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第四章 オレは75人の魔法少女からケツを守られている
襲来
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「姫様、そこにいたらあぶのうございます」
ぞうさん砲の真下のバルコニーで、砲身の行く先を見つめる第3王女に爺やは声をかける。
「あら、爺や。守備の方は?」
「万全でございます」
発射装置を差し出す
「……戦況は」
「芳しくありませんな。お父上様たちも奮戦はしておりますが、彼らの強さはそれ以上でございます。」
「我が国の命運をこのボタン一つが決めるかもしれないのですね。」
「左様でございます」
「爺やは3年前の戦争を最前線でいたのよね。勇者は魔王に勝てると思った?」
「思いませんでしたな。勇者側が圧倒的に不利でした。大幹部との連戦により疲弊し。仲間が死に。魔王を倒すための巫女のメンタルがくずれ不調に。それでも勇者は魔王を封じれたのは奇跡としか言えませんな。そして、奇跡はそう易々と起きませんよ、のう、2代目勇者殿」
「はぁ、はぁ、はぁ」
「その根性は認めて差し上げますわ。重症の体を魔法で無理やり動かして、ここまでやってきたのですから」
「発射は、させねー」
「爺や、30秒」
「はっ」
彼が手をかざす。空中に魔法陣が浮かび出す。いくつもいくつもいくつも。
「……おいおい、冗談だろ?」
「ほっほっほ、冗談ではございませんよ。」
魔法陣から異様な気配を感じる。
「は、は、まじかよ……」
魔法陣からは大量の異形のもの達が現れる。コウモリのような羽を生やし、角を生やし、悪魔の出で立ち。
「悪魔の召喚術ははじめてですかな?昔はかなりぽぴゅらーな戦い方だったのですがな。異世界人の召喚よりもずっと簡単でして、生贄という名の対価があれば、簡単に呼べるのですよ。」
「簡単っつっても、限度があるだろ」
目の前に埋めつくされる悪魔の軍勢。
「姫様から与えられた時間は30秒。若人よ。恨みはないですが肉塊とおなりなさい」
一斉に飛びかかる悪魔たち。
「……」
その爪や牙や、魔法を俺は静かに見ていた。
「……ほぅ」
ゆっくりと景色が流れ、スローモーションの様に自然と身体が動く。
「瀕死になってからの覚醒ですかな。かつての勇者さながらですな。彼も死が近くなるほど強くなるタイプでした」
「はぁ、はぁ、はぁ」
お前は俺様と神が『二倍(ダブル)』で作りだした模造品だ。
自分が人間じゃないことに愕然としたが、この場では感謝すべきなのか。魔力を感じる力は抜群に伸びていた。大量の悪魔の魔力に、あの爺さんの魔力。近づいてくる。第2王女の魔力に、覚醒した巫女の魔力。巫女の魔力?巫女ってなんだ?
巫女?
黄金の巫女?
俺様を封印しやがった。
巫女の気配
「あ、れ……」
バツン……
意識がとだえる。
第3王女は発射装置に手をかけ動けずにいた。
そのボタンを押すだけで、国が一つ消し飛ぶ。
躊躇いの感情がなかったわけではない。
だが、彼女の手が止まったのは別の原因がある。
自分の腹心であった爺や。
国を留守にしている王族たちを除いてこの国で現在最も強いはずの男の命が風前の灯だったからだ。
「一体なんなんですの!!貴方は!!」
荒れ狂う黒いオーラに包まれたその人物は咆哮する
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!」
お前は俺様と神が『二倍(ダブル)』で作りだした模造品だ。
ここからはお前の記憶には残らねぇ
勇者は魔王に勝てなかった。だから、勇者の力と魔王の力を混ぜたのさ。
カリンは悪寒がした。何かに見られてるような感覚と自らの奥底に眠る何かの気配を感じていた。
「……なに?」
導きの杖が熱をもつ。ひとつ上の階から尋常じゃない絶叫が聞こえる。
「何が起こっているの?」
「ア゛アア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!」
勇者、いや、勇者と思っていた者から放たれた黒いもやが爺やの召喚した悪魔たちを包んだかと思うと、つぎの瞬間には消え失せていた。
「ぬん!」
爺やは第3王女に向けて悪魔を飛ばし、体当たりさせた。
「な、にを、?!」
言葉を飲む、先程まで自分がいた場所には勇者の黒いもやが渦巻いており、自分を突き飛ばした悪魔の片腕のみが存在していた。それもぽてりと地面に落ちてしまった。
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!」
叫びとともに、とにかく力任せに勇者だったものは殴りかかってきた。
「……うむ。攻撃は重いが。いなしてしまえば、、」
受け止めるのでは無く、受け流すことで爺やは耐えていた。
ただの血迷った獣の脳の足りない攻撃。直撃さえ気をつければ。
「何かに取り憑かれておるのかな。」
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!」
今度は黒いモヤが拳に集まる。
爺やはその攻撃を腕に魔力を集中させ、いなすための姿勢をとる。
が、
「!!」
腕に激痛が走る。怯んだところに腹に一撃をうけ壁に叩きつけられる。
「ぐ、ふ、この状態で、理性があるのか?それよりもこの感覚、呪い、ですな。まるで魔王……」
腕を這うような激痛が走るが、爺やは直ぐに解呪を試みる。そして、すぐさま、呪いを自身の拳に纏わせる。魔力には魔力で、物理には物理で、呪いには呪いで防ぐことが基本。
