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13 夫婦の契り
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寺に戻ると僧侶たちにお湯と新しい衣類を用意された。僧衣であったが、それでも雨宿りをさせてもらい衣類まで用意してくれたのだから文句などなかった。
「私、お別れを言っていました」
雨宿りをしながら白川殿はそう語った。
「すると風早様が林の中へ消えていくのが見えて思わず追いかけてしまいました」
お別れを言ったのに、彼の姿を追い求めるなど。
「未練がましくて自分が嫌になりました」
「何故、別れを?」
「だって、あの世で奥方と一緒になった方ですし……」
白川殿はちらりと夏基を上目遣いで言った。
「私にはあなたがいるから」
「……」
白川殿の言葉に夏基はしばらく動作を停止した。いろいろ考えてじっと白川殿を見つめた。
「つまり私を夫として認めてくれたのですか?」
「認めるも何ももう夫でしょう」
自分の為に今まで関係を持った女性に別れを告げ、殴られたり恨み言を言われてもそれをやり遂げた。そして、こうして白川殿の前の恋人との再会のために協力してくれた。
「ここまでしてくださる方をいつまでも認めないのは……悪いじゃないですか」
だが、自分はなかなか風早中納言への想いを忘れられずにいられない。切り捨てるのは難しくとも別れは告げなければと思った。
「まだ私は風早様が好き。でも、あなたのことも嫌いじゃありません」
夫婦になれるように努力しなければと白川殿は考えるようになったのだ。
「それでも良ければよろしくお願いいたします」
歓喜した夏基は思わず白川殿を抱きしめる。
「ああ、もちろんです。あなたが私を愛してくれるようにうんと愛します」
愛しい姫よ。
そう囁く夏基に白川殿は頷き、夏基がそっと顔を近づけるのを許した。雨の音が響く部屋の中でお互い抱き寄せ唇を重ね合わせた。
◇ ◇ ◇
その後、白川殿と夏基との間に1男1女が生まれた。
長男の方は出家しとある寺の高僧となり、長女はさる女御に仕え宮中で才女と持て囃されるようになる。
白川殿は邸を娘に譲り京から離れた別宅に夏基と住み静かに暮らしたという。
「私、お別れを言っていました」
雨宿りをしながら白川殿はそう語った。
「すると風早様が林の中へ消えていくのが見えて思わず追いかけてしまいました」
お別れを言ったのに、彼の姿を追い求めるなど。
「未練がましくて自分が嫌になりました」
「何故、別れを?」
「だって、あの世で奥方と一緒になった方ですし……」
白川殿はちらりと夏基を上目遣いで言った。
「私にはあなたがいるから」
「……」
白川殿の言葉に夏基はしばらく動作を停止した。いろいろ考えてじっと白川殿を見つめた。
「つまり私を夫として認めてくれたのですか?」
「認めるも何ももう夫でしょう」
自分の為に今まで関係を持った女性に別れを告げ、殴られたり恨み言を言われてもそれをやり遂げた。そして、こうして白川殿の前の恋人との再会のために協力してくれた。
「ここまでしてくださる方をいつまでも認めないのは……悪いじゃないですか」
だが、自分はなかなか風早中納言への想いを忘れられずにいられない。切り捨てるのは難しくとも別れは告げなければと思った。
「まだ私は風早様が好き。でも、あなたのことも嫌いじゃありません」
夫婦になれるように努力しなければと白川殿は考えるようになったのだ。
「それでも良ければよろしくお願いいたします」
歓喜した夏基は思わず白川殿を抱きしめる。
「ああ、もちろんです。あなたが私を愛してくれるようにうんと愛します」
愛しい姫よ。
そう囁く夏基に白川殿は頷き、夏基がそっと顔を近づけるのを許した。雨の音が響く部屋の中でお互い抱き寄せ唇を重ね合わせた。
◇ ◇ ◇
その後、白川殿と夏基との間に1男1女が生まれた。
長男の方は出家しとある寺の高僧となり、長女はさる女御に仕え宮中で才女と持て囃されるようになる。
白川殿は邸を娘に譲り京から離れた別宅に夏基と住み静かに暮らしたという。
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