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13 それから
しおりを挟む「っは!! ゆ、夢」
ベンチから起きあがったアリスははぁっとため息をついた。
「何ともとんでもない話だったわ。でも、夢で良かった」
「アリス」
後ろからアベルの声がしてアリスはびくんと身を跳ねる。
おそるおそる後ろを向くとそこにはアベルの姿があった。
自分の学校の制服を着ていた。バッジから最上級生とわかる。
「な、なんであなたがここに………」
「? あの時確かに言わなかったか」
アリスは夢だと思っていた内容を思い出した。
あの後改めてアベルに告白をされたが、まだ学生だから結婚も、妃も無理と言った。
アリスが学生生活を終えるまでこの結婚は保留ということにしようと提案した。
アベル自身まだまだ王として何も知らないことだらけだし、呪いについても解読していく必要がある。
ついでにアベルも学生生活を送りたいということでアリスの学校へ通うことにした。
「ちょっと待ちなさい!! それで国はどうするの!」
「大丈夫だ。大臣や補佐官たちが1年の間だけ何とかしてくれる。彼らも僕に対して色んな世界について勉強した方がいいと推奨してくれた」
「実は陛下の無茶ぶりと我儘っぷりを矯正するには若い者らと交流していくのが良いのではという考えで」
いつの間にかアリスの後ろに控える白うさぎの言葉にアリスは「ああ」と頷いた。
ここ数日のアベルの態度は何というか先代女王に比べればましだが、傍若無人さが目立つ。
「国は大丈夫なのかしら」
「1週間に2回は戻らなければならないが、大臣たちが何かうまくやってくれる。有事の際は長期休学するかもしれないが」
アベルは説明しながら、アリスに余計なことを吹き込もうとするブランの額をぺしぺしと指ではじいていく。
おやめくださいとブランの情けない声が耳元に響いてとてもうるさい。
確かに大臣たちとしては彼の子供っぽい面に付き合わされるくらいなら学校に通って協調性を身に着けてくれる方がありがたいかもしれない。
身につくかは不明であるが。
「ああ、夢だと思っていたのに夢じゃなかったのね」
アリスは非常識な出来事が現実世界でも延長されることにため息をついた。
ちらりとアベルを見るとアベルはこの世界の服に慣れないのか少し照れている様子であった。
確かに記憶の中のアベルは恰好いい。素敵な王子様だった。
「アリスが卒業するまでアリスが僕と夫婦になりたいと思うようにがんばるから」
「あっ」
ブランがみせる時計を見てアリスはあわてた。時間をみるとまだ午前中である。学校はまだ終わっていない。
「早くいかないと」
途中でもなるべく授業に参加しないと家族に連絡がいってしまう。
アリスは急いでアベルの手を掴み、学校へと急いだ。
アリスのこの行為にアベルは嬉しくも照れながら、アリスと共に走った。
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