呪法の五番。『魔呪殴撃』と呼ばれ、かつて恐れられた魔族に伝わる体術。拳に集めた呪いを相手に叩き込む。打たれた相手は呪いに蝕まれる。
いちばん厄介な点は魔力ではなく呪いを原動力にしてるため、魔力での防御の上乗せが不能であるという点だ。
暴走状態。しかも、この攻撃は魔力のオンオフ、呪いのオンオフ、膂力のオンオフを自在に行えるため、戦い続けるためには、ずっとジャンケンでアイコを出し続けることと同等のことをする必要がある。つまり、ほぼ不可能。
「ぎぎぎ!!!?」
殴ったほうも、その反動で骨がバキバキに砕けていた。破滅的で壊滅的な力。
「めちゃくちゃですな。私が血を流すなぞ。何年ぶりか。姫様。お願いがあります。勇者どのは魔のものに憑依されてる可能性があります。いまから、それを祓います。姫様は私の杖を引き継いでくだされ、我が杖を我が死後、第2王女に継承する。」
「……爺や?」
第2王女に語りかける。天上の杖の1本、山羊座(カプリコーン)の杖。悪魔を呼び、使役する杖。彼が帝国で1番の強さをもつ所以。
「この杖は協力ですが危険な杖です。悪魔の囁きには気をつけなされ。強い精神力と魔力が必要です。ほかの者に奪われぬよう。今の私には、もう扱えますまい。」
爺やの身体はすでにボロボロだった。魔王の呪いは全身を蝕んでいた。印を結び結界に勇者を閉じ込めたが、直ぐにその結界も壊されるであろう。自身と姫を分けるようにドーム状の結界をはる。自分も呪いを受けた身、第2の魔人になる可能性もある。
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!」
「倒せるかは、、期待なさるな。姫様に仕えられて良かったです。悪い友人とはあまり関わりなさるな。爺やからの最後の願いですじゃ」
指さす先には第2王女の懐の白い仮面があった。
「悪いが、勇者殿。老骨とともに死出の旅をしましょうぞ!」
「爺や!!」
「圧殺せよ。超多重召喚!!「魔天牢」」
ギチッ!!
結界の中が魔族で満ちる。際限なく召喚される魔族はぎゅうぎゅうに押し込められ潰される。結界の中が悪魔の血肉で埋め尽くされた。
結界が崩れ、血まみれで立つ者が1人。
ぐったりとしている老人の首を掴みあげ壁に投げる。
扉が開かれ、少女が現れる。
「アンタ!!なにして、」
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛?、、、、、あ!」
ニタリと。勇者の顔で、勇者とは違うものが笑う。
「アンタ、誰よ!」
杖を握る手に力が入る。いつになく、導きの杖が熱く落ち着かない。
「よくも爺やを!!天秤座!!同質量のパンに!!」
「ア?」
彼女の天秤が勇者の身体をぱんに変えようと魔法をかける前に、モヤが全身を包み、力を無効化する。モヤを飛ばし、反撃してくる。モヤをかわしながら、魔法を打ち込む隙を狙うも、あの黒い煙が邪魔をする。
「……あの黒いモヤ、黒蛇と同じ、魔法を無効化してるの?」
モヤの発生元は、少年のケツ。
「あれが悪さをしてるってなら!」
「……第三王女!手を貸しなさい。」
「……生意気な。私を誰だと」
「私たちでアレをとめるわよ」
「……庶民の力など借りなくても」
「とまると思う?」
「……」
「私があなたの力を引き出すわ。」
「力を引き出す?」
「……わたしの杖はそういった力なのよ。」
「なら、ご自分でかければいいじゃない。」
たしかに、考えもしなかった。でも、注意を引く役がほしい。
「私は私で、役割があるの。……私があのモヤをとめる。気を引いて頂戴。」
「背に腹は、かえられなさそうですね」
「光の妖精さん!力を貸して!!金鏡幻覚(ミラー・ミラージュ)!!」
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!」
部屋のあちこちに、私たちを投影する。自分の唇を押さえる。幻覚(ミラージュ)の魔法をただかけようとしただけなのに、勝手に違う呪文を唱えていた。私が知らない魔法をなんで。頭を振って不安を振り払う。
身を隠して、作戦を考える。
「して、下民のあなたには何か策があるのでしょうか」
黒いもやはあいつのお尻から出てる。普段なら煌々と輝いているはずの尻が黒い。
あの黒いもやを封じるなら
「カン・チョウね」
かりんは静かに言った。
「カン・チョウ??なんですか、それは、はじめて聞きました」
第三王女は生唾を飲み込み聞いた。カリンの表情は厳しい。
「カン・チョウ。わたしのツレが昔教えてくれた秘伝の技よ。それは東の太陽が出づる国、ニポンで、脈々と受け継がれてる拳法らしいのよ」
「ニポン?聞いたことがないですわ」
「私も半信半疑だったけど、その技を受けて、私は悶絶したわ」
「そんな、恐ろしい技が」
「ニポンでは、幼少の頃からこの技を鍛えあげ、技を磨き上げるらしいの」
「幼少の頃から?!」
「技のレベルが上がると技名も変わるそうなの、」
「どう、変わるのかしら」
「まずは、基本のカン・チョウ。これが、基本よ。原点。構えは忍びと言われるニポンの闇の騎士のニンポウの構えをとるらしいの。それをねじこむの。臀部に」
「臀部にねじ込むのですか?!」
カタカタと震える第三王女。無理もない。わたしも初めて聞いた時は慄いた。
「次に、「三年殺し」」
「さ、さんねんごろし?!」
「えぇ、あいつがいうには、三年はその死ぬほどの痛みに苦しむというわ。」
