保護猫おもちの縁結びやさん

子犬一 はぁて

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もふってばかりではいられない

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「KP~」

「KP!」

 柚音先輩の乾杯の音頭で、一気にハイボールを飲み干す。くああ、と綾人は声を洩らした。今日も良い労働であった。あれを労働と呼んでもいいのか? 普通にうさぎの世話が楽しいし、お客様とコミュニケーションを取るのも楽しいし……。何より、綾人が大好きなうさぎやチンチラを愛でてもらい、さらにお迎えしてくれる人がいると幸福のさらに幸福なのである。

「チーズダッカルビと、サムギョプサル、キンパです」

「ありがとうございます!」

 2人が飲んでいるのは韓国居酒屋の隅の席だ。ここの店は、渋谷駅から近いし、路地裏にあるから知る人ぞ知るという穴場だ。

 綾人はキンパをつまみながら、2杯目のビールをぐいぐいよしこいとばかりに飲む。仕事終わりの酒が身に染みるんよな。

「さてさて。あやっち。例のあの子はどうなのさ」

 柚音先輩がチーズダッカルビをお皿に盛り付けながら、にやにやとした意地悪な表情を浮かべる。

「いや~惨敗ス。脈ナシっすわ」

「えー。1ヶ月もLINEのやり取り続いてたんだろ? 会わなかったのか?」

 綾人は、がくっと頭を下げながら

「マチアプはやっぱ奥が深くて……マッチして、電話して、LINE交換して、俺からカフェ巡りに誘って、当日音信不通っていうね……まじほんとやべえ女しかいねえ」

「まーしょうがねえなあ。マッチングアプリってそんなもんらしいよな。俺の友達は、マッチングアプリで出会って結婚までいったが、成功するほうが珍しいみたいだぞ」

「いやあ、ほんと成功者にコツとか教わりたいんですよ。まじで意味わからん。女の考えてることがわからない。うさたんの考えてることはわかるのに……」

「うさたんって、お前なあ。うさぎ大好きなのはいいことだが、26にもなって、彼女1年近くいないんだろ?」

「まあ、焦ってないんで俺。彼女と同棲中で結婚間近の柚音先輩に言われるとむきーってなりそうですけど」

 あはは、と柚音先輩がちょっとばかし嬉しそうに笑う。チーズダッカルビのチーズが伸びていて、食べにくそうだ。

「んまあ、あれだ。ここは東京のど真ん中の渋谷だ。出会いはどこにでもあるもんさ」

「スゲーですよ。柚音先輩は居酒屋で隣の席の女の人ナンパして今に至るんですもんね。彼女、インフルエンサーでしたっけ? 強ぇなあ」

「まあ、運が良かったんだよ。あの時俺、ベロベロに酔っててどう口説いたかも覚えてねえもん。んなこと彼女に知られたら殴られそうだけどな」
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