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ウォン・ポムのしらないところ
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「ずばり聞いちゃいますけど、先輩ってなんで美容師になったんですか?」
由羽はいちごサワーを一口飲んでから、串に刺さっているいちごを口に含みながら答える。
「んー改めて聞かれると難しいな。子どもの頃からの夢が美容師ってわけじゃなくて、地元の高校卒業して上京して美容専門学校に入って、気になる分野だったからかな」
「ほー。じゃあ専門学生時代のときに美容師になりたいって思ったんですか?」
ゴールドキウイサワーをがぶがぶと飲むウォン・ポムが不思議そうな目をして聞いてくる。彼はつまみのカクテキを箸で器用に食べながら話を聞いてくれる。この子傾聴スキル高いからな。話していて気持ちがいい。
「うん。そんな感じ。高校の頃から接客業が好きでさ。人と話す仕事がしたくて、気づけば美容師になってた」
「へえ。いいな」
「ん?」
急にウォン・ポムが真面目な顔つきになるから、つられて由羽も真面目な顔になった。やさしい眼差しに、彼はこんな表情もできるのかと驚く。その目は職場の後輩が先輩に注ぐのとはどこか違う気がして、由羽は静かに視線を逸らしてフェードアウトする。なんかずっと見てたら良くないかも……。話を切り替えるために由羽は質問返しをしてみる。
「ウォン・ポムは? どうして美容師になったの?」
「俺はやっぱ日本のカルチャーが好きだから、そのパーツのひとつになりたくて。日本のアイドルとかモデルとかファッション大好きだから」
くしゃり、と笑った顔は幼くて、きっとウォン・ポムが小さい頃から見ていた夢の仕事が美容師なんだと悟る。
「日本にも住みたいなって思ってたから就労ビザでこっち来て、もう3年かな。韓国の高校を卒業してから日本の美容専門学校通って、美容師の資格とって卒業して、今社会人一年目でyourfでアシスタントやらせてもらってるから」
「そっかあ。家族とか友達は心配しなかったの?」
困ったように眉を垂らしてウォン・ポムがつぶやく。
「韓国は学歴社会っていう風潮が根強くて、大学に進学しなかった俺は一族の恥だなんて言われて家族とは連絡取ってません。数人の友達は今でも連絡取ってるけど、簡単には会えないかな」
いつも明るくて、にこにこさんなのに見えないところで苦労してきたんだなあ。そう思うと、由羽はいてもたってもいられなくて、こう返す。
「君はすごく偉いと思う。異国の地で違う言語でこんなにも円滑なコミュニケーションがとれてる。仕事に対してまっすぐで前向きだから、yourfのスタッフは皆ウォン・ポムを頼りにしてるからね。これからもいっしょに頑張ろうね」
「……はい。がんばります」
そう言い終わると、ウォン・ポムが顔を赤くさせて目を泳がせている。あれ? お酒に弱いのかな? 見れば互いのジョッキは空になるところだった。追加で何か注文しようかと思ってメニュー表に手をやると、その手を上から塞がれた。
「あ、の。このお店わいわい系でゆっくり話しにくいから、別のとこ行きません?」
「いいよ。道玄坂は色んなお店あるからね。行ってみよっか」
「ありがとうございますっ。すみません、ちょっと手洗いに行ってきます」
「うん。行ってらっしゃい」
いそいそと手洗いに向かうウォン・ポムを見届けて、由羽は会計を済ませる。つまみもおいしかったし、いちごサワーも甘酸っぱくて最高だった。気づけば店内は満席で大学生と思しき子たちが集まってわいわいと酒を飲んでいた。場所を変えるのはナイスな提案だと思う。そういった細かい気遣いのできるウォン・ポムを人として尊敬する。
由羽はいちごサワーを一口飲んでから、串に刺さっているいちごを口に含みながら答える。
「んー改めて聞かれると難しいな。子どもの頃からの夢が美容師ってわけじゃなくて、地元の高校卒業して上京して美容専門学校に入って、気になる分野だったからかな」
「ほー。じゃあ専門学生時代のときに美容師になりたいって思ったんですか?」
ゴールドキウイサワーをがぶがぶと飲むウォン・ポムが不思議そうな目をして聞いてくる。彼はつまみのカクテキを箸で器用に食べながら話を聞いてくれる。この子傾聴スキル高いからな。話していて気持ちがいい。
「うん。そんな感じ。高校の頃から接客業が好きでさ。人と話す仕事がしたくて、気づけば美容師になってた」
「へえ。いいな」
「ん?」
急にウォン・ポムが真面目な顔つきになるから、つられて由羽も真面目な顔になった。やさしい眼差しに、彼はこんな表情もできるのかと驚く。その目は職場の後輩が先輩に注ぐのとはどこか違う気がして、由羽は静かに視線を逸らしてフェードアウトする。なんかずっと見てたら良くないかも……。話を切り替えるために由羽は質問返しをしてみる。
「ウォン・ポムは? どうして美容師になったの?」
「俺はやっぱ日本のカルチャーが好きだから、そのパーツのひとつになりたくて。日本のアイドルとかモデルとかファッション大好きだから」
くしゃり、と笑った顔は幼くて、きっとウォン・ポムが小さい頃から見ていた夢の仕事が美容師なんだと悟る。
「日本にも住みたいなって思ってたから就労ビザでこっち来て、もう3年かな。韓国の高校を卒業してから日本の美容専門学校通って、美容師の資格とって卒業して、今社会人一年目でyourfでアシスタントやらせてもらってるから」
「そっかあ。家族とか友達は心配しなかったの?」
困ったように眉を垂らしてウォン・ポムがつぶやく。
「韓国は学歴社会っていう風潮が根強くて、大学に進学しなかった俺は一族の恥だなんて言われて家族とは連絡取ってません。数人の友達は今でも連絡取ってるけど、簡単には会えないかな」
いつも明るくて、にこにこさんなのに見えないところで苦労してきたんだなあ。そう思うと、由羽はいてもたってもいられなくて、こう返す。
「君はすごく偉いと思う。異国の地で違う言語でこんなにも円滑なコミュニケーションがとれてる。仕事に対してまっすぐで前向きだから、yourfのスタッフは皆ウォン・ポムを頼りにしてるからね。これからもいっしょに頑張ろうね」
「……はい。がんばります」
そう言い終わると、ウォン・ポムが顔を赤くさせて目を泳がせている。あれ? お酒に弱いのかな? 見れば互いのジョッキは空になるところだった。追加で何か注文しようかと思ってメニュー表に手をやると、その手を上から塞がれた。
「あ、の。このお店わいわい系でゆっくり話しにくいから、別のとこ行きません?」
「いいよ。道玄坂は色んなお店あるからね。行ってみよっか」
「ありがとうございますっ。すみません、ちょっと手洗いに行ってきます」
「うん。行ってらっしゃい」
いそいそと手洗いに向かうウォン・ポムを見届けて、由羽は会計を済ませる。つまみもおいしかったし、いちごサワーも甘酸っぱくて最高だった。気づけば店内は満席で大学生と思しき子たちが集まってわいわいと酒を飲んでいた。場所を変えるのはナイスな提案だと思う。そういった細かい気遣いのできるウォン・ポムを人として尊敬する。
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