「なるほど、後遺症があるのですね」
「さらに、「千年殺し」」
「せ、せ、せ、千年殺し?!!そんな恐ろしいレベルの技のもあるのですか。」
「えぇ。でも、これは秘密。」
「わ、わかりましたわ」
第三王女は思案する。魔王も恐ろしいが、彼が君臨したのは百年余り。流石に千年規模のダメージまでは。
この少女が、嘘を言っていなければだが。
「…それが嘘でない証拠は?」
「わたしが一度、彼が大切にしていたおやつを食べてしまったことがあったわ。彼は怒って私が寝てる隙に、あの技を放ったの。一番下のレベルのカン・チョウを受けた時、私は三日三晩うなされたわ。それに、技を放ったあいつを姉様が大激怒したわ。あの一度も怒ったことのない姉様がよ。」
「…え」
第三王女は震える。彼女の姉はたしか魔法少女No.50『千変』。彼女の名声は帝都にも届いている。彼女の怒りを買って生きて帰ったものはいないと、信憑性が増した。
「託しましょう。あなたに。そして、カンチョウとやらに」
暴走する力の奔流。あれを止めるには、私にはまだ力が足りない。頼りにしていた。爺やは倒されてしまった。未知の力に縋りたくもなる。
「……よし、わたしが背後に回る隙をなんとかつくって頂戴!!」
「わかりました」
天秤と山羊座の杖を構える。
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!」
飛びかかる勇者に臆せず魔力を高める。
「傾く天秤よ、荒ぶる山羊よ、王家の名のもとに力を混ぜ合わせよ。混合魔装・調停山羊(ジャッジコート)」
ヤギをかたどった面を被り、天秤のようなデザインの大鎌を振り回す。第三王女の魔装。豪華なきらびやかなコートはまるで仮面舞踏会に向かうよう。
「なんて、魔力、これが王族」
従えるは数多の魔族。執事服に身を包んだ悪魔たちは恭しく頭(こうべ)を垂れる。
杖を鋭く、勇者に向ける。
「突撃(アサルト)!!」
恭しく大人しかった魔族が勇者に牙を剥く。
羽根を生やし、モヤを避けながら、攻撃を試みる。
「それじゃぁまた、消されちゃう」
悪魔の身体も魔力出できているなら、直ぐに戦闘不能に
「分かっていますわ!天秤座!」
彼の近くまで達した悪魔の身体を同じ重さの爆薬に変える。
「!!」
次々と悪魔が爆発していく。
「え、えぐい」
「あなたはさっさと作戦を実行してくださいなっ!!」
「光の妖精さん!姉様!……力を貸して『千変光花』!!」
光の屈折、転移(ワープ)、錯覚。姉妹の魔法を重ねて広げる。
さらに増える敵影に狙いを定めきれないようだ。だったらもっと増やしてやる。
「『百花繚乱』!!」
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!」
力では適わなくても相手を翻弄して、敵を刺す!
アイツに聞いた必殺の型。両手を短銃の形に模して、その間に杖を差し込む。目の前には黒い光を放つケツ。今しかない!!
「秘技!!!万年殺しぃいいいい!!!」
「万年殺しぃい!!!!」
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!」
渾身の叫びとともに深々とケツに突き刺さる導きの杖。
「……奥義!!百万年(ミリオン)殺(・デス)しっ!!!」
さらにカリンは己の全魔力を込めて豪快にぶっぱなす。
「?!?!!?!?」
あまりの勢いに、宙に浮き上がる勇者の身体。
「……戻ってこいっ!ばかああああ!!」
杖が金色に輝き、力を放つ。周囲の黒いモヤをかき消していく。
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛…………あん♡」
荒野に響く笑い声。遺跡に腰掛け魔王復活を目論む七星仮面騎士団の壱(ファースト)は笑う。
「……は、はは、ははははは!!ば、馬鹿なのか、あいつら、あはははは!」
第三王女の持つ仮面から送られてきた映像に思わず吹き出す。魔王の意識が漏れだした時は焦ったが、まぁ、あの様子だと、あくまで意識の残滓、感情が漏れ出ただけということか。おかげで魔王が封印されている場所がはっきりした。巫女のやつ、封印後の隠し場所は任せて、なんて言ったから結局20年近くかかっちまった。白い杖を取り出してあの時のことを思い出す。
私は魔王を封印する。あなたたちは杖を隠して。だれも封印の地に来れないように。だれもこれ以上悲しまないように。
お前はどうするんだよ
…………わたしは。封印した後は、うまく脱出するから。大丈夫よ。黒濁もあるし。貴方が白純を持っていて。わたしがあなたのもとに帰れるように。
……分かった。俺たちのコピーは作ったんだ。いざとなったら逃げるんだぞ。こんな世界のために生命をかけるなんてばかげている。だから、必ず帰ってこい
分かってるわよ。相変わらず心配症ね。ばいばい!わたしの勇者様。
最終決戦のあの日、深手を負わすも勝ちきれなかった俺たちは魔王を精神と魂と肉体に分けてそれぞれ封印することにした。
魔王は封印された。だが、最も重要な魔王の魂の封印を請け負った黄金の巫女は帰って来なかった。
「……っ、包帯キツすぎだ。なんだ、偉く情緒不安定じゃないか。壱(ファースト)」
傷の手当を受けながら、仮面の参、黒犬は問いかけた。
「ああ、すまねぇ。帝都の方も片付いたみたいだ。お前が仮面を王女にも渡してくれていたおかげで、状況がよく分かる。さすが情報屋。」
