短編集

かなり柘榴

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恥なれど教訓

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何から話そうか。
今になって思ってみれば、俺の人生は後悔まみれだ。
日常の些細なことから、人生を左右する大事件まで。いろんな場面で俺は失敗してきた。
恥の多い生涯を送ってきたというやつだ。
もっとも俺には彼の文豪のような文才も感性もないのだから人間的な価値ははるかに劣るだろう。
まず最初の失敗から語ろう。
俺は大学受験で失敗した。特に何も考えずにブラブラと生きていた俺は、家族や教師の忠告も聞き流して惰性に流される日々を送っていた。
それでも何とかなるだろう。そんな的外れな甘い考えを根拠もなく持ち続けた俺に与えられたのは三文字の宣告。
さすがの俺もそれを見てやっと焦り始めた。あまりにも遅すぎる。
一浪の果てに大学に合格し親の援助を受けながら通わせてもらっていたが、周りが自分よりも年下であるということ、自分が劣った人間であるということを突き付けられてあまりにも恥ずかしかった。大学時代はいつも人の目を気にして生きていた気がする。別に世間だと一浪も珍しくはないのだろうが、努力の伴わない一浪など恥でしかなかった。
これが一つ目の失敗。
二つ目は初めてできた彼女とのこと。
同じ学部の女性で、俺にはもったいないと自他ともに認めるような人だった。
たしか、俺からの告白で交際に発展したんだったか。あの頃は彼女に振り向いてほしくて身だしなみに気を使ったし、勉強だって手を抜かなかった。くすんだ大学生活の中でも唯一鮮やかな時期だったように思う。
きっかけは、脱いだ靴を直さないとかの些細なことだった。
彼女への劣等感もあったのだろう。相手の言葉を素直に受け止めることが出来なかった。
愛する人の言葉すらまともに聞かない屑だったのだ。
そのあと少しして、俺たちは分かれた。
彼女のことは今でも心残りだし、愛情は確かに残っている。
今となっては彼女の幸福を祈るのみだ。

三つ目の失敗に移ろう。
そう、あれはたしか就活の時期だ。
就活で何が大変であったかといえばそれは面接の内容を練ることで。
中でも難儀したのは所謂自己PRだ。
自分が他人よりも優れている点、自分の残してきた経歴、そういったものが人それぞれあるのだろう。
だが、俺にはそんなもの何もなかった。おれという人間の価値をおれ自身が示すことが出来なかったのだ。
せめて価値がなくとも、自分が他人に劣る人間でもないと言えたならまだましだったが。
ここでも一浪した経験は俺の中で重しとなった。
あの時は本気で苦労したものだ。それまでの人生でもっとなにか、誇れるものを残しておくべきだったと思う。

おっと、そろそろ時間だな。こんな将来が不安になるような話ばかりして済まない。だがこの話がお前らにとって、きっと何かの一助になってくれるだろうと信じて話させてもらった。もしそうなったら、この無聊も少しは慰められることだろう。

それでは今日の授業はこれにて終了。
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