1 / 9
序
私は、川本みや。
ごく普通の女子中学生だった。
「ねぇねぇ、けいちゃん。前すすめた奴読んだ?」
「『私のプリンセス物語』でしょ。面白かったよ」
「よねぇ。私の推しは断然アントワーヌ。格好いいよね」
「んー……私はヒロインのお母さんが好きで」
登校中のたわいもない会話。私がこの前読んでからはまったネット小説の感想会だった。
学校の授業はだるい。早く終わって友達と楽しい会話を弾ませたい。
そう思っていたのに。
横断歩道を渡る時に猛スピードで突進してくる車が私たちの方へ激突してしまった。
事故現場を目撃していた周囲は騒然として、サラリーマンのおじさんがスマホで救急車を呼んでいた。
こうして私はあっけなく最期を迎えた。
そして、私は転生していた。
今おおはまりの『私のプリンセス物語』の主人公・マリーに。
「ど、どういうこと?」
これって、ネット小説ではやっている異世界転生ものでしょう。
「何でマリーなのっ……! いや、嬉しいけど」
最近流行しているのは物語の悪役に転生してしまい、物語を大幅改変してしまうというもの。
この流行パターンで行くと私は悪役令嬢に転生しているはずでは。
いえいえ、嬉しいですよ。
主人公のマリーで。
物語の展開通りにいけば私は推しのアントワーヌ王子と結ばれるのでは。
「ちょっと……やだ、どうしよう」
きゃあと明るい声でベッドでごろごろしてしまう。
「でも、悪役令嬢転生ものだと私が悪役になっちゃうんじゃ」
逆に心配になってしまう。
もしかすると悪役令嬢は私と同じ転生者の可能性がある。
そうなるとアントワーヌ王子と既に良好な関係になり、私はお邪魔虫になってしまう。いや、それどころか。
「断罪されるのは私なのでは……」
ぞぞっとする。
「失礼します」
メイドのコリンナが挨拶をしてくる。
「お嬢様、早く準備しないと遅れてしまいますよ。今日は晴れて国立メルセデス学園に入学となったのです」
「そうなのっ」
私はガバっと起き上がった。
どうやら今日が物語スタート地点のようだ。
「亡くなられた旦那様がせめて教育だけはと学費分を残されたのです。しっかりと勉学に励まれてください」
準備を手伝ってくれるコリンナは今までのマリーの生い立ちを説明してくれる。
そう。マリーには父親がおらず、母親と一緒に残された屋敷で過ごす男爵家である。領地は豊かではなく、残された遺産でつつましく生活している。
せめてマリーにまともな教育を、デビュタントだけはと母親は銀行に預けた遺産だけは守り抜きそれでマリーを学園へと送り出してくれる。
そしてマリーはアントワーヌと出会い、恋に落ち、苦難を乗り越えアントワーヌと結ばれるのだ。
「お母さま、行ってきますね」
「しっかりと勉強しなさい」
準備を終えて、馬車にのる私を送り出してくれる母親。
家庭教師の仕事をしながら生計をたててここまでマリーを育ててくれた。
その苦労も報われるのだ。
妃となったマリーと一緒に最後は宮殿で幸せに暮らすのだ。
待っててね。私、頑張るから。
少しずつだが、マリーの記憶と私の記憶が重なり合ってくる。マリーの過去がまるで自分の過去のように今は感じられる。
馬車に乗って去っていくマリーを見送りながらマリーの母親は複雑な表情を浮かべた。
「心配だわ。あの子、結局歩き方が上達しなかったから他の女学生から何か言われないかしら」
歩き方というのは令嬢と作法のことだ。
本を頭にのせて優雅に歩く練習を何度も教えたが、マリーには全く身につかなかった。
本当は母親としてつきっきりで教えるべきであるが、生活費に残ってくれている使用人の給与のこともありあちこちで家庭教師の仕事をして家にいることが少なかった。
「大丈夫ですよ。お嬢様が身につかなかったのは必要性を感じていなかったから、他のご令嬢と接しているうちに良い刺激になると思いますよ」
「そう期待したいのだけどねぇ」
学園には貴族だけではなく平民……貧民と呼ばれる者も特待生として通学している。彼らと間違われて差別されないかという心配もあった。
ごく普通の女子中学生だった。
「ねぇねぇ、けいちゃん。前すすめた奴読んだ?」
「『私のプリンセス物語』でしょ。面白かったよ」
「よねぇ。私の推しは断然アントワーヌ。格好いいよね」
「んー……私はヒロインのお母さんが好きで」
登校中のたわいもない会話。私がこの前読んでからはまったネット小説の感想会だった。
学校の授業はだるい。早く終わって友達と楽しい会話を弾ませたい。
そう思っていたのに。
横断歩道を渡る時に猛スピードで突進してくる車が私たちの方へ激突してしまった。
事故現場を目撃していた周囲は騒然として、サラリーマンのおじさんがスマホで救急車を呼んでいた。
こうして私はあっけなく最期を迎えた。
そして、私は転生していた。
今おおはまりの『私のプリンセス物語』の主人公・マリーに。
「ど、どういうこと?」
これって、ネット小説ではやっている異世界転生ものでしょう。
「何でマリーなのっ……! いや、嬉しいけど」
最近流行しているのは物語の悪役に転生してしまい、物語を大幅改変してしまうというもの。
この流行パターンで行くと私は悪役令嬢に転生しているはずでは。
いえいえ、嬉しいですよ。
主人公のマリーで。
物語の展開通りにいけば私は推しのアントワーヌ王子と結ばれるのでは。
「ちょっと……やだ、どうしよう」
きゃあと明るい声でベッドでごろごろしてしまう。
「でも、悪役令嬢転生ものだと私が悪役になっちゃうんじゃ」
逆に心配になってしまう。
もしかすると悪役令嬢は私と同じ転生者の可能性がある。
そうなるとアントワーヌ王子と既に良好な関係になり、私はお邪魔虫になってしまう。いや、それどころか。
「断罪されるのは私なのでは……」
ぞぞっとする。
「失礼します」
メイドのコリンナが挨拶をしてくる。
「お嬢様、早く準備しないと遅れてしまいますよ。今日は晴れて国立メルセデス学園に入学となったのです」