「……まあな。お前たちと旅して出来たパイプを生かさない手はないからな。あたしの能力で、犬を1匹ずつ、各地の要人、要地においてきた。平和な世の中でも、情報は高く売れる。」
「…コミ障じみていて案外ちゃっかりしてるよな、お前は、あと、…仮初の平和だ」
「……あぁ、そうだな」
巫女が犠牲になった以上仮初だ。巫女がいる場所の目星はついていた。だが、正しい順序で入らなかった前回は結局弾き出されちまった。そうなんども、臨死体験をするわけにはいかない。あいつは隠し場所を変えてしまった。まさか。俺のコピーのケツの中とは。思いもしなかったぜ。
「笑ったり怒ったり大丈夫でーすか?」
肆の仮面の少女が聞く。
連邦の遺跡での戦闘は決着がついた。
仮面の力を解放した彼女達は徐々に劣勢を覆し、四神将と獅子王を倒すことができた。
「蠍座に加えて獅子座も手に入れたしな。色々おもうところがあるのさ」
振り返ると数分前までは遺跡を取り囲んでいたジャングルは枯れ果て、広い荒野になっていた。獅子座の能力。改めて凄まじい力だ。あまり力を使いたがらない理由も分かった。蠍座、獅子座、山羊座の杖は危険な杖と巫女も言ってた。使い所は考えねば。
だが、これで天上(プラネタリウム)の杖は全てこちらの世界に出揃った。
「こいつらはどうするんです?」
「あと一つ役割があるから、トドメは刺すなよ?」
縄に縛られ、祭壇の上に並べられていた5人は微かに息があった。
「しかし、すごいな、この仮面は、私たちみたいな格下が元とはいえ、シングルNo.に勝っちまうなんてな」
自身に着けてる仮面を指して言った。魔力を強め、相手の攻撃を素早く分析し、対策をねる。人工知能のようなものを宿していた。壱がAIをモデルにして、魔力回路をくんで彼女らに与えていた。
「データの蓄積、分析、最適化。ただ単純にそれだけでも、格段に強くなれる。あとは戦う相手の分析。人間誰しも癖があるからな。この世界の住人が雑なだけだよ。長く戦えば戦うほどデータが集まり、分析が正確になるからな。時間をかけ、相手の技の引き出しを開けて行けばあっという間に元々のNo.から20番くらいは強くなれるだろうよ」
「そんなもんかね」
「さて!下準備は全て終わったいよいよ魔王を呼び起こすぜ。」
懐から仮面を取り出す。弐と描かれた仮面。仮面から声が聞こえる。
「首尾はどうだ?弐(セカンド)」
「ばっちりよ!帝都に保管されてる魔法少女以外の登録済み魔法少女75人分の魔法記録表を入手したよ!あとは、魔法少女会議(サバト)のNo.2を始末したよ。現場は大混乱よ。どったもんだい。」
嬉しそうに語る。
「さすが色欲(ラスト)。」
「第四王女として、潜入して。あとは籠絡し放題。なんたって呪いについて無学すぎるのよ。王都の連中は。魔王様に恐れてる割には研究してないのは草よ草ww草生えるわ」
「だろうよ。あのメンバーならそうなるだろうさ。データを送ってくれ。No.持ちの魔法少女たちが入隊するにあたって基礎データがしっかりとるように組織した時に取り決めを考えたからな。もともとは残党を入らせないためだったが、役に立ちそうだ。こちらに引き込めそうなやつ、俺たちの目的の邪魔になりそうなやつをピックアップしといてくれ。またあとで連絡する」
手元にデータが送られてくる。75人の魔法少女たちが俺様の助けになる日も近い。転送されてきた小瓶には、魔法少女たちの魔力が少しずつ封じられたビー玉が入っていた。それらを仮面に取り込ませる。
「ふぅ!!いよいよほんとの魔王様の復活だぜ」
「あぁ、そうだな。長かったぜ」
「いよいよ助け出せる」
いつまで経っても帰ってこない巫女。探し回った日々。転生者が見たという金髪の少女。計画の立案。一か八かの過去への転生術式。生まれ落ちた先でのむちゃくちゃな修行。魔王の圧政。仲間集めをしつつ、各地の遺物や魔法具、魔導書の回収。情報工作。2度目の臨死体験による巫女との邂逅。限られた時間での白い杖の回収とマーキング、巫女の力を弱め、各地の魔王の欠片の活性化を促した。千虹雲海の下にある魔王の身体。魔王の魔力が変質した各地の呪い。今回判明した魔王の意識の場所。長かった。だが、これも。
白仮面の女たちを見る。
仮面の機能を作動させる。カシュっと音を出し、仮面からガスが出る。不意打ちに思わずガスを吸ってしまった彼女たちはその場に倒れる。
「ご苦労さん。これで、俺様が転移できる魔力は手に入ったな。」
ばたりと倒れた女たちを祭壇に移動させる。
「な、は?」
「わりぃな。帝都に転移する魔力が足りなくてな。転移が得意な『千変』は帝都だし、お前たちも祭壇に乗せるぞ。連邦の戦士達、帝都の最強の魔道士たち、お前たちのようつな特殊な魔法少女。それらのデータは全てこの仮面に蓄積されている。どんな魔法も結局は魔力の掛け合わせだ。分析出来ちまえば、使えるのさ。「黒狼」、ほらな」
彼の足元に黒い狼が現れる。
「?!」
「さて、待ってろ?英雄(ヒーロー)。お前のケツに眠る魔王と巫女を叩き起してやるからな」
祭壇の魔法を起動させる。
「古代魔法『超転移』!!帝都、ぞうさん砲魔力保管室の前へ!!」
祭壇の魔道士たちの魔力を吸い起動される。
全身の粒子化によって、霞む視界が次第にはっきりしてきた。
目の前には巨大な魔力貯蔵庫。帝都のぞうさん砲の根元。通称タマブクロ。
「でかい……これだけの魔力があれば。」
捕らえられた魔法少女たちの魔力が集まっている。通常なら厳重に封印されているが、発射準備の為に最低限の守備しかされていない。
彼は剣を取り出して、貯蔵庫に突き立てる。
