スウェロニア家の番犬の騎士見習い〔弟〕は騎士団長〔兄〕の「待て、おすわり」がきけない

子犬一 はぁて

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自分の実力

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「一同整列。これから2体1で棍棒による試合を行ってもらう。必ず片方がシャルメーニュ、もう片方がデューフィーの者となるように組め。すぐに始めるゆえ、相手を選ぶ時間はないぞ」

 先生の号令で寮生がいっせいに広間に散らばる。ぼくはちょうど近寄ってきた自分より背の低い青年の相手と試合を組むことになった。体格差があるからといって舐めてはいけないと思いつつも、少し心に余裕があったのは確かだった。

 試合中、すぐそこで戦っている者たちの声など耳に入らないほどの猛追を受けた。ぼくより上の世代らしきその相手はバランス感覚に優れ、ぼくが何度も体勢を崩そうと棍棒を突いても、決して体の軸をぶらさなかった。

 そして結果、ぼくは3分と経たずに敗北したのである。ひゅうひゅうとか細い息を吐きながらぼくはその場で胃液を吐き出した。甲冑は普段の数倍重く感じられ、棍棒を持つ手のひらにはマメができて潰れてしまっていた。だが相手は何食わぬ顔でこちらを見下ろしている。

「勝てるとでも思ったか。この市民風情が。心に刻んでおけ。シャルメーニュではデューフィーには敵わぬということを」

 鋭い目つきで僕を射殺すように見ると、その場を静かに去っていった。ぼくは自分の不甲斐なさや無力さに打ちひしがれ、しばらくその場から動けないでいた。

 2戦目、3戦目もぼくは負け続けた。赤子が大人に立ち向かうようなものだ。持久力でも技量でも頭脳戦でもどれも勝てないのだ。ぼくはシャルメーニュの練武がデューフィーの練武には到底かなわないものだと初めて実感したのだった。
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