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子犬一 はぁて

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後輩ウォン・ポムとのサシ飲み

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「先輩っー! 聞いてくださいっ」

 すすすーっとウォン・ポムが後ろから由羽のことを覗いてきた。由羽は会計処理をしているところだった。ちょうどキリがいいところだったので、手を休めて振り返る、

「んーどうしたの?」

 するとウォン・ポムはキラキラと目を輝かせて由羽を拝む。手を合わせて深くお辞儀をする。

「今日のお客様にホームケアの提案として、サロン専売品のトリートメントをおすすめしたら購入してくれたんですっ。由羽先輩のご指導のおかげです。ありがとうございますーっ」

「よかったね。自分でトリートメントの効果を感じると、お客様にもおすすめしやすいよね。俺らの仕事ってサービスを提供することだから、質の良いサービスとお客様への信頼に応えるためにもまずは自分で経験してみるのが1番の近道だよ」

「はいーっ」

 うんうん、と大きく頷き返すウォン・ポムを見て由羽もホッと一息つく。アシスタントのウォン・ポムはここ1ヶ月で急成長が止まらない。カット技術はもちろん、他のスタッフのアシストとして難しいグラデーションカラーを入れるのにも慣れてきたみたいだ。休みの日も熱心に勉強しているらしく、生き生きとした表情をしている。由羽もアシスタント時代は有名店に所属していたこともあって、毎日毎秒が勉強の瞬間だった。ベテランの美容師の施術を見て学び、マネキンで実践する。もちろん、自分の髪をセルフでブリーチして痛みの程度を確認したりした。そのおかげで、お客様へのブリーチの痛みの配慮なども丁寧に行うことができた。美容師は、施術の技術ももちろんだが人柄で判断される仕事だと由羽は考えている。いくら技術が高かろうと、お客様に対して適当な接客をしたり営業目的で押し付けるような販売をしてはならない。そこにお客様との信頼関係は築けないからだ。由羽はお客様と接するときには、まず話しやすい雰囲気を作ろうとしている。初めてyourfに来てくれた方は、緊張で美容師に上手くイメージをお伝えすることが難しい人もいる。お客様と美容師とのイメージ共有は基本であり1番大切なこと。お客様は大切にしている身体の一部を美容師にお任せしてくれるのだ。それを忘れてはならないと由羽は思う。だからアシスタントのウォン・ポムには、施術の腕を上げることも大切だがそれ以上にお客様とのコミュニケーションを丁寧にとることが大切であると伝えている。それを実践してくれているようで、指導者として安心した。

「な、の、でー。良かったらこの後先輩と飲みに行きたいんですっ。お時間どうですか?」

 うるるんとした瞳で見つめられると断りにくい。それに今日はウォン・ポムと由羽はシフトが同じで夕方上がりだったので都合がつく。ウォン・ポムとはシフトが違うことが多く、2人きりで飲みに行ったことはなかった。職場の集まりで飲むことはあっても、サシ飲みは初めてだ。

「うん。いいよ。飲みに行こう」

 そう返すと、ウォン・ポムはにこっと笑って個室の清掃に戻っていった。その足取りはいくぶんかるんるんな様子で今にもスキップしそうなほどだった。
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