「吸え!七星剣。これで、100人の魔法少女の魔力がそろう。ようやく……ようやくだ……会えるぜ。お前に」
ぞうさん砲の真下のバルコニーで、砲身の行く先を見つめる第3王女に爺やは声をかける。
「あら、爺や。守備の方は?」
「万全でございます」
発射装置を差し出す
「……戦況は」
「芳しくありませんな。お父上様たちも奮戦はしておりますが、彼らの強さはそれ以上でございます。」
「我が国の命運をこのボタン一つが決めるかもしれないのですね。」
「左様でございます」
「爺やは3年前の戦争を最前線でいたのよね。勇者は魔王に勝てると思った?」
「思いませんでしたな。勇者側が圧倒的に不利でした。大幹部との連戦により疲弊し。仲間が死に。魔王を倒すための巫女のメンタルがくずれ不調に。それでも勇者は魔王を封じれたのは奇跡としか言えませんな。そして、奇跡はそう易々と起きませんよ、のう、2代目勇者殿」
「はぁ、はぁ、はぁ」
「その根性は認めて差し上げますわ。重症の体を魔法で無理やり動かして、ここまでやってきたのですから」
「発射は、させねー」
「爺や、30秒」
「はっ」
彼が手をかざす。空中に魔法陣が浮かび出す。いくつもいくつもいくつも。
「……おいおい、冗談だろ?」
「ほっほっほ、冗談ではございませんよ。」
魔法陣から異様な気配を感じる。
「は、は、まじかよ……」
魔法陣からは大量の異形のもの達が現れる。コウモリのような羽を生やし、角を生やし、悪魔の出で立ち。
「悪魔の召喚術ははじめてですかな?昔はかなりぽぴゅらーな戦い方だったのですがな。異世界人の召喚よりもずっと簡単でして、生贄という名の対価があれば、簡単に呼べるのですよ。」
「簡単っつっても、限度があるだろ」
目の前に埋めつくされる悪魔の軍勢。
「姫様から与えられた時間は30秒。若人よ。恨みはないですが肉塊とおなりなさい」
一斉に飛びかかる悪魔たち。
「……」
その爪や牙や、魔法を俺は静かに見ていた。
「……ほぅ」
ゆっくりと景色が流れ、スローモーションの様に自然と身体が動く。
「瀕死になってからの覚醒ですかな。かつての勇者さながらですな。彼も死が近くなるほど強くなるタイプでした」
「はぁ、はぁ、はぁ」
お前は俺様と神が『二倍(ダブル)』で作りだした模造品だ。
自分が人間じゃないことに愕然としたが、この場では感謝すべきなのか。魔力を感じる力は抜群に伸びていた。大量の悪魔の魔力に、あの爺さんの魔力。近づいてくる。第2王女の魔力に、覚醒した巫女の魔力。巫女の魔力?巫女ってなんだ?
巫女?
黄金の巫女?
俺様を封印しやがった。
巫女の気配
「あ、れ……」
バツン……
意識がとだえる。
第3王女は発射装置に手をかけ動けずにいた。
そのボタンを押すだけで、国が一つ消し飛ぶ。
躊躇いの感情がなかったわけではない。
だが、彼女の手が止まったのは別の原因がある。
自分の腹心であった爺や。
国を留守にしている王族たちを除いてこの国で現在最も強いはずの男の命が風前の灯だったからだ。
「一体なんなんですの!!貴方は!!」
荒れ狂う黒いオーラに包まれたその人物は咆哮する
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!」
お前は俺様と神が『二倍(ダブル)』で作りだした模造品だ。
ここからはお前の記憶には残らねぇ
勇者は魔王に勝てなかった。だから、勇者の力と魔王の力を混ぜたのさ。
カリンは悪寒がした。何かに見られてるような感覚と自らの奥底に眠る何かの気配を感じていた。
「……なに?」
導きの杖が熱をもつ。ひとつ上の階から尋常じゃない絶叫が聞こえる。
「何が起こっているの?」
「ア゛アア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!」
勇者、いや、勇者と思っていた者から放たれた黒いもやが爺やの召喚した悪魔たちを包んだかと思うと、つぎの瞬間には消え失せていた。
「ぬん!」
爺やは第3王女に向けて悪魔を飛ばし、体当たりさせた。
「な、にを、?!」
言葉を飲む、先程まで自分がいた場所には勇者の黒いもやが渦巻いており、自分を突き飛ばした悪魔の片腕のみが存在していた。それもぽてりと地面に落ちてしまった。
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!」
叫びとともに、とにかく力任せに勇者だったものは殴りかかってきた。
「……うむ。攻撃は重いが。いなしてしまえば、、」
受け止めるのでは無く、受け流すことで爺やは耐えていた。
ただの血迷った獣の脳の足りない攻撃。直撃さえ気をつければ。
「何かに取り憑かれておるのかな。」
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!」
今度は黒いモヤが拳に集まる。
爺やはその攻撃を腕に魔力を集中させ、いなすための姿勢をとる。
が、
「!!」
腕に激痛が走る。怯んだところに腹に一撃をうけ壁に叩きつけられる。
「ぐ、ふ、この状態で、理性があるのか?それよりもこの感覚、呪い、ですな。まるで魔王……」
腕を這うような激痛が走るが、爺やは直ぐに解呪を試みる。そして、すぐさま、呪いを自身の拳に纏わせる。魔力には魔力で、物理には物理で、呪いには呪いで防ぐことが基本。
呪法の五番。『魔呪殴撃』と呼ばれ、かつて恐れられた魔族に伝わる体術。拳に集めた呪いを相手に叩き込む。打たれた相手は呪いに蝕まれる。