「そうなのっ」
私はガバっと起き上がった。
どうやら今日が物語スタート地点のようだ。
「亡くなられた旦那様がせめて教育だけはと学費分を残されたのです。しっかりと勉学に励まれてください」
準備を手伝ってくれるコリンナは今までのマリーの生い立ちを説明してくれる。
そう。マリーには父親がおらず、母親と一緒に残された屋敷で過ごす男爵家である。領地は豊かではなく、残された遺産でつつましく生活している。
せめてマリーにまともな教育を、デビュタントだけはと母親は銀行に預けた遺産だけは守り抜きそれでマリーを学園へと送り出してくれる。
そしてマリーはアントワーヌと出会い、恋に落ち、苦難を乗り越えアントワーヌと結ばれるのだ。
「お母さま、行ってきますね」
「しっかりと勉強しなさい」
準備を終えて、馬車にのる私を送り出してくれる母親。
家庭教師の仕事をしながら生計をたててここまでマリーを育ててくれた。
その苦労も報われるのだ。
妃となったマリーと一緒に最後は宮殿で幸せに暮らすのだ。
待っててね。私、頑張るから。
少しずつだが、マリーの記憶と私の記憶が重なり合ってくる。マリーの過去がまるで自分の過去のように今は感じられる。
馬車に乗って去っていくマリーを見送りながらマリーの母親は複雑な表情を浮かべた。
「心配だわ。あの子、結局歩き方が上達しなかったから他の女学生から何か言われないかしら」
歩き方というのは令嬢と作法のことだ。
本を頭にのせて優雅に歩く練習を何度も教えたが、マリーには全く身につかなかった。
本当は母親としてつきっきりで教えるべきであるが、生活費に残ってくれている使用人の給与のこともありあちこちで家庭教師の仕事をして家にいることが少なかった。
「大丈夫ですよ。お嬢様が身につかなかったのは必要性を感じていなかったから、他のご令嬢と接しているうちに良い刺激になると思いますよ」
「そう期待したいのだけどねぇ」
学園には貴族だけではなく平民……貧民と呼ばれる者も特待生として通学している。彼らと間違われて差別されないかという心配もあった。
あなたにおすすめの小説
不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます
天田れおぽん
ファンタジー
ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。
ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。
サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める――――
※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。
社畜サラリーマン、異世界でパンと魔法の経営革命
遊鷹太
ファンタジー
過労死寸前の30代サラリーマン・佐藤健は、気づけば中世ヨーロッパ風の異世界に転生していた。与えられたのは「発酵魔法」という謎のスキルと、前世の経営知識。転生先は辺境の寒村ベルガルド――飢えと貧困にあえぐ、希望のない場所。「この世界にパンがない…だと?」健は決意する。美味しいパンで、人々を笑顔にしよう。ブラック企業で培った根性と、発酵魔法の可能性。そして何より、人を幸せにしたいという純粋な想い。小さなパン屋から始まった"食の革命"は、やがて王国を、大陸を、世界を変えていく――。笑いあり、涙あり、そして温かい人間ドラマ。仲間たちとの絆、恋の芽生え、強大な敵との戦い。パン一つで世界を救う、心温まる異世界経営ファンタジー。
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~
土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。
しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。
そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。
両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。
女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。
【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革
うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。
優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。
家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。
主人公は、魔法・知識チートは持っていません。
加筆修正しました。
お手に取って頂けたら嬉しいです。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
竜皇女と呼ばれた娘
Aoi
ファンタジー
この世に生を授かり間もなくして捨てられしまった赤子は洞窟を棲み処にしていた竜イグニスに拾われヴァイオレットと名づけられ育てられた
ヴァイオレットはイグニスともう一頭の竜バシリッサの元でスクスクと育ち十六の歳になる
その歳まで人間と交流する機会がなかったヴァイオレットは友達を作る為に学校に通うことを望んだ
国で一番のグレディス魔法学校の入学試験を受け無事入学を果たし念願の友達も作れて順風満帆な生活を送っていたが、ある日衝撃の事実を告げられ……
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。