事もなく...あ、でも三ヶ月前かな?光の魔法を使える生徒が一人入学してきてね。」
マテオの言葉にバッとアリアは顔を上げた。それは、それはまさか。
「平民の生徒なんだけど、珍しい魔法だからという事で生徒会に入ってもらって一緒に活動しているよ。」
(あーーー!!合ってるー!絶対そうですーーーー!!!!)
小説の世界の中、唯一、男性主人公に愛される一人の少女。
淡い桃色の髪に、太陽のように煌めく明るく大きな金色の瞳。華奢で小さな身体からは想像がつかないほど、バイタリティに溢れ、快活で優しく慈愛に満ちている。そして目覚めたばかりの光の魔法を使って人々に癒しと希望を与える、そんな存在。
王道中の王道、The・ヒロイン...!
その名は...!
「リーシャ...!」
「...なぜ、アリア嬢が彼女の名前を知っているの?」
思わず呟いてしまった主人公の名前を拾ったマテオが、不思議そうに首を傾げた。
(しまっ...!)
「えっ?えっ、な、なぜ?なぜ?
あ、ああー!あの、あれですあれ、学園におります友人がお手紙を送ってくださってまして!ええ、そうなんです!それです!」
「あ、なるほど。」
「...。」
(あ、焦った...!
でもこれで分かりました。ちゃんと物語は続いていて進んでいるんですね...。
...じゃあなんで、この方たちはここに居るのでしょうか?ますます疑問しか残らないのですが...?!)
本当に意味が分からない。
アリアは少々頬を引き攣らせながら、さらに尋ねた。
「そ、そう言えば、こちらへは視察と聞きましたが…?」
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