いちばん厄介な点は魔力ではなく呪いを原動力にしてるため、魔力での防御の上乗せが不能であるという点だ。
暴走状態。しかも、この攻撃は魔力のオンオフ、呪いのオンオフ、膂力のオンオフを自在に行えるため、戦い続けるためには、ずっとジャンケンでアイコを出し続けることと同等のことをする必要がある。つまり、ほぼ不可能。
「ぎぎぎ!!!?」
殴ったほうも、その反動で骨がバキバキに砕けていた。破滅的で壊滅的な力。
「めちゃくちゃですな。私が血を流すなぞ。何年ぶりか。姫様。お願いがあります。勇者どのは魔のものに憑依されてる可能性があります。いまから、それを祓います。姫様は私の杖を引き継いでくだされ、我が杖を我が死後、第2王女に継承する。」
「……爺や?」
第2王女に語りかける。天上の杖の1本、山羊座(カプリコーン)の杖。悪魔を呼び、使役する杖。彼が帝国で1番の強さをもつ所以。
「この杖は協力ですが危険な杖です。悪魔の囁きには気をつけなされ。強い精神力と魔力が必要です。ほかの者に奪われぬよう。今の私には、もう扱えますまい。」
爺やの身体はすでにボロボロだった。魔王の呪いは全身を蝕んでいた。印を結び結界に勇者を閉じ込めたが、直ぐにその結界も壊されるであろう。自身と姫を分けるようにドーム状の結界をはる。自分も呪いを受けた身、第2の魔人になる可能性もある。
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!」
「倒せるかは、、期待なさるな。姫様に仕えられて良かったです。悪い友人とはあまり関わりなさるな。爺やからの最後の願いですじゃ」
指さす先には第2王女の懐の白い仮面があった。
「悪いが、勇者殿。老骨とともに死出の旅をしましょうぞ!」
「爺や!!」
「圧殺せよ。超多重召喚!!「魔天牢」」
ギチッ!!
結界の中が魔族で満ちる。際限なく召喚される魔族はぎゅうぎゅうに押し込められ潰される。結界の中が悪魔の血肉で埋め尽くされた。
結界が崩れ、血まみれで立つ者が1人。
ぐったりとしている老人の首を掴みあげ壁に投げる。
扉が開かれ、少女が現れる。
「アンタ!!なにして、」
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛?、、、、、あ!」
ニタリと。勇者の顔で、勇者とは違うものが笑う。
「アンタ、誰よ!」
杖を握る手に力が入る。いつになく、導きの杖が熱く落ち着かない。
「よくも爺やを!!天秤座!!同質量のパンに!!」
「ア?」
彼女の天秤が勇者の身体をぱんに変えようと魔法をかける前に、モヤが全身を包み、力を無効化する。モヤを飛ばし、反撃してくる。モヤをかわしながら、魔法を打ち込む隙を狙うも、あの黒い煙が邪魔をする。
「……あの黒いモヤ、黒蛇と同じ、魔法を無効化してるの?」
モヤの発生元は、少年のケツ。
「あれが悪さをしてるってなら!」
「……第三王女!手を貸しなさい。」
「……生意気な。私を誰だと」
「私たちでアレをとめるわよ」
「……庶民の力など借りなくても」
「とまると思う?」
「……」
「私があなたの力を引き出すわ。」
「力を引き出す?」
「……わたしの杖はそういった力なのよ。」
「なら、ご自分でかければいいじゃない。」
たしかに、考えもしなかった。でも、注意を引く役がほしい。
「私は私で、役割があるの。……私があのモヤをとめる。気を引いて頂戴。」
「背に腹は、かえられなさそうですね」
「光の妖精さん!力を貸して!!金鏡幻覚(ミラー・ミラージュ)!!」
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!」
部屋のあちこちに、私たちを投影する。自分の唇を押さえる。幻覚(ミラージュ)の魔法をただかけようとしただけなのに、勝手に違う呪文を唱えていた。私が知らない魔法をなんで。頭を振って不安を振り払う。
身を隠して、作戦を考える。
「して、下民のあなたには何か策があるのでしょうか」
黒いもやはあいつのお尻から出てる。普段なら煌々と輝いているはずの尻が黒い。
あの黒いもやを封じるなら
「カン・チョウね」
かりんは静かに言った。
「カン・チョウ??なんですか、それは、はじめて聞きました」
第三王女は生唾を飲み込み聞いた。カリンの表情は厳しい。
「カン・チョウ。わたしのツレが昔教えてくれた秘伝の技よ。それは東の太陽が出づる国、ニポンで、脈々と受け継がれてる拳法らしいのよ」
「ニポン?聞いたことがないですわ」
「私も半信半疑だったけど、その技を受けて、私は悶絶したわ」
「そんな、恐ろしい技が」
「ニポンでは、幼少の頃からこの技を鍛えあげ、技を磨き上げるらしいの」
「幼少の頃から?!」
「技のレベルが上がると技名も変わるそうなの、」
「どう、変わるのかしら」
「まずは、基本のカン・チョウ。これが、基本よ。原点。構えは忍びと言われるニポンの闇の騎士のニンポウの構えをとるらしいの。それをねじこむの。臀部に」
「臀部にねじ込むのですか?!」
カタカタと震える第三王女。無理もない。わたしも初めて聞いた時は慄いた。
「次に、「三年殺し」」
「さ、さんねんごろし?!」
「えぇ、あいつがいうには、三年はその死ぬほどの痛みに苦しむというわ。」
「なるほど、後遺症があるのですね」
「さらに、「千年殺し」」
「せ、せ、せ、千年殺し?!!そんな恐ろしいレベルの技のもあるのですか。」
「えぇ。でも、これは秘密。」
「わ、わかりましたわ」
