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21 デビュタント・ボール(5)
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その後も数々のパートナーと踊るガラティーンをマデリーンは見つめていた。かわいい孫娘に何か無体を働くような紳士はこの夜にはまさかおるまいが、今後のためにもしっかり見張っておかねばならない。
ガラティーンに最初にダンスを申し込んだアルジャーノンのことをマデリーンは思い出す。最初に求婚をしてきたのはなぜかわからなかったが、彼と踊っていた時のガラティーンは自然な姿で、嬉しそうにしていたように思える。そしてアルジャーノンもいざダンスを踊るとなったら落ち着いたのか、初めよりはだいぶまともな顔つきで踊っていた。
また、ダニエルの同僚や後輩たちとも楽しそうにしていたが、アルジャーノンが一番良さそうに見えたのは「求婚をしてきた」という先入観があるからか。
そのほか数人は本当に初めて会う紳士だったので、さすがのガラティーンもかなり緊張をしたようだったのが見て取れた。
何も今日の今日でガラティーンの結婚相手を決めることはないだろうけれども、アルジャーノンは家格も釣り合うし、付き合いに問題がある家でもなさそうだ。彼はなかなかいい相手なのではないだろうかとマデリーンは考えていた。
この夜はガラティーンだけでなく、当然コーネリアもいろいろな男性と顔を合わせて、ダンスをしていた。コーネリアはほどほどに会話を楽しみながら、ダニエルとのダンスを心待ちにしていた。
いざとなったら逃げられたらどうしよう、と心配していたが、ダニエルはきちんとコーネリアの元にやってきて、きちんとエスコートをしてダンスの輪に加わった。
「ありがとうございます」
頬を染めたコーネリアは、ダニエルに触れている指先に少しだけ力を入れる。
「とても、とても嬉しいです」
「そう言っていただけると私も嬉しい」
はにかんだダニエルとコーネリアは、微笑みあって、静かにダンスを踊る。
二人の踊る姿を、自らも踊りながら少し離れたところから気にしてちらちらと視線を送っていたガラティーンは、コーネリアの今後に幸あれと心から祈っていた。
「どうしたんだ?」
「あ、うん。父上が踊っていてね」
この時のガラティーンのパートナーは昔なじみのトミーだった。
「クーパー殿もちゃんとダンス踊れるんだな」
「父上はダンスは上手だよ。……相手を選ぶけど」
ダニエルが若い女性相手に挙動不審になるということは彼も知っているので、そうとなると様子を見てみたくなるということで二人はちらちらダニエルとコーネリアの様子をうかがうようになった。
「相手が顔見知りではあるからかな。普通に踊れているかも」
「俺もそう思う」
二人は顔を見合わせる。
「これは、クーパー殿もイケるんじゃないか」
「だよね」
二人はにやりと笑う。
「彼女は私の友達なんだ」
「へえ」
その後も二人はダニエルとコーネリアの話をしながら踊っていた。
そんなトミーとガラティーンを遠くから見ながら、事情を知らないアルジャーノンは二人が楽しそうにしているのを見ていた。
自分もガラティーンと仲が悪かったわけではないが、トミー達とは違ってすごく仲が良かったわけではなかったからなあとため息をつく。
緊張のあまり、ダンスを申し込むのと間違えて求婚をしてしまったが、良かったのか悪かったのか…と考える。ガラティーンは引いてはいなかったので、成功したと思いたい。そして、彼女には案外いいところを見せていない自分に思い至った。
そして、自分も他のご令嬢と踊らなければいけないことを思い出して、そちらの元に向かった。彼は「ガラティーン以外の令嬢と踊っている自分を見て、ガラティーンが少しは妬いてくれたらいいな」と思っていた。
ガラティーンに最初にダンスを申し込んだアルジャーノンのことをマデリーンは思い出す。最初に求婚をしてきたのはなぜかわからなかったが、彼と踊っていた時のガラティーンは自然な姿で、嬉しそうにしていたように思える。そしてアルジャーノンもいざダンスを踊るとなったら落ち着いたのか、初めよりはだいぶまともな顔つきで踊っていた。
また、ダニエルの同僚や後輩たちとも楽しそうにしていたが、アルジャーノンが一番良さそうに見えたのは「求婚をしてきた」という先入観があるからか。
そのほか数人は本当に初めて会う紳士だったので、さすがのガラティーンもかなり緊張をしたようだったのが見て取れた。
何も今日の今日でガラティーンの結婚相手を決めることはないだろうけれども、アルジャーノンは家格も釣り合うし、付き合いに問題がある家でもなさそうだ。彼はなかなかいい相手なのではないだろうかとマデリーンは考えていた。
この夜はガラティーンだけでなく、当然コーネリアもいろいろな男性と顔を合わせて、ダンスをしていた。コーネリアはほどほどに会話を楽しみながら、ダニエルとのダンスを心待ちにしていた。
いざとなったら逃げられたらどうしよう、と心配していたが、ダニエルはきちんとコーネリアの元にやってきて、きちんとエスコートをしてダンスの輪に加わった。
「ありがとうございます」
頬を染めたコーネリアは、ダニエルに触れている指先に少しだけ力を入れる。
「とても、とても嬉しいです」
「そう言っていただけると私も嬉しい」
はにかんだダニエルとコーネリアは、微笑みあって、静かにダンスを踊る。
二人の踊る姿を、自らも踊りながら少し離れたところから気にしてちらちらと視線を送っていたガラティーンは、コーネリアの今後に幸あれと心から祈っていた。
「どうしたんだ?」
「あ、うん。父上が踊っていてね」
この時のガラティーンのパートナーは昔なじみのトミーだった。
「クーパー殿もちゃんとダンス踊れるんだな」
「父上はダンスは上手だよ。……相手を選ぶけど」
ダニエルが若い女性相手に挙動不審になるということは彼も知っているので、そうとなると様子を見てみたくなるということで二人はちらちらダニエルとコーネリアの様子をうかがうようになった。
「相手が顔見知りではあるからかな。普通に踊れているかも」
「俺もそう思う」
二人は顔を見合わせる。
「これは、クーパー殿もイケるんじゃないか」
「だよね」
二人はにやりと笑う。
「彼女は私の友達なんだ」
「へえ」
その後も二人はダニエルとコーネリアの話をしながら踊っていた。
そんなトミーとガラティーンを遠くから見ながら、事情を知らないアルジャーノンは二人が楽しそうにしているのを見ていた。
自分もガラティーンと仲が悪かったわけではないが、トミー達とは違ってすごく仲が良かったわけではなかったからなあとため息をつく。
緊張のあまり、ダンスを申し込むのと間違えて求婚をしてしまったが、良かったのか悪かったのか…と考える。ガラティーンは引いてはいなかったので、成功したと思いたい。そして、彼女には案外いいところを見せていない自分に思い至った。
そして、自分も他のご令嬢と踊らなければいけないことを思い出して、そちらの元に向かった。彼は「ガラティーン以外の令嬢と踊っている自分を見て、ガラティーンが少しは妬いてくれたらいいな」と思っていた。
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