【完結】その悪女は笑わない

ariya

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本編③ 狩猟祭の事件

31 寄宿学校での思い出

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 ルイスローズスクールは王国内に存在する上流階級が通う寄宿学校であった。
 田舎の方面に設立され、13歳から18歳の少年が通う。
 王族や上流貴族が通うのは王都に存在する王立の学校であるが、ここは金銭と学力と能力さえ満たせば入学できた。

 シオンがこの学校に入学したのは自分の一族のことを知られずに入学ができたためである。
 処刑人は忌み嫌われる職業である故に国から支給される給与が高い。その上で一族は医療を提供しており、富裕層から援助をもらっていたのだ。
 そして田舎の学校であれば、シオンの苗字を聞いても知るものは少ない。ここに通うのはまだ世間を知らない子供なのだから。

 アルバートも同じ時期に入学してきた。本来であれば彼は王都の学校に通う予定であったが、魔力の才能を見出され恩師の勧めでこの学校へと入ってきたのだ。何度も王都へ招聘されているのにも関わらずこの土地を気に入り研究の場にしていた研究員の師事を受けることがアルバートの目的である。

 シオンも、アルバートも系統は異なるが魔力を持っており、魔法学をカリキュラムに組み込んでもらっていた。
 はじめて会話したのも魔法学の授業であった。

「全くわからない」

 アルバートは苦い顔でシオンの魔法を眺めていた。
 シオンが会得していた些細な治癒魔法である。
 シオンは教材用の小さなねずみの傷を治癒していた。小さい傷であれば数時間かけたら綺麗に消すことができる。

 アルバートは何度教材通り読んでも治癒魔法を身に着けることはできなかった。
 実家で魔力に秀でていて、魔法使いの師から褒められていた。
 治癒魔法はどうしても身につくことができず、学校で学べばできると信じていたので少し残念に感じていた。

「人それぞれに向き不向きはある。アルの場合、治癒魔法は適していないけど、戦闘魔法と、補助魔法と一部の解析魔法に適しているようだ」

 先ほどの教師からの通知を確認してシオンは無理しなくてもいいと笑った。

「僕は治癒魔法が少しできるけど、他の魔法はからっきしだよ。魔法学の教室に入っていいのか未だに疑問だけど」

 それでも学ばせてもらえればとシオンは授業に参加していた。

 よく二人で話し、勉強を見せ合っていた。政治学、経済学、宗教学も一緒に学んでお互い苦手な部分を補い合っていた。

「シオン、この魔法ならお前もできるんじゃないか?」

 教科書をみせてもらい、そこには伝令魔法が載っていた。補助魔法の一部に入る。
 媒介になる小動物を使用して伝令を任せるというもの。伝令内容は他人にはばれないようにするため法則性を作る必要がある。これを解読するために解析魔法が応用されていた。

「できるかな」
「できる。ちょっとこつがいるけど、僅かな魔力で可能みたいだ。俺が教えるからやろうよ。そうすればお互い便利だろう」

 必要な時に人目を気にせず交流を楽しむことができる。
 アルバートはシオンの苗字から彼が何の家系なのかすぐに理解していた。
 学校を出ればシオンとアルバートは気軽に会うことはできない。
 アルバートは気にしないが、シオンは気にするだろう。
 シオンは成績が良いが、なるべく目立たないようにと周囲に注意をしていた。きっと彼はアルバートから距離を置くだろう。

「そうだね……僕もアルと交流を持てるなら嬉しい」

 微笑むシオンにアルバートは早速独自の法則を作り、伝令魔法を身に着けていった。
 お互い16歳になった頃には小鳥を使った伝令魔法を会得していた。
 これでよく別々の課外授業の時に何をしているかと確認し合っていた。

 アルバートはシオンのことを気に入っており、シオンもアルバートの友人でありたいと願った。
 言葉は偏屈であるが、真面目に勉強に取り組み尊敬できる。
 そしてシオンの家を知っていてもあえて何も言わない彼に気を許していた。
 シオンはそれが一番うれしくて、実家にいた時よりも安心していた。

 とても仲が良かった。

 だが、シオンは寄宿学校を卒業することができなかった。
 16歳になった頃に彼の家業が学校中に広まった。
 シオンに対するいじめが激しくなり、他生徒の親からシオンを退学するようにと圧力をかけてきた。

 アルバートはいじめの犯人を探し当て、上級生であろうと辞さず物申した。
 彼自身、上級生から疎まれ始め影で暴力を振るわれることもあった。喧嘩早い性格だったアルバートは、反撃したりそのまま潰されたりを繰り返していた。

「アルバート、僕と一緒にいるのをやめた方がいいよ」

 ある日、シオンはアルバートに告げた言葉にアルバートは首を傾げた。
 アルバートの立場が悪くなるのは避けたかったから。シオンはアルバートを避けるようになった。時々文句の伝令が来ることがあったが、シオンはそれを無視し続けた。

 シオンのいじめは相変わらずひどくなる一方でついにシオンは学校を退学した。
 退学後は距離が離れたので伝令は飛ぶことができなかった。
 当時のアルバートの能力では遠距離まで飛ばすのには不十分だったからだ。
 そのまま二人の交流は途絶えた。
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