第三王女は思案する。魔王も恐ろしいが、彼が君臨したのは百年余り。流石に千年規模のダメージまでは。
この少女が、嘘を言っていなければだが。
「…それが嘘でない証拠は?」
「わたしが一度、彼が大切にしていたおやつを食べてしまったことがあったわ。彼は怒って私が寝てる隙に、あの技を放ったの。一番下のレベルのカン・チョウを受けた時、私は三日三晩うなされたわ。それに、技を放ったあいつを姉様が大激怒したわ。あの一度も怒ったことのない姉様がよ。」
「…え」
第三王女は震える。彼女の姉はたしか魔法少女No.50『千変』。彼女の名声は帝都にも届いている。彼女の怒りを買って生きて帰ったものはいないと、信憑性が増した。
「託しましょう。あなたに。そして、カンチョウとやらに」
暴走する力の奔流。あれを止めるには、私にはまだ力が足りない。頼りにしていた。爺やは倒されてしまった。未知の力に縋りたくもなる。
「……よし、わたしが背後に回る隙をなんとかつくって頂戴!!」
「わかりました」
天秤と山羊座の杖を構える。
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!」
飛びかかる勇者に臆せず魔力を高める。
「傾く天秤よ、荒ぶる山羊よ、王家の名のもとに力を混ぜ合わせよ。混合魔装・調停山羊(ジャッジコート)」
ヤギをかたどった面を被り、天秤のようなデザインの大鎌を振り回す。第三王女の魔装。豪華なきらびやかなコートはまるで仮面舞踏会に向かうよう。
「なんて、魔力、これが王族」
従えるは数多の魔族。執事服に身を包んだ悪魔たちは恭しく頭(こうべ)を垂れる。
杖を鋭く、勇者に向ける。
「突撃(アサルト)!!」
恭しく大人しかった魔族が勇者に牙を剥く。
羽根を生やし、モヤを避けながら、攻撃を試みる。
「それじゃぁまた、消されちゃう」
悪魔の身体も魔力出できているなら、直ぐに戦闘不能に
「分かっていますわ!天秤座!」
彼の近くまで達した悪魔の身体を同じ重さの爆薬に変える。
「!!」
次々と悪魔が爆発していく。
「え、えぐい」
「あなたはさっさと作戦を実行してくださいなっ!!」
「光の妖精さん!姉様!……力を貸して『千変光花』!!」
光の屈折、転移(ワープ)、錯覚。姉妹の魔法を重ねて広げる。
さらに増える敵影に狙いを定めきれないようだ。だったらもっと増やしてやる。
「『百花繚乱』!!」
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!」
力では適わなくても相手を翻弄して、敵を刺す!
アイツに聞いた必殺の型。両手を短銃の形に模して、その間に杖を差し込む。目の前には黒い光を放つケツ。今しかない!!
「秘技!!!万年殺しぃいいいい!!!」
「万年殺しぃい!!!!」
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!」
渾身の叫びとともに深々とケツに突き刺さる導きの杖。
「……奥義!!百万年(ミリオン)殺(・デス)しっ!!!」
さらにカリンは己の全魔力を込めて豪快にぶっぱなす。
「?!?!!?!?」
あまりの勢いに、宙に浮き上がる勇者の身体。
「……戻ってこいっ!ばかああああ!!」
杖が金色に輝き、力を放つ。周囲の黒いモヤをかき消していく。
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛…………あん♡」
荒野に響く笑い声。遺跡に腰掛け魔王復活を目論む七星仮面騎士団の壱(ファースト)は笑う。
「……は、はは、ははははは!!ば、馬鹿なのか、あいつら、あはははは!」
第三王女の持つ仮面から送られてきた映像に思わず吹き出す。魔王の意識が漏れだした時は焦ったが、まぁ、あの様子だと、あくまで意識の残滓、感情が漏れ出ただけということか。おかげで魔王が封印されている場所がはっきりした。巫女のやつ、封印後の隠し場所は任せて、なんて言ったから結局20年近くかかっちまった。白い杖を取り出してあの時のことを思い出す。
私は魔王を封印する。あなたたちは杖を隠して。だれも封印の地に来れないように。だれもこれ以上悲しまないように。
お前はどうするんだよ
…………わたしは。封印した後は、うまく脱出するから。大丈夫よ。黒濁もあるし。貴方が白純を持っていて。わたしがあなたのもとに帰れるように。
……分かった。俺たちのコピーは作ったんだ。いざとなったら逃げるんだぞ。こんな世界のために生命をかけるなんてばかげている。だから、必ず帰ってこい
分かってるわよ。相変わらず心配症ね。ばいばい!わたしの勇者様。
最終決戦のあの日、深手を負わすも勝ちきれなかった俺たちは魔王を精神と魂と肉体に分けてそれぞれ封印することにした。
魔王は封印された。だが、最も重要な魔王の魂の封印を請け負った黄金の巫女は帰って来なかった。
「……っ、包帯キツすぎだ。なんだ、偉く情緒不安定じゃないか。壱(ファースト)」
傷の手当を受けながら、仮面の参、黒犬は問いかけた。
「ああ、すまねぇ。帝都の方も片付いたみたいだ。お前が仮面を王女にも渡してくれていたおかげで、状況がよく分かる。さすが情報屋。」
「……まあな。お前たちと旅して出来たパイプを生かさない手はないからな。あたしの能力で、犬を1匹ずつ、各地の要人、要地においてきた。平和な世の中でも、情報は高く売れる。」
「…コミ障じみていて案外ちゃっかりしてるよな、お前は、あと、…仮初の平和だ」
「……あぁ、そうだな」
巫女が犠牲になった以上仮初だ。巫女がいる場所の目星はついていた。だが、正しい順序で入らなかった前回は結局弾き出されちまった。そうなんども、臨死体験をするわけにはいかない。あいつは隠し場所を変えてしまった。まさか。俺のコピーのケツの中とは。思いもしなかったぜ。
「笑ったり怒ったり大丈夫でーすか?」
肆の仮面の少女が聞く。
連邦の遺跡での戦闘は決着がついた。
仮面の力を解放した彼女達は徐々に劣勢を覆し、四神将と獅子王を倒すことができた。
「蠍座に加えて獅子座も手に入れたしな。色々おもうところがあるのさ」
振り返ると数分前までは遺跡を取り囲んでいたジャングルは枯れ果て、広い荒野になっていた。獅子座の能力。改めて凄まじい力だ。あまり力を使いたがらない理由も分かった。蠍座、獅子座、山羊座の杖は危険な杖と巫女も言ってた。使い所は考えねば。
だが、これで天上(プラネタリウム)の杖は全てこちらの世界に出揃った。
「こいつらはどうするんです?」
「あと一つ役割があるから、トドメは刺すなよ?」
縄に縛られ、祭壇の上に並べられていた5人は微かに息があった。
「しかし、すごいな、この仮面は、私たちみたいな格下が元とはいえ、シングルNo.に勝っちまうなんてな」
自身に着けてる仮面を指して言った。魔力を強め、相手の攻撃を素早く分析し、対策をねる。人工知能のようなものを宿していた。壱がAIをモデルにして、魔力回路をくんで彼女らに与えていた。
「データの蓄積、分析、最適化。ただ単純にそれだけでも、格段に強くなれる。あとは戦う相手の分析。人間誰しも癖があるからな。この世界の住人が雑なだけだよ。長く戦えば戦うほどデータが集まり、分析が正確になるからな。時間をかけ、相手の技の引き出しを開けて行けばあっという間に元々のNo.から20番くらいは強くなれるだろうよ」
「そんなもんかね」
「さて!下準備は全て終わったいよいよ魔王を呼び起こすぜ。」
懐から仮面を取り出す。弐と描かれた仮面。仮面から声が聞こえる。
「首尾はどうだ?弐(セカンド)」
「ばっちりよ!帝都に保管されてる魔法少女以外の登録済み魔法少女75人分の魔法記録表を入手したよ!あとは、魔法少女会議(サバト)のNo.2を始末したよ。現場は大混乱よ。どったもんだい。」
嬉しそうに語る。
「さすが色欲(ラスト)。」
「第四王女として、潜入して。あとは籠絡し放題。なんたって呪いについて無学すぎるのよ。王都の連中は。魔王様に恐れてる割には研究してないのは草よ草ww草生えるわ」
「だろうよ。あのメンバーならそうなるだろうさ。データを送ってくれ。No.持ちの魔法少女たちが入隊するにあたって基礎データがしっかりとるように組織した時に取り決めを考えたからな。もともとは残党を入らせないためだったが、役に立ちそうだ。こちらに引き込めそうなやつ、俺たちの目的の邪魔になりそうなやつをピックアップしといてくれ。またあとで連絡する」
手元にデータが送られてくる。75人の魔法少女たちが俺様の助けになる日も近い。転送されてきた小瓶には、魔法少女たちの魔力が少しずつ封じられたビー玉が入っていた。それらを仮面に取り込ませる。
「ふぅ!!いよいよほんとの魔王様の復活だぜ」
「あぁ、そうだな。長かったぜ」
「いよいよ助け出せる」
いつまで経っても帰ってこない巫女。探し回った日々。転生者が見たという金髪の少女。計画の立案。一か八かの過去への転生術式。生まれ落ちた先でのむちゃくちゃな修行。魔王の圧政。仲間集めをしつつ、各地の遺物や魔法具、魔導書の回収。情報工作。2度目の臨死体験による巫女との邂逅。限られた時間での白い杖の回収とマーキング、巫女の力を弱め、各地の魔王の欠片の活性化を促した。千虹雲海の下にある魔王の身体。魔王の魔力が変質した各地の呪い。今回判明した魔王の意識の場所。長かった。だが、これも。
白仮面の女たちを見る。
仮面の機能を作動させる。カシュっと音を出し、仮面からガスが出る。不意打ちに思わずガスを吸ってしまった彼女たちはその場に倒れる。
「ご苦労さん。これで、俺様が転移できる魔力は手に入ったな。」
ばたりと倒れた女たちを祭壇に移動させる。
「な、は?」
「わりぃな。帝都に転移する魔力が足りなくてな。転移が得意な『千変』は帝都だし、お前たちも祭壇に乗せるぞ。連邦の戦士達、帝都の最強の魔道士たち、お前たちのようつな特殊な魔法少女。それらのデータは全てこの仮面に蓄積されている。どんな魔法も結局は魔力の掛け合わせだ。分析出来ちまえば、使えるのさ。「黒狼」、ほらな」
彼の足元に黒い狼が現れる。
「?!」
「さて、待ってろ?英雄(ヒーロー)。お前のケツに眠る魔王と巫女を叩き起してやるからな」
祭壇の魔法を起動させる。
「古代魔法『超転移』!!帝都、ぞうさん砲魔力保管室の前へ!!」
祭壇の魔道士たちの魔力を吸い起動される。
全身の粒子化によって、霞む視界が次第にはっきりしてきた。
目の前には巨大な魔力貯蔵庫。帝都のぞうさん砲の根元。通称タマブクロ。
「でかい……これだけの魔力があれば。」
捕らえられた魔法少女たちの魔力が集まっている。通常なら厳重に封印されているが、発射準備の為に最低限の守備しかされていない。
彼は剣を取り出して、貯蔵庫に突き立てる。
「吸え!七星剣。これで、100人の魔法少女の魔力がそろう。ようやく……ようやくだ……会えるぜ。お前に」
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